【ワシントン】米国トヨタ自動車販売のジム・レンツ社長は23日、下院エネルギー・商業委員会の公聴会で、突然の加速という問題が、最近のリコールでは解決しきれない可能性があると証言した。
同社長は突然の加速について、「非常に多くの原因がある」とした上で、「意図しない突然の加速を引き起こす可能性のある要素はどれも考慮から外していない。われわれは油断しておらず、引き続き原因を探っている。現在分かっている限り、電子系統の問題ではない」と付け加えた。
レンツ社長は、自身の弟が20年前に自動車衝突事故で30歳で亡くなったことに触れ、涙ぐむ場面もあった。同社長は「そのことを思い出さない日はない」と声を震わせ、「遺族の状況が理解できる」と語った。
ドナ・クリステンセン議員(民主、バージン諸島選出)が「1980年代のトヨタを現在のトヨタに変えたのはなにか」とたずねると、「われわれはエンジニアリングのキャパシティーを超えて大きくなってしまったと思う」と答え、同社が「顧客の視点を失った」と付け加えた。
同社長によると、トヨタはフロアマットのずれと「戻りの悪い」アクセルペダルという「2つの機械的な原因」が、急加速の報告の背後にあると考えている。しかし、同社はそれでも調査を継続しており、「問題があれば、それを突き止め、直したい」意向という。
レンツ社長は、安全問題への対応の遅れについて謝罪。「プリウス」その他ハイブリッド車やピックアップトラック「タコマ」の最近のリコールについて、「過ちを認識しており、それについて謝罪したい。そして学んだことがある。今では、苦情について調査する際の考えを変えなくてはならず、顧客や監督当局との連絡体制を改善し、迅速かつ効果的にしなくてはならないと認識している」とした。
調査会社セーフティ・リサーチ・アンド・ストラテジーズを率いるショーン・ケイン氏は、電子系統の調査や適時のリコールという面でトヨタが不十分だと指摘した。「フロアマットが原因なら、少なくとも過去2年にわたりペダルのひっかかりについて非常に深刻な本当の結果を認識していなかったのはトヨタの罪だ」としている。
スティーブ・バイヤー議員(共和、インディアナ州選出)は、トヨタを訴えている事故の犠牲者を代表する原告弁護団とケイン氏の会社の関係に言及した。
下院エネルギー・商業小委員会の委員長バート・ストゥパク議員(民主、ミシガン州選出)は、いわゆるトレッド法が本来の目的を果たしているのかどうか疑問だと述べた。
トレッド法は、フォードのスポーツタイプ多目的車(SUV)とファイアストンのタイヤが絡んだ死亡事故を受け10年ほど前に制定された。自動車メーカーに対して報告義務を強化し、監督当局が安全面の欠陥を追跡しリコールを要求するための手段を増やすための法律だ。
現在の自動車に使われている最新の電子技術がドライバーをリスクにさらす可能性があるかどうか、また、トヨタがそのリスクを控えめに表現しているのではないか、という点が23日の公聴会を通じての主な疑問だった。事故の犠牲者や弁護士からは、トヨタやレクサスの突然の加速について、同社が特定したフロアマットのずれや戻りの悪いアクセルペダルといった要素では説明できないとの訴えも聞かれる。