楽天の英語公用語化がビミョーな理由
楽天が2012年末までに社内で英語を公用語にすると発表した。
オーナー経営者の三木谷社長の強力な意向で決まったのは想像に難くない。
確かに、製造業を除く日本企業の海外進出がなかなか進まない現状を見ると、
言語面を強化しなければならないという問題意識は良く分かる。
英語を公用語化することには以下のようなメリットがあると思われる。
1.海外からの人材獲得が容易に
今後アジア市場などを開拓するにあたって、
優秀な幹部を雇用するには言語環境が英語である事は重要だろう。
現在、アジア域内で優秀な人材の多くが
米国・シンガポール・香港に集まってきている事実はこの事を裏付けている。
バックオフィス部門を海外、例えばインドなどに移管する際にも
社内が英語化されていれば障壁が低くなる
一方で、楽天は雇用慣行も米国を意識したものに変える必要がある。
採用のトップ画面が、「新卒」「中途」「MBA」なんて分類になっていたままでは
日本マニアの人以外は面食らうだろう。
グローバル企業の採用は、例えばグーグルのように分野別に
なっているのが普通だ。これは、年齢ではなく専門性に重きを置く
という企業文化を反映したものでもある。
また、給与体系も完全にグローバルなものにする必要がある。
優秀な幹部候補生を採りたいなら初任給は少なくとも年俸10万ドル
程度は払う必要が出てくるだろう。
2.市場開拓が容易に
自動車のような工業製品に比べ、国際的なサービス業は言語に
依存する部分が大きいと考えられる。ベンダーを集めるためにも、
現地語でセールスをしなければいけないし、エンドユーザーに届く
サービスは現地の言葉と文化を反映したものでなければならない。
必要な言語はもちろん英語に限らないが、
マネジメントのレベルでは英語は共通言語として使えるし、
英語圏がインターネットの活用面で日本に先行していることから
社員が英語圏の事情に詳しくなることには一定のメリットがある。
日本市場は、グローバル企業にとっては将来性のない市場だ。
楽天のプレゼン資料にもあるように、
2006年に世界の12%を占めていた日本のGDPは、
2050年にはわずか3%になる見込みだ。
海外市場を開拓することなしに楽天の長期的成長は見込めない。
3.論理的な業務の運営が可能に
好きな異性に気持ちを伝えたり、文学作品を読んだりするのには
母国語を使うのが一番便利だろうが、仕事をする上ではそうとは限らない。
限られた言語能力を使って、脳内で内容を論理的に構成し、簡潔にして翻訳する
というステップは、案外、合理的な意思決定の助けになるかもしれない。
往々にして、人は母国語のままでは論理的に考えるステップを省略しがちだ。
しかし、私は、こうしたメリットを考慮した上でも
楽天の英語公用語化には疑問を感じざるを得ない。
主な理由は以下の通りである。
1.現状の海外売上比率が低すぎる
直近の2009年時点でも、楽天の海外取扱高比率はわずかに8%、
しかも、海外企業の買収を除くとなんと1%に過ぎない。
つまり、楽天が近年、高成長を遂げているとはいえ、
そのほぼ全てが日本の国内市場によるものなのだ。
楽天は、将来的に海外比率を7割に引き上げたいとの目標を
持っているようだが現在のところ、これは机上の空論に過ぎない。
安定的に利益を伸ばしている日本のオペレーションに大ナタを振るってまで
全く実績の無い海外部門のために英語化を進めるのが経営リスクの取り方として
合理的なのかどうかは疑問符がつく。
サムスンは新入社員にTOEIC800点を課しているとの報道もあったが、
海外売り上げ比率が85%にも達するサムスンと楽天を比較する事は
できないだろう。
2.コストが過大
経営幹部についてならともかく、英語を全社員に要求するとなると
相当な機会費用がかかる上、英語話者を引き止めるためにかかるコストも
日本語しか話せない人材に比べてかなり大きくなるだろう。
営業費用の4割弱(2010年第一四半期で150億円のうち56億円)を
人件費が占める楽天で、そうした施策が果たして合理的なのかには
疑問が残る。
3.視点がグローバルでない
「英語を公用語化する」なんていうと一瞬ちょっとグローバルで
かっこいい感じがするが、実際は極めて日本的な考え方である。
多くの日本企業が海外進出に失敗している理由は、
無理に日本国内で育てた人材を海外に送ろうとしてることだ。
大人の日本人を何年アメリカに置いたところで、
現地の米国人と同じにはならない。
むしろ現地の人を採用し
業務全体を現地化してしまうことがグローバル化の早道ではないのか。
実際、楽天の海外業務のほとんどの部分が買収によるものである。
経営に携わる一部の人にとっては英語が重要になるが、
全社員に英語を話させる意味は無いように思われる。
楽天が本当のグローバル企業ならば、日本のローカルなビジネスを
やっている職員全員に英語を使わせることに一生懸命になったりは
しないだろう。
4.「英語力を人事評価の項目に」はママゴト
アメリカ国内の求人では、外国人が応募してくる事を想定して
"excellent oral and written communication skills in English"
などと書かれていることが多い。
もちろん、そうした能力は採用の際には重点的にチェックされる。
しかし人事評価は100%業績によって決まり、
言語能力は明示的には評価されない。
語学面の不利を、プレゼン資料や丁寧な説明で補うのは自由だ。
それは結局のところ、語学そのものを評価するよりも業績を
向上させるのに役立つ。
こうして見てみると、
楽天の英語公用語化は理想としては理解できるが、
現状では企業の身の丈に合っていないことは否定できないし、
そもそも手段であるはずの英語化が目的になってしまっている感がある。
オーナー経営者の三木谷社長の強力な意向で決まったのは想像に難くない。
確かに、製造業を除く日本企業の海外進出がなかなか進まない現状を見ると、
言語面を強化しなければならないという問題意識は良く分かる。
英語を公用語化することには以下のようなメリットがあると思われる。
1.海外からの人材獲得が容易に
今後アジア市場などを開拓するにあたって、
優秀な幹部を雇用するには言語環境が英語である事は重要だろう。
現在、アジア域内で優秀な人材の多くが
米国・シンガポール・香港に集まってきている事実はこの事を裏付けている。
バックオフィス部門を海外、例えばインドなどに移管する際にも
社内が英語化されていれば障壁が低くなる
一方で、楽天は雇用慣行も米国を意識したものに変える必要がある。
採用のトップ画面が、「新卒」「中途」「MBA」なんて分類になっていたままでは
日本マニアの人以外は面食らうだろう。
グローバル企業の採用は、例えばグーグルのように分野別に
なっているのが普通だ。これは、年齢ではなく専門性に重きを置く
という企業文化を反映したものでもある。
また、給与体系も完全にグローバルなものにする必要がある。
優秀な幹部候補生を採りたいなら初任給は少なくとも年俸10万ドル
程度は払う必要が出てくるだろう。
2.市場開拓が容易に
自動車のような工業製品に比べ、国際的なサービス業は言語に
依存する部分が大きいと考えられる。ベンダーを集めるためにも、
現地語でセールスをしなければいけないし、エンドユーザーに届く
サービスは現地の言葉と文化を反映したものでなければならない。
必要な言語はもちろん英語に限らないが、
マネジメントのレベルでは英語は共通言語として使えるし、
英語圏がインターネットの活用面で日本に先行していることから
社員が英語圏の事情に詳しくなることには一定のメリットがある。
日本市場は、グローバル企業にとっては将来性のない市場だ。
楽天のプレゼン資料にもあるように、
2006年に世界の12%を占めていた日本のGDPは、
2050年にはわずか3%になる見込みだ。
海外市場を開拓することなしに楽天の長期的成長は見込めない。
3.論理的な業務の運営が可能に
好きな異性に気持ちを伝えたり、文学作品を読んだりするのには
母国語を使うのが一番便利だろうが、仕事をする上ではそうとは限らない。
限られた言語能力を使って、脳内で内容を論理的に構成し、簡潔にして翻訳する
というステップは、案外、合理的な意思決定の助けになるかもしれない。
往々にして、人は母国語のままでは論理的に考えるステップを省略しがちだ。
しかし、私は、こうしたメリットを考慮した上でも
楽天の英語公用語化には疑問を感じざるを得ない。
主な理由は以下の通りである。
1.現状の海外売上比率が低すぎる
直近の2009年時点でも、楽天の海外取扱高比率はわずかに8%、
しかも、海外企業の買収を除くとなんと1%に過ぎない。
つまり、楽天が近年、高成長を遂げているとはいえ、
そのほぼ全てが日本の国内市場によるものなのだ。
楽天は、将来的に海外比率を7割に引き上げたいとの目標を
持っているようだが現在のところ、これは机上の空論に過ぎない。
安定的に利益を伸ばしている日本のオペレーションに大ナタを振るってまで
全く実績の無い海外部門のために英語化を進めるのが経営リスクの取り方として
合理的なのかどうかは疑問符がつく。
サムスンは新入社員にTOEIC800点を課しているとの報道もあったが、
海外売り上げ比率が85%にも達するサムスンと楽天を比較する事は
できないだろう。
2.コストが過大
経営幹部についてならともかく、英語を全社員に要求するとなると
相当な機会費用がかかる上、英語話者を引き止めるためにかかるコストも
日本語しか話せない人材に比べてかなり大きくなるだろう。
営業費用の4割弱(2010年第一四半期で150億円のうち56億円)を
人件費が占める楽天で、そうした施策が果たして合理的なのかには
疑問が残る。
3.視点がグローバルでない
「英語を公用語化する」なんていうと一瞬ちょっとグローバルで
かっこいい感じがするが、実際は極めて日本的な考え方である。
多くの日本企業が海外進出に失敗している理由は、
無理に日本国内で育てた人材を海外に送ろうとしてることだ。
大人の日本人を何年アメリカに置いたところで、
現地の米国人と同じにはならない。
むしろ現地の人を採用し
業務全体を現地化してしまうことがグローバル化の早道ではないのか。
実際、楽天の海外業務のほとんどの部分が買収によるものである。
経営に携わる一部の人にとっては英語が重要になるが、
全社員に英語を話させる意味は無いように思われる。
楽天が本当のグローバル企業ならば、日本のローカルなビジネスを
やっている職員全員に英語を使わせることに一生懸命になったりは
しないだろう。
4.「英語力を人事評価の項目に」はママゴト
アメリカ国内の求人では、外国人が応募してくる事を想定して
"excellent oral and written communication skills in English"
などと書かれていることが多い。
もちろん、そうした能力は採用の際には重点的にチェックされる。
しかし人事評価は100%業績によって決まり、
言語能力は明示的には評価されない。
語学面の不利を、プレゼン資料や丁寧な説明で補うのは自由だ。
それは結局のところ、語学そのものを評価するよりも業績を
向上させるのに役立つ。
こうして見てみると、
楽天の英語公用語化は理想としては理解できるが、
現状では企業の身の丈に合っていないことは否定できないし、
そもそも手段であるはずの英語化が目的になってしまっている感がある。