ギャンブル依存症(病的賭博)の国際的な自助グループ「ギャンブラーズ・アノニマス」(GA)が、県内で活動を始めて約1年。世界保健機関(WHO)が認定する精神障害で、根治は難しいとされるが、GAは定期的にミーティングを開き、本名を明かさずに体験を語り合うことで回復を目指す。GAの活動を通して、「ギャンブルをやめたい」という参加者の思いを取材した。【大久保昂】
GAは、1957年に米国で発足して世界各地に広がり、国内では現在約100グループが活動中。最大の目的はスリップ(再びギャンブルに手を出す)を防ぐことだ。会員制は採らず、回復を志すギャンブラーは自らの意志でミーティング会場に足を運ぶ。
県内のグループが活動を始めたのは昨年7月。約4年前から県外のグループに参加していたミノルさん(36)らが発足させた。6月上旬、ミーティング会場に男女8人が集まった。この日は、「自分にとって賭けない生き方とは!」というテーマで順に体験や思いを語る「テーマミーティング」。ミノルさんが口を開いた。
ギャンブルを覚えたのは学生時代。目標を見失い、キャンパス近くのゲームセンターに入り浸るようになった。「どうせなら稼げた方がいい」と、すぐにパチンコに移った。大学にほとんど通わなくなり、3回生を2度留年。家族の指示で退学し、定職に就いた。
「もうパチンコはしない」。そう心に誓ったが、ほとぼりが冷めると再び店に通い始め、競馬やロトくじにも手を広げた。周囲に知られないよう毎月定額を貯金し、ギャンブル資金は消費者金融でこっそり調達した。「矛盾しているでしょう。狂っていたとしか言いようがない」。4年前に家族に発覚した時、借金は約200万円に膨れ上がっていた。
GAのミーティングに参加するようになってから、スリップはない。しかし、「自分の弱いところは変わらない。何年やめても、次ギャンブルに行ったらゼロだ」と自らに言い聞かせるように語った。
今年に入って参加し始めたレオさん(35)は「私たちの経験は、家族や恋人にも言えない部分が多い。でも、相手が同じ体験者なら話せる」と説明する。依存症の治療に取り組む「藤井クリニック」(大阪市都島区)の精神保健福祉士、藤井望夢さん(37)は「スリップしないに越したことはないが、失敗してもあきらめずにやめる努力を続けることが一番大事だ」と指摘する。
毎日新聞 2010年6月30日 地方版