【福井】MOX搬入で原発の町は緊張感2010年7月1日
高浜町の関西電力高浜原発にプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料が搬入された30日、関電の職員らは11年ぶりのプルサーマル実施に気を引き締める一方、原発反対派は危険性を訴え、抗議活動を展開。普段静かな原発の町は、緊張した雰囲気に包まれた。 輸送船「パシフィック・ヘロン」は午前7時半ごろ、高浜町の内浦湾に姿を見せた。周辺では海上保安庁や県警の巡視船など10隻余りが護衛。作業員が待機する高浜原発の岸壁に入港した。 燃料輸送容器を陸揚げし、高浜原発内の保管建屋に収容した後、関電原子力事業本部の高杉政博副事業本部長らが会見し、「待ちに待った再開。燃料の輸送は初めの一歩。今後は計画を確実に進めていきたい」と意気込みを語った。 MOX燃料の再処理問題の先行きが不透明な点を聞かれると、高杉副事業本部長は「再処理の技術自体は確立している」と述べ、青森県六ケ所村の処理施設の本格稼働に期待を示した。 ただプルサーマルはウランを扱う一般軽水炉でMOX燃料を燃やすこともあり、実施を懸念する声は根強い。高浜原発近くに住む男性(85)は搬入に「既に決まったことだから」と静かに話したが、別の女性(69)は「やはり不安。今後が心配」と顔を曇らせた。 現場周辺では、厳重な警備が敷かれる中、原子力発電に反対する県民会議など反対派約30人が、原発を望む湾内の岸壁で輸送船に向かって抗議の声を上げた。その後原発のゲート付近で計画の白紙化を求める申し入れ書を関電職員に手渡した。参加者らはプルサーマルの危険性を訴え、「今後も反対活動を続けていく」と語気を強めていた。
燃料の到着を受け、県安全環境部の石塚博英部長は「11年前の教訓を忘れず、県民が不安にならないように万全の品質管理に努めてほしい」と話し、県も関電の安全確認に立ち会うなどして安全性を独自にチェックしていく考えを示した。 (岩本旭人)
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