2009年08月06日

性的虐待の経験で、その後の身体疾患のリスク上昇。

1980−2008年に報告された23件の論文をまとめたところ、性的虐待の経験があるグループは、ないグループと比べて、機能性胃腸障害(過敏性大腸炎など、2.43倍)、非特異的慢性疼痛(2.20倍)、心因性てんかん(2.96倍)。慢性骨盤痛(2.73倍)のリスクが高かった。論文はJournal of the American Medical Association 2009年8月5日号に掲載された。

一方、肥満、頭痛のリスクは高くなかった。性的虐待全体でみると、繊維筋痛症のリスクは高くなかったが、レイプの経験に限定すると、繊維筋痛症のリスクが高くなった(3.35倍)。

レイプ以外の性的虐待としては、性的暴力の脅し、加害者の性器を無理に見せられることや触らされることなどが含まれていた。

23件の研究のうち12件は米国で行われ、11件は米国以外で行われた(英、仏、独、オーストリア、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、インド)。対象者を合計すると4,640人だった。23件のうち16件は女性のみを対象とし、7件は男女を対象にしていた。

著者らによると、性的虐待と精神疾患との関連を調べた研究は多いが、身体的疾患との関連を調べた研究をまとめて総合評価を行ったのは、今回が初めてという。

米国では、女性の25%。男性の16%が小児期に性的虐待を経験し、成人15人に1人が強要された性交の経験があるという。ただし、性的虐待の経験を医師に報告しているのは経験者の5%に過ぎない。そのため、性的虐待と身体疾患との結びつきを認識することで、患者がこれらの身体疾患との付き合いを改善し、医師による治療を改善することにつながる可能性があると、著者らは述べている。

⇒性的虐待のようなトラウマを生ずる経験により、精神疾患だけではなく身体疾患のリスクも上昇することを示した点が重要だ。一方、調べた病気の数に比べて研究の数は少なく(23件)、対象者の人数(4,640人)も、食事とがんの研究の総合評価(数十万人)などと比べてはるかに少ない。問題がセンシティブであるために調査を行いづらい点もあるのだろうが、性的虐待が決してまれではなく相応の頻度で生じる現象であることを考えると、より多数の大規模な研究が今後必要だろう。

論文要旨


ytsubono at 07:38論文解説  この記事をクリップ!
記事検索
QRコード
QRコード
  • livedoor Readerに登録
  • RSS
  • ライブドアブログ