2010年05月06日
脳トレで、全般的な認知機能の改善効果なし。
英国の18−60歳の成人11,430人をランダムに3グループに分け、第1のグループには推論・計画・問題解決のトレーニング、第2のグループには市販の脳トレゲームと同様の短期記憶・注意力・視空間処理・計算のトレーニングを行い、第3のグループには比較群として一般的な知識に関する質問を行なったところ、6週間後の全般的な認知機能は、第1と第2のグループで、第3の比較群より改善することはなかった。論文はNature電子版に2010年4月20日掲載された。
研究は、BBC放送の科学番組の視聴者から参加者を募って行なわれた。参加者は最初に、全般的な認知機能を測定する4種類の検査を、BBCのウェブサイトにアクセスして受けた。参加者はその後3つのグループにランダムに分けられた。各グループは、6種類のトレーニングを、一日10分以上、週に3回以上行うよう求められた。各グループのトレーニングは、参加者がBBCのウェブサイトにアクセスして行なった。
第1のグループは、推論・計画・問題解決という、限定された認知機能の分野に関するトレーニングを受けた。第2のグループは、短期記憶・注意力・視空間処理・計算という、市販の脳トレゲームと同様の、より広い分野の認知機能に関するトレーニングを受けた。第3の比較群にあたるグループは、歴史・ポピュラー音楽・数・距離など6ジャンルの知識に関する質問に回答した。
6週間後に全般的な認知機能を測定する4種類の検査を再び受け、1回目との変化を調べた。その結果、4種類の検査のうち、第1のグループでは4種類、第2のグループでは3種類が改善していたが、第3の比較群でも4種類で改善していた。改善の程度は、偏差値換算で0.1から3.5と小さかった。
第3の比較群と比べて、第1のグループでは、4種類の検査のうち1種類で改善が大きかったが、3種類では改善の程度に差はなかった。第2のグループでは、1種類で改善が大きかったが、2種類ではむしろ比較群の方で改善が大きく、1種類では改善の程度に差はなかった。
第1のグループでトレーニングを行なった認知機能(推論・計画・問題解決)は、6週間に偏差値換算で7.3−16.3と大きく改善した。第2のグループでトレーニングを行なった認知機能(短期記憶・注意力・視空間処理・計算)は、偏差値換算で7.2−9.7改善した。第3のグループでトレーニングした一般的な知識は、偏差値換算で3.3改善した。
つまり、第1のグループと第2のグループでトレーニング課題とした特定分野の認知機能は顕著に改善されたが、それが4種類の検査で測定された全般的な認知機能の改善に(比較群以上に)むすびつくことはなかった。
こうした知見から著者らは、今回の結果は、脳トレのコンピュータ・ゲームが全般的な認知機能を改善するという、広く普及している信念を支持する証拠をもたらさなかったと結論している。
研究の限界の一つとして、参加者の実際のトレーニング回数が、研究者の求めた108回以上(1回6種類×週3回×6週間=108回)と比べて平均値で24.47回(範囲、1−188回)と少なく、トレーニングの強度が不十分だった可能性を著者らは指摘している。この点に対しては、約25回のトレーニングは集団として効果を検出するのに十分な回数であることや、トレーニング回数と4種類の認知機能の検査の改善度とのあいだに相関がほとんどなかったことを指摘して反論している。
⇒英国の医学研究を統括する英国医学研究評議会(Medical Research Council)に所属する著者による、「脳トレをテストにかける」(Putting brain training to the test)と題された、Natureに掲載された論文だ。今後どのような議論がされるか、推移を見たい。
研究は、BBC放送の科学番組の視聴者から参加者を募って行なわれた。参加者は最初に、全般的な認知機能を測定する4種類の検査を、BBCのウェブサイトにアクセスして受けた。参加者はその後3つのグループにランダムに分けられた。各グループは、6種類のトレーニングを、一日10分以上、週に3回以上行うよう求められた。各グループのトレーニングは、参加者がBBCのウェブサイトにアクセスして行なった。
第1のグループは、推論・計画・問題解決という、限定された認知機能の分野に関するトレーニングを受けた。第2のグループは、短期記憶・注意力・視空間処理・計算という、市販の脳トレゲームと同様の、より広い分野の認知機能に関するトレーニングを受けた。第3の比較群にあたるグループは、歴史・ポピュラー音楽・数・距離など6ジャンルの知識に関する質問に回答した。
6週間後に全般的な認知機能を測定する4種類の検査を再び受け、1回目との変化を調べた。その結果、4種類の検査のうち、第1のグループでは4種類、第2のグループでは3種類が改善していたが、第3の比較群でも4種類で改善していた。改善の程度は、偏差値換算で0.1から3.5と小さかった。
第3の比較群と比べて、第1のグループでは、4種類の検査のうち1種類で改善が大きかったが、3種類では改善の程度に差はなかった。第2のグループでは、1種類で改善が大きかったが、2種類ではむしろ比較群の方で改善が大きく、1種類では改善の程度に差はなかった。
第1のグループでトレーニングを行なった認知機能(推論・計画・問題解決)は、6週間に偏差値換算で7.3−16.3と大きく改善した。第2のグループでトレーニングを行なった認知機能(短期記憶・注意力・視空間処理・計算)は、偏差値換算で7.2−9.7改善した。第3のグループでトレーニングした一般的な知識は、偏差値換算で3.3改善した。
つまり、第1のグループと第2のグループでトレーニング課題とした特定分野の認知機能は顕著に改善されたが、それが4種類の検査で測定された全般的な認知機能の改善に(比較群以上に)むすびつくことはなかった。
こうした知見から著者らは、今回の結果は、脳トレのコンピュータ・ゲームが全般的な認知機能を改善するという、広く普及している信念を支持する証拠をもたらさなかったと結論している。
研究の限界の一つとして、参加者の実際のトレーニング回数が、研究者の求めた108回以上(1回6種類×週3回×6週間=108回)と比べて平均値で24.47回(範囲、1−188回)と少なく、トレーニングの強度が不十分だった可能性を著者らは指摘している。この点に対しては、約25回のトレーニングは集団として効果を検出するのに十分な回数であることや、トレーニング回数と4種類の認知機能の検査の改善度とのあいだに相関がほとんどなかったことを指摘して反論している。
⇒英国の医学研究を統括する英国医学研究評議会(Medical Research Council)に所属する著者による、「脳トレをテストにかける」(Putting brain training to the test)と題された、Natureに掲載された論文だ。今後どのような議論がされるか、推移を見たい。