2009年10月23日

逆境となる小児期の経験が多いと、成人後の死亡率が上昇。

米国の18歳以上成人16,908人を最長11年追跡したところ、虐待や両親の離婚など、逆境となる小児期の経験が8件中6件以上ある場合には、1件もない場合と比べて、65歳以下で死亡するリスクが2.4倍、75歳以下で死亡するリスクが1.7倍だった。論文はAmerican Journal of Preventive Medicineのウェブサイトに2009年10月6日掲載された。

郵送質問票で調査した18歳までの8件の経験は、言語による虐待、身体的虐待、性的接触を伴う虐待、母親が暴力を振るわれるのを目撃、両親の離別か離婚、精神科疾患患者と同居、アルコールや薬剤の乱用者と同居、刑務所に投獄された者と同居だった。

8件の経験が1件もなかったのは、65歳未満では30.9%、65歳以上では47.0%だった。一方、6件以上あったのは、65歳未満では3.7%、65歳以上では0.6%だった。

最長11年の追跡調査で、1,539人が死亡した。平均死亡年齢は、8件の経験が1件もない場合は79.1歳だったのに対して、6件以上の場合は60.6歳と、20年近い差があった。

死亡リスクの比を見ると、8件の経験が1件もない場合と比べて、1−5件の場合の死亡リスクの上昇はなかったが、6件以上の場合は、65歳以下で死亡するリスクが2.39倍、75歳以下で死亡するリスクが1.73倍だった。

著者らはロイター通信の取材に対して、逆境となる小児期の経験を多数経験した人は、脳の発達に影響があり、うつや不安に陥る傾向がより強く、喫煙や飲酒などの不健康な方法でストレスに対処しやすいのではないかと述べている。

著者らはまた、65歳未満の約7割、65歳以上の約5割が1件以上の経験を報告しており、これらの問題が広く存在するものであることを指摘している。

⇒「逆境となる小児期の経験が多いと、成人後の死亡率が上昇する」という仮説は、もっともらしく感じる。ただし今回の研究では、8件の経験が1件もない場合と比べて、1−5件では死亡リスクが上昇せず、6件以上の場合にのみリスクが上昇した。この6件以上のグループは、対象者のごく一部(65歳未満では3.7%、65歳以上では0.6%)を占める少数派に留まる。したがって、今回の知見を過度に一般化することには慎重になるべきだろう。

同誌サイトのこのページの”Adverse Childhood Experiences and the Risk of Premature Mortality”をクリックすると無料で全文(PDF)をダウンロードできる。

ロイター10月9日記事

ytsubono at 06:00論文解説  この記事をクリップ!
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