2010年06月28日

妊娠中の携帯電話基地局からの高周波電磁界曝露で、早期小児がんリスクの上昇なし。

英国で1999−2001年に発症した0−4歳の早期小児がん1,397例と、性別と誕生日を合わせた比較群5,588例を比較したところ、妊娠期間中の携帯電話基地局からの高周波電磁界の曝露によるリスク上昇はなかった。論文はBritish Medical Journal電子版に2010年6月22掲載された。

携帯電話基地局(電波塔)の所在と出力周波数や電力に関するデータは、ボーダフォンなど4つの全国事業者から提供を受けた。小児の出生時の住所をもとに、基地局からの距離や、出力電力(kW)、平方メートルあたりの電力密度(dBM)を推計した。出生時の住所での出生前9ヶ月間の月ごとの平均値を、妊娠期間中の曝露量とした。早期小児がん1,397例のうち、251例が脳と中枢神経系のがん、527例が白血病と非ホジキンリンパ腫だった。

その結果、基地局から出生時住所までの平均距離は、全がん症例が1,107m、比較群が1,073mで差がなかった。基地局からの距離によって対象者を3グループに分けると、もっとも遠方群を基準にしたリスクは、中間群で0.93倍、近傍群で1.00倍と上昇はなかった。脳と中枢神経系のがんや、白血病と非ホジキンリンパ腫に限っても、リスク上昇はなかった。出力電力や平方メートルあたりの電力密度を指標にした分析でも、リスク上昇はなかった。

著者らによると、このテーマのこれまでの研究は、携帯電話基地局の近傍で生じた少数例のがんの集団発生の報告が中心で、比較群がなかった。また、おなじ高周波電磁界の曝露でも、ラジオやテレビの電波塔からの住居の距離と白血病の関係を調べた研究が約10件あるが、結果は弱く不一致という。

また著者らによると、高周波電磁界と脳腫瘍や他部位のがんとの関連を示す、培養細胞や実験動物からの一貫して確立した証拠はない。また、一般集団の携帯電話基地局からの電磁界曝露は。放射線防護の国際的ガイドラインで決められた曝露量の1/1,000−1/10,000と非常に微弱という。

研究の限界として著者らは、妊娠期間中の妊婦の携帯電話の使用量についてのデータは得られなかった点や、妊娠期間中の住所の移動については考慮できなかった点、妊娠中の曝露と早期小児がん(0−4歳)との関係を調べたのみで出生後の曝露とその後のかんとの関係は調べていない点などを挙げている。

⇒英国全土で発症した早期小児がんを、地域がん登録から選び出して分析を行った研究。著者らが指摘するような限界があるためさらに研究が必要だが、現段階では、妊娠期間中に携帯電話基地局の近傍に住むことで、早期小児がんのリスクが上昇する懸念は小さいと考えられるだろう。

論文要旨

ytsubono at 06:00論文解説 | がん予防 この記事をクリップ!
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