京都府立医大の松原弘明教授(循環器内科)らの研究グループは1日、さまざまな組織細胞に変化する能力のある幹細胞を心不全患者の心臓から採取して増殖させ、患者本人の心臓に移植する手術に、世界で初めて成功したと発表した。患者は心臓の機能が改善し、同日、退院した。
手術を受けたのは神戸市の山口茂樹さん(60)。今年2月、急性心筋梗塞(こうそく)を発症し、重症心不全と診断された。
採取した幹細胞を約40日間増殖させ、6月のバイパス手術に合わせ、壊死(えし)していた心臓の左側の一部に注射器で移植。細胞を長生きさせる特殊なゼラチンシートで覆った。
心臓のポンプ機能を示す心収縮率(正常は75%以上)は通常のバイパス手術では3~4ポイント程度しか改善しないが、今回は手術前の22%から32%になった。幹細胞は血管や心筋の細胞に分化し終わったと考えられ、不整脈などの副作用も出ていないという。
松原教授は「人工心臓や心臓移植の代替医療として10年後の保険適用を目指したい」と述べ、山口さんは「胸の痛みや動悸(どうき)が大分改善された」と話した。【広瀬登】
毎日新聞 2010年7月1日 19時39分