私が主宰するプライベートセミナーにて昨年4月に宮崎県の家畜改良事業団の方を招き「宮崎県の種雄牛造成のしくみ」について勉強会を行いました。端的に言うと宮崎県がどうやって種牛をつくっているか?ということです。また、今後どのような系統を維持していくか・・・などについて議論しました。
なぜ、このテーマを設定したか?
・生産者の方は一昔前に比べると母牛が小さくなった。しかし、最近の種牛は非常に大型化している。バランス が悪く難産が多い。
・なぜ、個人で種牛を造らせないのか?
・純粋の血統(鳥取系、兵庫系、島根系・・・)が非常に少なくほとんどが混血になってきた。純血がひつようで はないのか?
往診の際に、生産者の方から上記のようなことをよく聞いていたからだ。
宮崎県は基幹種雄(31頭)と基礎雌牛(350頭)の間で交配し年間23頭の子牛について直接検定を実施します。これは当事業団の施設で集中管理して行い、この過程に3年を要します。この間に発育、体型、特徴、遺伝病など様々な項目について協議されます。
この中から検定に合格した9頭を一般農家の雌牛に試験交配し子牛を得ます。この子牛を事業団施設、畜産公社にてステーション検定、一般肥育農家にてフィールド検定に分けられ検定されます。この中で、枝肉成績などのデータ解析が行われて「合格」したものだけが種牛としてデビューします。この過程に約3年を要します。
こうしてデビューした種牛は市場が評価するまでに相当の時間がかかります。せっかくデビューしても実際の現場で広く使われる中で、問題点が見つかったり、市場の評価が芳しくない牛もたくさんいます。ですから、種牛は非常に貴重な存在なのです。
宮崎県の場合は、県の指針に沿った形で統一された種牛を造成するということで個人で種牛を作ることを事実上認めません。ですから、これは!といういい雄子牛ができても種雄候補として残すことすらできず去勢されます。昔からこのような体制ですので農家はすっかり諦めており、種雄は事業団任せになっています。
しかし、こうしたことが種雄のバリエーションを少なくし、今回のような伝染病が発生した際に全滅してしまうという危険性を有しているのです。
県が多額の税金を投じて「使い物になるかならないか分からない」種牛を独占で造ることに私は疑問を感じています。民間でノウハウを持った方、造ってみたいという方に自由に個人負担で造っていただいた方が種牛のバリエーションも増え、飼育地も分散されるのではないかと考えます。その中で事業団も規模を縮小するなりして民間と競争していくことで、宮崎県(宮崎牛)が今後評価されていくのではないでしょうか?