2010年06月21日

「男性の更年期障害」、性的症状に限られる。

欧州8カ国の地域から無作為に選んだ40−79歳の男性3,219人に対して、男性ホルモンであるテストステロンの血中濃度と性的・身体的・心理的症状との関係を調べたところ、テストステロン低値と関連し、しかも互いに相関して一まとまりの症候群とみなせるのは、3つの性的症状に限られた。論文はNew England Journal of Medicine電子版に2010年6月16日掲載された。

加齢に伴うテストステロンの減少は「男性の更年期障害」(late-onset hypogonadism)などと呼ばれ、さまざまな症状と結びつけられることが多い。しかし、この障害に特有の症状や、診断の基準となる血中テストステロン値は確立していない。

研究者らは、3,219人の対象者を半分ずつに分け、第一のグループで認められたテストステロン低値と各種症状との関連が、第二のグループでも再現されるかを調べた。

第一のグループでは、テストステロン低値と関係する可能性のある32の症状のうち、9つの症状が実際に関係していた。9症状は、性的症状が3つ(早朝の勃起の頻度低下、性的思考の減少、勃起障害)、身体的症状が3つ(激しいスポーツなど強度の活動ができない、1km超歩けない、体を前かがみにしたり膝や腰を曲げたりできない)、心理的症状が3つ(エネルギーの喪失、心の落ち込み、倦怠感)だった。ただしこのうち、症状同士に相関があり、一まとまりの症候群とみなせるのは、3つの性的症状のみだった。第二のグループでも、同じ結果が再現された。

3つの性的症状の存在とテストステロン低値を組み合わせて「男性更年期障害」の診断基準とすると、対象者に占める比率は2.1%、40歳代では0.1%、70歳代では5.1%だった。この比率は、テストステロン低値のみの人の比率よりずっと低かった。

著者らは、今回設定した診断基準の中のテストステロン値は、テストステロン補充療法を開始する基準値を示したものではないとして、こうした補充療法のメリットとデメリットを明らかにするための臨床試験が必要だと指摘している。

著者らはまた、テストステロン低値に固有の症状と、加齢に伴う一般的な症状とのオーバーラップが大きいことを指摘している。

⇒「男性の更年期障害」に対する診断基準を提唱した論文。身体的症状や心理的症状も「男性の更年期障害」に関係づけられることが多いが、テストステロンの低下と関連する固有の症状は性的症状に限られることを明らかにした点に意義があるだろう。

また、「男性の更年期障害」の診断に際しては、テストステロン値だけではなく、3つの性的症状の存在を考慮すべきことを指摘した点も重要だろう。テストステロン値が低いというだけで、安易に補充療法を開始することに対して警告を発したデータとも言える。

論文要旨

ytsubono at 06:00論文解説  この記事をクリップ!
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