2009年06月27日
ロシアの死亡率変動、アルコールが主因。
西シベリアの3都市で1990−2001年に死亡した48,557人を、アルコール関連死因の症例と(43,082人)とアルコールと関連のない死因の対照(5,475人)に分けて、家族から生前の飲酒状況を問診し比較したところ、15―54歳の男女の死亡の52%は、アルコールに起因すると推計された。論文は、Lancet 2009年6月27日号に掲載された。
例えば、ウォッカ換算(アルコール40%、500ml)で週0.5本未満の軽度飲酒者の男性(15-54歳)と比べて、週3本以上の多量飲酒者では、アルコール中毒による死亡が19.7倍、事故や暴力が6.25倍、アルコール関連の疾病(肝臓がん、上部消化管及び気道がん、肝疾患、膵疾患、結核、肺炎等)が4.46倍だった。
これらの結果をもとに推計すると、1990-2001年の15―54歳の男性の死亡の59%、女性の死亡の33%は、アルコールに起因すると推計された。
ロシアでは、1984年以来、総死亡率が激しく変動している。他の西欧諸国では、15−54歳の男女の総死亡率は、1984年(1000人対約2人)から2005年(約1.5人)にかけて緩やかに単調減少している。
一方ロシアでは、1984年には1000人対約5人だったのが、1985年に旧ソ連でアルコール生産が3/4に制限されると、1986年には1000人対4人を下回った。ところが、1991年にソ連が崩壊すると1000人対約8人に倍増、その後いったん約6人にまで低下したが、1998年のインフレでルーブル貨幣が崩壊すると再度約7人に上昇し、2005年以降は再び約6人に低下するという状況だ。
著者らは、こうした死亡率の変動は、アルコールが主要な(おそらくは唯一の)原因であると結論している。
⇒アルコールの生産制限のような政策や、ソ連の崩壊のような社会的変動が、人々の飲酒量を激しく変化させ、それが死亡率の大きな変動として帰結するという話だ。生物としての人間集団の生死が、いかに国家や政策の動向に左右されるかを示す事例といえるだろう。
論文要旨
例えば、ウォッカ換算(アルコール40%、500ml)で週0.5本未満の軽度飲酒者の男性(15-54歳)と比べて、週3本以上の多量飲酒者では、アルコール中毒による死亡が19.7倍、事故や暴力が6.25倍、アルコール関連の疾病(肝臓がん、上部消化管及び気道がん、肝疾患、膵疾患、結核、肺炎等)が4.46倍だった。
これらの結果をもとに推計すると、1990-2001年の15―54歳の男性の死亡の59%、女性の死亡の33%は、アルコールに起因すると推計された。
ロシアでは、1984年以来、総死亡率が激しく変動している。他の西欧諸国では、15−54歳の男女の総死亡率は、1984年(1000人対約2人)から2005年(約1.5人)にかけて緩やかに単調減少している。
一方ロシアでは、1984年には1000人対約5人だったのが、1985年に旧ソ連でアルコール生産が3/4に制限されると、1986年には1000人対4人を下回った。ところが、1991年にソ連が崩壊すると1000人対約8人に倍増、その後いったん約6人にまで低下したが、1998年のインフレでルーブル貨幣が崩壊すると再度約7人に上昇し、2005年以降は再び約6人に低下するという状況だ。
著者らは、こうした死亡率の変動は、アルコールが主要な(おそらくは唯一の)原因であると結論している。
⇒アルコールの生産制限のような政策や、ソ連の崩壊のような社会的変動が、人々の飲酒量を激しく変化させ、それが死亡率の大きな変動として帰結するという話だ。生物としての人間集団の生死が、いかに国家や政策の動向に左右されるかを示す事例といえるだろう。
論文要旨