火災現場で、ぼうぜんと立ちつくす男性がいた。先月7日早朝、久留米市の中心商店街で4棟が全焼する火災があった。男性は41歳。経営する焼き鳥店を失ったのだ。
年齢や住所を尋ねると「そんなことまで聞くのか」とけげんそうな顔。お構いなしに質問をぶつけていたことに気付いた。慣れない火災の取材。被災者への配慮を忘れていたのだ。「とにかく働くしかないね」と話す男性のことが印象に残った。
後日、現場周辺で男性と出会った。聞くと、火事の後、使えそうな商売道具を掘り起こしたそうだ。男性は焼け跡をじっと見つめていた。商店街の仲間に手助けしてもらい、今月3日、商店街の夜市で焼き鳥の露店を出すという。再起に向け、心から応援したいと思った。
〔福岡都市圏版〕
毎日新聞 2010年7月2日 地方版