2009年10月21日

DVの被害女性、多数の疾患のリスク上昇。

米国の大規模な医療保険組合に加入する18−64歳の女性をランダムに選んで電話調査を行なったところ、過去1年に夫やパートナーから暴力(DV)を経験した女性(242人)は、過去にDVを経験したことのない女性(1,686人)と比べて、過去1年に多様な疾患で受診するリスクが上昇した。論文はArchives of Internal Medicine 2009年10月12日号に掲載された。

DVについては、身体的、性的、心理的(言葉での脅しや慢性的な支配的行動)な暴力の経験について調べた。受診した疾病の診断は、医療保険組合の電子記録を使って、18の主な疾患群について調査した。

過去1年にDVを経験した女性でリスクが上昇した疾患は、以下のものに及んだ。心理学的・精神科的疾患(薬物やアルコール乱用5.89倍、家庭的社会的問題4.96倍、うつ3.26倍、不安障害・神経症2.73倍、喫煙2.31倍)、筋骨格系疾患(関節炎などの変性関節疾患1.71倍、腰痛1.61倍、外傷関連の関節障害1.59倍、頚部痛1.61倍、捻挫とくじき1.35倍)、女性生殖器疾患(生理異常1.84倍、膣炎や子宮頸部炎1.56倍)。

DV女性はまた、性感染症3.15倍、裂傷2.17倍、急性呼吸器感染症1.33倍、胃食道逆流性疾患1.76倍、胸痛1.53倍、腹痛1.48倍、尿路感染症1.79倍、頭痛1.57倍、打撲と擦過傷1.72倍のリスクも高かった。

著者らによると、DVと身体的・精神的疾患との関連はこれまでにも調査されているが、今回のように多様な疾患群について調べた研究はほとんどないという。その上で、DV経験者でリスクが高まる、心理学的・精神科的疾患、性感染症、裂傷などで女性が受診した場合は、DVの可能性を疑ってスクリーニングを行なうことを優先事項にすべきだと述べている。

⇒DVがこれほど多くの身体的・精神的な疾患や障害のリスクを上昇させることに、驚きを新たにする。臨床の場でのDVのスクリーニングや介入の有効性については、実際にはまだ十分な科学的根拠がなく、著者らもそのことには言及している。しかし今回の結果を見ると、リスクの高い疾患で受診した女性にDVについてたずね、司法による保護や社会的サポートに結びつけることの必要性を感じさせられる。

論文要旨

ytsubono at 06:00論文解説  この記事をクリップ!
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