もはや神風頼みしかなくなった
【金子達仁】2010年06月06日
ひどい試合(セルビア戦)、ひどい試合(韓国戦)と続き、やっと少しはマシな試合(イングランド戦)があったと思ったら、またひどい試合だった。
ひどかった試合に共通するのは、相手が比較的真剣だったこと。少しはマシだった試合は、日本に組織としてプレッシャーをかけようとする意志が相手になかった。では、9日後に当たるカメルーンはどんな戦い方をしてくるのか。イングランドのように調整気分でぶつかってきてくれる可能性は万に一つもない。
つまり、勝ち負けは別にして、南アフリカでの日本代表がひどい試合をしでかしてしまう可能性は極めて高いということになる。もはや日本にできることは、神頼み、神風頼みしかなくなった。万が一、いや、億が一にいい試合ができて、かつ勝利をモノにすることができたとしても、そこに必然性、論理性はなにもない。次の大会へ向けての財産、収穫となるものは、選手個々が得る経験以外はなにもない。
もう、すべてが目茶苦茶( め ちゃ く ちゃ)になってきている。
後半開始に合わせて、岡田監督は3人の選手を一挙に交代させた。本番でできる采配ではない。監督としては、禁じ手を使ってでも、最後の試合は勝って終わりたかったのだろう。自らが期待する選手として指名した本田のプライドをズタズタにしてでも、岡田監督は勝ちたかった。
ところが、それでもチームはなにも変わらなかった。3人の選手を変えてもサッカーに変化がないぐらい、日本代表の基礎能力は落ち込んでしまっていた。しかも、試合途中で6人のメンバーを入れ替えたにも関(かか)わらず、相手より早く息切れしてしまった。
選手たちには、まったくもって同情するしかない。彼らは、日本のサッカー史上最も貧弱な自信しか持てないまま、W杯へ臨むことになった。遠大な目標は掲げられたものの、そこにたどりつくまでの地図や、苦境を切り開くための武器は一切与えられなかった。昨年のオランダ戦で一度は与えられた「アーリークロス」という稚拙な武器でさえ、いつのまにか手の中から消えていた。
先制点を取ってもダメ。先制点を取られればやっぱりダメ。これで、一体全体どうやって、南アフリカでの戦いに期待しろというのだろう。
大会直前の監督更迭は、もちろん巨大なリスクを伴う。けれども、そのリスクが、これほどの状態に陥ってしまったチームの監督を続投させるよりも大きいとは、わたしには思えない。(スポーツライター)
▼金子達仁氏オフィシャルウェブサイト
http://www.tatsuhitokaneko.jp/