中日新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 中日春秋一覧 > 記事

ここから本文

【コラム】

中日春秋

2010年7月1日

 もし謎を形にするなら多分、「箱」だろう。何か入っているのか? だとしたら何が? 大げさに言えば、ただ箱があるだけでサスペンスが生まれる

▼この“箱”など特にだ。途方もない宇宙の長旅で小惑星イトカワから探査機「はやぶさ」が地球に持ち帰ったカプセル。一ミリ以上の粒子はなかったが、もっと微細な試料が入っているかもしれない。まだドキドキは続く

▼ブラジルではサッカーのことを「カイシンニャ・デ・スルプレザス」と呼ぶことがあるそうだ。即(すなわ)ち「驚きの小箱」。まったくだ。それがいかに的確な表現か、W杯日本代表が教えてくれた

▼パラグアイに敗れはしたが、八強までほんの少し、いわばクロスバーの幅ほどの距離にまで肉薄した。「一勝できればサプライズ」(オシム前代表監督)。そんな事前の悲観論を驚きの連続で吹き飛ばした

▼たとえあのカプセルに何も入っていなくても、度重なる故障を乗り越え、惑星間の宇宙機往還に成功した人類初の偉業は色あせない。同様に、日本代表はこのW杯は去るが、四強でさえ決して夢物語でないことを示した意義は揺らぐまい

▼日本の宇宙技術、あるいは日本サッカーという「箱」からは、いろんなものが飛び出して最後にこの上ない宝が残った気がする。次へ、未来へとつながる「希望」だ。ちょうどギリシャ神話の「パンドラの箱」のように。

 

この記事を印刷する

中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ