きょうの社説 2010年7月2日

◎下落続く路線価 オフィス助成の見直しを
 前年比5%台の下落率となった2010年分の北陸3県の平均路線価は、オフィス、住 宅の不動産需要の低迷を映し出している。長引く不況でオフィス需要が低下し、賃料の引き下げと地価の下落に拍車がかかるという状況からの脱却が地方都市の共通課題であるが、北陸では特に金沢市中心部における空きオフィスの増加が深刻であり、需要喚起へ行政のてこ入れが望まれる。

 北陸3県の路線価ダウンは富山が18年連続、福井が17年連続で、石川は2年連続と なった。前年まで北陸の最高価格地点だった金沢市香林坊1丁目の百万石通りは前年比5・8%減の47万円となり、同市堀川新町の金沢駅東広場通り(前年比3・9%減の49万円)に1位を譲った。その背景にあるのは、今年1〜3月の民間調査で25%を超えるオフィス空室率の高さである。この数字は調査対象の全国12都市で最悪という。

 金沢市は都心軸となる道路沿いでのオフィス開設や、ファッション関係の出店に対し、 改装費を補助する制度を全国に先駆けて設けている。しかし、必ずしも使い勝手が良いとは言えず、利用も減少しており、制度を見直すときにきているのではないか。

 金沢経済同友会は一案として、オフィス・商業ビルのテナント誘致のため、各地区の特 徴を生かして誘致対象を絞り、助成をもっと手厚くする「特区」制度を提言している。オフィス空室率の悪化と地価下落に歯止めがかからない現状に金沢市も危機感を持ち、提案を真剣に検討してほしい。

 富山市は現在、中心部で情報・デザイン系の創業者やベンチャー企業が事務所を新設す る場合、オフィス賃借料を補助する制度を設けているが、対象者や助成額の拡充を考えてよいだろう。都心活性化の鍵である再開発事業を成功させる努力は当然である。

 また、オフィスや店舗だけでなく、定住者を増やすことも重要である。金沢市の「まち なか区域」では昨年、転出者より転入者が多く、人口の社会動態で増加に転じた。こうした「まちなか回帰」の動きをさらに後押しする施策を考える必要もある。

◎日銀の「北陸短観」 経済失速の懸念消えない
 日銀金沢支店が発表した6月の「北陸短観」は、全産業の業況DIが4期連続で改善し たものの、先行きを楽観できるほどの勢いは感じられず、回復が踊り場に差し掛かった兆候も目に付く。金融市場では各国の緊縮財政で世界経済が失速するとの懸念から、資金が「安全資産」に逃避する世界同時株安の様相を呈しており、景況感の改善に水を差すのは間違いない。根強い円高の圧力は、外需頼みの北陸の製造業に暗い影を投げかけ、先行きの不透明感は増すばかりである。

 北陸の全産業の業況DIは昨年6月のマイナス55を底にして、同年9月にマイナス4 5、同年12月にマイナス39、今年3月にマイナス30、今年6月がマイナス20と右肩上がりに改善してきた。6月の日銀短観では、大企業・製造業のDIがプラス1と08年秋のリーマン・ショック後、初めてプラス圏に浮上しており、数字の上では順調な回復ぶりを示している。

 だが、前週末に開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議で、日本を除く先進国が2 013年までに財政赤字を半減させる目標で合意したのを機に、世界各地で株価が急落した。1日の日経平均株価は、日銀短観にも反応せず、連日で年初来安値を更新し、1ドル88円台前半まで円高が進んでいる。

 日本の場合、財政赤字半減目標については事実上の「例外扱い」とはいえ、20年度ま でに基礎的財政収支を黒字化させる目標を示し、消費税増税にも含みを残している。これでは、景気が悪化しても有効な対策を打ち出せない懸念が台頭するのも無理はない。実際、足元の企業業績は好調でも、景気の先行きに確信が持てず、設備投資や採用増をためらう北陸の企業も多いのではないか。

 6月の北陸短観のうち、石川県のみの場合、業況DIが全産業でマイナス21であるの に対し、先行きはマイナス23とむしろ悪化している。富山県はマイナス9と比較的好調な製造業のDIが先行きはマイナス16とやはり悪化しているのが気にかかる。好調な外需がしぼむようなことがあれば、景気はたちまち失速しかねない。



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