イラクの「オイルラッシュ」で民間警備会社がその重要度を増しているようです。
イラクで、この夏に全面撤退するアメリカ軍戦闘部隊に取って代わる、各国企業のバグダッド詣でと、「ゴールドラッシュ」ならぬ「オイルラッシュ」を取材しました。
イラクで活動するイギリスの民間警備会社「G4S」。
空港や検問所の警備を請け負うほかにも、要人や海外のビジネスマンの身辺警護など、軍事的な業務も行う。
イラク南部の町バスラでは、気温50度を超える日が続く中、停電が頻発し、人々のいらいらも、ついに頂点に達した。
戦争とテロが、イラクのインフラに残した傷跡は深い。
このバスラにも、「G4S」は拠点を構えている。
この地での任務こそ、イラク復興への切り札と直結している。
G4Sの警備隊が向かったのは、クウェートとの国境に近い、ルメイラ油田。
しかし、彼らが警備するのは掘削現場ではない。
ここは、石油掘削のための機材や資材をリースする会社の前線基地。
この地域の油田開発の権利を持っているのは、中国とイギリスの石油会社で、その石油会社相手の商売のために、アメリカのリース会社が進出してきたという。
G4S石油・天然資源サービスのイアン・ピルチャーゼネラルマネジャーは「これまでに、ゴールドラッシュや鉱物ラッシュがあったが、われわれは先例のない燃料資源ラッシュを目撃しているんだよ」と話した。
イラクのシャハリスタニ石油相は「これから、いくつかの企業と話し合いを持ち、これらの油田の開発希望があるなら、新規入札の法的な手続きを始めようと考えています」と話した。
疲弊した国家を立て直すために資金が必要なイラクにとって、油田開発は数少ない外貨獲得手段。
2009年、イラク政府は、およそ40年ぶりに油田開発を外資に開放した。
これまでに行われた2回の国際入札で、13カ国の16社が開発の権利を得ている。
国際開発センターの畑中美樹氏は「イラクの場合には、1980年代の初頭から、対外的な接触が戦争・経済制裁で不可能だったこともあって、最先端の技術がないんですね。海外の一流の石油企業が入ってくることによって、その技術を徐々に移転して、ゆくゆくは石油収入を極大化することができる。それが一番のメリットだと思います。石油会社が水そのものをつくって、イラクで油田のために使うということも、今、始めようとしていますので、そういった経済インフラの整備・開発にもつなげられるというメリットがあるわけですね」と話した。
まさに、「ゴールドラッシュ」ならぬ「オイルラッシュ」が始まり、各国の企業がイラクに目を向ける中、民間警備会社はその重要度を増している。
先日日本で、イラクでビジネスを行おうとしている企業向けのセミナーが開催され、大勢の人を集めた。
参加した「G4Sイラク」の警備部門責任者、トム・バーカー氏は「(日本企業は興味を示していましたか?)「彼らは、イラクには経済的利益があると確信しているものの、2006年から2007年のころのような、ひどい状況に巻き込まれたくないという警戒心があるようです。だから、イラクの治安状況の統計や事実、情報を持ってきたんです。反応は良かったですよ」と話した。
また、トム・バーカー氏は「(G4Sの目指すものは?)大規模な警備会社になること。そして、できるだけ多くの空港警備を任せてもらえるようになることです。石油・天然ガスコミュニティーの支援をしたいですし、イラク復興プロジェクト、病院、発電所、かんがい設備、駅など、必要な施設の建設に力を注いでいる人たちを支援したいですね」と話した。
アメリカ軍の戦闘部隊が都市部から撤退して、ちょうど1年。
イラクは復興への道を歩む一方で、各国の石油利権をめぐる経済的な戦いの舞台となりつつある。
同時にそれは、武装勢力にとっては格好のターゲットでもある。
G4S輸送車列警護オペレーション・マネジャーのダレン・ファーグソン氏は「ここらにある装甲車はつぶされて、もう使っていないんだ」と話した。
海に面している領土が少ないイラクにとって、ウムカスル港は数少ない玄関口。
そのため、港そのものの警備はイラク軍が担当するが、港から都市への物資運搬の警護は、やはり民間警備会社が頼りとなっている。
復興に向けての道を歩み始めたイラク。
民間警備会社は、空港や港など企業の支援という「戦場」を広げている。
(07/01 00:35)