第一話 人と妖怪の境目
きっかけは、宝船の騒動が落ち着いて、一ヶ月ほどたったの日のこと、
僕こと森近霖之助が
魔理沙のツテで新しい常連となった、河城にとりとの会話をしていたときであった。
「にとり、二ヶ月前にもらった胡瓜の事なんだがなんだか色がおかしいんだ。
何というか、色が赤みがかかっているというか。」
たくさん作ったら河童との交渉用に確保しておこうと思ったのだが、
「ああ、店主には赤胡瓜の種をあげたからね」
赤胡瓜?
聞いたことのない名前だ、新しい胡瓜の品種だろうか。
「君は、胡瓜より赤胡瓜の方が好きなのかい」
「いやわたしは、青い胡瓜の方がいいね、赤いのも食べなくはないけど、偶にしか食べないね」
「どうしてそんなものを渡したんだい?」
「河童の中には、赤河童と言うのがいてね、そいつらの大好物なのさ。
赤胡瓜は育てているところが少ないから、赤河童と交渉するなら、これが一番だね。」
赤河童
遠野の赤河童か、
遠野物語の59話
他の土地の河童は青いと言うが、遠野の河童は顔が赤い
と言う感じだったはずだ
「それで、赤河童は何処にいるんだい。」
「それが、赤河童は数が少なくてね、住処も良く解っていないんだ。」
この流れは、そう言うことか、
「はぁ・・・、つまりその赤河童を連れてくるから、商品をくれと」
「話が早いね店主、連れてくるのは・・・まあ、何とかしよう。
じゃあ、ちょっと、待っててもう目星はつけてるからさ」
つまり、二ヶ月前からこのことを考えていたと言うことだろう、
なんと気の長いことだ、
いや、妖怪だから長いことはない、むしろ短いぐらいだ、
しばらくすると、にとりがぱたぱたと戻ってきた。
「埃が立つから、走るのはやめてくれないか。」
「掃除をしていない店主が悪いんじゃないか。」
「服屋には服屋の、道具屋には道具屋の雰囲気ってものがあるのさ、
道具屋には埃が少しぐらいある方が趣があるんだ。
それに、少しは掃除している。
そんなことより何を選んできたのかな。」
「そうだよ、店主これこれ!」
にとりの手にあったのは魔界ウォーズと言うタイトルに、二丁拳銃の女の子が描かれた箱だった。
「名前はゲームソフト、
用途は遊ぶために使う、だね。
それならたくさん流れ着いてきたから一つぐらい話いいよ。
でも、何に使うんだい。」
にとりは、目を爛々に輝かせて
「この前拾った、
でーぶいでーぷれいやーとやらを、分解してみるとちょうど丸い何かを入れる窪みがあってね、
これの中身と、ちょうど同じ大きさだからこれを入れると何かが起きると思うんだよ!
店主、どう思う?」
「僕は、これを術符だと思っている、この形のものはたくさんあったんだが、
セキュリティソフトというものに、コンピュータウィルスを退治する、と言うものがあってね。
コンピュータとは、電気とやらを使う外の世界の式神だ。
そして、コンピュータウィルスとは、何か解らないが、
コンピュータのウイルス、つまり、式神の病原菌、つまり、式神を倒すものだと解る。
つまり、セキュリティソフトとは、式符だと思うんだ、
これも、電気を使うと思うから動かせないんだが、
まあ、結論から言うと、現代式の術符じゃないかと思っている。」
にとりの方を見るとどうやら黙っている。
一気に話しすぎたか、
「それは、おもしろい説だね店主、
わたしも、わたしの説と、平行して調べてみるよ。」
どうやら、興味を持ってくれたらしい、霊夢や魔理沙も、これぐらいちゃんと聞いてくれればいいのだが。
「おっともうこんな時間だ、
もう帰らないと、」
窓を見るともう茜色の空になってきている。
「そうだね、それと、赤河童によろしく頼む。」
「あっと、忘れてたその赤河童の子、ちょっと変わってるから注意してね。」
「なれてるよ。」
だいたい、妖怪少女やメイドや魔女や巫女、常連になる人の方が変わっている。
これで慣れてない方が可笑しい、
・・・まあ考えても空しくなるだけだけど。
「(性格的なことではなく、身体的なことなんだけど)
・・・えっとその子、他の河童から避けられているから。」
ふむ、考えが異端なんだろうか、
まあ、その話題は避けることにしよう。
「じゃあ、一週間後に連れてくるからね。」
一週間後
「河城みとりです、にとりの姉です。」
赤い髪に赤い服、すべてを拒絶するような目をしている少女は、
赤河童の半人半妖だった。