2009年07月09日
アルコールとグローバル・ヘルス
Lancet 2009年６月27日号には、同日に記事として紹介したロシアの死亡率変動とアルコールとの関連の論文に加えて、「アルコールとグローバル・ヘルス」と題する３本の論説が掲載されている。概略を紹介する。
１ 世界におけるアルコールの健康負荷
�＼こΔ寮�人の大半は飲酒をしないが、多くの地域で飲酒は一般的である。
��貧困国は、経済成長に伴い飲酒量が上昇する傾向がある。例えばタイは、一人当たり年間アルコール消費量が、1961年（0.26Ｌ）から2001年（8.47Ｌ）にかけて33倍になった。メディアの宣伝も1989−2003年で７倍になった。
��アルコールは、世界の死亡率の４％に寄与し（たばこの半分）、世界のDALY（障害調整生存年数）の損失全体の５％に寄与しており（たばこと同等）、予防可能な最大の危険因子の一つである。
�ぐ�酒によるDALYの損失は、ロシアが28.1%、ブラジルが17.7%と高く、タイと米国も12.1%と高い。日本は6.7%で、ナイジェリアは2.4％。
�ゥ▲襯魁璽襪砲茲觀鮃�障害等のコストは、先進国と中進国のGNPの1%を超えている。
２ アルコールによる健康障害の防止策の効果と費用効果
�β真瑤離轡好謄泪謄�ック・レビューやメタ分析が行われており、効果的・費用効果的な対策は分かっている。
�Р然覆琉�き上げと、店舗数や販売時間の制限は、費用効果の高い対策である。
�┨�告の禁止、飲酒者個人への指導、飲酒運転対策も、費用効果が高い。
��学校での教育は、害を減らす効果はない。一般公衆への啓発は、アルコール問題への関心を高め政治課題とするのに有用な可能性がある。
��より厳格なアルコール政策を実施しなければ、世界におけるアルコール関連の健康障害は増大を続けるだろう。
３ 行動への呼びかけ
��アルコールは、健康障害の大きさの割には、たばこや違法薬物ほど国際的に対策としての関心を呼んでいない。
��たばこ規制枠組条約のような、批准国に一定の強制力をもった国際条約が必要だが、アルコール業界からの圧力もあり、早急には実現しないだろう。
��WHOは、2010年５月の総会に向けて、アルコールの害を減少させるためのグローバル戦略の草案を準備している。
⇒日本は、飲酒運転対策はきわめて厳格に行われているが、その他の政策（価格の引き上げ、店舗数や販売時間の制限、広告の禁止）についてはきわめて寛容で、バランスを欠いている。疫学者も、たばこについては厳格だが、アルコールについては寛容というか、自身が多量飲酒者の場合も少なからずあり、やはりバランスを欠いている。
冠動脈疾患に対する少量飲酒の有用性が強調されることが多いが、アルコールによる健康障害の全体像を踏まえた議論を、今後強める必要があるだろう。
第一の論説の要旨 第二の論説の要旨 第三の論説の要旨
１ 世界におけるアルコールの健康負荷
�＼こΔ寮�人の大半は飲酒をしないが、多くの地域で飲酒は一般的である。
��貧困国は、経済成長に伴い飲酒量が上昇する傾向がある。例えばタイは、一人当たり年間アルコール消費量が、1961年（0.26Ｌ）から2001年（8.47Ｌ）にかけて33倍になった。メディアの宣伝も1989−2003年で７倍になった。
��アルコールは、世界の死亡率の４％に寄与し（たばこの半分）、世界のDALY（障害調整生存年数）の損失全体の５％に寄与しており（たばこと同等）、予防可能な最大の危険因子の一つである。
�ぐ�酒によるDALYの損失は、ロシアが28.1%、ブラジルが17.7%と高く、タイと米国も12.1%と高い。日本は6.7%で、ナイジェリアは2.4％。
�ゥ▲襯魁璽襪砲茲觀鮃�障害等のコストは、先進国と中進国のGNPの1%を超えている。
２ アルコールによる健康障害の防止策の効果と費用効果
�β真瑤離轡好謄泪謄�ック・レビューやメタ分析が行われており、効果的・費用効果的な対策は分かっている。
�Р然覆琉�き上げと、店舗数や販売時間の制限は、費用効果の高い対策である。
�┨�告の禁止、飲酒者個人への指導、飲酒運転対策も、費用効果が高い。
��学校での教育は、害を減らす効果はない。一般公衆への啓発は、アルコール問題への関心を高め政治課題とするのに有用な可能性がある。
��より厳格なアルコール政策を実施しなければ、世界におけるアルコール関連の健康障害は増大を続けるだろう。
３ 行動への呼びかけ
��アルコールは、健康障害の大きさの割には、たばこや違法薬物ほど国際的に対策としての関心を呼んでいない。
��たばこ規制枠組条約のような、批准国に一定の強制力をもった国際条約が必要だが、アルコール業界からの圧力もあり、早急には実現しないだろう。
��WHOは、2010年５月の総会に向けて、アルコールの害を減少させるためのグローバル戦略の草案を準備している。
⇒日本は、飲酒運転対策はきわめて厳格に行われているが、その他の政策（価格の引き上げ、店舗数や販売時間の制限、広告の禁止）についてはきわめて寛容で、バランスを欠いている。疫学者も、たばこについては厳格だが、アルコールについては寛容というか、自身が多量飲酒者の場合も少なからずあり、やはりバランスを欠いている。
冠動脈疾患に対する少量飲酒の有用性が強調されることが多いが、アルコールによる健康障害の全体像を踏まえた議論を、今後強める必要があるだろう。
第一の論説の要旨 第二の論説の要旨 第三の論説の要旨