長かった、感慨無量…。原告たちのそんな言葉が、今度の和解の性格を言い当てている。最高裁での和解である。解決の場としてこれ以上の舞台はないはずなのに、喜びの表情はない
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国鉄分割・民営化に伴う採用差別問題で、国労組合員らが旧国鉄の業務を引き継いだ独立行政法人を訴えた裁判である。約200億円を支払うことなどで和解が成立した。民営化から23年。不採用になった人たちはアルバイトなどで暮らしを立ててきた。平均年齢は56歳を超える。長い戦いの日々だった
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所属組合を理由にした採用差別があったのは、はっきりしている。中央、地方の労働委員会も繰り返し認定した。民営化の狙いの一つが“国労つぶし”だったことは当時の中曽根康弘首相も回想録で認めている。それでも原告は裁判で勝てず、和解に応じざるを得なかった。なぜか
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理由は分割・民営化の仕組みにある。当時の政府・与党は不採用の責任をJRに負わせない仕組みを考えだし法律にした。「胸のつかえがおりた思いがする」。和解が報じられたとき本紙に元組合員の方からの投書が載ったけれど、内心は複雑なことだろう
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今度の和解に当たり政府は、組合員のJRへの雇用について「努力する」との姿勢を明らかにしている。法律論ではJRには雇用する義務はない。そこに風穴を開ける責任は、いま政権の座にある菅内閣にある。