培養したマウスの脂肪細胞。赤い部分がため込まれた脂肪=宮崎教授提供
たんぱく質を加えて3日後のマウスの脂肪細胞。脂肪が溶けて小さくなった=宮崎教授提供
食事制限せずにダイエット成功? 体の脂肪を減らす効果のあるたんぱく質を、東京大の宮崎徹教授(代謝遺伝学)のチームがマウスで見つけた。肥満を抑える薬に応用できる可能性がある。
減量効果が確認されたのはたんぱく質「AIM」。血液中の免疫細胞が、動脈硬化の原因になる悪玉コレステロールを取り込む際に作られる。脂肪細胞の中に入れると、血糖から脂肪を作る働きを抑える。このたんぱく質は脂肪細胞に対し、ため込んだ脂肪を使わせることも分かった。
さらに、高カロリー食を食べさせて太らせたマウスに週2回、注射すると、体重の増え方が半分以下になった。人間にあてはめると、5週間で約20キロの減量効果があった計算になるという。培養した脂肪細胞にこのたんぱく質を加える実験でも、3日後に脂肪が4分の1ほどになった。
このたんぱく質は、免疫細胞を培養すれば、大量に生産できる。薬として使うには、やせたい場所に直接注射する方法が有効だという。人間の体内でも作られるため、副作用が少ない。犬猫など多くの哺乳(ほにゅう)類で作られている。
太りやすい人は、遺伝的にこのたんぱく質を作る働きが弱い可能性があるため、宮崎教授らは、健康診断を受けた人の遺伝子で関連がないか調べている。
ただ、肥満が進行すれば、このたんぱく質は動脈硬化を進める可能性があるので注意が必要だという。9日付米科学誌セル・メタボリズムに掲載された。(杉本崇)