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[6626] ―魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女―(舞-HIME&舞-乙HIME×リリカルなのは 憑依) 
Name: 9009◆ff456860 ID:904e0b40
Date: 2010/04/25 12:34
始めまして。初投稿になります。この作品は舞-HIME&舞-乙HIMEとなのはStrikerSのクロス作品で、もしなのはとティアナに舞-HIME&舞-乙HIMEの声つながりのキャラがそれぞれ入れ替わる形で憑依したら?と考え、形にしてみました。

設定的には舞-hime側については基本TV版ベースに時たま漫画版の設定も織り交ぜる形になります。
何分このようなSSを書くのは初めてなので、文章力不足が出るところが多々ありますが、暖かい目で見守っていてください。

物語が破綻気味になっていたので修正中です。これからの参考にさせてもらいますので遠慮ない感想をどうぞ。久しぶりに最新話を更新しました今のところ舞himeシリーズ無双なのでなのはが軽く見られるのが嫌いな方は要注意。




[6626] ―魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女―第一話
Name: 9009◆ff456860 ID:904e0b40
Date: 2009/10/16 22:53
―‘真‘暦75年。機動六課設立から数ヶ月が経過し、各隊員の錬度も確実に上昇していた。
その内の一人の「ティアナ・ランスター」はここ2,3日連続して同じような夢を見るという事態に直面していた。その夢は現実感溢れるもので、目が覚めても夢から抜け切れないといった感覚を覚えるのである。
「またあの夢……、これで3日目よ?予知夢じゃあるまいし、こうも続くと不気味ね」
目覚めの悪い夢に愚痴をいいつつ、部屋のカーテンを開き朝日を体いっぱいに浴びる。
「…何も起きなければいいんだけど。まさかこの痣のせいじゃないでしょうね?」
彼女は服を脱ぎながら鏡で体にある一つの痣を確認する。―彼女はまだ知らなかった。
まさかその痣が自分の運命を劇的に変えることになるとは……
-この物語は我々の知るミッドチルダに極めて近く、限りなく遠い世界で起こった出来事である…‐

      魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝
     -HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女-

              ―第一話「覚醒」―

―ミッドチルダ 某所 訓練場
「あれどうしたのティア?凄く眠そうだよ」
彼女のパートナーであり、数年来の親友であるボーイッシュな風貌の少女「スバル・ナカジマ」が尋ねてきた。ティアナは不機嫌な表情で答えた。
「変な夢のせいで目覚めが悪かったのよ……」
「変な夢?」
「そう。なんかこう妙に現実感があるっていうか……、まるで夢の出来事を知っているみたいな感じがするの。でもどう考えてもありえないのよ」
「ありえないって?」
「映る風景が地球のそれなのよ。私は前の出張で始めて地球に行ったのよ?そんな事あるわけじゃない」
「確かに」
彼女はミッドチルダ出身であり、地球に在住した事など一度も無いはずである。しかし夢では明らかに地球で暮らしているとしか思えないシーン、魔法とは違う力を行使して「何か」と戦っている映像もあった。これはいったいどういうことなのか。
―なのはさんに相談してみようか?
ティアナはそう結論づけると訓練を開始すべくウォーミングアップを始めた。

それから10分ほどして部隊長の「高町なのは」が息を切らせながら走ってきた。
「ハァハァ……みんなゴメン、私としたことが寝坊しちゃって……」
「どうしたんですか?なのはさんらしくも無い」
「変な夢を見ちゃってね。それで……」

―変な夢?それってまさか―?
ティアナはなのはも自分と同様に変な夢にさいまされているのかとスバルとなのはの会話に聞き耳を立てる。
「妙な現実感と言おうか、変な感覚なんだよね。夢の中の出来事を知らないはずなのに、「知っている」と感じちゃうの」
「へえ……」
「もしかして体にある痣のせいかなと思っちゃって」
「痣……ですか?」
「うん。家のお父さん達曰く『生まれた時からあった』っていう奴でね、これがまた変な形で……」
そこまで聞いたあたりでティアナの憶測は確信へと変わった。

「あの……なのはさん。それってまさか……」
「えっ?それじゃティアナも持ってるの……?あの「痣」を」
「……はい」
ティアナの真剣な表情になのはも言葉の意味を悟ったようで、
「訓練が終わったら私の部屋に来てくれる?」
との言葉を残し、その場から離れた。同時に訓練の開始を告げられティアナ達もそれに従う。
その後、訓練は午前中いっぱいに及び、終わる頃には皆クタクタに疲れ果てていた。
「今日の訓練はこれまで。午後はゆっくり疲れを取ってね」
「は、はぁ~い…」
ティアナはスバル達と別れると、隊舎内のなのはの私室に向かった。
ドアの前に着くとひとまずロックを数回し、「なのはさん、私です」と声をかける。すぐ応答があり、ドアの向こうから声が響く
「あ、ドアなら開いてるから入っていいよ」
「失礼します」
中に入ると、なのはが制服から私服に着替えてくつろいでいた。
「立ち話もなんだから椅子にでも座って楽にしていいよ」
「あ、それじゃ…」
ティアナが椅子に座るのを確認するとなのはは話を切り出した。
あ、それじゃ…」
ティアナが椅子に座るのを確認するとなのはは話を切り出した。
「…ティアナ、あなたもあの夢を見たの?」
「はい」
ティアナはなのはの問いに頷く。そして彼女は自分がどのような夢を見たのか説明を始める。
「私の場合は自分が地球で暮らしていて、それも学校に通っているような感じの夢なんです。普通に学園生活を送って、でも時々フリードみたいな火竜を呼び出して『何か』と戦う―みたいな」
ティアナは掻い摘んで夢に見たことを説明する。それに応え、なのはも自分が見た物がどういう物かを話し始めた。

「へえ…。私はそれとはちょっと違う感じで、大学院生やりながら高校の臨時教師をやってるんだけど、戦いが起こると槍と斧を混ぜた感じの武器を持って、それでサイのような物を呼び出す。それもどこぞのスーパーロボット物の主人公みたいに名前を叫んで…って奴」
「でも2人して似たような夢を見るなんて聞いたことあります?」
「普通はこんなこと無いね。何か起こる前兆かな…?」
「どうします?」
「てっとり早く今日ここに泊まって、もう一回同じ夢を見るか確かめてみる?」
「いいんですか?もしフェイト隊長に知られたら殺されますよ?私」
「それは私がなんとか説明するから大丈夫だよ」
なのはは笑顔で答えるが、ティアナの不安はどうしても拭えなかった。
(―でもフェイト隊長って百合気味なんだよねぇ…噂だと小学校時代からだとか…下手するとザンバーで斬られそう)
六課が設立されて以来、なのはには親友であり、同僚でもあるフェイト・T・ハラオウンとの百合疑惑が浮上していることを彼女は知っていた。それを警戒しての杞憂であった。
「一応スバルに連絡いれておきます」
「わかった」
しかしそんなティアナの不安をよそに時間は進み、とうとうその日の夜がやってきてしまった。
「……来てしまった」
ため息をつきながらベットで寝る準備を進め、寝間着に着替える。
「さて寝るよ?準備はいい?」
「一応OKです」
「じゃお休み~」
なのはがベットに入ったのを確認すると自分もベットに入り、目を閉じる。

―うぅん…今度は何?
今回の夢の中の映像は戦っている映像のようだ。火竜を召喚し、軍艦と戦闘を行っているようである。
主砲の連射を回避し、翼で敵艦の船体を切り裂くも、別の船から対空ミサイルが発射される。
―危ない!!
と思ったのもつかの間。音速以上の速度で飛来するミサイルをフィールドのような物で防ぎきる。
「ちょっと!あ、危ないじゃないの!」
―ちょっと今の直撃だったじゃない!?それを防ぎきるなんてどういう強度のバリアよ!?
ティアナはこのいささか目玉が飛び出そうなくらいの衝撃映像に目が飛び出そうになった。
仮にも飛行機を落とせる威力を持つ兵器を生身の人間が防ぎきるなど、どう考えてもありえないからである。光が走り、夢から覚める瞬間にその少女が自分に微笑んだように見えた。そしてどこか自分と似ているような感覚を覚えた。

「ま、待って!あなたの名前を…!」
「……鴇羽、鴇羽舞衣よ。また会いましょう、ティアナ」
それが最後の光景だった。光が辺りを覆っていく。
気がつくとベットから飛び起きていた。カーテンからの日差し具合からちょうど夜明けのようである。

「はあ、はあ…。あの子…たしかに私の名を『言った』。どういうことなの……?」
ティアナは夢の中の少女「鴇羽舞衣」の事が気になっていた。「舞衣」という名から言って明らかになのは達と同じ地球人であろうが、何故自分の名を知っていたのか。それがどうもひっかかるのである。

隣のベットでは、なのはが悪夢にうなされているようで、額からものすごい勢いで冷や汗を出しながら悲鳴をあげてのた打ち回っている。
「う、うああああああっ・・・・ッ!」
「ち、ちょっと!大丈夫ですか!?」
ティアナはなのはの尋常ではない様子に慌てて声をかける。
「ハッ!?」
声に反応したのか、なのはは額から物凄い勢いで冷や汗を噴出しながらベットから飛び起きた。
「テ、ティアナ…?わ、私…」
額の汗をパジャマの袖で拭いながら、なのはは青ざめた表情を見せる。
「ひどくうなされていましたけど、大丈夫ですか?」
「う、うん……。なんとか…」
なのははベットから立ち上がるが、その足取りは頼りなく、真っ直ぐ歩く事すら覚束ない。そんな彼女を見かねたのか、ティアナはなのはを支えるようにしながら洗面所まで連れて行く。
「あ、ありがとう」
「いったい何があったんですか?こんなにまでなっちゃうなんて…」
彼女に何があったのか。それは夢で垣間見た光景の事を語る必要がある。
それは自分がある所で奇病を発症し、それを治癒させるために高度な科学技術で作られた産物を手に埋め込むも、代償に18歳以降の老化が発生しない体となってしまった事、その体をもってテロ行為を働いていた事を‘見た‘のだ。それは決して争いを好まない本来の彼女にとっては信じられない光景だった。だが、ある少女との出会いが彼女には悪夢の中のただ一つの救いとなった。「アリカ」と言う名で、不思議な能力の持ち主との事だ。
おかげで精神的苦痛は和らいだもの、ショッキンクな夢であることには変わりない。そして彼女が最後に見たのは自分に似た姿をした「ミドリ」、もしくは「杉浦碧」と名乗る若い女性の姿であった。
-どういう事?あの人の姿は私によく似ていた…その上、ほとんど同じ声をしているなんて、何かの悪い冗談よね……?
なのはは今回の気味が悪い悪夢を振り切りたい気持ちで頭の中がいっぱいになっていた。
連続して続く上に今回の凄惨な光景を見せられては、なのはで無くても欝な気持ちに陥ってしまう。彼女は職業柄ゆえ、常人よりは耐性はあるが、やはり見ていて気持ちいい物では無い。気分を切り替えるためにティアナに体を支えてもらいながら、顔を水で洗う。
―それにフェイトちゃんが任務で入手したって言うロストロギアが何やら凄そうな代物だっていうけど…、ユーノ君が研究に回したいとか言ってたけど…
そのロストロギアのことも気がかりだが、今回である憶測が浮かび上がってきた。それは夢に出てきたのはおそらく前世、あるいは平行世界の自分の姿かも知れないと言う事である。管理局がいくつもの世界を事実上の支配を行っている以上、平行世界と言う線はあり得るかも知れない。しかし体の痣の形や位置までまったく同じと言う事はいくらなんでもありえるのか?
果たして彼女の杞憂は当たるのだろうか。それはまだわからない。


―その日の午後、時空管理局地上本部にて、調査のため本局に移送予定のロストロギアが管理担当のとある局員のミスにより誤作動を起こし、爆発を起こした。爆発規模そのものは小さかったため、さほど問題視されていなかった。しかしこの爆発を引き金に、機動六課の「高町なのは一尉」と「ティアナ・ランスター二等陸士」が訓練中に意識を失って倒れたのであった。この事件は平和な日常を送っていた機動六課を一転してパニックに陥らせた。


―六課隊會 医務室
「おいシャマル!!なのはは…なのははどうなちまったんだよ!?」
機動六課の隊長陣の一人であり、一見すると子供のように見える少女-「ヴィータ」が半分涙目になった表情で白衣を着た女性「シャマル」に詰め寄る。
「ヴィータ、落ち着け!」
それを傍らに居る十代後半ほどの女性―「シグナム」が制止する。
「は、離せ、シグナム!!あの時の二の舞はもうごめんなんだ!」
ヴィータはかつて、なのはが撃墜された現場に居合わせている。彼女が倒れたと聞いた時、脳裏にその時の光景がよぎったのか、顔面蒼白になって真っ先にすっ飛んできたのである。
「2人とも、脳に異常はないわ。ただ何故突然意識を失ったか皆目見当がつかないの」
「よ、良かった……」
奥を見ると、なのはの同僚であり、10年来の親友である少女「フェイト・T・ハラオウン」がベットの間にある椅子に座って、心配そうな表情でなのはを看病している。隣ではスバルがティアナに付き添っている。
「それで2人が目覚める可能性は?」
「今のところはなんとも言えないわ。しばらく様子を見てみる」
「頼むぞ」
シグナムは取り乱しているヴィータをなだめつつ、2人の容態が大事に至るほどではない事に、ひとまず安堵の表情を浮かべる。
「しかし何故急にこんな事に?」
「地上本部に問い合わせてみたら同時刻にロストロギアの爆発事故が起こっていたことがわかったの。もしかしたらそれと何か関係があるんじゃないかって」
「私のほうでも調査してみる。なのは達を頼んだぞ」
そう言うとシグナムはヴィータを引き連れて医務室を出て行った。
彼女達が居なくなった医務室でシャマルは打開できそうにない現状にため息をつきつつ、なのは達の意識が戻る事をひたすら祈った




―うう…何が起こったの?ここはいったいどこ…?
『気がついた?この空間はあなた自身の意識の中よ』
気が付くと目の前にあの女性が立っていた。その姿は服装を除けば、夢とまったく一緒であった。ただどことなく優しさを感じさせる表情をしているのが夢との唯一の違いだ。
『あ、あなたは夢の…!』
『そう。あたしは杉浦碧。あなたの在りえたもう一つの姿』
『もう一つの姿…?』
『そう。数多ある‘平行世界‘の中でも、‘高町なのは‘として生まれなかった世界の…ね』
『じゃあこの体の痣のことは知っていますか、碧さん?」
なのはは体の痣を碧に見せる。すると碧は意外そうな表情を見せた。
『その痣…、この世界でのあなたは持っていたのね』
『どういうことです?』
『それは私たちの世界じゃ‘HIME‘と呼ばれていた人間に共通して存在する痣だよ』
『‘HIME‘?』
『そう。わかりやすく言うと高次物質化能力を持つ人間の事。例えばこんな風に…』
そういうと碧は腕に槍と斧を混ぜたような武器を何もない空間から生成してみせた。
『えっ!?』
『これはまだ序の口。見せてあげる、これがHIMEの本領!…いでよ!鋼の牙、鍔天王ぉ!!』
するとサイの形をした兵器のような物が召喚され、碧の傍らに着地する。
『これが私の‘チャイルド‘『鍔天王』。ちなみにチャイルドってのは自分の一番大切な人間を糧にして召喚する物ってわけ』
『じゃあもしそれが破壊された場合はどうなるんです?』
『…順応早いね、なのはちゃん』
碧は意識上という状況にも関わらず、順応が早いなのはに感嘆の表情を見せた。
『こういう事には慣れっこですから。魔法少女やってる間に、気がついたらもう19歳だし、なんちゃって軍隊の将校だし…(泣)』
なのは当人も半分落ち込んだ声で答えた。よっぽど高校や大学に行かなかった事への後悔をすると同時に、自分が無駄に年齢を重ねてしまった事実を受け入れたくないのだろうか。
これには碧も哀れに思ったのか、慰めに入る。

『まあまあ、なのはちゃん落ち着いて』
『どうして高校行かなかったんだろう私…内部推薦でいける成績だったのに…』
『まだやり直しは効くって!それに19歳だと思うからいけないんだよ。私のように心は常に17歳!…と思えばいいんだよ』
碧は大学院の2年生なので、実のところ実年齢は24歳に達している。しかしそうには見えないのは外見や精神年齢が若々しいためである。
「そうですか~?」
なのはは未だ落ち込んているようで、暗い声を出した。
『そうだって~。そんなに高校行かなかった事を後悔してるのなら、いっそのこと立場入れ替わってみる?』
『入れ替わるって?』
『マンガとかで、たまに人格や魂が入れ替わる―なんて話を見るでしょう?ようするにあれの要領』
『…良いんですか?』
『まあね。私は結局自分の運命を変える事が出来なかったけど、あなたならあの運命を変えることができるかもしれない…。あ、それとチャイルドが破壊された場合は自分の一番大切な人を失う事になる。そのせいで精神崩壊を起こしてしまった者もいたけど。挙句の果てに、互いに疑心暗鬼になって争ったりもした…、あの争いを止められなかったのは後悔してるよ。まあ…今となっちゃ、いい思い出だけどね』
―そう。彼女が経験した戦いではHIME同士の争いが起こった結果、自身を含めた半数以上が敗れている。ある者はチャイルドを破壊されたり、またある者は自ら消滅を選んだりした。その経験から、彼女はHIME達の凄惨な運命を変えたいのである。たとえ平行世界での自分と同一の存在である「なのは」の力を借りてでも。
『碧さん、あなたは…』
なのははそんな彼女の気持ちに気づいたのか、悲しげな表情を見せる。
『ごめんね。こんな話をしちゃって…』
『それは私も同じですよ。魔法と出会ってなければ今頃は普通に大学生やってて、フェイトちゃん達と出会う事もなかったかもしれない…だから』
彼女は次の瞬間、決意の言葉を発した。
『碧さん、あなたに私の肉体を‘貸します‘』
『ありがとう。その体、大事に使わせてもらうよ。ただ間違っても精神が入れ替わったのは心を許した人間以外には言わない事。下手したら精神病院に入れられて隔離されるかもしれないしね』
『わかりました』
『…成功を祈ってるよ』
「碧さんこそ。ところで記憶はどうなるんです?」
「記憶自体は引き継がれると思うけど、まあやってみないと始まらない」
「何ですかそれ~!』
『まあ気を取り直して…行くよ』

互いの姿が対称的に入れ替わる形で交差していく。そして完全に最初に居た位置と反対になると同時に辺りに光が走る。最後の瞬間、2人は互いに視線を交し合った。
―お互いうまくいく事を願って。 



-のは、なのは、お願い目を覚まして…!
「う…、こ…?」
はっきりとしない意識で辺りを確認すると、ベットに寝かされている自分に泣きじゃくる一人の少女の姿が飛び込んできた。
たしかこの子はたしか…なのはちゃんの親友の一人の…「フェイト・T・ハラオウン」って言う…。
―そうか、私は今『高町なのは』なんだ…。碧は改めて自分がなのはと入れ替わった事を実感すると、とりあえずフェイトを安心させるために声をかける。
「フ、フェイトちゃ…ん?」
「な、なのは!良かった…気がついたんだね?」
「う、うん…。まだ意識がはっきりしないけどね」
「心配したんだよ?もう目を覚まさないかと…」
「…ごめん。ところでフェイトちゃん、私あれからどのくらい寝てた?」
「一週間くらいかな?」
「い、一週間!?」
思わずベットから飛び起きて毛布を盛大に吹き飛ばす。
「…そうだ、ティアナは?」
「ティアナは2日くらい前に意識を取り戻して、今は職務に復帰してるよ。それと言付けを頼まれてる」
「それでティアナは何と?」
「‘目を覚ましたなら一回私の部屋に来てください。ただし夜に‘と。何かいつもと違う感じがしたから変だなと思ったけど」
「ありがとう。後で行ってみるよ」
不意にドアがバタンと言う音と共に勢いよく開けられ、六課の他のメンバーが駆け込んできた。(はやてなどを除いた非番のメンバー達のみだが)
「なのは(さん)が目を覚ましたって!?」
非番のメンバーが全員駆け込んできたが、次の瞬間、彼らが見たのはベットから身を起こしたなのはに抱きついているフェイトの姿であった。
「失礼しました~」
「邪魔をしたなテスタロッサ」
「2人で楽しんで下さい~」
などの一言を残して、全員がその場を嵐のように立ち去っていった。フェイトは「み、みんな待って!これは…」と必死に説明しようとしたが、状況は時すでに遅しであった。
ドアが閉められた瞬間、フェイトは悲しみとは別の意味の涙を流した。
「ああ~誤解なんだって~!」
これには碧も心の中で(うわあ…フェイトちゃんって‘あの子‘のようにガチレズ?まっ、
うすうすそんな感じしたから、まさかとは思ったけど…)と思ったが、それが思わず表情に出てしまっていた。
「なのはは信じてくれるよね?」
「う、うん。信じるって…多分だけど」
「う、うわぁぁぁん~!(涙)」
この後、なのはは30分に渡ってフェイトを慰めていたと、事情徴収を行った部隊長のはやてに対して証言したとされる。
ちなみにこの事件(?)の後日、フェイトとなのはの百合疑惑が部隊中の噂となり、彼女は部隊の全員に必死に弁解して回ったとか。(もちろん、噂を流した人物は一週間後にバルディッシュ・アサルトの錆にされたとの事)


-夜遅く、フェイトの慰めを終えたなのはは、ティアナとスバルの私室の前まで来ていた。
「―ティアナ?」
「来てくれたんだね」
「え?」
部屋の前にはティアナが立っていた。彼女の服装はラフな格好だった。ただし両腕と足にどこかで見たような宝輪をしている以外は。
「変な感じだけど…久しぶり、碧ちゃん」
「その喋り方、もしかしなくても舞衣ちゃん!?」
彼女はあまりの衝撃に驚きの声を上げた。まさか自分だけでなく、舞衣までもが別人の肉体を得る形でこの世界にやって来ているとは。思いもしなかった出来事だが、これで見知らぬ世界で孤独な人生(?)を送らずにすんだ事に胸を撫で下ろした。
「でもなんでこの世界に?」
「あたしは向こうから話を持ちかけられたの。『強くなりたいから』って感じで、ほとんど場の空気となりゆきでこうなったわけ」
「ふうん…、なるほどね。ん…?そういえば髪型変えた?」
「ツインテールじゃ何かとアレだしね。前の世界の時の髪形に戻してみたんだけど」
「見事にあのアホ毛も再現してる…どうやったの、これ?」
「それは聞かないことにして」
「そ、そう。ところで話は変わるけど、これからどうする?」
「う~ん。こんな馬鹿げた話を信じろって言うほうが無理だし、かといって下手すると精神異常を疑われる…まさに八方塞がりって奴」
「それぞれの姿として行動するにしても、記憶だけじゃどうにもならない部分はあるだろうし…かといって下手にチャイルドやエレメントを使うわけにもいかないしねぇ…」
「辛いなぁ…。せめて命がいれば‘マテリアライズ‘できるのに…」
‘マテリアライズ‘とは、正確には舞衣達の時代から300年ほど経過した未来で用いられるはずの高次物質能力の発動コードである。何故その時代には存在しないはずの彼女がこの言葉を知っているのか?
それは300年後の世界に彼女と瓜二つの容姿と同名を持つ人物が存在していた事が原因である。長い年月の間に歴史が歪められたために舞衣の直系の子孫かは不明であるが、その人物の記憶も有したがための発言であろう。
「体にナノマシンを埋め込んでないから無理じゃない?」
「あぁ―っ!そうだったぁ…」
事実を突きつけられたティアナは肩を落とした。
「あれは高次物質化能力のコピーみたいなものだからね。それに出来たとしても、する必要性なくない?能力的にオリジナルとも言える奴を持ってるわけだし」
彼女の言う通り、未来の世界の高次物質化能力は‘乙式‘とされ、HIMEの能力を基にして作られた産物である。それゆえに多くの制約が存在する。
例えば契約を行った者が認証を行わないと力を行使できないなどである。それらの制約が一切ないHIMEの方が戦力的には優れていると言える。
「まあそうだけど…」
「それにあの世界じゃ私の子孫だが、転生体だが知らないけど…がテロ組織の首領やってたけどさ。あっちは永遠の17歳なんだよねぇ…羨ましいよ。」
これは完全になのはの年齢がすでに19歳に達している事への愚痴と‘17歳‘への羨望だった。しかし無いものねだりをしても始まらない。
「碧ちゃん、話が変な方向にずれてるよ…」
ティアナ(舞衣)はなのは(碧)の発言に呆れつつもとりあえず辺りを見回して誰か近くにいないか確かめる。
「ふう…消すの忘れてた」
念のため腕に展開していた宝輪を消す。
「エレメント出したままだったの?」
「その方がわかりやすいと思って…」
2人はこの後も話を続け、結局「HIME」の能力はしばらく隠し通す事とそのために魔法の特訓を共同で行うことで一致した。現在の2人は魔法に関してはまったくの素人なのだから、そこからばれる可能性があるからである。時間的に夜明けに近づいたのでそっと部屋に戻って制服に着替える。
「新しい人生か…あの子達もうまくやってるかな?」
「さあ?それは神様にしかわからない事だからね。あたし達はあたし達でいきましょう」
「いいのかなぁ?」

―こうして、なのは、ティアナ、碧、舞衣は色々な原因が重なった結果ではあるが、思わぬ新たな人生を送ることになった。入れ替わった4人は元の立場とはとまったく異なる視点でそれぞれの戦いにどう身を投じるのだろうか?
       ―次回、「Dream☆wingなの!」―


  

あとがき
こんにちわ、601です。緊張して指が震えてます~。こんな感じでいいのかな?ではまた。








[6626] ―魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女- ―第二話
Name: 9009◆ff456860 ID:904e0b40
Date: 2009/10/16 22:53
なのはと精神が入れ替わった杉浦碧は自分と同じ境遇になった鴇羽舞衣と再会、お互いのこれからを案じつつもしばらくはそれぞれの肉体の姿として生きることを選択した。そして2人で魔法の特訓を行う事になった。


―魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女― ―第二話「Dream☆wingなの!」―

-早朝 ミッドチルダ 訓練場
「じゃ、次行くよレイジングハート」
彼女は自分の空間認識能力を試すべく、とりあえずなのはが得意としていた魔法の一つ「ディバインシューター」を足元に置いた石ころに対して使用してみた。
「ええとリリカルマジカル…だったけ?福音たる輝き、この手に来たれ。導きのもと、鳴り響け、ディバイィン…シューターぁ!(長ッ!)」
多少掛け声のイントメーションが変だが、それでも発動した。
「……いけぇ!」
なのはと比べるとまだまだ誘導の仕方が下手ではある。それでも彼女独自のやり方を模索していた。ちなみに碧はどちらかと言うと近接格闘戦が主体で、なのはとは真逆のタイプである。そのため射撃はあくまで牽制の手段の一つにすぎないのだが、贅沢はいってられない。この肉体の元の持ち主―高町なのはは『砲撃の名手』とされているのだからその名誉に恥じないようにしなければ。
「ん~…あ、そこ!」
ディバインシューターの魔法弾を操り、それで空中に打ち上げた石を粉砕する。
「ふう…初めてにしては上出来かな?」
ティアナのほうに視線を移してみると、武器が2丁拳銃であることにどうも違和感を覚えるようで命中率そのものはいいのだが、苦労しているようである。
「うぅ~ん、なんかしっくりこない…」
「どうしたの?」
「こういう類のって、なつきが使ってたからどうもね…」
「たしかに射撃はなつきちゃんの専門だったからねぇ…。デュランとかそうだし」
舞衣の言うとおり、拳銃の扱いなどは久我なつきの専門だったので拳銃型の武器を使うのには抵抗を覚えるのだろう。


「違和感を覚えるってのは一理ある。私も魔法が駄目なら鍔天大王を使うつもりだけどね」
「……大丈夫なの?」
「本当にヤバイ時じゃなければ変形させる気はないよ。アレ使ったら下手すると辺りの建物が吹き飛んじゃうからね」
「まあカグツチを召喚してるあたしも人の事言えたもんじゃないけど、アレばっかりは……」
舞衣は碧のチャイルドの変形機構の内の人型形態が持つパワーを恐れているようである。
しかし彼女とてエレメントさえ展開していれば、生身で宇宙空間での活動が可能である時点ですでに通常の人間を超越している。
チャイルドのカクヅチにいたっては衛星軌道上からの砲撃をまともに受けてもびくともしない防御力と凄まじい火力を備えているので、その辺はお互い様であるのだが。
「舞衣ちゃんのいじわる~!たしかにあれの事は気にしてたけどさ……」
よっぽど気にしていたのか、碧はズウンと落ち込む。
「まあまあ…。でも魔法に関しては一応肉体に記憶があるから扱えない事はないんだけど、やっぱり‘本人‘には一歩及ばないのね。」
「たしかに肉体的には本物でも、精神そのものはまったくの別人になってるわけだからね。当然と言えば当然か。」
彼女の言うとおり、体の動かし方をよく理解しなければ肉体のポテンシャルを発揮する事は叶わない。碧や舞衣のように他人の肉体の身体能力を100%発揮できているのはごく珍しいケースなのである。しかし固有技能である魔法の再現まではうまく行かなかったようで、例えばなのはが切り札として用いていた砲撃魔法のスターライトブレイカーは精度・威力共に通常時の60%にまで落ちているし、何故かディバインバスターとエクセリオンバスターの強弱が逆転しているなどの珍現象も起こっている。
(これは元の世界で碧が個人的になのはシリーズのDVDを見ていたのが最大の理由。A‘Sのエクセリオンバスター=一撃必殺の攻撃なイメージがついていたために起こったものと思われる。)
「でも、まさかこんな特訓をする事になるなんて思ってもなかった」
「そうそう都合のいい事なんて起きないってことかもね。ためしにスターライトブレイカーを撃ってみたけど、チャージが長いわりには威力が低い…あれじゃ実戦で使えるかどうか…」
―これも高次物質化能力を引き継いだ代償なのだろうか。と2人はため息をつきながら再び別れて特訓を再開した。


模擬戦を開始した時間が早朝だったため、2人が隊舎からいなくなった事に気づいたのは彼女達に近しいごく少数の人間だけであった。
「あれ?シグナム副隊長、ティアを知りませんか?」
「と言う事は…ティアナもか?」
「どういうことですか?」
「実はさっき、テスタロッサからなのは隊長を探してくれと頼まれてな。ちょうどいい。スバル、お前もついていくか?」
「はい!お供させてもらいます」
2人はひとまず手当たり次第に2人が行きそうな所に向かった。
とはいえ早朝なので行くところは限られているはずだ。
コンビニやカラオケボックスなど、2人が行きそうなところを1時間ほど探してみたが、どこにも2人の姿は見当たらなかった。
「どこにも見当たらない?と、なるとあそこしか無いな」
「訓練場ですか?」
「これだけ探してもいないと…なるともうそこしか考えられん…行くぞ」
シグナムはそう言って駐車場に止めてある公用の自動車のエンジンをかける。
「そう言えば…車の免許とったんですね?」
「いつまでもテスタロッサに頼るわけにはいかんからな。隊長達には内緒で教習所に通って、つい2週間前にとったばかりだ」
「えええ!?…事故らないですよね?」
「何故そんな当たり前のことを聞く?ここまで来れたのだぞ?心配するな」
「余計心配ですよ~!」
スバルの心配をよそにシグナムはエンジンを始動させ、シフトレバーを操作するとほぼ同時にアクセルを吹かし、急発進した。
同時に「ひぃぇえええ~!と、止めてぇ…」と悲鳴が上がったのは言うまでもないだろう。


―先ほどより30分ほど後
「いったぁ…やっぱりディバインバスターを撃つんじゃなかった…」
碧は試しにディバインバスターを試射してみたところ、地面に穴が開き、BJを纏っていなかったためにその穴に落ちてしまったのである。しかも穴が塞がってしまった。
「ちょっと!大丈夫!?」
「大丈夫!こんな穴…!」
そう言うとなのははバリアジャケットを纏う。そして右手にエレメントのハルバードを生成し、それをデバイスの代わりに持つ。
「全力必中!!…突貫ッ!!」
飛行魔法を使いつつ、ハルバードを振るって片っ端から瓦礫を薙ぎ払っていく。5分後には再び大穴を開けて脱出に成功した。
「ふう…死ぬかと思った」
「まったく無茶やらかすんだから……」
「にゃはは~この程度の事なんて無茶のうちに入らないって」
碧はハルバードを杖代わりにして立っている。顔には出さないもの、相当疲れているようである。そんな彼女の様子に舞衣は心配そうな表情を見せる。
「朝からこんな調子じゃ先が思いやられる……。一人だけじゃ効率悪いし、とりあえず模擬戦でもやる?」
「そうだね。とりあえずやってみようか!」
協議の結果、模擬戦はエレメント(もちろんチャイルドは不可)使用可、魔法に関してはなんでもありの条件となり、それぞれ、所定の位置に付くと同時にデバイスを構える。
ちなみにティアナもすでにBJを纏い、さらに腕には宝輪が展開されている。
そして一瞬の静寂の後、2人の戦いの火蓋が切って落とされた。


「おおおおおっ!」
先手はティアナが取った。クロスミラージュをダガーモードにし、それを構えてなのはに斬りかかる。
ちなみに史実ではティアナはこの時点ではこのモードをまだ使用していないが、あえて使用したのはDVDを見ていて、本編であまり出番が無かったのを哀れに思ったのだろう。しかしなんで拳銃型なのにこんな無駄なモードがついているの?使いづらいったら!と思わず心の中で愚痴ったのは言うまでもない。
「くっ…この間合いじゃこっちが不利か!」
なのはは斧槍で迎え撃つが、武器の性質がゆえにダガーでの攻撃に対処しきれていない。こうする間にもダガーの魔力刃が連続で繰り出されてくる。
(あれ?舞衣ちゃん意外にノリノリだ~!まああたしにはあの「技」があるけど)
押されてはいるが、接近戦での経験はこちらに分がある。攻撃を受け流しつつレイジングハート・エクセリオンを出現させ、左手に持つと同時に攻撃魔法の名を叫ぶ。
「もらったぁっ!!―エクセリオォォォン…バスターァァァッ!!」
その叫びに答えるようにレイジングハートの先端部分に桜色の閃光が収束され、魔力増幅用の薬莢が何発か使われ、排出される。
「ま、まずいっ!!」
危険を察知したティアナは回避不可と知ると否や、とっさに手をかざしてエレメントの力を用いて障壁を展開した。それとエクセリオンバスターが撃ち出されたのはほぼ同時であった。エクセリオンバスターの閃光はティアナを障壁ごと包み込み、吹き飛ばす。
それでもティアナは懸命に足を踏ん張り、4mほど吹き飛ばされるが、体勢を崩してはいないのはさすがである。
「ハア…ハア…さすがにこれは貫通できなかったようね…」
ティアナはすぐに反撃体勢を取り、クロスミラージュを構える。
「…だったらこっちはこれで!クロスファイアー…!!」
現在のティアナが持ちえる中で、実戦に耐えうる威力を持つ物はこれしか無い。
この魔法も本来は中距離用の誘導魔法であり、誘導可能な弾の数も通常時より減少しているが、一か八の‘賭け‘で発動させた。
―弾を防御が弱い一点に集中させれば、いくら碧ちゃんが防御力が高くても!
ティアナは乾坤一擲の一撃を放つつもりである。魔力を増幅させ、六発ほどの空薬莢がクロスミラージュから排出される。
もちろんなのはも座してそれを見ているわけではない。いつでもアクセルシューターで迎撃を行えるようにする。
「そうはいかないよ!アクセルシューター…!」
『シュートぉっ!!』

お互いに撃ち出した誘導弾がガ○ダムでいうところのオールレンジ攻撃さながらにぶつかりあう。
誘導の精度は互角といったところで、お互いに捌き切れなかった弾がバリアジャケットに焦げ目を作り、制御を外れた流れ弾が近くのビルの一室を崩壊させたりする。
煙が晴れると、お互いにバリアジャケットがかなり破損(袖がなくなったり、派手な焦げ目がついている)した様子が確認できる。
「まだだよ…このままじゃ終われない!」
なのはは右手にハルバードを、左手にレイジングハートを持って構えを取る。
「…上等ぉっ!こうなったらとここんやってやるわ!!」
ティアナもクロスミラージュを持ちながらエレメントの宝輪を高速回転させ、構えを取り直す。
二人は一種の力試しのつもりで行っていた模擬戦がいつの間にか本気のぶつかり合いに変わっている事を気づかないでいた。
「おおおおっ!!」
「でぇぇりゃあぁぁ!!」
互いが持つダガーとハルバード、そしてクロスミラージュとレイジングハート。2つの武器とデバイス、そして戦う女性同士のの意地が真っ向からぶつかりあった。

-シグナムは訓練所に到着するなりドリフトを使った荒っぽい駐車のしかたで車を止め、スバルと共に外に出てみる。
―すると信じがたい光景がそこにあった。
‘なのはとティアナがデバイスと同時に何かの武器を用いて戦っている‘のである。
「あの二人が模擬戦?珍しいな」
「でも模擬戦にしては目が本気ですよ?」
「…フッ、まるであの時のようだな…そうだ、ちょうどいい。私も久しぶりにアイツと戦いたくなった!」
そう言うなりシグナムはBJを纏い、飛行魔法で2人が戦っている場所に向かっていった。
置いていかれた格好となったスバルもやけくそになったようにBJを纏うと同時に移動魔法「ウィングロード」を発動させ、シグナムの後を追う。
そんな事を知らずに戦うなのはとティアナ。そしていずれかに加勢するであろう2人。
早朝の戦いは白熱を極めていた。

          ―次回「もえる十七歳!!」―

あとがき
ふう…。短めですか、ようやく書きあがりました。次回はタイトルの通り、なのは(碧)ガメインになります。お楽しみ。






[6626] ―魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女-第三話
Name: 9009◆ff456860 ID:904e0b40
Date: 2009/10/16 22:53
魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女-
             ―第3話「もえる17歳!」

-魔法の特訓を行っていた舞衣と碧は模擬戦を行い、激しくぶつかり合う。
そんな中、2人を捜索していたスバルとシグナムが訓練場に到着、模擬戦に介入する意思を見せる。はたしてこの先どうなるのか?

―訓練場
「あれは…まさか!?」
「今まで見られてたとなると、今更エレメントは消せない…どうする碧ちゃん?」
「そうだ、2人とも痣のことは知っているはず…。うまくぼかして答えとこう」
「どうやって?スバルはともかくもシグナムさんにごまかしが効くとは…」
「…そうだ!とりあえず‘最近になって発現したレアスキル‘といっておこう。あながち嘘じゃないし」
閃いたように碧が言う。
「いいの?そんな事で」
「まだ‘アレ‘を知られるわけにはいかない。舞衣ちゃんはともかくも、あたしのは下手すると質量兵器扱いされそうだしね」
「たしかに」
「…来るよ!」
「わかった。うまく行けばいいけど…」
「あたしを信じなさいって。伊達に臨時教師はやってない」
碧は笑みを浮かべ、シグナム達が向かってきている方向に視線を向ける。
-あの剣、たしか「レーバティン」だか「レーヴァテイン」だったけ?あの時のこと思い出すな。エアルで使ってた太刀があれば楽に対処できるんだけど…贅沢はいってられないか。
一瞬、「杉浦碧」時代に‘祭り‘の最終局面でチャイルドを美袋命に葬られた苦い思い出がよぎるが、アスワドの首領としての経験をつんだ今なら、体にナノマシンがないとはいえ、高次物質化武装(ローブと呼ばれる)を纏った乙-HIMEとも渡り合える自信がある。
「小手調べと行くか!」
彼女は先手を打った。ハルバードをブーメランのように投げ、シグナムの出方を見る。
案の上、切り払られる。しかしこのような攻撃が来るとは意外だったようで、驚いた表情を浮かべているのが見えた。
戻ってきたハルバードを右手に持ち、シグナムの攻撃に備える。



「……何っ!?」
シグナムは予想だにしていなかった攻撃に反応が遅れたもの、長剣型デバイス「レヴァンティン」をもってして飛来した物体を切り払ってみせる。
「やっぱこれは見切られたか」
「なっ…何故お前がそんなものを持っている?」
シグナムはなのはが持っている武器がレイジングハートではなく、槍とトマホークを掛け合わしたような得物であることに驚きの表情を見せる。しかも持っている手が利き手であるはずの左手ではなく、右手なのだ。
「さあ…ね。さて戦ろうか、シグナムさん」
なのはは、あえてシグナムを挑発してみせる。これは自分の腕によほど自信が無ければ出来ないことだ。
「…望むところだ!」
シグナムはなのはかしらぬこの行為に違和感を覚えつつも、斬りこむ。
「おおおおっ!」
レヴァンティンの刃はハルバードの柄の部分で受け止められたもの、衝撃波がハルバードを震わす。これには受け止めた側のなのはも思わず冷や汗を流す。
(危なっ!エレメントじゃ無かったら得物ごと斬られていた…)
剣を受け止めた衝撃で腕が震えていることに、彼女はシグナムが‘烈火の将‘との異名を持っていたことを再認識した。
-これが…!なるほど。ネットでの評判は間違ってたって事か!
元の世界でのアニメでは、この時期はあまり活躍できなかった上に、最大奥儀「シュツルムファルケン」を一切使用していなかったと記憶している。
-…待てよ。シグナムならス○ロボのあの技とかを再現できそうだ。地球に行ったらプ○ステ2とソフトにDVDを買っとこうっと。とあらぬ方向に思考がずれそうになる。
「…って考える余裕無いかっ!!」
シグナムの攻撃はとても速く、鋭い。元の世界でもこれだけの使い手となると、HIMEやガルデローベの乙-HIME(マイスター含め)の中を探してもそうそういないだろう。
しかし自分とて過去の二度の人生を通して多くの修羅場を経験してきてきたつもりだ。
―ここで負けたらあいつらに笑われるな。悪いが…本気で行かせてもらう!!
何故彼女がこのような思考に達したのか。これは舞衣と同様に、エアルに存在した自らの子孫(もしくは転生体)の性質をも持ち合わせていたためであると思われる。
「早めに勝負をつけるか…なるべくなら使いたくは無かったんだけど…!」
相手が相手なので、拘束に使う魔法も自身が使える中で最高の力を持つ「レストリクトロック」をかけてシグナムの動きを封じた。
「こ、これはバインドか…!?いつの間に」
なのははシグナムを拘束したことを確認すると、さらに上空へと飛び上がった。


「ミド…、もとい!ナノハ・ウルトラダイナミック!!」
これこそ、現在の彼女にとっての伝家の宝刀の一つであり、S・L・Bを除けば最強の必殺技でもある。単純に斧槍を袈裟懸けに振り下ろすだけなのだが、威力は保障ずみだ。シグナムのバリアジャケットを切り裂いてみせた。
(これでまいってくればいいんだけど…)
しかしシグナムもただではやられなかった。バインドが解けたと同時に必殺の『紫電一閃』で既にボロボロになっていたなのはのジャケットの上半身部分を斬ってみせる。この時点で両者の服装の上半身はアンダースーツのみになった。
「どんな鍛錬を行ったのだ?まさかお前がここまで腕をあげるとは…」
シグナムは接近戦を苦手としているはずのなのはがその近接格闘で自分と互角に渡り合っている事実に驚きの声を上げる。
「秘密ですよ」
(まさか‘別人になってます‘とは言えないしなぁ…)
シグナムはなのはが何故ここまで強いのか気になっているようである。
実際なのはの実家には剣術の道場があるが、いくら父親などから手ほどきをうけたとしてもここまでの腕に成長するのはかなりの時間を要するはずである。シグナムの疑問はますます深まるばかりだった。

―そこにウィングロードらしき光が見えた。どうやらスバルがやってきたようだ。
(たしかスバルって元から機械を受け入れられる肉体なんだよね?エアルや某仮○ライダーみたいに生身の肉体を改造して機械に置き換えた後の拒絶反応を解決できなかった故の判断だよね?戦闘機人って。それにそもそも、スカリエッティ自体管理局自身が作り出した存在のはず)
その通りだった。戦闘機人は様々な問題でサイボークを造れなかった管理局はスカリエッティを生み出した。そして彼は最高評議会の思惑通り、12体の機人を造り上げた。それが
‘ナンバーズ‘である。スバルとその姉のギンガはその基になった試作機にあたる。
(シグナムにスカの奴の事教えてやりたい…でも確証が無い。…こうなったらレジアス中将に取り入って管理局の機密文書とかを探るしかないな)
なのははシグナムとの戦闘を続けながらも、シグナムにスカリエッティが今後どのようなことを起こすのか、彼を生み出した存在が何であるかを教えてやりたかった。それが今や運命を信じず、明日を自分達の力で切り開くことを信条としている彼女の純粋な気持ちだった。しかし今ここで言ったとしても確証も証拠も無い事を誰も信じはしないだろう。言うべき『時』はいずれ訪れる。―それもそう遠くない内に。

「でりゃあああっ!」
「何っ!?」
なのはは、この不意打ちに対処できなかった。リボルバーナックルとマッハキャリバーを併用した突進からの鉄拳をもろに受け、「うわああ……」との悲鳴と共に近くのビルに吹き飛ぶ。
「……あれ?」
スバルは予想外の結果にあっけにとられた顔でなのはが吹き飛ばされたビルの方に視線を移す。

「大丈夫かなぁ?」
「なのはならこの程度は余裕だ。安心しろ。この場はお前に任せる」
シグナムは心配そうな表情のスバルに一応フォローをいれるとティアナと戦うために、彼女がいる方角に向かっていった。ヴィータをして「バトルマニア」と言わしめたその姿勢を垣間見せた。シグナムの言葉で不安が解消されたスバルは来るであろう、なのはの反撃に備える。
「つぅ…今のは効いた…さすがにパワーあるわね。だけど!」
スバルの攻撃で気が遠くなりそうになったが、なんとか意識を保つ。
カートリッジをロードして増幅した魔力をデバイスに蓄積させつつハルバードでビルを屋上まで突き破る。牽制にディバインバスターを放つ。さらにその直後に空中で宙返りを一回転し、飛び蹴りの体勢を取る。

「ダメで元々!!こうなったら迷いはいらない!…超電○ド○ルキィ―――ック!!」
と、仮○ライダースト○ンガー張りの高速きりもみ回転を加えた飛び蹴りを放った。
当てるつもりはさらさらないし、オリジナルのように電気が走っているわけでもない。それでも高い高度からの蹴りなので威力はそれなりにあるはずだ。
スバルもこのとんでもなくおかしい攻撃法に困惑しつつもディバインバスターを避けて迎撃体勢を取る。
「え、えええっ!?・・・ならこっちはブイ○リー…スクリューキィ―――ック!!」
蹴りには蹴り、と言う発想だろうか。スバルもこれまた仮○ライダーの必殺技で迎え撃つ。
何故ミッドチルダ出身の彼女が管理外世界の、それも一国で30年以上前に放送されていた特撮ヒーローの技を知っているのか?謎は大いに深そうである。
なのはとスバルが繰り出したラ○ダーキックが空中で激しくぶつかりあう。果たして打ち勝つのはどちらなのか。



―六課隊舎
「おいシャーリー、シグナムの姿が見えねえけどどうしたんだ?」
「シグナム副隊長ならなのはさん達を探しに行きましたけど?」
「そうか…ってもう7時だぞ!?行ったのは何時だ?」
「たしか5時ごろだったと思いますけど、そう言えば遅すぎますね」
「まったくあいつ何やってやがるんだ?こっちが心配してるってのに、連絡一つよこしやしねえなんて…帰ってきたらアイゼンで一発ぶん殴ってやる!!」
「お、落ち着いてください~」
「これが落ち着いていられるか~!」
ヴィータは一向に連絡をよこさないシグナムに対して苛立ちを積もらせているようだ。
それを遠くから楽しそうに見つめるはやて。この様子はしばらく続きそうだ。

ティアナ、お前の実力を見せてみらおう」
「望むところです!」
デバイスを構えながらさらなる戦いに臨むシグナム。
―何か重要な事を忘れているような気がする…なんだったか?駄目だ想いだせん…。
「さあ始めるぞ、ティアナ」
「望むところです」

はたしてシグナムとティアナの対決は如何に?そして
訓練場にたどり着いたヴィータ達は驚愕の光景を垣間見る。どんどん変な方向に悪ノリしていく戦いを舞衣は止められるか?スバルの猛攻の前に碧は禁忌であるチャイルドを使ってしまうのか?
次回、「Finality blue」。


あとがき
今回も短めですが、ネタに走ってみました。なのは4期は本当みたいですね。25歳はもう少女じゃないという事か(笑)楽しみです。









[6626] 魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女-第四話
Name: 9009◆ff456860 ID:904e0b40
Date: 2010/06/30 10:31
―スバルとラ○ダーキックの打ち合いになったなのは。シグナムとの対決に臨むティアナ。
それぞれの戦いはまだ終わりそうになかった。

「でりゃああっ!!」
「うおおおおおっ!!」
2人のラ○ダーキックのぶつかり合いはどちらに分配が上がるのか。通常のブーツで高速回転するマッハキャリバーの車輪とぶつかり合う事は無謀に思えるが、こうなったらもうノリでどうにかなる。要するにスクリューキックの破壊力をドリルキックが上回ればいいだけの話だ。
凄まじい轟音を立てて2人の蹴りがぶつかり合う。ドリルのごとく螺旋回転しているなのはとスクリューのように回転するスバルだが、ここはなのはに軍杯があがった。スバルは弾き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「グ、グハッ…!そ、そんな…まさか…!」
スバルは得意とする接近戦でなのはに遅れをとった事に、信じられないと言った表情を浮かべている。なのははここぞとばかりに、
「あたしを!!誰だと思ってやがる!!(く~、いっぺんで良いからこの台詞言ってみたかったんだ~!!でも、あたし自身やこの子の台詞じゃないし、そもそも作品も思い切り違うけどね)」と強気な口調でボロボロになりながらもどこかで聞いたような決め台詞を言ってみせた。
空中から見下ろすその構図はちょっとオーバーではあったもの、スバルに『今までのなのはさんとは一味違う』と言う衝撃を与え、さらになのはに対する憧れを深めさせたのは言うまでもない。しかしこの戦いの様子は午前中の訓練のためにやって来たヴィータやフェイト達にばっちりと目撃されてしまっていた。
「な、な、なっ…!!」
ヴィータは目を白黒させて目の前に広がる光景を凝視する。
フェイトにいたっては、目が点になっている上に、ワナワナと体を震わせて呆然としている。それもそのはず。『接近戦に特化しているはずのスバルをなのはが逆に叩きのめした』のである。受け入れがたい事実はではあるが、目の前の光景は現実だ。
「これって夢だよね?」
「テスタロッサ、気持ちは分かるが…これは現実だぜ。なのはだけじゃ無い。向こうを見てみろ」
ヴィータに促されるようにフェイトは視線をシグナムとティアナの方に移す。
そこにはさらに驚くべき光景があった。

「でやああああっ!!」
ティアナが腕に炎を操る宝輪を付けて、それを以ってしてシグナムと対等に渡り合っている光景がフェイトの目に飛び込んできた。二つの彼女の理解を超えた戦いは燃え尽きるほどに熱く、激しく展開されていた。
「凄い…シグナム副隊長と互角に渡り合ってるなんて…」
フェイトの傍らに居る六課の一員で、10歳ほどの少年の「エリオ・モンディアル 」がシグナムを相手にティアナが互角の戦いを展開している事に驚きに満ちた声を上げた。
しかも腕輪のような物の力でシグナムの斬撃を受けきって、そこからうまく反撃に繋げるのはさすがである。

「なんか変な方向にずれてるような……、まあ相手が相手だからしょうがないか。…そうだ、ちょっと驚かせてやるとしますか」
ここでティアナはエレメントの力を最大限に活用した。シグナムがいったん体勢を立て直すために空中に飛び上がったのを確認するなり、これに負けじと空中に飛び上がった。
これにはその場にいた当人達以外のほぼ全員に凄まじい衝撃を与えた。何せ「空戦適性が無い」とされていたティアナがその空中戦を展開し始めたのである。
「あ、あいつ…いつの間に空戦ができる様に……?」
「あの動き…まるで前から空中戦に馴れていたような…」
フェイト達はあまりにも凄すぎるこの光景に、ただ固唾を呑んで見守ることしかできなかった。彼女達ならその気になれば参戦も可能だと言うのに。それだけ激しい戦いだと言う事だろう。
シグナムもなのはに続いて、ティアナまでもが自分と対等に戦えている(しかも空中で!)
事実にさすがに焦りを見せ始めていた。
「馬鹿な……!どうしたと言うのだ!?それに、なのはが持っている矛やお前のその腕輪といい、どうやって…?」
「この戦いが終わったら教えてあげます」
さすがに、これだけ見られていたら高次物質化能力の事は隠しきれないと踏んだのか、
舞衣は諦めるような声を出した。
「…そうか。(いったいいつの間に空中戦を覚えたのだ?戦いが終わったらゆっくりと聞かせてもらうぞ!)」
「ええ。なのでこの一撃で決めさせてもらいます!」
ティアナは空中に大型のリングを出現させると、その宝輪を潜りぬける。炎を纏ってそのまま飛び蹴りの体勢に入る。
「はああああっ!!」
これは高次物質化能力の応用である。チャイルドが思いの強さで大型化した実例(なつきのデュラン)がある以上、理論上はエレメントも可能なはずだが、行ったのは彼女がおそらく初めてだろう。
奇しくもこの攻撃方法はマイスターオトメだった時のそれに酷似していたが、見事にシグナムのわき腹に命中、そのままの勢いで地面に叩きつけた。
「ぐっ!これほどの威力があるとは・・・・、どうやら私は奴を見くびっていたようだな…!」
そこで不意に声が響いてきた。
「それまでや!」
「あ、主はやて!?」
「4人ともいいかげんにしい!模擬戦もええけどこれ以上やると訓練場がメチャメチャになってしまうで!」
言われて見ると訓練所のあちらこちらにクレータのような大穴が開いているのが確認できた。いくらシミュレータとは言え、これ以上破壊が進むと施設の使用が困難になってしまうだろう。
はやてに促され、ティアナとシグナムは戦いをやめる。なのはもスバルに肩を貸す様にしてはやての元に歩いていく。
「それと、なのはちゃんとティアナは後で出頭するように」
「…了解」
(やっぱりこうなったか。さてどうやってアレを理解してもらうかな)
碧はトホホとため息をつきながらスバルを部屋まで運ぶと、執務室に足を運んだ。

―模擬戦より30分ほど後 執務室
「…で、どういうことなん?」
「実は最初のうちは訓練をやってたんですけど、そのうち模擬戦になって…それがだんだん変な方向に」
「悪乗りしていったわけで…」
「なるほど…。ところで2人とも、シグナムやフェイト隊長から報告があったんやけど、2人とも武器を出して戦ったそうやね?」
「それはエレメントの事ですね?」
「エレメントぉ?何やそれ」
「…お見せします」
そう言うとティアナは両手足に宝輪を展開した。同時になのはもハルバードを召喚する。
「ええええ!?どうやったんや!?」
「高次物質化能力で生成したんだよ」
ここではやては初めて聞く単語を耳にした。
「高次物質化能力ぅ?」
「高次物質化能力って言うのは…」
ここでなのはが説明に入った。彼女はチャイルドの事はぼかす形で
高次物質化能力の事を大まかに説明した。
「…凄い!凄いで~!2人とも何でそんなレアスキルを今まで黙ってたんや?」
「いやあ~発現したのが最近だったし、言う機会が無くって…」
「とにかくこれで六課の戦力は倍増や~!…そうや。2人ともここ最近
ガジェットを迎撃に行っても、そこにはもう破壊された残骸しか無かったっていう事件って知ってる?」
「いや、初耳だけど…、どういうこと?」
「話を聞くと、私達以外の誰かがガジェットを破壊して回っているとしか思えないんや。これが2日前くらいに地上本部の部隊が撮った写真や」
「なっ……馬鹿な!?何故アイツが!?」
写真を渡されたなのはは驚愕した。写真に映っていたその張本人の後ろ姿は元の世界で共に戦った、ある一人のマイスターオトメそのものだったからである。
(この髪型に、蒼いローブ、間違い無い…!)
なのはは写真に写るオトメが、エアル最強にして、最速のローブを纏った、`ある`人物であることに驚きを隠せなかった。
ら写真を手渡されたティアナも唖然とした表情を浮かべる。
「は…、はいぃぃ―――っ!?」
「2人とも、まさかこの子の事を知ってるん?」
「知ってるも何もコイツは……」
なのはは、はやてにその人物の名を告げた。
「アリカ・ユメミヤ。あたしの昔の知り合いだよ」
「どういうことなん!?昔の知り合いって」
「話せば色々とややこしくなるんだ。これが」
ここから歴史は大きく動き出そうとしていた。―アリカ・ユメミヤ。
その存在はミッドチルダに何をもたらすのか?それはまだ分からない。
-次回、「Crystal Energy」



[6626] 魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女-第五話
Name: 9009◆ff456860 ID:904e0b40
Date: 2010/06/30 10:48
魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女-
        ―第5話「Crystal Energy」

-6課に衝撃を与えた模擬戦から6日後。八神はやてはここ最近、クラナガンで数度目撃され、なのはたちから聞かされた「アリカ・ユメミヤ」と言う名の少女の事が気になっていた。なのはとティアナが不思議なレアスキルを持っていたことも驚きだが、この少女は何のためにガジェットと戦い、破壊したのか?それが分からぬままだ。なのはは何かを知っているようだが…。ため息をつかずにはいられなかった。

そのなのははと言うと、自室でティアナと共にこの事について話し合っていた。

―なのはの自室
「…やはり間違いないのね?
「ローブの色やこの形状…、どう見てもアイツしかいないだろう?」
「アリカちゃんがこの世界に来ている…か。でもそうだとすると何で私達のように別人の肉体を借りる形じゃ無いの?それにマテリアライズが出来ているなんて…」
「大方、マシロ女王と一緒に来たんじゃ?マスターの認証が無ければアレは不可能だし」
「そうすると、ついでに来そうなのは…なつきくらい?」
「命ちゃんはどうだろう?」
「命ねぇ…。その線が一番有り得そう」
「一応心の準備はしておこう。それにアリカと万が一でも戦闘になったら、恐らくフェイトを以ってしても太刀打ちできんだろう」
なのははあり得る最大限の事を想定していた。事情を知らない他のメンバーがマテリアライズZweiを行ったアリカ・ユメミヤと交戦した場合、返り討ちにあうのは目に見えているからだ。
「碧ちゃん、口調が変わってる」
「おっと、アスワドの首領時代の癖が出ちゃった。時々出るんだよねえ…これ」
「まったく…、気をつけてよね」
「そういう舞衣ちゃんだって、前に地球で暮らしてた時より落ち着きが出てるよ?」
「まあ、色々あったしね」
これは舞衣のエアル時代の特徴の一つである。地球の高校生であった時と違い、精神的余裕が出来たためか、物事に大らかな一面が見られる。それはこの肉体を得た後でも発揮され、スバル達を困惑(急に面倒見が良くなっていたため)させたのは言うまでもない。それはなのはにも言える。前よりも好戦的になり、一人称が『私」から『あたし』に変化し、行動面で熱血する反面、戦闘で的確な判断を下すと言う戦いなれしている即面を見せるようになったために、少女時代の彼女を知る者には信じがたいほどの衝撃を与えた。フェイトやはやてなどには早くも「本当に‘あの‘なのはなのか?」と思われるほどである。
「たしか…そろそろだったね。‘六課‘とナンバーズの接触は」
「そういえば…。それにヴィヴィオが保護されるのも同時に起こったはず」
「アリカがこの世界に来ていて、ガジェットやナンバーズと敵対するのなら間違いなくそこに現れるはずよ。出来れば味方であってほしい」
これは共に戦った彼女の純粋な気持ちであった。ヴィヴィオとはほぼ間違いなく出会えるだろうが、アリカと敵対してしまう事だけはなんとしても避けたいのだろう。
「大丈夫だって、信じようよ。アリカちゃんの事を」
「…そうだね。あっ、そうだ。ヴァイスの部屋からなんかこんなのが見つかったんだけど」
なのははロッカーにかけてある4着の洋服を取り出した。
「つ、つーか…何でこれがここにあるのぉ!?」
そこには風華学園高等部の女子用制服が2着、元の世界に存在していたファミレス「リンデンバウム」のウェイトレスの制服がそれぞれ並んでいた。
「たぶんコスプレ用だと思うんだけどね、あんまりアレだったから没収しといたの。ヴァイスにものすごい勢いで泣きつかれたけど」
「は、ははは…」
ティアナは呆れたような声を出して、目の前に置かれている服を見つめる。無論、その顔には物凄く複雑な表情を浮かべている。
「とりあえずあたしはこれを使うわ。慣れてるし」
そう言って、彼女は管理局の制服を脱いで、ウェイトレスの服に袖を通す。この服に袖を通すのも随分と久しぶりだが、今となっては逆に新鮮味が沸いてくる。
「どうかな?」
「前の時よりスリムになったって感じかな?でもなんでだろう?これ見ると何故か落ち着く…」
「何せあそこには色々思い出があるし、バイトの期間が長かったからねぇ~」
ティアナもすでに風華学園の制服に着替えて、ソファに腰掛けている。
「さあて行くよ。フェイトちゃん達より先にアリカと接触しないと」
「OK!」
2人はその格好のままで六課の隊舎の外まで一気に駆け抜け、辺りに誰もいない事を確認するとエレメントを展開する。―さらに久しく召喚していなかった‘チャイルド‘を呼び出した。

「こうなればもうどうなってもいい!!行くよ」
「うん」
そしてその次の瞬間、二人は空中に飛び上がり、管理局の監視網に架からないように慎重に飛行する。しかし市街地でティアナの腕に出現している物体を見上げて焦りのような感情を浮かべる人物がいた。それは「ギンガ・ナカジマ」。スバルの実の姉である。何故彼女がカグツチを知っているのか。それは彼女もまた‘異邦人‘というべき存在だからである。
「まさか…今のは!くそっ…あいつら何を考えている!?」
そういうとギンガは近くにあった大型バイクを分捕り、カグツチらが向かった方角に向かった。
(奴らもここに来ているのか…合ったら一発かましてくれる!)
ここまで来ればもうお分かりであろう。今のギンガ・ナカジマに宿る魂は久我なつき=ナツキ・クルーガーである事を。彼女の場合は碧達とは異なり、何ら共通点が無く、(舞衣の場合は生い立ちなど、なのは等との共通点がどこかかしらある)自らとの関連もまったく無い肉体に宿ってしまったのである。(そもそも魂が入れ替わる事はそうそう起きないのだが、彼女の場合はその中でも稀なケース)


―六課にガジェット出現の報が伝えられたのはそれからすぐの事であった。
「なのはとティアナがいない!?ったく!あのバカ、二人して何をやってやがる!」
「リィンも今朝からいないんや…いったいどこに?」
「とにかく私達で迎撃しないと!」
なのはとティアナを除いた戦闘メンバーが慌ただしく出撃していく。後方支援メンバーにも欠員が出ている状態で出撃する事に焦りを見せるはやてだが、今は慌てている場合では無い。出撃命令を出すと、自らも陣頭で指揮を執るべく、BJを纏った。

-クラナガン とある地下道
「陽動に引っかかったようね」
「…どうするッスか?クア姉」
「そうねぇ~とりあえず一番直接的な戦闘力の低い八神はやてを捕獲したい。戦闘力の高いメンバーと標的を切り離す必要があるわ。ウェンディは後方支援をやってくれる?」
「了解ッス!」
「さて…次は初陣だけど、やれるわね?ノーヴェ」
通信でクワットロと呼ばれた女性はウェンディの傍らにいるスバルに酷似した容姿を持つ少女に問いかける。
「いいさ。なんだってやってやる…そのためにアタシは造られたんだ」
「その意気があれば大丈夫ね。頼んだわよ」
-そして彼女達は各々の行動を開始した。


「あれは…」
郊外のある一角に2人の少女が立っていた。一人は人間サイズになったリィンフォースⅡ、もう一人はアリカ・ユメミヤであった。
「ガジェットか…どうやら本命じゃなさそうですね」
「どうするの‘マシロ‘ちゃん?」
「舞衣さんたちがもうすくこちらに来られるはずです」
「舞衣さん達が?」
そういうと上空に2体のチャイルドが飛来し、着地する。さらに近くにバイクが止まる。
「アリカ(ちゃん)!」
「舞衣さん…に…と、頭領ぉ!?」
アリカは降り立った人物達が、姿は違えど、声から判断するにそれぞれ自分の知る人物である事に驚きの声をあげた。
「まったく…何故お前がここに…」
さらにバイクから降りた人物が言う。アリカは誰だかわからずにキョトンとする。
「あなたは?」
「そうか。この格好じゃわからんか。…マテリアライズッ!」
そう言って、その人物はこの世界の人間が知るはずのない高次物質化能力の発動コードを言った。ローブのカラーリングや形状からすると。
「そのローブ、もしかして学園長さん!?」
「…そうだ」
「ち、ちょっと!なつき、何であんたがここに!?」
それを見るなり、ティアナはいきなりツカツカとギンガに詰め寄った。
「久しぶりだな舞衣」
「どういうことよ!いたならいたで、連絡の一つくらい!!それになんでマテリアライズができてんのよ!?」
「お、落ち着いて!」
「これがおちついていられますかぁ~!」
「し、しかたないだろう!私も事態を把握するのに精一杯だったんだ!それに私達はガルデローベの真祖の間ごと転移したから存在を隠すのに必死で……!」
「じゃ、なんで姿が違うのよ」
「気がついたらこうなっていたんだ!まったく…シズルはそのままだというのに…」
ここでギンガは自らの肉体のことなどを愚痴った。他人の肉体を自分の意志で好きに動かすなど気が引けるし、何よりも倫理感から言って、許されないことであるのは分かっていた。しかしなりふり構わってもいられず、こうなったのである。
「シズルさんもここに…!?うっそぉ~!…で、今はどうしてるの?」
「あいつは地上本部にちゃっかりと潜り込んでいるよ。たしか階級は一等陸佐くらいだったか?」
「ええええええぇ!?」
「出世しすぎ!あたしより4階級も上じゃん……」
なのはもシズルの今の身分を聞くなり落ち込みを見せる。なのはでさえ功績を上げてようやく、一等空尉(大尉)だというのに、それよりも遥かに上なのだから。
「どうしてそんなに出世しちゃったわけ?」
「上官に取り入るのが旨い上に、戦功を上げたとかでトントン拍子に」
「ありえない~!あたしだってやっと一尉なのに…」
「あたしなんて2等陸士よ!」
「みなさん、今はそういう話をしている場合ではありません」
リィンの一声で一同は一気に我に帰る。声なども同じためか、なのはやティアナにとっては、どうしても『リィンフォースⅡのコスプレをした風花真白』にしか見えないし、アリカに取っては、『マシロ・ブラン・ド・ヴィントブルームが冷静に立ち振舞っている』としか見えないだろう。
「そうだったね……とりあえずどうします、‘理事長‘……、いや、この場合はマシロ女王陛下と呼ぶべきですか?」
「呼びやすいほうでかまいません。急ぎましょう。事態は思っていた以上に深刻です」
ついになのは達はアリカとの接触に成功した。しかし敵の魔の手は着実に伸びていた。はたしてはやての運命はいかに!?

―次回、「小さな星が降りる時」





[6626] 現時点での主要キャラの設定まとめ(一部更新)
Name: 9009◆ff456860 ID:904e0b40
Date: 2009/11/04 23:31
現時点でのキャラの設定及び動きのまとめをしてみます。

高町なのは(杉浦碧=ミドリ)
最新話時点では、後者の人格が表に出ているためにクールである。

ティアナ・ランスター(鴇羽舞衣)
今後「祭」で見せたあの修羅の様な怒りを見せる可能性はなくはない。
フェイト・T・ハラオウン
現時点では史実同様であるが、おそらく親友の変貌に一番驚いているのは彼女だろう。ヴィータ・シグナム同様にエレメントを目撃している。

八神はやて
史実とは異なり、前線に立って指揮を執るのを良しとしている。六課で高次物質化能力を詳細に知った最初の人物。

シグナム
碧達がこの世界で最初に刃を交えた人物。
エレメントを使うなのはとティアナとの連戦でも疲れを見せない動きを見せ、史実よりも輝いている(笑)

ヴィータ
史実よりも過去のなのは撃墜のショックを引き摺っているため、なのはが倒れた際にはフェイトよりも早く医務室に駆け込んだ。

スバル・ナカジマ
今のところは史実と同じ経緯。なぜか仮面ラ○ダーを知っている。

ギンガ・ナカジマ(久我なつき)
彼女の場合は肉体的にも変化が起こった。
そのため声質が変化してしまい、低めのハスキーボイス(ようするに久我なつき本人の声)になってしまった。(彼女は機械の体だが、
何らかの要因で声帯に変化が生じた)









[6626] 魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女  第六話(修正・統合版)
Name: 9009◆ff456860 ID:904e0b40
Date: 2010/06/30 10:55
魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女
             第六話「小さな星が降りる時」

―異世界に来てなお戦いが起こる事。それは残酷なことでしかない。「HIME」と呼ばれた少女達は数多の平行世界において、戦いに生き残っても人をやめなくてはならなかった世界とて存在した。さらに未来では「乙-HIME」として戦った。
それは避けられない運命であるのかも知れない。その全ての記憶を得た少女は何を選ぶのか…

「どういうことです?」
「これを見てください」
「こ、コイツはまさかノーヴェ…?そんな馬鹿な、この時点じゃまだ…」
リィンフォースⅡが見せた映像にはこの時点ではまだ実戦投入はされていても、スバル達とは出会っていないはずのナンバーズの9人目にて、ギンガとスバルの『妹』にあたる少女―ノーヴェが映し出されていた。
「おそらく六課のフォワードメンバーに対抗するために連れてきたのでしょう」
「何故?スカリエッティはうち等に関する詳細な情報を持っていないはずじゃ?」
なのははこの時点では当然と言える疑問をリィンにぶつけた。それにリィンは悔しさを滲ませた表情で答える。
「これはシズルさんからもたらされた情報なのですが、どうやら管理局の本局、地上本部の双方の機密情報が記されたデータバンクがハッキングされていたようです」
「そんな事ができるのは…ええと…駄目だ、名前が出てこない」
頭を抱えつつ、なのはは困った仕草をする。
「ドゥーエだよ。たしかナンバーズの2番目」
ティアナが「やれやれ」とため息をつきながら助言をする。
「そういえばそうだった。…で、何を盗まれたんです?」
「はやての過去の経歴…つまり闇の書事件の詳細やスバル達の体の事です。データは嘘はつきませんからね」
「なるほど、それで…。ノーヴェまで出してくるって事は…まさか!?」
「…そうです。彼らの狙いはおそらく、はやての拉致です」
彼女は恐ろしく冷静な口調で言った。
「じゃ、このままだまってはやてが拉致られるのを見ていろと?」
「そのつもりはありません。あの人は…私の家族ですから」
「そういうことですか。なら安心しましたよ」
「また戦う事になりますが、よろしいのですか?」
「かまいません。もうあんな事はゴメンですけど、大切な人を守るためなら戦えますよ」
「ありがとうございます」
リィンフォースⅡは感謝の意を表すように深く頭を下げた。

「これも因果って奴かな?あの世界じゃ想い人と別れないと世界を救えなかったこともあったしね」
「うん。だけどあの世界は最悪の可能性の一つでしかないよ。あたしは運命って奴を信じない性質だってことは知ってるだろう?」
「ええ。だからこそよ碧ちゃん。なつき、アリカちゃん。力を貸して」
「無論だ。私もお前等を見ていて信じたくなった。運命は決められた物では無いと…な」
「もちろんです。私でよければ」
「…ありがとう。ところでなつき、デュランは召喚できる?」
「出来るが、ここはこれで行く」
「そう。ところでさ真祖の間があるって事はナノマシンがあるんだよね?」
「…ん?体にナノマシンを入れたいのか?なら今回は無理だ。次に取っておけ」
「わかった。それじゃ行こうか!」
とティアナが言い終わる前に
アリカが思い出したように声を出した。
「あ、その前に…頭領!」
「何だ?」
「これを」
そう言ってアリカはなのはに持っていた太刀を手渡す。それはかつて
転生前の自身がエアルで使っていた2つの太刀そのものだった。
「これは…!どうやって持ってきたんだ?」
「みなさんから預かっていたんですけど、やっぱりこれは頭領が持つべきです」
「…そうか。苦労かけたな」
「行きましょう」
「おおっ!」
4人はそれぞれ戦闘体勢を取り、飛行魔法を使えるものは空中から、地上からも全速力で六課の他のメンバーが戦っている空域へ向かった。



―ミッドチルダ北部 廃棄都市区間
ここではガジェットと戦闘機人と六課の戦闘が行われていたもの、主力の一人であるなのはと、新人メンバーのまとめ役であったティアナ、さらにははやての補助を勤めていたリィンフォースⅡ(ツヴァイ)を欠いた状態の機動六課は、これまでよりも強化されたガジェット二型の超音速から繰り出される、管理外世界の一線級のジェット戦闘機と同等の機動力に加え、ナンバーズの奮戦、動揺しているはやての稚拙な指揮も相まって苦戦を強いられていた。
しかもこのガジェット二型、改良を重ねた結果なのか、コックピットが無い以外は2000年代まで米海軍が運用していたF-14戦闘機を想起させる姿へ変貌を遂げていた。(推力偏向ノズル付き)
武装も高機動型のミサイルに加えて大口径機関砲も装備し、しかも無人機特有の超高機動力もあると言う、まさに空戦魔導士キラーとも言える代物なのだ(つまりスカリエッティの趣味も混じった魔改造である。)

「くそっ!振り切れねえ!」
なんとかしてミサイルの追撃を振り切ろうとヴィータは複雑な機動を取るが、そんな事をしても焼け石に水で、ミサイルのセンサーは正確に彼女を捕捉していた。それを表すように、大型ミサイルが分離し、小型のミサイルが多数出現する。これでヴィータの精神的余裕はすっかり失われてしまった。
「た、多弾頭ミサイルぅ!?嘘だろ!?」
そして小型ミサイルの群れはヴィータの必死の迎撃も空しく、轟音と共にミサイルのほぼ全弾が命中、彼女を地面へ墜落させた。これにはさしものシグナムやフェイトも悲鳴を上げる。
「ヴィータぁ!!…くそぉ!テスタロッサ、ヴィータの救出には私が行く!なんとしてでも奴を落としてくれ!」
「わかった!」
そう答えたのは良いが、砲撃魔法は物凄い機動力で避けられ、接近戦を挑むにも機関砲の弾幕が待ち構えているのでは迂闊に手出しは出来ない。しかもあんな音速を遥かに超えたスピードでは、たとえ自分の最高速のフォームである「真・ソニックフォーム」をもってしても追いつくのは困難である事は明白であった。
(どうしたらあのガジェットを落とせる…!?)
彼女は必死に思考を巡らす。―すると、ある一つの案が浮かび上がった。
それは機体を上からバルディッシュのザンバーモードで叩き切ると言うものだった。飛行機型の兵器は上からの攻撃には対応できないはずだ。トライデントスマッシャーで牽制し、
高高度まで一気に上昇した。
「…これでどうだぁっ!!」
フェイトは真ソニックフォームのフルスピードで一気に距離を詰め、ザンバーを最大出力にする。
この瞬間、彼女は自らの勝利を確信していた。-だが、その考えは脆くも崩れ去った。
フェイトが急降下をすると同時にガジェットの機首が上部に上がり、機体が完全に上向きになったと同時に、機銃が一斉掃射されたのだ。これぞ航空機が行える機動の中でも最高峰の難易度を持ち、機動性に優れる機体のみが行える空中戦闘機動「ブカチョフ・コブラ」である。
車のエンジン音のような音が響き渡り、スピードを重視したために防御力が犠牲となっていたフェイトを機関砲の弾丸が貫いていった。
「あ、ああ…」
弾丸に体を貫かれた影響で意識が遠のきつつあるフェイトの目に映ったのは悠々と水平飛行に戻っていく敵機の姿であった。
(そ…んな…)
墜落していくフェイト。
-無念さが込み上げてくる。ここで死んでしまったら何のためにここまで生きてきたのだろう。
(なの…は、せめてもう一度…)
そこで彼女の意識は途切れ、飛行魔法を維持できなくなったために地面に落下していく。シグナムが必死に救出に行くが、ノーヴェに阻まれて足止めされてしまう。
ヴィータはこの光景にかつての悪夢が蘇ってしまったのか、
地面に叩きつけられ、ダメージを負った体を押して再び空中に飛び上がり、涙目になってガジェットに向けてグラーフアイゼンを闇雲に振り回す。
「ちくしょぉぉぉっ!てめえらぁぁぁっ!!」
その怒りと悲しみが入り混じった叫びを嘲笑するかのようにクワットロが言い放った。
「また‘守れなかった‘わね?アナタ」
「!!」
「無様ねぇ…それでも‘守護騎士‘かしらぁ?」
「てめえ、何故それを!!」
「さあ…ね。あなたの主は貰い受けたわよ」
「何っ!?てめえ、はやてに何をしたぁ!」
ヴィータの怒りが頂点に達し、瞳の色が変わると同時にグラーフアイゼンを構え直し、クワットロに殴りかかろうとしたその時だった。


不意に辺りに雷が走り、落雷の轟音が響き渡る。
―そして何処からか口笛が響いてくる。
「こ、これは…ど、どこから?」
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ…」
さらに何処かから聞いたような声が響いてくる。
「こ、この声は…まさか!?」
ヴィータはこの声に聞き覚えがあった。しかもごく身近に。
「悪を倒せとあたしを呼ぶ!…聞け悪人共!あたしは正義の‘HIME‘、高町なのは!!」
ほぼ仮面ラ○ダーストロンガーそのままの名乗りを挙げて、「待ってました」と言わんばかりになのはが戦場に降り立った。そしていつの間に助けだしたのか、フェイトをお姫様抱っこしている。
「…バ…、バッカヤロウ!なのは、お前今まで一体どこに!?それにその犀みたいなもんは…?」
「細かい説明は後でする!とにかく今はコイツらを何とかするのが先だ!!」
ヴィータはなのはとは10年間付き合いがあるが、このような強い口調で指示されたのは始めてであった。あまりの衝撃に目が飛び出そうになるが、なのはの指示に従う。
「ヴィータちゃん、フェイトちゃんを頼む」
そう言って、なのははヴィータにフェイトを託す。しかしなんのつもりか、レストランのウェイトレスの格好なので、いまいちシリアスになりきれない。
「言う事はかっこいいんだけどな、その格好で言われても…」
「は、ははは……。そう言うと思ったよ。とにかく頼んだよ」
「ああ。」
「…参るっ!!」
「おい、ちょっと待て!お前そんな格好で戦うつもりか!?」
バリアジャケットも展開しないでクワットロ達と戦おうとするなのは
の正気を疑う声にヴィータを安心させるために肩をポンと叩いた。
「にゃはは、大丈夫だって。正義は勝ぁ~つ!」
「お、お前そういうキャラだったか…?」
呆れつつも戦いに赴く彼女の背中を見送るヴィータ。不思議な事にその後ろ姿はこれまで以上にたくましく、そして心強く感じるような印象を受けた。声もいつもと違う落ちついた低めの声で、目つきも猛禽類のような鋭い物に代わっていたのもさらに拍車をかけた。
「あいつは…本当になのはなのか……?」

そのなのはは馴れた手つきで鞘に収められた刀を取り出し、二振りの質量兵器と思しき大太刀を両手に持ってクワットロに切りかかった。
これは敵であるナンバーズさえもが目を目開いて驚愕する光景であった。数々の事件で砲撃魔導師として戦功を上げ、その地位を築き上げたはずのなのはがよもや、ベルカ式の魔法の使い手のお株を奪うような行為をするとは思いもしなかったからだ。ヴィータは己が目を疑った。
やがて本気を出した戦闘機人の攻撃に対処しきれなくなったのか、一旦距離を取ると、太刀をしまうと、手に斧槍(ハルバード)を持つ。さらにそれを振り回す。―そしてその時、なのはの周りに一陣の風が渦巻いた。彼女は斧槍を地面に叩きつけるのと同時に実戦では久しく召喚していなかった、「鋼の牙」を呼び出した。
「――出でよ!!鋼の牙、鍔天王!!」
兵器とも、生物とも取れる咆哮を響かせながら‘それ‘はなのはの傍らに降り立った。





サイ型の兵器のようにも見えるそれは鋭角的な姿だった。ヴィータはなのはが魔法陣も無しに何かを召喚したという事実に唖然としながらその場にへたり込んだ。
嘘だろ…!?と言いたくなるほどに衝撃映像だった。キャロがいたら涙目になるのは確実だろう。
「さらにぃぃぃ!!今回は出血大サービス!愕天王、究極合身ッ!!」
叫びと共に愕天王がバラバラになり、聖●士星矢さながらに各部パーツが鎧のようになのはの体に装着されていく。そして完全に装着完了した
姿は西洋の甲冑を纏った騎士を思わせる様な意匠を持っていた。
「この姿になったあたしを止められると思うな」
そう言うと右手に太刀を構えて敢然と戦闘を開始する。

「なんかもう…いちいち驚くのが馬鹿らしくなるぜ」
もうここまで着てしまうと何も言う気が失せてしまうといった様子でへたり込んだままのヴィータであった。


戦闘に呼応するかのように、彼女の後を追って、ノーヴェの猛攻に苦しんでいるシグナムと、彼女に加勢したスバルの前に氷雪の銀水晶のローブを纏ったギンガ(なつき)が、エリオとキャロの前にティアナ(舞衣)とアリカ(ローブはいったん解除している)が颯爽と現れたのであった。


―場所を移して、廃棄都市区間の別区
「遅くなってすまない」
「ギ、ギン姉…?その格好は…?それに声もいつもと…」
「それは後で話す。いろいろとややこしいからな」
「…何のつもりだ?」
新手の敵に警戒するようにノーヴェが言う。
「私の仲間と妹には指一本触れさせん……!」
そう言ってギンガは右腕にHIMEとしてのエレメントである拳銃(無論、乙HIMEとしてのエレメントも使用可能だが、取り回しのよさで拳銃を選んだのだろう)を召喚し、照準をノーヴェに合わせる。

「そんな拳銃であたしと戦るつもりか?」
「貴様にはこれで十分だ」
「…上等だ。アタシのこのガンナックルで…てめえの肉体を砕いてやる!」
「…やってみろ」
もう完全にスバル達が蚊帳の外に追いやられている格好で、睨み合いをする2人。
スバルは姉のあまりの変貌に「ギ、ギン姉ぇ~!」と涙目になり、シグナムもなのは達に続いてギンガまでもが武器を召喚したことに言葉もでないようである。(しかも服装が妙な格好であるため)
「行くぞっ!」」
ガンナックルとリボルバーナックルが唸りを上げてぶつかり合う。
はたして軍杯はどちらに上がるのか。


「スバル下がって。ここはあたしが」
「ティア、何を!?」
制止しようとするスバルをよそにティアナは腕にエレメントを展開し、
力の限り叫んだ。―今度こそ大切な人を守るために―
「カクヅチ―――ッ!!」
ティアナの周りに火柱が立ち上り、辺りを包み込む。そして次の瞬間、
そこにはキャロが召喚する竜と同等か、むしろそれ以上に巨大な白亜の火竜が現れていた。

「か、火竜を呪文なしで召喚した!?お前いったい…」
巨大な火柱とともにティアナの傍に現れたカクヅチ。そのすべてを燃やしつくさんとするような劫火を背にナンバーズと対峙する。そばには気絶しているエリオをお姫様だっこしているアリカがキャロを守るように立つ。
「何なんだお前ら!?」
その業火に恐れ慄くような怯えた声でセインが言う。
ティアナは怒気をただ寄せた表情で無言のままナンバーズを睨んでいたが、やがてアリカに一つの指示を出した。
「アリカちゃん、蒼天の力を……!」
「…わかりました。…マテリアライズッ!!」
その瞬間アリカは蒼天の青玉のローブを身に纏う。スバル達を完全に置いとけぼりにする形で次々と起こる事態にスバルとヴィータは完全に蚊屋の外状態で放置されていた。

「…へえ、あれが噂の蒼天のマイスターオトメ…」
アリカのその姿を見るなりクワットロが言った。何故彼女がオトメに関する事を知っているのか?それにカグツチ+マイスターオトメに囲まれていると言うのに言葉には余裕すら感じられる。
「それならあなたの出番ね。ニナ・ウォン」
「!?」
その名を聞いた瞬間、アリカは己が耳を疑った。
「マテリアライズッ!!」
ティアナとアリカの前に現れたのはアリカのかつての親友であり、同時にお互いに憎しみあい、戦った相手「ニナ・ウォン」その人だったからである。しかも身に纏っているローブは元の世界の動乱の際に纏っていた漆黒の金剛石のそれであったからである。
クワットロの余裕とは、この事だったのである。

「そ、そんな、ニナちゃん…?」
「久しぶりね。アリカ」
ニナのその姿は動乱の時とまったく同じであった。ローブもかつて戦った時と代わりない物である事にアリカは精神的動揺を隠せずに驚愕に満ちた表情を浮かべていた。

「ニナちゃん、どうして…?」
アリカは目の前にいる人物が親友であり、現在は和解したはずの「ニナ・ウォン」である事、そして再びニナと戦うという事態に動揺を露わにする。
「今はどうこう説明しているほど私は暇じゃないわ」
ニナは淡々と言うとエレメントを構えて、いつでも戦闘態勢を取れるようにする。
それに対して気絶状態から目覚めたエリオがデバイスの「ストラーダ」を構えるがティアナに制止される。
「なんで止めるんですか!ティアナさん!」
「あなたが出ていったところでどうにかできる相手じゃない!特に‘マイスターオトメ‘は」
「オトメ?」
エリオは初めて聞く単語に首を傾げる。一応補足を入れておく。
「ある世界で生み出された、普通の人間を遥かに超えた力を持った女性の事よ。とにかくここはあたし達に任せて」
そういうとエリオとキャロを守るべくHIMEのエレメントの宝輪を回転させる。
「舞衣さんそのエレメントは…?」
アリカは、ティアナがローブも纏っていないのにエレメントを展開した事に目を白黒させる。
「いろいろややこしいから後でマシロ女王にでも聞いて。掩護するわ」
やり取りを終えると、2人は二ナとの戦闘に入った。音速を超えるスピードをもってして
2対1でニナと激突した。
「はあっ!!」
二ナは2つのエレメントを合体させるとそれを片手で保持し、ティアナとアリカめがけて突撃を敢行する。
「やめてニナちゃん!こんなのっておかしいよ!!また私たちが戦うなんて…!」
迎え撃つアリカも戸惑いつつも必死に防戦する。
「こんな闘いをアリカちゃんは望んでいない!それはあなただってわかっているはず!」
ティアナもカグツチの炎でアリカを援護しながらニナに疑問をぶつける。
「それは分かっています!だけど今の私は!!」
親友と再び戦う事への戸惑いや、心の中の様々な葛藤を垣間見せるかのように声を荒げるニナ。
ティアナは、かつて親友であった2人の少女の対決を、かつて(風華学園時代)の自分の行為と重ね合わせ、あの過ちが繰り返されるのかと悲しげな表情を浮かべる。
―そして。今の自分に是着る精一杯の事をやるしかない。それはニナを止めることだ。
拳を握り締めて渾身の力を込めた一撃を食らわすことくらいしかできない自分が歯がゆい。
「はああっ!」
エレメントを用いた鉄拳を二ナの体に叩きこむ。このような攻撃がオトメに対して効果があるか、はださだ疑問だがやらずにはいられなかった。ニナをこのような攻撃に駆り立てたのは誰なのか。アリカの話によればニナはアルタイ国のマイスターオトメだと言う。ではかの国の王(大公か?)がこのミッドチルダに居て、スカリエッティの悪事に加担させているのか。
「…教えて!この戦いはあなたの意思で引き起こしているの!?」
「……」
「黙ってちゃ…わからないってば!!」
パンチをたたき込む。とりあえずは怯ませることには成功したようだ。
2人は二ナが一筋縄では行かない相手ではない事は知っているとはいえ、苦戦を強いられている事に焦りと動揺を見せていた。


―廃棄都市区間 別区
こちらはギンガ(なつき)。彼女自身の体術と、マイスターローブの着用に伴う身体能力の強化の効果もあって、戦闘機人としてはギンガより後発であるはずのノーヴェを相手取り、優勢に持ち込んでいた。
「ちいっ!互いに同じような戦い方をしていてはラチがあかない!…こうなれば!!ロード・シルバーカートリッジ!!」
腕に巨大なカノン砲を出現させると氷の属性を持つ捕縛用の弾丸を装填する。ノーヴェを捕縛するつもりだろうか。両腕で保持すると、照準を合わせて発射態勢を取る。
「…てぇぇっ!!」
カノン砲から白い閃光が迸り、ノーヴェを狙う。
「…そうはさせねえッス!!」
ウェンディがノーヴェを庇う様にライディングボードに乗って弾道に割り込み、姉妹をシルバーカートリッジから自分を犠牲にして守る意思を見せる。
「ウ、ウェンディ!?テメエ何を…!?」
「アタシは姉妹を見捨てるほど臆病じゃ無いっスよ!」
「バ、バカ!早く逃げろぉ!今ならまだ間に合う!」
「姉の危機を救えないようじゃ姉妹失格ッスよ」
精一杯の笑みを浮かべ、「また会おう」とポーズを取る。まもなく彼女の姿は閃光に包まれ、やがて見えなくなった。
「ウ、ウェンディイイイイイイィッ!!」
ノーヴェの絶叫が辺りに木霊する。光と煙が晴れた時、ウェンディがいた場所にはひとつの氷柱が鎮座しているだけであった。
「う、嘘だろ…こんな…!」
愕然としながらもその眼は姉妹を殺された事に対する怒りに染まっていた。
「…テメエェエエエェ!よくもぉぉぉっ!!」
烈火の咆哮と共にギンガ目がけて突撃を敢行しようとする。
だが、それは一つの通信で打ち止めとなった。
「やめなさいノーヴェ」
「で、でもクワ姉…あいつらは…!」
「当初の目的は達したわ。セインが目標の拉致に成功したの。ウェンディの事は残念だけど…、撤退するわよ」
「くっ!…了解」
悔しさを露わにした声でクワットロからの通信に答えると携帯していた閃光弾を撃ち、その場から離れた。
「あれは…!どうやらここまでのようね」
「ま、待ってニナちゃん!」
二ナは閃光弾の光を確認すると戦いを打ち切って、最大スピードで戦場を離脱していく。
アリカ達はその後ろ姿をただ見つめる事しかできなかった。

なのはもクワットロ達の撤退を確認すると、刀を鞘に納めてひとまずヴィータのもとに戻る。―しかし。彼女を待っていたのはねぎらいでも、勝利を祝う美酒でも無かった。
「…シャーリーか?どうした落ち着け。何が…。な、何だとぉっ!?」
シャーリーからの通信は信じられないような内容だった。「はやてが戦闘機人の一人に拉致された」と言うのだ。六課の最大戦力はノーヴェらに完全に引きつけられてしまい、はやての護衛にまで手が回っていなかった。完全に自分達の戦略ミスであったとしか言いようがなかった。
「くそぉぉっ!!迂闊だったッ!!」
なのはは右の拳を地面に荒々しく叩きつけて悔しさを露わにする。
「あ、あの、なのは隊長…?」
シャーリーはこの、普段温厚ななのはらしくもない感情をあらわにした行動に唖然とした表情を見せた。
「負傷者の収容はどうなっている?」
「は、はい。フェイト隊長は108部隊のギンガ陸曹が地上本部に連れて行きました」
「地上本部に?」
「はい。なんでも治療できる設備があるとかで…」
「あたしもすぐに向かう!事後処理は任せた!」
「え、ええ~!?」
「切るぞっ!」
通信を強引に切ると、愕天王を元の形状に戻す。
「あ、ああ。ところで…どういうことだ!?」
「何がだ?」
「とぼけるな!このサイみたいなやつと言い、お前のその口調といい…何がいったいどうなってるんだ!?教えてくれ!」
「今、ゴチャゴチャと話してる余裕はない!とにかく地上本部に向かうから、どこかにしっかり捕まってろ!!」
愕天王のスピードが最大に引き上げられ、空戦魔導士では絶対に出せない音速を超えた速さを発揮して地上本部に向かった。

―地上本部 地下 真祖の間
ここ、地上本部の地下室にはガルデローベの「真祖の間」が元々存在した部屋が消えた空洞にぴったりとはまる形で転移してきた。その存在は地上本部の長「レジアス・ゲイズ」中将や彼が信頼する武官など、一部の上層部のみが知る一種の‘極秘‘情報として扱われていた。その部屋に一人の女性がいた。レジアス中将直属の武官の中で最も信頼を置かれる存在であり、‘非魔導士構成員の希望の星‘と言われる「シズル・ヴィオーラ」一等陸佐である。
「シズル、フェイトの容態は?」
フェイトが寝かされているベットの横でギンガとフェイトの治療について話し合いを始めた。
「弾丸を摘出した上で、治癒魔法をかけたから、今のところは安定してはります。せやけど主任の話だと弾丸が当たった個所が急所だったから
かなり弱っている様子で…」
「なんとか助ける方法は無いのか?」
「…一つだけあるんやけど、これは…」
「今は躊躇ってる場合では無いぞ、シズル。方法があるのなら、どんな方法でもいい!教えてくれ!」
「REMを体に移植すれば助かる可能性はあるんや。でもあれは副作用で老化を起きなくしてしまいます。そんな事、この子に耐えられるかどうか…」
シズルは一旦、移植を行えばフェイトの肉体は不老となってしまう事を心配している。しかし彼女を救う方法はもはやこれしかない。
事は一刻を争う。移植手術を行うために手術室に運び込む。立会人として、シズルが手術に立ち会う。
「頼むぞ…」

はたしてフェイトは助かるのだろうか。そしてニナの真意は?
―次回「六課の新部隊長」

あとがき 
いろいろ変えました。
ではまた。





[6626] 魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女 第7話
Name: 9009◆ff456860 ID:904e0b40
Date: 2009/10/16 22:54
魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女
第7話「六課の新隊長、そして風華の地」

先の戦闘で部隊長を失った機動六課は急速にその影響力を減じ始めていた。
評議会で六課の不手際が指摘され、「小娘の道楽でミッドを危険にさらした」と憤慨する一人から解散を要求する提案が出されたほどである。しかし会議に出席していたレジアス中将は六課を‘上手く扱えば彼等を手駒にできる‘とし、六課の存続を訴えた。
その結果、六課の部隊長代理を自分達の息のかかった人物にする事が決定され、同時に
予算の削減も取り決められたが、人選については途中で横槍が入ったので中将が直接ある人物を送り込む事になった。


―六課隊舎
「くそっ!予算の削減と部隊長代理をかってに決めやがって…」
と憤慨しているのはヴィータ。はやての‘夢‘であった機動六課を関係の無い輩の思い通りにさせられるのに腹を立てている。
「しょうがないといえばしょうがないのも事実だ。本来なら先任将校のあたしやフェイトちゃんが指揮を取るべきだろうが、他部隊からの出向扱いになっている以上…」
なのはは先の戦闘以降はどこか冷めたような態度を見せるようになっており、どちらかと言うと‘アスワド‘の首領としてテロ行為を働いていた時代で見せたような雰囲気である。ヴィータはこの、戦友の態度のあまりの変わりように畏怖さえ抱いていた。
「とうりょ…じゃなくって、なのはさ~ん」
なのは達の前に先の戦闘以来、民間協力者として扱われている少女―「アリカ・ユメミヤ」がやって来た。雑用もそれなりにこなせるために意外とメンバーに重宝されていると言うが、仕事ぶりはどこか間が抜けていると言う。
「アリカか。どうした?」
なのは(碧)はアリカを混乱させないために、なるべくエアルで会った時の口調で接するようにしていた。地の自分を出せないのは痛いが、アリカに接するのには必要な措置だった。
「実はですね…」
「そうか。すぐ行く」
と返す。ヴィータは2人の間に何があるのか?そしてなのはがこの娘に対してだけシグナムに似たような冷静な口調で接しているのも気になるところである。
(あいつら…この間から何かを隠してやがる…それも重大な…なのはの召喚したサイやティアナの火竜といい、なんで打ち明けてくれねえんだよ…あたし達は仲間じゃなかったのかよ…!)
同僚…いや戦友の隠しごとが何であるのか。そしてそれらを10年来の付き合いであるはずの自分にさえうち明けそうとしないなのはの後ろ姿に歯がゆい思いを浮かべていた。

「高町なのは一等空尉、入ります」
敬礼をしつつ隊長室に入る。―すると。その人物が誰であるのかすぐに分かったのか、
思わず噴き出しそうになった。
「こういう時は久しぶり…と言うべきやろか?」
と優雅な雰囲気と物柔らかな物腰で関西弁を喋る茶髪の長い髪の女性は「シズル・ヴィオーラ」。入局から極めて短期間で管理局の一等陸佐にまで上り詰めた俊英であり、そしてその正体は惑星「エアル」の乙―HIMEであり、かつてHIMEと呼ばれていた存在の末裔でもある。
「シズルちゃん…まさかこんな形で‘合う‘なんてね」
「そういう事はお互いさまですえ…、‘先生‘。お聞きのとおり、しばらくの間、六課の指揮はウチが取らせて貰います」
シズルはそう言うと頭を抱える様な仕草を見せる。
「それは‘上‘の指示?」
「そう言う事になります。六課に睨みが効く人物と言う事で選ばれたらしいやけど、派閥争いは上層部がやればいい事…ウチ自身は先生や舞衣はん達の味方や」
「それを聞いて安心したよ」
なのはは,安心した表情でシズルと握手を交わした。それはかつて一戦を交え、一度は教師と生徒の間柄であり、敵同士であった2人の関係は複雑であるが、今は仲間同士である。事態を乗り切るためには、シズルが元の世界からそのまま転移してきたのなら、当然保持しているはずの嬌嫣の紫水晶の力が必要なのだとなのはは結論付け、久しく見せていなかった本当の自分―杉浦碧としての笑顔を見せた。



―西暦2004年 風華
「今日はここまで。次はここを勉強しておくように…」
と、高校生を前にして教鞭を取っているのは杉浦碧。彼女はある日から態度などに変化が生じていた。
(うわあ~大学はおろか高校にも行ってない私に教師なんて無理だよ~!しかも文系苦手なのにぃ…)
碧の肉体には彼女の魂と入れ替わりになる形で高町なのはの魂が宿っている。なのは自身は大学はおろか、高校にすら通っていなかった事もあって、内心、これでいいのかと不安だらけであった。しかも碧自身が大学院生なので自分の方の論文も書かなくてはならない事も相まって、彼女の苦労は並大抵のものでは無かった。同時に舞衣と入れ替わったティアナが異世界での高校生生活をエンジョイしているとは対照的であった。
(‘向こう‘はうまくやってるのかな?碧さん…私の体で好き勝手やってたら怒りますよ)
と教室を後にすると、舞衣と共に当直室に向かった。
「御苦労さまです」
「本当だよ。まさか高校教師をやることになるなんて思ってもなかった…」
碧は舞衣にこの生活への愚痴をこぼした。彼女にとって高校の教師生活というのは苦労の連続であるようだ。
「でも良かったじゃないですか。…あの人の仕事がよく分かって」
「な、なっ…!」
彼女は顔を赤くし、煙が出そうなほど照れている。この態度から察するに、少なくとも無限書庫の司書長を務めている‘あの人物‘の事を異性として意識し始めているようだ。奇しくも入れ替わる前の碧が考古学調査を行っていて、その資料に目を通した事が彼の一族が行っていた遺跡発掘、そして彼の心情への理解を深めたのだろう。
「それはそれとして…これからどうします?向こうも同じ事考えてると思うんですけど…」
「やっぱりティアナもそう思う?‘オーファン‘って言うあの化物(クリークス)共と言い、あの炎凪って子…、何かこの‘力‘の事を知ってるようだけど…、とりあえず私たちの正体を感づかれないように動こう」
「はい」
こちらは正体を隠す事に重点を置いた判断をしたようだが、ある一つの盲点があった。
それは言葉使いや態度に気を配っていないのである。いくら気をつけても最も素の自分が出やすい部分は隠せないのである。
(それで碧達は正体を隠すことを半ば放棄している)
「舞衣~!」
「命?食事まで待ってなさいってあれほど言ったでしょ?」
「そうなんだが…お腹空いたぞ~」
この少女の名は美袋命。舞衣を慕っている中学生のHIMEで、サ○ヤ人並みの大食い少女である。初見の際には同じく大食いなスバルの食事風景でなれているティアナをも唖然させたと言う。ちなみに声色がなのはの親友の月村すずかにそっくりだと言う。
「しょうがないわね…碧ちゃんも手伝って」
「OK」
2人はとりあえず命に当直室にダイニングキッチンで料理を始めた。
チャーハンなどの簡単なものだが、3人分の量を作るために量は多めである。
「ええと味付けは…っと」
本を見ながら調理料を入れて味を調整する。元々舞衣がどんな味づけをしていたのかはわからないのでほとんどカンで作っている。
「できたわよ~」
テーブルに食事を置くなり命が物凄い勢いで食いつく。美味しそうにたべているが、その内にキョトンとした顔で「ん…?味がいつもと違うぞ?」と言う。2人は内心、ギクッとしたがどうにか誤魔化す。
彼女たちの生活も前途多難だと言える。元々地球人だったなのはは割とすぐにこの生活に馴染んだが、舞衣の体に宿ってしまったティアナは苦労が多かった。ミッドチルダではすぐに陸士の訓練校に入学したので
年相応(現在のティアナの年齢から言えば中卒程度だろうか)の普通教育を受けてはいなかったので地球での高校生活はある意味新鮮だった。
期末テストに頭を悩め、アルバイトに勤しむなど、元の体の頃では考えられない事だった。
(ミッドにいたときとは違う充実感…。この生活も悪くないかも)
ティアナは食事をたいあらげていく命の姿に「やれやれ」とため息をつきつつ、今は遠く離れてしまったパートナーのスバルの身を案じた。
「アイツ…今頃何やってるのかしら」
「大丈夫だって。スバルならきっとうまくやってるよ」
「だといいんですけど。なのはさんこそ論文書かないで大丈夫ですか」
「にゃはは…なんとかやるって。多分」
「もしかしてぜんぜん書けてないんじゃ?」
「…」
「あたしも手伝いますから少しは進めてくださいよ?」
「あ、ありがとう~!!」

そんな地球でのティアナの心配をよそに、スバルはなのはが近接格闘戦に取り組み始めた事に心踊る気持ちでトレーニングに勤しんでいた。
模擬戦やこの前の戦闘で見せた動きに、何時の間に身につけたのか、見事な槍と刀捌き。格闘戦を得意とする彼女はまたなのはと拳を交えたい。しかしこの前の戦闘で姉もまるで別人のような戦い方を見せた事も気になる。
「何がなにやらどうなってるの?なのはさん達に続いて今度はギン姉まで…あのシズルっていう部隊長代理もあたしたちに何かを隠してるようだし……」
彼女は部隊の中の空気がそれまでと違っている事に感づいていた。
そしてキャロやエリオが聞いたというティアナが口走った「オトメ」と言う聞きなれない単語。そしてなのはの昔の知り合いと言い、なのはを頭領と呼ぶ「アリカ・ユメミヤ」と言う女の子。疑問は大きくなるばかりだった。
「いっぺん、本人に聞いてみよう」
スバルはアリカのいる部屋に足を運ぶ。事態は大きく動き出していた。








[6626] 魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女 外伝
Name: 9009◆ff456860 ID:6c236772
Date: 2010/04/14 17:21
魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝
     HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女 外伝
「ある19歳(中身24歳)の酒乱」

―ナンバースの襲撃から少し前のとある日
六課 なのはの自室
「ぷぁ~!このビール旨い!ミッドも悪かぁないわね」
Gパン姿でうちわを持ちながらビール缶を飲んでいるのはなのはであった。彼女はまだ19歳のはずなのだが、その身に宿す魂は20代中盤の女性なので、このような事をやっているのである。この飲酒行為はフェイトが執務官としての任務で不在だからこそ可能である。居れば大目玉を食らうのは確実だからである。ちょうど仕事が休みだったのもあって、六課の仕事はこの日を入れて7日ほど休暇を取ってある。
「こういう時しか‘杉浦碧‘に戻れないのは辛いな。まっ、しょうがない。これもあたしが選んだことだ」
彼女は今「高町なのは」を演じているが、好きな時に素の姿を晒せないのがこの生活の難点と言える。それに伴うストレスも少なからず存在する。そのために彼女は様々な物を試しては、最も自分に会うストレス発散方法を模索していた。これがその一つであった。
「まさか陽子のあの言葉を実感する日が来るとは……い、いいっ!?」
その瞬間、なのはは思わず飲んでいたビールを吹き出してしまった。
部下の「ヴァイス・グランセニック」がドアを開けて部屋に入ってきたからである。
「…何やってんです?なのはさん」
「ヴ、ヴァイス!?…い、いやこ、これは…」
「…ハ~ン、なのはさん、さては酒飲みましたね?」
「な、何の事かな?」
「とぼけたって無駄ですよ?何よりも顔が赤いじゃないですかぁ。おまけに3杯の空き缶がそこに転がってる上に、酒臭い」
「…そんな事を言うために来たの?」
酒が入っているのを感づかれた事に加え、いきなり酒臭いと言われたのがアレだったのか、
不機嫌そうな声を出すなのは。ヴァイスはそんな事をお構いなしに思い出したように用件を話し始めた。

「実は部隊長から、この頃のなのはさんの様子が変だから調べてくれと言われまして…」
「何、はやての奴が?」
なのはは酒のアルコールがだんだん回ってきたのか、言葉使いが荒くなる。
「ええ。言ってましたよ。‘変なんや、この頃のなのは隊長。行動もそやけど、口調や仕草が10代の少女じゃないって言おうか…それに…髪型も変になったし…‘って」
「…あんのバカチンがぁぁぁぁっ!!!」
10代ではないという点に加え、ヘアスタイルにケチをつけられたのが、酒に酔った彼女の怒りに火をつけたのか、なのははハルバードを手に召喚する。
「……ちょっとあのペチャパイ野郎の頭を冷やしてくる」
史実のティアナ撃墜時と同じ表情でなのはは舌打ちをした。
「お、落ち着いて!!部隊長もたぶん悪気があって言ったわけじゃ…」
その時すでに彼の言葉はなのはには届いていなかった。
「問答無用ぉ!乙女の17歳パァンチ!」
強烈な右ストレートがヴァイスの頬に綺麗に決まり、彼はドアごと吹っ飛び、さらに外の壁に叩きつけられる。
「グ、グハっ…!つ、強い…」
彼の屍を踏み越えたなのはは、怒りに身を任せるように自身のチャイルドを呼び出した
「こうなったらもう許さない!!出でよ!鋼の牙ぁ!…愕!天!王ぉぉぉぉっ!!」
召喚した愕天王に乗り、そのまま執務室に殴りこみに向かった。
ヴァイスは現れたチャイルドに目が点になりつつも最後の力を振り絞り、なんとか念話でシグナムに連絡をとる。
「大変ですシグナム姉さん!!」
「ヴァイスか?何かあったのか?」
「酒乱になったなのはさんが部隊長に殴り込みを…」
「なん…だと…?どういうことだ!?」
「実は…」
ヴァイスは迅速にこの事態をシグナムに説明した。
「…わかった。なんとかアイツを止めてみせる」
「気をつけてください…なのはさんのあの眼…マジで部隊長を殺す気で…」
そこまで伝えると同時に彼の意識は途絶え、念話も消える。
「…くそっ!」

シグナムは一目散にはやての元に向かった。
そしてなのはを止めるべく戦闘モードに入る。
「どうしたのシグナム。青ざめた顔しちゃって」
「シャマルか!緊急事態だ。ヴィータやスバル達に臨戦態勢だと伝えてくれ!」
「どういうことなの?」
「今は説明している暇はない!!とにかく頼む!!」
「わ、わかったわ!」
シグナムの焦りようからただ事では無い事だと察したのか、シャマルは慌てて廊下を駈けていった。

そしてシグナムは辺りの壁を盛大に壊しながら突進する愕天王となのはを迎撃した。

「やめろなのは!!こんな事をして何になる!?」
「シグナムか。貴様の相手をしているほどあたしは暇じゃない…邪魔だ、どけぇ!!」
なのはの口調は酒に酔った事で完全に「ミドリ」のそれに変わっていた。しかも声は普段のかん高いものではなく、ドスの効いた低めの声になっているなど、完全に殺る気まんまんであった。
「退くわけにはいかん!主はやてのためにも、なんとしてもお前をここで止めてみせる!!」
シグナムはBjを纏い、レヴァンティンを構えてその場に陣取る。
「…ならばこちらも全力の正義を見せよう。…愕天王、究極ぅ合身ッ!!」
なのはのその叫びと共に愕天王がバラバラになり、各部パーツが鎧のようになのはの体に装着されていく。(この形態は本来、チャイルドとしての愕天王には無かったはずだが、憑依の際にスレイブとしての機能も加わった物と思われる。ちなみになのはの肉体には REMが無いので戦闘力は幾分か劣るもの、それでも魔導士を相手にするには十分な戦闘力である)

「これぞ強攻装着型チャイルド…その名も愕!天!神!」
西洋の甲冑を思わせる武装を纏ったなのはは頬を赤くしながらも得物を構えてシグナムと対峙する。
(まただ…あの斧と言い、そしてこの武装。なのはの奴はいったい…)
シグナムはここで、最近のなのはが倒れる以前とは明らかに異なる態度をとっている事に初めて疑問を持った。好き好んで戦うわけではないはずのなのはである。…だが、ここ最近はどうだ。模擬戦に自ら進んで参加するようになり、格闘戦で自分達ベルカの騎士と対等に渡り合えるほどの腕前を発揮するようになった。実家に道場があると言っても、ここまで来ると,‘あなた誰?‘と言いたくもなる。
(-テスタロッサの奴もなのはにどこか違和感を感じるようになったと言っていたが…まるで‘別人‘になっているとしか思えんぞこれは…!!)
まるで別人になったかのように戦いを楽しんでいるなのはの姿にシグナムは‘このなのはは、姿が同じなだけの別人なのではないか‘という考えが頭を過る。変身魔法と言う考えも頭に浮かんだのだが、それならば同じ姿になれても性格は違うはずである。謎は深まるばかりであった。
「はあっ!!」
なのはの振るうハルバードの刃がシグナムの体を切り刻んだ。
傷は浅いもの、鮮血が傷口から噴き出す。
「ぐわっ…!」
「言ったろう?貴様の相手などしていられんとな!」
なのはは、何時になく冷酷な表情でシグナムに言い放つ。そしてまるで人を殺しなれているかのように血に染まった斧槍の刃を彼女の首もとに突きつけた。
「…死にたくなければそこをどけ」
と一言だけ言う。
「どういうことだ…?お前はこんな事をする様な奴ではなかった筈…!それにいくら実家に剣術道場があるといっても、ここ何週間かで急激に腕を上げられるわけはない!…それにその言葉遣い…本当にお前はなのはなのか?…答えてくれ!」
シグナムは刃を突きつけられつつもなのはに対して疑問をぶつけた。
この言葉に反応したのか、なのはは刃を引っ込めると頭に手をやりながらため息をつく。
「…まさかこんなに早く感づかれるとはね。いつ気がついた?」
「この間の模擬戦の時、お前はディバインバスターやSLBなどの砲撃を私に対して一度も撃たずに、接近戦を挑んできただろう?その時からだ。それにいくらリミッターがついているとはいえ、お前とあろう者が
ティアナに互角に持ち込まれるはずはない。それに書類を書く時に右手で書いていたしな」
「まいったね。さすがは烈火の将…お手上げだ」
「何…っ?」
「話がある。こっちに来てくれ」
なのはは真面目な気分になったのか、酒の酔いからさめたのかは定かではないが、シグナムに近くの無傷な一室に入るように促す。
どういうことだと考える間もなく部屋に招かれる。

部屋に入るとなのは以外にももう1人いることが分かった。しかもその人物は彼女の家族と言うべき人物だった。
「お、お前は!?」
「やはり気がつかれましたのですね」
そこには人間サイズに変身したリィンフォースⅡが凛としたたたずまいで椅子に座っていた。普段の幼さをまったく感じさせない、憂いを交えた表情のリィンⅡはシグナムにカルチャーショックさえ与えていた。
「リィン…なのか?」
「はい。しかし‘少なくともあなたの知っているリィンフォースⅡ‘ではありません」
「…!?」
「あなたにはお伝えなくてはなりません。今の私達がどうなっているのか」
リィンは凛とした表情でシグナムに語りかけ、自分達がどうなっているのかを詳細に説明した。それは入れ替わったという異例の事態を告白するといって良かった。なのはやティアナを初めとして、六課の何人かはその肉体は‘本人‘に違いないが、魂はまったくの別人になっている。彼女らが召喚していた武器に関しては、前世で有していた特殊能力の発現ということがシグナムに告げられた。
「…と言う訳です。驚かれましたか?」
「ええ。疑問には感じていましたが…まさか事実とは」
戸惑いを隠し知れない様子のシグナムの肩を愕天神を纏ったなのはがポンと手を叩いていった。
「まあ、あたしもこうなるなんて夢にも思わなかったんだよね。んじゃ今更かもしれないけど改めてよろしく、‘シグナムさん‘」
「ええ。こちらこそよろしくお願いします。‘ミドリ‘」
これが2人の本当の意味での出会いだった。この後からなのは(碧)とシグナムは友情を育み、互いに剣技を競うようになるのだが、それはまたの機会に語られるべきだろう。

「なっな、なっ…なにこれぇ~~!!」
外から悲鳴が響いてくる。フェイトの声だ。どうやら任務から帰還したようだ。
「あちゃあ…フェイトちゃんが帰って来たか」
なのはは頭を抱える仕草を見せると、ドアを開けて普通の格好でフェイトのもとに駆け寄った。
「フ、フェイトちゃん。こ、これはね…!?」
フェイトは怒っていた。腕にはなのはが自室に放置していたビールの空き缶が握られているが、はらわた煮えくりかえっている様で、握り潰してしまっていた。
「あれ…?どうしたのかな?なのは、どうしたのかな…?これ、お酒だよね…。私達まだ未成年だよ」
ドスの効いた声で激しく怒るフェイトになのははなんとか言い訳を言おうとしたが、あまりの迫力に言葉が出なかった。
「いや、その……」
「…少し頭、冷やそうか」
「ってそれあたしのセリ…!」
なのはが史実で言うはずだった一言を発すると、フェイトは戦闘態勢でなのはに問答無用で斬りかかった。
「ち、ちょっと待った!!」
ザンバーを、取り出した太刀で受け止めるとフェイトに向けて叫ぶ。
「あたしの言い分を聞いてってば!!」
―ここに恐ろしい夫婦喧嘩(?)の幕が開かれた。
果たしてどうなるか。









[6626] 魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女 第8話 
Name: 9009◆ff456860 ID:8d6fabfb
Date: 2010/04/25 12:34
魔法少女リリカルなのはStrikerS異伝~HIMEと乙-HIME、2つの力を持った魔法少女
第8話「Heart All Green」

―アリカに最近の出来事の真相を聞き出そうとするスバル。事態は大きく動き出そうとしていた。

「アリカ~ちょっといいかな?」
「スバルさんですか?ちょっと待って下さい~」
少しの間待たされ、OKとの合図を貰うと中に入る。部屋はそこそこ綺麗にまとまっており、掃除も行き届いている。
「何ですかスバルさん。用って?」
アリカが突然訪ねて来たスバルに疑問を浮かべる。何しろアリカは機動六課に来てからはなのは(碧)のメイド的な生活を送っていたので、六課のメンバーとは事務的な会話はしていたもの、こうして面と向かって話す事は初めてだったからである。
「実は…なのはさんの近頃の態度がおかしい事なんだけど。昔の知り合いのアリカなら何か知っていると思って」
「何で急にそんな事を?」
「あたしは知りたいの。なのはさんやティアが変わった理由を。それに…ティアは何かをあたしに隠してるような気がする。…パートナーだからって訳じゃないけど……何で何も言ってくれないんだろうと思って…」
スバルは自分の現在の思いをアリカに伝えた。『全てを知りたい』と言う一心だった。自分の親友がどうなってしまったのか、以前と違い、優しい態度を見せる親友、敵に過剰までの冷酷さを見せている憧れの人に、違和感を感じていた自分の切実な思いを伝えたかったのかもしれない。その真っ直ぐな眼差しに根負けしたのか、しばし沈黙した後に
「…ドアはきっちりと閉めてありますね?」と一言だけ言った。
「え?う、うん。多分」
「頭領からは言うなって、口止めされてたんですけど……スバルさんには負けました。お話します。ただし、他のみんなには言わないで下さいよ?すごく内密の話ですから」
と、切り出した。そして彼女は語り始めた。ここ最近起こった出来事の全てを。
なのはやティアナ、スバルの姉のギンガは肉体こそ正真正銘、本人のものだが‘魂‘は全くの別人と入れ替わっている事。そして彼女等の肉体に宿っている‘魂‘の出自が地球に関係している事実。自分の持つ力の事…その力の源流となった能力の事も。
「ティアが使ってたあの力は何なの?」
「高次物質化能力です。ただしあたしの持ってるのとはちょっと違いますけど」
アリカはかつてエアルにいた頃に自分を常に気遣ってくれていた「ミユ」から聞かされた
話をスバルに教えた。こことは別の世界で伝えられている「高次物質化能力」の事を。そしてチャイルドやエレメント…。
「あたしやシズルさんが持っているのは乙式だそうです。そんでもってティアナさんや頭領のは乙式の基になった源流の能力です」
「ほえ…ややこしい」
と掻い摘んで説明される。そして話はなのは達に宿っている魂の本当の名前に移る。
「なのはさんやティアナさんの意識が別人になっているってのはさっき話しましたね?ティアナさんの肉体を動かしている意識ってよりは―「魂」って言った方が合ってるかも―の名前は「鴇羽舞衣」さん、面倒見が好くって優しい人です。なのはさんに宿った人の名前は「ミドリ」さん。あたしは頭領って呼んでたんで…前に友達から聞いただけなんですけど…一言で言えば強い人です」
話を全て聞き終えたスバルは謎が解けた時のように、納得した顔をしていた。
「ありがとう。教えてくれて」
「ぜぇぇったいに内緒ですからね!」
と、強く念を押すアリカ。
(どうりであの時…)
スバルも通信士のシャリオ・フィニーノ…通称「シャーリー」に聞いた話によれば、はやてが攫われたと聞いた時のなのはは地面に拳を叩きつけて悔しがったと言う。少なくとも自分の知るなのはなら、そのような態度は取らないはずだから、アリカの話でこの行動の謎は解けた。
「お~い」
ドアをロックする音と声が聞こえてくる。どうも声の主はヴィータらしい。アリカが応対に出る。
「何ですか~?」
「部隊長代理がメンバーを全員集合させろって。お前もお呼びだそうだ」
「分かりました、すぐに行きます」
ヴィータからの伝言に答え、2人はブリーフィングルームに足を運んだ。



ブリーフィングルームではシズルから全員(手術のためにこの場にいないフェイト除く)に「自分が着任してからは色々忙しかったようやし、今日は特別に全員で模擬戦をやりますえ」との通達があった。シズルの力がいかほどか気になっていたヴィータにはちょうどいい機会だったようで、腕を組んで音を鳴らしている。
「おもしれえ…部隊長代理だか何だか知らねえか…あたしの強さを見せてやる」との台詞付きで闘争心をむき出しにしている。
なのはは「ちょうどいい慣らしになる」と一言言うなりニヤリとした表情を見せる。
それを「ほどほどにね~」とティアナがなだめている。シグナムの方も同じような心境らしい。特別にギンガも参加するらしい。
簡単な説明の後、トーナメント方式の総当たり戦が開始された。最初はシズルとヴィータの対決である。
「…ん?BJを展開しなくて大丈夫かよ」
シズルがBJを展開しない事に疑問を問いかける。すると。
「ウチには魔力の素養はありまへんから。その代わりと言うのも何やけど…ほな、いきます。マテリアライズ!!」
シズルはその言葉を合図に高次物質化能力を発動させ、元の世界でも使っていた嬌嫣の紫水晶のローブをその身に纏った。紫を基調とした服装と、シズルの持つ雰囲気と相まって、その姿はどこか優雅ささえ感じさせる。
「これがウチの本気どす。悪いけど…一発で決めさせてもらいますえ」
「へっ、ならその前にぶち込むだけだぁ!!」
ヴィータが先に仕掛けた。デバイスの「グラーフアイゼン」をラケーテンフォルムに変形させて回転による遠心力と推進力を利用して一気に決めるつもりだろう。しかしそんな状況にもシズルは余裕綽綽だった。腕に斬々候状のエレメントを出現させ、接近するヴィータのそれを更に超えるスピードをもってして、防御力があるBJをまるで薄紙のように切り裂いて見せる。
「なッ……はや…!?」
ヴィータはそれだけ言うのが精いっぱいだった。この直後、峰打ちで気絶させられてしまったのである。全ての力を発揮する前に軽くあしらわれたのは長い年月の戦歴を持つ彼女にとってもほとんど記憶のない事だった。
観戦していたなのは達は仮にも自分達の中でも強い部位に入る実力を持つヴィータさえも短時間で打ち負かしたシズルの力を再認識させられた。
「さすがシズルちゃん……腕は相変わらずか」
なのは(碧)がため息をつく。
「そりゃそうよ。なんてたってガルデローベのトップ3「トリアス」の中でも最強だったからね、シズルさんは」
ティアナ(舞衣)も感心した素振りを見せる。
なのは達は‘前世‘の記憶でシズル(もしくは静留)の圧倒的な力は認知していた。ギンガ(なつき)によればHiMEとしても最強で、その実力で同じHiMEのはずの結城奈緒や菊川雪之を一蹴したと聞く。それで乙HiME(オトメ)としても高い実力を持つ。

それを聞いた時、なのはとティアが思わず「それ、なんてチートぉ!?」と叫んでしまったのは言うまでも無い。

その次に行われたのはエリオ対なのはという異色の対決、シズルはシャマルにザフィーラの2人と戦った。
(絶対これ、持ってる得物で決めたでしょ…シズルちゃん。たしかにあたしのは槍だけどさ)やれやれとため息をつくと対峙しているエリオに向きかえり、斧槍を召喚する。
「それがなのはさんの得物ですか?どこから出したんです」
エリオの問いになのはは嬉しそうに「そうだ」と答えた。
エリオは接近戦が得意でないはずのなのはが自信満々に答えるのが気になっていた。しかも自分と同じ「槍」を扱うというのだから対抗心が湧いてくる。
「…手加減しませんよ?」
「ハッ!……いいだろう。本気で来い」
と返す。その表情はどこか楽しそうに見える。この戦いの様子を観戦していたシグナムはリィンフォースから聞かされた事が真実であることを再認識されられたらしく、苦笑いとも取れる表情を見せた。
『なのはの肉体は別人の意識によって動かされている』
大昔のSfで聞いたようなゴジップだが、戦いを好むはずの無いなのはが
敵に躊躇なく刃を向けるようになった理由も、全員を戸惑らせた冷酷な態度もこれで説明がつく。
リィンフォースⅡからの説明を受けた後に個人的になのはと話した時の会話がふと思い浮かぶ。

― とある日 なのはの私室

「なのは……、いやこうなってはミドリと呼ぶべきだろうか?」
「呼びやすい方でかまわない。今更どうこう言い訳するつもりは毛頭無いからな」
2人は酒を片手に語り合った。
なのはは酒が入ったせいか「ミドリ」の口調で接している。本来のなのはの口調からは180度異なっているので、シグナムは変な気分だと愚痴る。
「早速聞くが、時々口調が別人のようになるのは何故なんだ?」
問いに答えるようになのはは酒をグビッと飲んでから言った。
「それはどっちもあたしの本質だからさ。普段はそんな意識して無いんだが、気がつくとこの口調になってる時が多い」
そしてこの体になる前―前世と言うべきだろうか―はとある星で生きるためにとはいえ、自らテロ行為を働いてたと告白した。
「仕方がなかったってのは言い訳に聞こえるかもしれん。…だが、あの星じゃそうやって生きて行くしか無かった」
なのは-いやミドリは前世で自分の手を血で汚し尽くしたせいか、殺すと言う行為には躊躇わない。殺られば自分が殺られるだけだとも言う。
そしてフォワードメンバーが休暇中に保護した「ヴィヴィオ」と言う少女の面倒はティアナに一任するとの事。
「何故です?」
「あたしにはあの子を育てる資格は無い。それはなのはがやるべき事だ。もう`死んだ`人間のあたしの出る幕じゃないさ。それに…ティアナ、いや舞衣ちゃんならうまくやるさ。そういうのは慣れてるしな」


このような会話を交わしたことを思い出し、苦笑いを浮かべる。
その視線は槍斧を構えるなのはの姿に向いていた。
「参るっ!!」
2人は激しくぶつかり合った。互いの得物をぶつけ合うが、なのはの斧槍の威力は凄まじく、一振りで地面に地割れを起こす。
「えぇえええ!?反則ですよそれぇ~!?」
「悪いな。加減できん性分でな」
と悪ノリして斧槍を奮うなのは。一見して闇雲に振り回してるように見える。計算して振っているようにエリオには思えた。それほどまでに実戦馴れした戦い方だったからである。

さて、こちらはシズル。ヴィータを一蹴した後、後方支援メンバーのシャマル&ザフィーラと対峙していた。
その時だった。いきなりシャマルが相方のザフィーラを気絶させ、変身魔法で容姿を別の姿へ変えていくではないか。
「ば、馬鹿な…シ、シャマル……何を…!?」
「ごめんなさい。この姿はあなたには見られたくないの」
ザフィーラを別の場所に運ぶと、その姿―魂の持つ真の姿をシズルに見せる。
「……ふう。やっとあの堅苦しい演技の生活から解放されたわ。…久しぶりというべきかしら」
シャマル―魂本来の姿―珠洲の黄玉‘ハルカ・アーミテージ‘は演技から解放されたのと、久しぶりに本来の容姿に戻った爽快感からか、晴れ晴れとした表情を見せる。
「たいした役者どすなぁ。はやてはんにさえ悟らせないなんて」
でもなんで、こんな周りくどいやり方をしたんどす?」
シズルの問いにハルカはばつの悪そうな表情で答えた。
「だますつもりじゃ無かったけど、ああするしか無かったのよ。はやてには悪いと思ってはいるわ。仮にもマスターだしね…。
でも、この姿に戻ったからには本気で行かせてもらうわ。覚悟しなさい!!マァテリアライズッ!!」
そして変身が完了した後、その少女はその黄色がかった長い髪をなびかせながら叫んだ
「元・エアリーズ共和国軍准将にして,マイスターオトメ‘珠洲の黄玉‘ハルカ・アーミテージ!!‘まかさり‘通るわよっ!!」
その台詞を言った瞬間、「ハルカちゃん……。‘それを言うならまかり通る‘だよ…」とどこかの誰かが言った様な気がしたのは気のせいだろうか…
「つおらぁ!!」
ハルカの手にハンマーが召喚され、振り回す。
「でも演技にしてはごく自然やったような…何でや?」
そう。シャマルとして演技していたにしては、受け答えなどがはやてすらも違和感を覚えないほど完璧なものだったのはおかしい。もしこれが全て演技だったのならアカデミー賞ものであるが…。
「あたしが元の世界で行方不明になったあんた達の事を調査してた時…うっかり旧時代の遺跡の遺物に触れちゃったのが原因なのよ。で、作動させちゃって…、気がついたらこうなってたわけ。魂だけ入れ替わったナツキや舞衣と違って、この体には本当の持ち主の意識が残ってるのよよ。つまりあたしのこの体を動かしている意識は‘ハルカ・アーミテージ‘でもあり、‘シャマル‘でもあるって訳。仕草とかはシャマルからアドバイスをもらいながらなんとかしてきたけど」
ハルカは何故、自分がこうなったのかを説明した。おそらく元の肉体の魂と新しく宿った魂とが共存し、混じり合う形で体の均衡が保たれているのは彼女が初めてだろう。他のメンバーの内、碧は入れ替わった後でも、魂と肉体との親和性に何か問題でもあるのか、人格が安定していない。特に最近はその傾向が顕著に現れている。現に見ていても地球人「杉浦碧」としてよりも「アスワドの頭領 ミドリ」としての人格や性質が多く見受けられる。むしろ人格意識がミドリの方で完全に統一されたと言っていいだろう。一方、舞衣は比較的、元の人格を保ててはいるが、やはり乙hime時と地球の時の性格が半々程度に入り混じっている。それを考えると、元の次元での人格を入れ替わった後でも保てた例としては、ナツキに続いての快挙であるだろう。シズルは安堵と不安が入り混じった表情でため息をついた。


―とある場所

「高次物質化能力……実に面白いじゃないか」
「宜しいのですかドクター」
とある場所で不気味に笑みを浮かべる一人の男「スカリエッティ」。
彼は戦闘でなのはやティアナ、ギンガ、それとアリカが見せた「魔法とは異質の能力」に興味が沸いたようである。もしこの能力をモノにできれば彼の研究は新たなステージに進むだろう。彼のもとには
貴重なサンプル―「漆黒の金剛石」の乙女―ニナ・ウォンと、そのマスターがいるのだから。
「いいさ。所詮私は彼等に`造られた存在だ`。ならば見せてやればいいのさ。」
史実ではスカリエッティは誰かに造られた存在ということには気づいていたが、誰に造られたというのは認識していなかった。
しかしこの時空においての彼は自分が誰に造られたかを把握していた。
彼も「誰かの独善によって生み出されたのなら……」と史実以上の狂気をはらんでいた。
「あの部隊には私の研究成果によって生み出された存在がいると聞く。
その爪一つでも入手できれば……」
その言葉で当てはまるのは2人だが、彼が欲するのはだれであろうか。
その不気味な笑みからは想像できない。
「ノーヴェに例のアレを注入したよ。試作段階だがね。それと彼らがロストロギアとしていた契約に必要な`石`はチンクが手に入れた。理論上は可能なはずだ……」
「あの子を実験台に?」
怪訝そうにする「ウーノ」―ナンバースの1番目―に見せる表情は晴れ晴れとしていた。底知れぬ欲望に彼女は薄寒さすら感じていた。













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