平成19年8月15日、靖国神社で総理を辞した小泉純一郎氏が宮司に手渡した「一片の書簡」
あれから2年、A級戦犯分祀論を展開する国会議員は孤立した
(SAPIO 2009年6月24日号掲載) 2009年6月29日(月)配信
議員が分祀を主張するも遺族会は違う立場を表明
小泉元首相の言う「大人気ない、恥ずかしいこと」は現在も続いている。今年4月、訪中直前の麻生首相は靖国神社へ真榊を奉納したところ、中国政府はこの奉納に強いクレームをつけた。中国との外交交渉に当たった外務省幹部は言う。
「中国外交部は靖国神社への真榊の奉納はいけない、と強硬に文句をつけてきたが、小泉首相時代には、A級戦犯が祀られているから首相が参拝することがいけない≠ニ言っていた。中国政府の論理は、全く一貫していない」
だが、そんな外圧にさらされる中、靖国神社は粛々と英霊を祀り続けた。
最近では国内でも「A級戦犯分祀論」を唱える勢力は少数派になりつつある。例えば、平成19年から20年頃にかけ、自民党の支持組織でもある日本遺族会会長の古賀誠氏は、父親をレイテ島で亡くした体験から靖国神社に対し、「A級戦犯分祀」を強く迫った。日本遺族会会長ではなく、古賀氏個人としての意見だったが、この主張に与しないことを日本遺族会はすでに明確にしている。
平成18年の「終戦60周年特別委員会報告書」の中には、日本遺族会の見解として「誰を祀るか否かは宗教法人である靖国神社の意思と責任において行われるべきもので、靖国神社自身の問題である」と明記されている。
これまで結論を出してこなかった日本遺族会が、「A級戦犯分祀問題」について立場を明確にした意味は大きい。
生前の南部宮司は直接、政治家や政治団体に働きかけを行なうことはなかったが、小泉元首相という異色の政治家の援軍を得て、英霊に対する顕彰と慰霊を行ない続ける靖国神社宮司としての信念を貫いた。南部宮司が目指した「靖(安)らかなる」靖国神社を実現するために撒かれた種は、いま各方面で花を咲かせつつある。
亡くなったときの南部宮司の顔は、実際に靖らかなるものだった、という
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