金総書記:4年ぶり訪中 胡主席と会談へ

2010年5月3日 12時9分 更新:5月3日 23時48分

3日午後、中国・大連市内のホテルで車に乗り込む北朝鮮の金正日総書記=共同
3日午後、中国・大連市内のホテルで車に乗り込む北朝鮮の金正日総書記=共同

 【大連・浦松丈二】外交筋によると、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記が3日、特別列車で中国入りした。中国側国境の町、遼寧省丹東からは自動車で同省大連に入った。大連で、李克強副首相主催の夕食会に出席した模様だ。総書記の訪中は06年1月以来約4年ぶり、08年8月に脳卒中で倒れて以降は初の外遊となる。この後、北京に移動して胡錦濤国家主席と会談し、北朝鮮核問題を巡る6カ国協議などについて話し合う見通しだ。

 金総書記の訪中は今年初めから何回も「兆候」が報じられたが、「北朝鮮側の事情で延期」とされてきた。ようやく実現した背景には「健康問題がある」という見方が強い。北京の外交筋によると、脳卒中の後遺症が残るとされる総書記だが、4月中旬の宴会ではフランスワインを楽しむなど最近は健康状態が良好という。体調がいい時期をとらえた訪中で健康不安説を一掃しようとした可能性もある。

 ただ、大連のホテルでは、脳卒中の後遺症が残るとされる左足をひきずりながら疲れた表情で歩く姿が目撃された。ホテル駐車場には救急車が待機している。別の消息筋は「今回の訪中は3日間前後の短期間」と話しており、健康不安が依然として残っていることをうかがわせた。

 ◇影おとす韓国艦沈没

 総書記は訪中で、中国が求める6カ国協議再開に応じる見返りとして大規模な支援獲得を狙っている模様だ。中朝関係に詳しい金景一・北京大教授は「総書記が協議再開に前向きな立場を表明する可能性は十分ある」と話す。だが「それでも協議が前進するとは限らない」と悲観的だ。

 影を落としているのは、死者・不明46人という犠牲が出た韓国海軍の哨戒艦「天安(チョンアン)」の沈没だ。

 北朝鮮の朝鮮中央通信は4月17日、関与を否定する論評を発表したが、韓国では北朝鮮関与説が強まる。クローリー米国務次官補が「(北朝鮮の)挑発的行為は、幅広い情勢に影響を与える」と述べるなど、北朝鮮が強く望む米朝交渉にも大きな障害となりつつある。

 ここでさらに、米国やスウェーデンといった第三国を交えて原因調査を進めている韓国側が「北朝鮮による攻撃だった」という結論を発表した場合、北朝鮮は厳しい立場に追い込まれる。韓国高麗大の柳浩烈(ユ・ホヨル)教授は、このタイミングでの訪中について「沈没に関する中国の受け止め方を懸念し、今後、流れを有利に持っていくため」と見る。別の専門家は「韓国の発表前に、北朝鮮の立場を中国に説明しておきたかったのではないか」と推測した。

 ただ、米韓の態度は硬い。韓国外交通商省の金英善(キム・ヨンソン)報道官は3日、沈没原因究明が最優先だという姿勢を改めて強調するとともに「中国政府も十分に理解していると思う」と述べ、中国側にくぎをさした。オバマ米政権も、核問題の最優先課題をイランの核兵器開発阻止に置いており、北朝鮮問題では韓国に同調する姿勢だ。

 中国も最近は、政府系シンクタンクの研究者が内部会議で「沈没をめぐる南北対立に中国が巻き込まれることは避けねばならない」と警告するようになっている。沈没問題での南北対立がさらに激しくなる前に、懸案だった総書記訪中を実現しホッとしているというのが、中国の本音のようだ。【大連・浦松丈二、北京・米村耕一、ソウル西脇真一】

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