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きょうのコラム「時鐘」 2010年7月1日
もう一度、午前3時半からの試合中継を見たかった。夜の闇が薄らいで周囲が明るくなるに連れ、興奮と勝利への期待が高まる。朝日を浴びて万歳の喜びに浸る
先のW杯対デンマーク戦がそうだった。きのう勝てば、そんな準々決勝が期待できた。南アとの時差は、深夜や夜明けのサッカー観戦という珍しい楽しみを与えてくれた。太陽を応援席に招き寄せ、もう一度、日の出と歩調を合わせて元気になりたかった 日本の敗退は、夜中に決まった。粘りの延長戦があり、決着の時間はずれ込んだ。夜は深いが、真夜中はとうに過ぎていた。辺りには夜明けの兆しが漂っていた。まだ暗い夜か、と落ち込み、やがて日が昇る、と元気にもなれる。意味深長な幕切れだった 元気が出るタネを探すのに、ほとほと困っている昨今である。日本のサッカーが願ってもない時間を与えてくれた。観戦の土産は、夜明け前の惜敗。喜びと無念さとが詰まっている 世の中は、そんなものかもしれない。良いことずくめの夢も、立ち直れぬ失望もない。われらが本田選手から、絶妙のパスを送られたような気持ちになった。 |