報道発表資料 [2010年3月掲載]
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〔別添1〕

児童ポルノ/第7条・8条・18条の6の2関係

  主たるご指摘 条例の解釈にかかる見解
児童ポルノ 国においても議論中の児童ポルノの「単純所持」について、都が条例で規制するのは拙速であり、違憲の可能性もある。 児童ポルノ法は処罰を目的とするものであり、厳密な定義やえん罪防止のための十分な配慮が必要であることは当然。
しかし、条例の規定は、処罰を目的とするものではなく、児童ポルノの被害に遭った青少年の苦しみを考慮し、児童ポルノの根絶に向けて、「児童ポルノは悪であり、許さない」という都民の意識を醸成するとともに、インターネット上等で現に流通している児童ポルノの拡散防止と流通削減のための取組につなげるため、正当な理由がある場合を除いて所持しない、意図しないまま所持していたことに気が付いた場合はこれを削除する、インターネット上で児童ポルノを発見した場合にはプロバイダへの削除依頼を行うなどの自主的取組を都民に心がけていただくためのもの。
このため、「児童ポルノを所持してはならない」との禁止規定の形式をとらず、「児童ポルノをみだりに所持してはならない責務を有する」と規定したもの。
自主的な取組を行わないことについて、罰則等一切の規制は存在しない。
なお、明らかに法が禁止している規制を条例が行うことは違憲であるが、児童ポルノ法が児童ポルノの根絶に向けた自主的な取組及びその促進を明らかに禁止しているものとは考えられない。
【現行制度】
 昭和39年の条例制定以来、青少年の健全な成長を著しく阻害するおそれのある図書類(※漫画・アニメ・ゲーム等の創作物が含まれる。)の青少年への閲覧等制限については、自主規制を基本としつつ、著しく悪質なものに限って不健全図書として指定することにより、青少年への販売等を禁止する制度が存在し、長野県以外の全ての県で同種制度が存在。
 岐阜県の同種条例において、この制度は表現の自由に照らして合憲と判示。
 不健全指定に当たっては、第三者機関である青少年健全育成審議会に諮問の上で指定を行う慎重な手続きが取られている。
 なお、不健全図書指定はあくまでその程度が「著しい」「甚だしい」ものに止まり、その程度に至らないものについては、業者による自主規制を前提とし、優先させている。
第7条第2号・第8条第1項第2号 実在しない青少年の性を描写した漫画等を規制するのは、表現の自由を著しく損ない、自由な創作活動や芸術文化の振興を脅かすもの。 現に、近年の不健全指定図書の多くは漫画だが、これにより、「作家の自由な創作活動や芸術文化の振興が脅かされている」との認識が広く都民一般に共有されているとは考えられない。
「非実在青少年」の定義(「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写」)は曖昧。故に、
・恣意的な運用につながる。
・著作者や発行者への検閲や弾圧を招く。
・漫画・アニメ業界の衰退を招く。
この規定は、作品の設定として、年齢や学年、制服(服装)、ランドセル(所持品)、通学先の描写(背景)などについて、その明示的かつ客観的な1)表示又は2)音声による描写(台詞、ナレーション)という裏づけにより、明らかに18歳未満と認められるものに限定するための規定であり、表現の自由に配慮して、最大限に限定的に定めたもの。
このような明示的かつ客観的な裏付けがないにも関わらず、単に「幼く見える」「声が幼い」といった主観的な理由で対象とすることはできず、恣意的な運用は不可能。
(例えば、視覚的には幼児に見える描写であっても、「18歳以上である」等の設定となっているものは該当しない。)
なお、青少年への閲覧制限を目的とする不健全図書指定制度や自主規制制度において、著作者が規制されることはなく、創作行為や出版、成人への流通は自由であり、「検閲、弾圧につながる」「漫画・アニメ業界の衰退を招く」との批判は当たらない。
「性交又は性交類似行為」という規定ぶりが曖昧であり、18歳未満のキャラクターの
・性を描写した漫画等
・裸が出てくる漫画等
・これらのキャラクターが出てくる漫画等
が全て規制の対象になる。
条例改正案第7条第2号や第8条第1項第2号における「性交又は性交類似行為」とは、児童ポルノ法等において使用されている法令用語であり、「性交類似行為」とは、手淫、口淫、肛門性交、獣姦、鶏姦など、実質的に性交と同視し得る態様における性的な行為を指すとされている。
本規定は、これらの性交又は性交類似行為を直接明確に描写したものに限定され、性交を示唆するに止まる表現や、単なる子どもの裸や入浴・シャワーシーンが該当する余地はない。
「みだりに」「性的対象として」「肯定的に」との規定が曖昧であり、青少年の性行動を肯定的に表現した漫画は全て規制され得る。 「みだりに」とは、正当な理由なくということであり、学術的見地、犯罪捜査等の目的で描くものを除外する趣旨である。「性的対象として」とは、読者の性的好奇心を満足させるための描写としてという意味である。「肯定的に」とは、不当に賛美し、又は誇張して、という意味である。
したがって、全体として、みだりに性的対象として肯定的に描写したものとは、未成年者の性交・性交類似行為を直接明確に描いたもののうち、読者の性的好奇心を満足させるための描写として、殊更にその行為を賛美し、あるいは殊更にその行為を誇張して描いたもののことをいう。
したがって、単なるベッドシーンや、主人公が性的虐待を受けた体験の描写がストーリー上含まれるだけで規制されることはない。
「18歳未満のキャラクターによる肯定的な性描写」を規制することは、青少年の知る権利を奪い、性を自分の問題として考えるための道を閉ざすもの。 上記の通り、単なる「18歳未満のキャラクターによる肯定的な性描写」を規制するものでは全くない。
今回、新たに指定基準に追加することにより青少年の閲覧を規制しようとするのは、漫画等の設定において明らかに18歳未満の青少年の性交又は性交類似行為を描いたもので、みだりに性的対象として肯定的に描写したもののうち、強姦等著しく悪質なものであるが、これは、青少年がこうした性暴力の対象となることや、近親相姦等の対象となることについて「社会が是としている」というメッセージを、閲覧する青少年に与えることは、青少年の健全な性に関する判断能力の形成を阻害するおそれがあるからである。
現行第8条第1項の「著しく性的感情を刺激する」で規制可能。
新たにこのような規定を立てるのは、取り締まりの範囲を限定しているように見せるための目くらまし。
「著しく性的感情を刺激」しない程度の表現に止まるものであっても、青少年に対する性暴力や近親相姦等を是とする漫画等を、青少年に閲覧させることは、その健全な性に関する判断能力の形成が阻害される面で適当でない。
一方、これを閲覧規制の対象とするため、「著しく性的感情を刺激し」という現行条文の解釈を、立法によらず、行政が勝手に拡大・変更することは、まさに行政の恣意的な運用による表現の自由の過度な規制であるとのそしりを免れないもの。
業界の自主的な取組を尊重すべき。 従前通り、自主規制を基本とした上で、著しく悪質なものに限って都が指定する制度に変わりはない。
運用に当たっては、業界との意見交換や周知により、規定の趣旨への共通理解を十分に形成した上で適切に運用していく。
「非実在青少年」規制は、児童ポルノ法に画像を含めようとすることを企図したもの。 児童ポルノ法は、実在の児童の被害防止を目的とし、その実現のために処罰規定を置くもので、処罰の対象は成人・青少年を問わない。
一方、条例の不健全図書指定制度は、青少年の性的判断能力の形成の阻害の防止を目的とし、その実現手段は青少年への閲覧規制に止まるもの。
両者は明確に目的や手段を異にするものであり、今回の規定と、児童ポルノ法に画像を含めることは全くの別問題。
なお、国の法律においては、青少年の健全な成長を阻害する図書類の青少年への閲覧規制を定めたものはなく、自治体が条例制定権に基づいてその必要性や範囲を判断すべきもの。
出版社などのメディアが東京に集中している現状では、改正条例は国の法律と同じ効果を持つ。 青少年への閲覧規制の効力は都内のみ。
第18条の6の2第2項 「まん延の抑止」とは、青少年のみならず、成人に対しても規制するもの。 第18条の6の2の規定における「まん延の抑止」とは、同規定が定義する「青少年性的視覚描写物」を青少年が閲覧又は観覧することを抑止する、という意味である。成人への規制を意味するものではない。
このことは、都や事業者、都民に努力を求める責務を定めた条文(18条の6の2、3、4)において、それぞれ、「青少年が容易に閲覧又は観覧することのないように」と規定していることからも明らかである。