打つには打った。先発野手全員がヒット。12安打。5得点。2本塁打。そのすべてがむなしく響いた。
石嶺打撃コーチは「5点? 関係ないよ。こういう試合展開になれば、出てくる投手も違ってくる」とつぶやいた。得点を挙げたのは勝敗の行方がほぼ定まった7回以降。4番の和田が全員の思いを代弁した。「勝負どころで打たないといけない」。反撃があまりにも遅すぎた。
勝機はあった。スタンリッジの防御率は試合前の時点で5点台。今季は中継ぎで2度顔を合わせ、2イニングで3点を奪っている。くみしやすい相手。2回には和田の三塁打で無死三塁の先制機をつくったが、後続が凡退。3回も先頭荒木がヒットで出たものの、英智のバントミスなどで無得点。苦しむスタンリッジを乗せてしまった。
和田はスタンリッジについて「特殊な変化球があるわけでもない。いたってノーマルな投手」と語気を強めた。阪神打線が火を噴く前に、相手を攻めつぶせた試合。森野は「明日は第1打席から打ちます。それしか言えない」と吐き捨てた。2位阪神を直接対決でたたくべき状況で、一方的に敗れた事実はあまりにも痛い。
かすかな光明は見えている。不振を極めていた野本が一発。堂上剛、堂上直の兄弟はそろってヒットを放った。落合監督は「アイツらが頑張らなきゃ、誰が頑張る? みんな当落線上のヤツら。ある意味、こっちが(アピールを)待ってるメンバーだ。そいつらが何か結果を残していかないといけない」と語った。
若手の踏ん張りが、終盤に一矢も二矢も報いた。「打てなかったヤツらが5点取れた、ということを前向きに考えなきゃな。こういうゲームで先のことを見つけるのなら」と落合監督。明日を向くのなら、全く無意味な反撃ではなかった。
首位巨人とは今季最大の8ゲーム差に開いた。過去の中日の優勝で、最大差の逆転が同じ8ゲーム。つまり、ここが決壊寸前の“限界水域”だ。もう負けられない。 (木村尚公)
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