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再び選ぶ夏・暮らしの現場から:参院選/3 続く地方の医師不足 /岐阜

 ◇地域に手厚い医療を 政権交代に振り回され

 08年冬、下呂市内のスーパーに夕食の買い出しに出かけた主婦(74)は突然、胸が苦しくなった。息切れは収まらず、タクシーで下呂温泉病院に向かった。不整脈だった。薬の投与などの治療で体調は回復したが、今も定期的に通院を続ける。

 同病院の循環器科には4年前まで3人の常勤医がいた。だが、現在は1人。岐阜大から非常勤医の派遣を受け、「休診」の事態を食い止めている状況だ。「もし一人もいなくなったら、どうなるんだろうね」。主婦は不安そうにつぶやく。

 厚生労働省の08年調査によると、岐阜の県人口1000人あたりの医師数は1・8人で、全国平均2・2人を下回る。山間部やへき地が多い県北部の飛騨地方に限れば1・7人を割り込み、医師不足は深刻だ。04年に始まった臨床研修制度により、研修医が都市部の大規模病院に集中したためで、地方病院は医師確保や効率的な診療体制の整備に頭を悩ませる。

 下呂温泉病院の山森積雄院長(61)は、かつて自民党政権が打ち出した「地域医療再生事業」に期待していた。地方の医療機能の強化などを目的とし、優秀な計画には100億円を交付するという内容だった。

 計画には飛騨の医療圏も名乗りを上げた。山森院長も立案に参加し、目玉に「電子カルテの共有化」を掲げた。同じ医療圏にある約20軒の開業医と同病院のコンピューターをつなぎ、同病院の過去5年分の電子カルテを開業医が閲覧できるシステムだ。「検査の重複を減らして診療を効率化し、患者の医療費負担も軽減できる」と意気込んでいた。

 だが、政権交代後、事業の一部が執行停止。交付金は25億円に減額され、計画は泡と消えた。ある開業医は「個人情報保護の問題など克服すべき課題は多いが、医師不足の地域には必要だと思っていた。医療現場はいつも国の政策に振り回される」と憤る。

  ◇   ◇

 「地域医療の再生」を掲げる民主党政権の誕生後、診療報酬削減の流れは変わり、今年4月から0・19%増と10年ぶりのプラス改定となった。岐阜大の村上啓雄教授は「地方の中小病院にとっては恩恵は少ない。何よりも医師の絶対数が足りない」と指摘する。

 対策として、岐阜大は08年度から、医師免許取得後に県内で一定期間働けば授業料などを免除する「地域枠」を推薦入試に導入し、医師確保に努めている。しかし、高山市内の病院の院長は「一人前の医者になるには10年かかる。それまで地域の医療が維持できると断言はできない」と危機感を強める。県の担当者も「医師不足の問題は、地域の自助努力だけで解決するのは難しい」と厳しい現状を認める。

 山森院長は訴える。「過疎地域で働く医師に手厚い支援をしてほしい。高齢者が多く住む過疎地域の病院がつぶれるわけにはいかないのだから」【三上剛輝】=つづく

毎日新聞 2010年7月1日 地方版

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