鰤端末鉄野菜 Brittys Wake このページをアンテナに追加 RSSフィード

You have eaden fruit. Say whuit. You have snakked mid a fish. Telle whish.

-- J. Joyce, Finnegans Wake, Book IV

鰤端末 書庫閲覧についてWikimedia関係日誌 これは誰?

2010-07-01 夏が来た

[] いや、それは違う―ウィキペディアにおける匿名性と検証可能性

土木学会であったウィキペディア(日本語版)関連の講演会にいってきた方の匿名のリポートがあったのですが、

出典が必須なのは匿名投稿を広く受け入れたいから。

[wikipedia][wp観察] ウィキペディア日本語版観察記 26

いや、それ、違うから。どうしてそういう理解にこの方が至ったのかわからないが、文献表記が必須なのは主に1)情報の信頼性を確保するため、付随して2)他者による知的貢献の帰属を明らかにするためで、筆者の匿名顕名ということとは別の次元の問題である。

学術論文を書き、そこに先行研究を引用するのと同じ作法を、ウィキペディアは記述に際して要求する、たんにそれだけのことで、匿名投稿を受け入れるかどうかということはさしあたり関係がない。

日本語圏ではこのあたりの意識が弱いようだが、百科事典の項目とはそれ自体がひとつの学術論文であるという見方がヨーロッパにはある(今日の百科事典の直接的な起源はフランスの18世紀、啓蒙時代に求められる)。そうした百科事典の項目は往々にして数ページにわたる大部なもので、詳細な文献リストが付属し、記述のそれぞれの典拠となる文献が項目ごとに設けられた注で示される。ウィキペディアもこの文化のなかにあり、同じ形式を踏襲したのである。

なお「匿名投稿を広く受け入れたい」ということはウィキペディアにとっても全ウィキメディア・プロジェクトにとっても、それほど重要なことではない。もちろん門戸を広く取ることを我々は重要なことと考えているが、それは主に新規参入者への閾値を下げることを念頭においており、匿名投稿を奨励しているわけではない。「匿名投稿を広く受け入れたい」から何かをするというのはウィキペディアの運営の思想のなかにはない。必要があれば、半保護記事のように匿名投稿を不可能にすることもあるし、英語版ウィキペディアのように匿名投稿者の新規記事投稿を禁止して久しいところもある。

以下は蛇足だが、ウィキペディアの上では厳密には匿名ということは起こらない。すべての投稿は履歴欄に投稿者と投稿日時が記録されている。利用者登録をせずに投稿することは可能で、便宜上我々はそれを「匿名」(anonymous)と読んでいるが、その場合IPアドレスが利用者名にかわって公開されるので、かえって個人情報の流出の可能性は利用者登録をして顕名になっているときより増大する。IPアドレスから、所属や投稿時の地理的な所在地が分かることは往々にしてあり、過去にはウィキペディア上の犯罪予告から逮捕に至った例もある。

[][] ほんとうの夏が来た: ウィキマニア2010

いやまったく暑いですよね。昨日はほぼ夜の間、窓をあけておいたのだけど(いま友達の家に遊びにきていて、そしてこの家にはクーラーというものがない)、それで涼しかったのは午前中だけでした。とほほ。

夏といえばウィキマニア(ウィキメディア国際カンファレンス)、今年はポーランドのグダンスクです。ウィキマニア2010は来週の週末、7月9日から11日まで、グダンスクのショパン交響会館&オペラホールで行われます。いまならまだ飛行機が取れるかもですよ。

グダンスクでのウィキマニア開幕にあわせて、京都ではOSC京都(オープンソースカンファレンスKansai@Kyoto)で、関西ウィキメディアユーザ会がウィキマニアについてのセミナーを行います。ご都合の許す方は、そちらへなりとお越しくださいませ。現地からの最新レポートもお届けするよう鋭意努力中です。

なおグダンスクといえば私はレフ・ワレサを思い出すのですが、いまの若い人は連帯どころかそもそもワレサを知らないんだよね。久々に歳を感じた。