WEDGE REPORT

官僚たたきはもうやめよう 公務員改革が国を滅ぼす


「どこの世界に、社長や役員が、社員のことをボロクソにたたきのめして、世間から喝采を受ける会社があるんだろうね?」

 年明け、甘利明・行政改革担当相と谷公士・人事院総裁の激突で風雲急を告げた公務員制度改革。取材を始めていた私たちに向かって、ある霞が関の官僚の一人がつぶやいたのがこの言葉です。

 政府は、首相や大臣といった「政」が政策の判断や決定をして、官僚たち「官」が実務を執行するのが本来の構図。政府を会社に見立てるならば、首相が社長、大臣が役員で、官僚が社員といったところでしょう。

 政治家たちが「官僚主導の打破」を叫ぶというのは、役員が「社員に(役員を上回る)力があり、社員が主導の企業はおかしいから打破しなければならない」と言っていることに等しいわけです。しかも、その役員たちは、世界に類をみないスピードで毎年のようにコロコロ変わっていくわけですから、社員はさぞかしたまったもんじゃないでしょう。

官僚たたきで制度を改革していいのか

深夜1時を過ぎても煌々と明かりが灯る霞が関の官庁街

 「公務員制度改革」――このなんとも堅苦しい言葉を聞いて、読者の皆さんはどのように感じるでしょうか。「エリート官僚のことなんて、無関係」となるか、「天下りなんて許せない」、「民間は不況でこんなに苦しいのだから、公務員ももっと身を削れ」と怒りを感じるか。いずれにしても感情論に陥りやすい対象であるだけに、「何のために何を改革すべきなのか」を冷静するのは、とても難しいテーマです。

 今の官僚のあり方に「天下り」をはじめとする、多くの問題があることは間違いありません。ですが、公務員制度改革について与野党間で合意がなされ、ねじれ国会では稀にみるスムーズさで基本法が成立した昨年6月から約9カ月。この間、メディアを賑わせたのは、「天下り禁止を骨抜きにされた」と怒る渡辺善美前行革相の姿と、「内閣人事・行政管理局」という長ったらしい名前、「甘利vs谷」という構図、そして「級別定数」という一般の市民にとってはなんだかわけのわからないキーワードでした。

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