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[15564] 仮面ライダーディケイド~タマゴを護る破壊者~(仮面ライダーディケイド×しゅごキャラクロス)
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:f81ad1a6
Date: 2010/01/15 12:02
お久しぶりですホットコーギーです。
最近少し落ち着いてきたんでSS書きを再開しようと思いました。
とはいってもまだ長い話はかけないので十二話くらいで終わらせようと思ってます。
けいおんの方は…もうちょっと待ってください。
それでは注意点の方ですか…しゅごキャラ分は原作と全く違う設定となるので気をつけてください。



[15564] プロローグ
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:f81ad1a6
Date: 2010/01/14 13:54
プロローグ
全ての世界の命運をかけた戦い、ライダー大戦から一ヵ月後…
破壊者としての運命から解放されたディケイド・門矢士は、仲間達と共に旅を続けていた。
その旅先で今は亡き岬ユリコの故郷、ストロンガーの世界に訪れていた士一行は、ユリコの墓参りに訪れた後、自分達の家である光写真館に帰ってきた。

「おお、皆おかえり!」お昼ご飯できてるよ!」

家に着くと夏海の祖父、栄二郎が出迎えに現れ、士、ユウスケ、夏海は彼と共に食卓に向かった。

「ふぅ~、腹減った~!」

ユウスケは腹を押さえながら空腹を訴えると、夏海は祖父に笑顔で話しかける。

「おじいちゃん、今日は何ですか?」
「今日はピザを焼いてみたんだよ。チーズたっぷりのヤツをね。」
「チーズ…か…」

士はふと仮面ライダーブレイド・剣立カズマの顔を思い浮かべた。
他のライダーたちと同様に復活した彼はアルティメットDとの戦いの後、自分の世界へと帰っていった。
今はBOARDの社長として社員達と友に働き、「進化」しながら日々を過ごしているだろうと士は思った。
やがて四人は扉を開け、リビングへと入室した。
だがその瞬間、四人の目は驚愕に見開かれた。

「これ、美味しいじゃない。」

食卓に白と水色が基調の学生服を身に着けたダークブルーの長髪が目立つ見知らぬ少女が座り、ピザを一切れ食べていたのだ。

「だ、誰だ!?」

ユウスケは少々びくつきながらも、少女に向けて荒げた声を投げかける。
だが少女はそれに動じることなくユウスケを無視し、満面の笑顔のまま椅子から立ち上がり、士に近づいてきた。

「何だお前は?」
「初めまして…ディケイド。」

少女が発した言葉に士達は再び驚愕すると、少女は笑みを崩さずに話を続けた。

「いきなり来てごめんなさい。でも、どうしても貴方に伝えなきゃならないことがあるの。聞いてくれるかしら?」
「俺に伝えたいことだと?」
「ええ、剣崎一真からの伝言よ。」
「剣崎…一真…」

「剣崎一真」…その名を聞いた士は表情を曇らせた。
剣崎一真は士の知るもう一人のブレイドであり、以前自分に襲い掛かった人間だ。
世界の再生に自分を利用したキバ・紅渡の仲間であり、渡と同様に、士にとって気に食わない存在である。

「今、ある世界にスーパーショッカーの残党が潜伏しているわ。」
「何だって!?」

士の隣に立っていたユウスケは一歩前に身を乗り出し、士は再び表情を歪ませた。
スーパーショッカー…全世界の制服をたくらむ悪の秘密結社である。
アルティメットDを倒したと同時に全滅したと思ったが、まだ生き残りが居たのである。
そして夏海も少女に駆け寄ると、慌てた口調で話し始めた。

「本当なんですか!?一体何が狙いなんですか!?その世界は一体何処なんですか!?」
「落ち着け、夏ミカン。」

士は夏海を落ち着かせると、再び少女に視線を戻した。

「そんなの全部説明してもらわなくたって分かるぜ。大方、俺にスーパーショッカーの残党を潰せってのがあいつの伝言だろう?」
「ええ、そうよ。」

少女は悪びれもせずにそういった。
士は思い切り嫌そうな目をしながら、一度軽いため息をついてまた喋り始めた。

「あの野郎…まだ俺を利用しようってのか?嫌だね。とっとと帰って、あいつにそんなにスーパーショッカーを倒したきゃ自分で倒せって言っとけ。あいつなら出きるだろ。」
「残念だけど、あの人は今自分の運命と戦ってる最中で、他の世界に行くことはできないのよ。だから貴方に頼みに来てるんじゃない。」
「士、聞いてやろうよ。」

ユウスケは士に視線を合わせると、彼に剣崎の頼みを聞くように促した。

「ユウスケ?お前何言って…」
「確かに、俺もお前があの人達にいい印象持ってないのはわかるよ。けど、彼らは彼らで世界を救うのに必死だったんだ。頼みくらい聞いてやろうよ。」
「私もそう思います。」

夏海もユウスケの意見に賛同する。

「スーパーショッカーがまだ居るなら、ほっとけないじゃないですか。あいつらを野放しにしたら大変なことになっちゃいます。もし士君が嫌なら、私が戦いますよ。私だって仮面ライダーなんですから!」
「…ったく、お人よし共が。」

士はまっすぐな二人に呆れながらも、剣崎からの頼みを聞き入れることに決め、再び少女に視線を合わせた。

「で、奴らの狙いは何なんだ?俺達が行く世界はどんな世界なんだ?」
「それは…あ?」

少女はふと右手に違和感を感じ始め、右手を見てみると体が消えかかっていることに気づき、その美しい瞳で士を見つめたまま話を続けた。

「ごめんなさい、私長い時間実体化してられないの。」
「はぁ!?」

士は呆れと怒りで眉間に皺を寄せたが、少女は表情を崩さずに話を続けた。

「ごめん、これ以上無理。行ってみればどんな世界か分かるから、とりあえず向かって。じゃあね♪」

少女はそういい残し消えていった。
それと同時に写真館のスクリーンが降り、光を放ち始める。
そのスクリーンには、赤、青、緑の三色の卵が描かれていた…



プロローグはここまでです。
この少女が誰なのかは皆さん、分かりますよね?
相変わらず未熟な作品で申し訳ありませんが、改めて宜しくお願いします…



[15564] 一話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2010/02/10 21:36
士達を行くべき場所へと導いた少女は、全てが灰色に染まった歪んだ時空へと姿を現した。

「あ~あ、折角外の世界に出れたのに、残念。」

少女はすこしがっかりしながら背伸びをすると、彼女の背後にオーロラが発生し、中から黒づくめの服装で身を包んだ青年が現れた。
剣崎一真である。

「頼んだ仕事はやってくれたみたいだな。」
「ええ、しっかりとね。」

少女はくるりと一回転して剣崎の方を振り返ると、士達に見せたのとは違う子供っぽい笑顔を剣崎に見せた。

「けど、わざわざ私を使うことないじゃない。伝えたいことがあるなら、自分で言ってよね。」
「士は俺を嫌ってる。それに、今更許してくれとも言えない。」
「全く…貴方も難儀な人ね。」
「難儀じゃなきゃ、アンデッドなんかやってられないよ。」

少女は呆れて一度ため息をつくと、少々困った顔をして再び剣崎に話しかけた。

「まぁ良いわ。用があったら、また呼んで頂戴。一真♪」
「ああ、頼りにしてるよ。」

少女は剣崎にウィンクすると、その姿を消した。
そして剣崎は背後を振り返ると、何処かへと去っていった…


一方、少女によって導かれた世界に到着した一行は、写真館を出、辺りを散策していた。
街は今まで訪れた世界の街並みと変わらず、怪人や戦闘員の気配は無い。
普通に見る限りは平和な世界だ。

「今までと同じで、街並みは変わりませんね。雰囲気も平和です。」
「でも、奴らはいつ攻めて来るからわからないから、気を緩めちゃ駄目だよ夏海ちゃん。」

ユウスケは油断している夏海にそう注意した。
スーパーショッカーはライダー達の隙を狙い、機会あれば攻めて来る恐怖の悪の組織だ。
今もどこかに身を潜め、爪を研いでいるに違いない。
そしてユウスケだけでなく、士にもそれはわかっていた。
敵はいつ、どこから攻めてくるかわからない。
気を緩めればやられるのはこちらなのだ。
士は不敵な瞳を光らせ、周囲をくまなく見直す。
そんな時、士の瞳はショッカーとは別の物を見つけた。
一人の中学生くらいの桃色の髪の少女が、数人の柄の悪い輩に絡まれていたのだ。
そしてその光景は、ユウスケと夏海もすぐに発見した。

「やばい!あの子絡まれてる!」
「行けない!助けなきゃ!」

ユウスケと夏海は大急ぎで少女の元に向かい、士も「やれやれ」と悪態をつきながら二人の後に続いた。


「おいおい姉ちゃん。ぶつかっといてだんまりはねぇだろ?」
「大丈夫かおい?」
「イテテ…ああ~こりゃ駄目だ、折れてるかもな~」

男達は下卑た声を発しながら少女に話しかけていた。
だが少女はそれに動じることなく、まるで汚いものでも見るような眼で男達を見ている。
癪に障った男達はイライラしながらも、その一人が少女の顎を無理矢理と右手の人差し指と小指で掴んだ。

「へへ、おいおい、いつまでも図に乗ってんじゃ…」

男が少女に暴力を振ろうとした瞬間、少女の近くまで移動していたユウスケと夏海は止めに入ろうとしたが、二人が少女を助けに入る直前、まるで時間が静止したかのような衝撃が二人を襲った。
なんと、美しい容姿を持った桃髪の少女が男の顔面に自らの拳を直撃させたのだ。

『な!?』

男達も、助けに入ろうとしたユウスケと夏海も、それを見ていた士の顔も驚愕に染まる。
そして少女は険しい剣幕で自分に触った男を睨みながら、低い声でつぶやいた。

「汚い手で私に触るな…!」
『ヒ…ヒィ!?』

男達は少女の眼力に恐れをなし、背を向けて逃げていった。
少女は少し乱れた制服を直すと、スカートの裾を揺らしながら颯爽と歩き去っていった。
ユウスケはその迫力に圧倒されながら呆然と立ち尽くし、夏海は「かっこいい…」と瞳を輝かせながら去っていく少女を見つめていた。

「男より強い女ってのは、どの世界にもいるもんだな。」

そして後ろで一部始終を見ていた士は先程の少女の迫力を思い出し、表情を歪ませた。


男達を蹴散らした少女は、ムスリとしながら歩道を歩いていた。
そんな少女の頭上に桃色のチアガールの姿をかたどった妖精に似た生き物が現れると、心配そうな顔をしながら少女に話しかけた。

「あむちゃん…また喧嘩して…ここ一ヶ月でもう十回だよ!もう止めようよ!」
「うっさい…あんたに関係ないでしょ。」
「あむちゃん!」
「ランはあむちゃんのこと心配してるんですぅ~!」

桃色のランと呼ばれた妖精の隣に、青と緑色の妖精も同時に現れ、あむを諭した。
この時、あむの周りには多くの人がいたが、誰も小さな妖精たちには気付かず、あむの横を通り過ぎていた。
あむは三人の妖精達の声を無視し、足を動かし続けた。
そんな時、あむの携帯電話が鳴り響いた。
携帯を取り出すと、ディスプレイには「歌唄」と表示してあり、あむはボタンを押して乱暴に電話に出た。

「もしもし?」
『あむ!やっと出た…あんた今一体何処にいるの!?』

電話の向こうからはボイストレーニングで鍛えたような美しい響きの声が聞こえた。
だがあむはその声を耳にした瞬間嫌悪感をあらわにし、強く奥歯を噛んだ。

『ちゃんとご飯食べてるの!?体壊してない!?いい加減家に…』
「歌唄には関係ないでしょ!あたしなんかに構ってないでレッスンしてなさいよ!一日に何回もかけてきて…うざいんだよ!」
『あむ!』

あむは電話を切ると、歌唄の番号を着信拒否に設定し、電話をポケットに乱暴にしまいこんだ。
そして再び歩き出そうとしたとき、何かの気配を感じ取った青い妖精があわててあむに話しかけてきた。

「あむちゃん!×たまの気配だ!」
「…丁度良い、クサクサしてた所だし。」

あむ達は青い妖精の指し示す方向に向け、足を進めた…


士達は一通りの散策を追え、写真館に戻る道中だった。

「結局、変わった所は見つからなかったな~」

ユウスケはすこしがっかりしながら上を向いてそう言った。

「あの女の子が嘘を言うとは思えないし…一体スーパーショッカーは何でこんな世界に潜伏しているんでしょうか?」

夏海も、なぜこんな何の変哲もなさそうな世界にスーパーショッカーが要るのかがわからなかった。
見る限り平和でライダーもおらず、荒れた世界には見えない。
こんな世界で一体敵は何を求めているというのであろうか?
士も疑問に思っていた。
そんな時、人々の悲鳴が一行の耳に響いてきた。

「何だ?」
「行ってみましょう!」

士達は表情を引き締めると、悲鳴が聞こえた方角へと走った。


士達が人々の悲鳴が聞こえた場所にたどり着くと、そこには黒い人型の怪物の姿があった。
頭に×印の装飾がついた怪物は不気味なうなり声を上げると、口から黒いガス状の光線を吐き出し周囲の物を破壊し、近くにいた人々に暴力を振るう。

「何だあれは!?」

ユウスケは面妖な怪物の姿に驚き、目を大きくした。

「あれがスーパーショッカーの怪人でしょうか?」
「いや…違う。」

士は夏海の疑問を否定した。
夏海とユウスケには分からないが、士は黒い怪物から怪人達が放つものとは違う気配を感じ取っていたのだ。

「(あの怪物…どことなく人の「悲しみ」や「諦め」に近い感じがする…)」

士が感じ取ったものは、人の負の概念に似た物だった。
よく見てみるとあの怪物のうなり声は人の泣き声によく似ている。
だが今の士に分かるのは、あれを放っておけば被害が拡大していくばかりだということであった。

「何だか知らないが、野放しには出来ないな。」

士はポケットからディケイドライバーを取り出し、腰に装着すると、ディケイドの絵が描かれたライダーカードをその手に構えた。
だが士がカードをベルトに装填する瞬間、一本のハートの装飾がついたステッキが回転しながら飛来し、怪物の頭に直撃した。

「何!?」

出鼻をくじかれた士は慌ててステッキが飛んできた方向を振り返る。
そこには、先程男達を蹴散らした少女・あむの姿があった。

「あいつ…」

あむは自分の隣を浮遊していたランをちらりと見ると、強い口調で言葉を発した。

「行くよ!ラン!」
「うん…」

ランは少しためらい気味にうなづくと、あむは胸の前で特殊な印を組み、大きな声で叫んだ。

「あたしの心!アンロック!!」

その言葉と共にあむの体は眩い光に包まれ、学生服から一瞬でピンクの露出した腹部が目立つチアガールコスチュームへと服装が変化した。

「キャラなり!アミュレットハート!」

あむは自分の「しゅごキャラ」の一人、ランの力をその身に纏い、アミュレットハートへと「キャラなり」したのだ。

「成程…どうやらここも、普通の世界じゃないみたいだな。」

士はアミュレットハートの姿を見た瞬間、士は悟った。
きっとこの世界でも自分を待っているのは争いと混沌である…と。


一話はここまでです。
もうお分かりと思いますがしゅごキャラの設定は大幅に変えて描いております。
×たまの設定も原作とは全くちがくする予定です。
原作が大好きという方にはお勧め出来ない内容となるので、お気をつけください…



[15564] 二話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2010/03/13 09:40
二話
「行くよ…ラン!」

アミュレットハートは両足にローラースケートを装備し、怪物に向けて一直線に突進した。
怪物は後方にジャンプしてアミュレットハートを回避すると、上空に浮遊したまま手にウォーターガンに似た銃を取り出し、その銃口をアミュレットハートに向けた。
怪物が引き金を引くと黒い不気味な液体が連続で発射され、アミュレットハートに襲い掛かる。
アミュレットハートはローラースケートを駆使して攻撃を素早く回避していたが、あむはその動きに納得をしていなかった。

「ラン!遅い!」
『あむちゃんと私の心が噛みあってないからだよ!いい加減落ち着いてよあむちゃん!』
「うっさい!もういい!ミキ!」
「うん…」

あむが叫ぶと、ランがあむから離れ、青いしゅごキャラ「ミキ」がアミュレットハートの頭上に現れた。
そしてアミュレットハートと一体化し、アミュレットハートの体は青い輝きに包まれた。

「何だありゃ?」
「妖精…か?」
「可愛い~♪」

ランとミキの姿を見た士達は、突如現れた妖精たちの姿にそれぞれの感想を口にする。
そして光が晴れると桃色の服装のチアリーダーをイメージしていたアミュレットハートの服装がブラウス、ホットパンツ、ガーターストッキングに変わり、キャスケットを被った青を基調とした絵描きをイメージした服装へと変化した。


「キャラなり!アミュレットスペード!」

新たにアミュレットスペードへと変身したあむは、巨大な鉛筆をその手に召還すると、その先端を怪物へと向けた。

「カラフルキャンバス!」

アミュレットスペードの叫びと共に鉛筆の先端からは七色の光線が放射され、怪物を襲った。
怪物は再びウォーターガンから黒い液体を発射して応戦したが、液体は光線にかき消されてしまい、怪物は七色の光の直撃を受けた。
怪物は空から落ちて地面に激突すると、行動を完全に停止した。
アミュレットスペードは「雑魚い…つまんない。」と呟くと、怪物を右手で指差し、再び口を開いた。

「オープンハート!」

アミュレットスペードの指からは美しい輝きが放たれ、怪物を包み込んだ。
そして怪物は黒い光の粒となり、跡形も無く消え去った。
そしてアミュレットスペードもミキと分離し、あむの姿へと戻った。

「あ~あ、つまんない。まだゲーセンで遊んでたほうが気晴らしになったし…」

あむは舌打ちをし、その場を去ろうとすると、先程の戦いを傍観していた士が彼女に近づき、肩に手を置いて呼び止めた。

「おい、待て。」

あむは思い切り不機嫌そうな顔をしながら士の方を振り向いた。

「誰おっさん?」
「なっ…!俺はまだそんな歳じゃねぇ!」
「あんたの歳なんて興味ないし。それより肩から手どけなさいよ。セクハラで訴えるよ?」

士は可愛げのないあむの発言に腸が煮えくり返り、拳をぎりぎりと握りしめていた。
夏海とユウスケは士が怒る前に彼女と士の間に入ると、士に変わってこの世界と彼女の事情を聞き始めた。

「ごめん!でも教えて欲しいんだ!君のさっきの姿は何?」
「あの化け物は一体何なんですか?」
「は?関係ないじゃん?うざいよあんたら。」

あむは夏海とユウスケも乱暴な言葉でふりきると、三人の前から歩き去ろうとした。
だがあむが士達から数歩離れたその時、彼女を呼ぶ声が耳に届いた。

「あむ!」
「!?」

あむが声が聞こえた方角を向いてみると、そこには髪をツインテールに結び、若者向けの服を着た金髪の美しい少女の姿があった。
外見はあむより大人っぽく、高校生くらいの年齢の印象を士達は受けた。

「歌唄…」
「探したよ…あんた今まで一体どこほっつき歩いてたの!?学校に連絡しても全然あんた出ないし、心配してたんだよ!」

金髪の少女は聞き心地の良い声であむに歩み寄ると、優しくあむの肩に手を乗せた。

「一緒に帰ろう。今日はあむの好きな物作るから、ね?」

少女は優しい声色であむを諭す様に言った。
だがあむは少女の手を強引に振り払うと、少し潤んだ目で少女を睨みつけた。

「あむ…?」
「うざいって言ったでしょ!もう関わらないでよ!」
「え…?」
「あんたはいつもいつもあたしを子供扱いして…血も繋がってないくせに姉貴面しないでよ!」
「あむ!私は…」
「何?「イクトが帰るまで活動休んでバイトする」?どうせ、あんたなんか世間の顔色伺ってやさしいお姉ちゃん演じてるだけじゃない!いちいちムカつくのよ!
どうせ本心じゃあたしなんかどうでもいいって思ってるんでしょ?あんただって…イクトだって…!あたしに帰る場所なんてどこにも無いんだよ!」

あむはひとしきり言いたいことを言った後、少女に背を向けて走り去っていった。

「あむ!」

少女は悲しみに染まった瞳であむの背中を見ていたが、無理矢理と追おうとはしなかった。
そのやり取りを一部始終見ていた士は、とりあえず少女からも情報を得ることが出来るかもしれないと考え、少女に近づいて話しかけた。

「おい。」
「え…?」

少女は目尻に光る涙を指先で拭い去った後、士の方を振り向いた。

「あんたに…聞きたいことがある。」


士達は金髪の少女・日奈森歌唄に、彼女の自宅へと招待された。
家は女子高生が住むには少し大きな白い一軒家で、家の中もしっかりと掃除がされていた。
歌唄と共に食卓に座り、出されたお茶を飲んでいた士達は、なぜ年端も行かない少女がこんな家に一人で住んでいるのか、この歌唄という少女とあむは一体どんな関係なのかが気になった。
だが雰囲気が気まずく、中々話を切り出せない。
しかしいつまでもだんまりという事では話が進まないため、夏海から話を切り出した。

「あの…歌唄さん…でしたよね?もしあのあむちゃんって子が変身したチアガールや絵描きさんみたいな格好について知っていたら、教えて欲しいんです。」
「見たんですか?」
「ああ、あのクソガキの頭の上に変なのが二匹飛んでるところも見た。」
「おい士!」

ユウスケはあむの悪口をいった士を注意したが、歌唄は少し悲しそうな目をしながらも士達を見つめ、口を開いた。

「分かりました…見えるんなら、あの子が迷惑をかけたお詫びに説明しなければなりませんね…」

歌唄はポケットから黒と白の二食の卵を取り出すと、それをテーブルの上においた。

「なんだこれ?」

士が首をかしげると、突然卵がわれ、黒い卵の中からは悪魔、白い卵の中からは天使に似た妖精が現れた。

『!?』
「お初にお目にかかります…」
「チィーッス!ヨロシク~!」

二人の妖精の少女の性格は正反対で丁寧に挨拶する天子とは違い、悪魔の方は砕けたしゃべり方で挨拶をする。

「ちょっとイル!初対面の人に何て挨拶の仕方をするんですか!?」
「うっせ~よエル!これでも食らえ~!」

イルと呼ばれた妖精は面白半分にエルと呼ばれた妖精にキックを浴びせた。

「ひゃあ~!」
「へへへ!うりうりうり~!」

イルはニヤニヤと笑いながらエルをそのままいじめ続けると、士達はあっけにとられながらその光景を見つめていた。

「何だこいつら…?」

士は素直に疑問を口にすると、歌唄はすぐに答えた。

「しゅごキャラです。」
『しゅごきゃら?』

士達は聞き慣れない単語に困惑し、首をかしげる。
歌唄はこの世界の情報を士達に伝えるため、そのまま説明を続けた。

「しゅごキャラは、なりたい自分が妖精と言う形になった存在です。この世界の子供達は、皆心の中にココロのたまごを持っています。
しゅごキャラは、そう言ったココロのたまごから生まれた未来の自分の可能性の写し身です。」
「で、そこで苛めてるこれと苛められてるそれはあんたの未来の可能性の写し身なわけか?」

士はエル苛めを続けるイルを見下ろして言った。

「ええ、そうです…」

歌唄は苦笑しながら肯定すると、再び暗い表情に戻り、話を続ける。

「あむが戦っていたのは×キャラ…夢を諦めた子供達が捨ててしまったココロのたまご、×たまから生まれた邪悪なしゅごキャラです。
私やあむ…この世界でしゅごキャラを持った「キャラ持ち」の人間の中でも、しゅごキャラの力を最大限に引き出せる「キャラなり」が出来る人間は
、暴走する×たまを浄化するために戦っているんです。」
「へぇ…」

士はこの世界の事情を理解し、両腕を組んだ。
だがまだスーパーショッカーの狙いが分からないため、新たな話題を振る。

「それでそのココロのたまごやしゅごキャラとやらに、何か「力」に関連する物は無いのか?世界の全てを支配する力を得ることが出来るような何かはさ?」
「「力」と言われれば「力」かも知れませんが…一つあります。エンブリオです。」

歌唄は再び士たちの瞳をまっすぐ見つめ、話を再開する。

「エンブリオは、どんな願いも叶えるといわれている伝説の真っ白なタマゴです。でも、誰もその姿を見たことはありません。私達キャラ持ちの間では、夢物語の代物です。」
「なるほど、だいたい分かった…」

士は確信した。スーパーショッカーはあるかどうか分からないもの目当てに行動したりはしない。
スーパーショッカーの狙いは間違いなくそのエンブリオであり、それは実在しているのだと…


その頃都心から離れた採石場の地下で、悪の秘密結社たちは密かにその爪を研いでいた…

「諸君!よく集まってくれた!」

スーパーショッカーの生き残りであり、ディケイドを追う謎の男・鳴滝ことゾル大佐は、手に持った鞭を振るいながら眼下の戦闘員達に演説を開始した。

「我々スーパーショッカーは、ディケイドにより辛酸を舐めさせられた!だが、我々はまだ負けたわけではない!その手にエンブリオを手にし、全世界を征服するため、皆の力を貸して欲しい!勝利は我々、スーパーショッカーの手にあるのだ!!」
『イィーーーーーー!!』

ショッカー戦闘員達は腕を振り上げ、ゾル大佐と組織への忠誠誓った。
そしてゾルは鞭を下げ、不気味に微笑むと、ゆっくりと口を開いた。

「ディケイド…このしゅごキャラの世界が貴様の墓場だ…!」


その頃、都心から少し離れた廃ビルの屋上に一人の青髪の少年の姿があった。
少年は顔立ちの整った美しい容姿をしていたが、顔色は悪く、身に着けていた黒い上着とジーンズも汚れ、ボロボロになっていた。
そして壁にもたれかかって座る少年の隣には、猫耳が目立つ小さな妖精の姿があった。

「イクト~、大丈夫ニャ?」
「うっせぇよ…昼寝の邪魔だ…」
「そんなこといって、最近まともにご飯も食べてないニャ!あむと歌唄の所に返ろうニャ!」
「…出来ねぇよ。」
「何でニャ!?いくらあむが大切だからって、いつまでも隠してるわけには…」
「あむの為だけじゃねぇよ…アレが実在することが分かったら、奴らは…」
「見つけたよ♪」
『!?』

少年と妖精の前に、茶のトランクケースを片手に持ち、ベージュのジャケットを羽織った青年が突如現れた。
仮面ライダーディエンド・海東大樹である。
大樹は宝物を見るような目で少年を見つめていると、少年は警戒しながら立ち上がった。

「君、日奈森イクト君だよね?」
「誰だアンタ?」
「なぁに、ちょっとしたお宝ハンターさ。」

大樹は空いている右手を銃型に形作り、それを少年へと向ける。

「君の持っているハンプティロックとダンプティキー…貰うよ♪」


そんなに長くないですが二話はここまでです。
次回でなぜ歌唄とイクトの苗字が同じなのか説明します。
しかししゅごキャラ関係で気になることが一つあります。
一体しゅごキャラって何歳まで持ってられるんだろ?



[15564] 三話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:f81ad1a6
Date: 2010/03/13 09:42
三話
ブレイドの世界…平和を取り戻したこの世界で、BOARD社長であり、仮面ライダーブレイド・剣立カズマは社長室のノートパソコンをたたみ、椅子の上で大きく背のびをした。

「う~ん!今日も平和だぜ~!」

アンデッドが全て封印された後、アンデッドと戦う目に設立された会社であるBOARDは、地球環境再生の為のエコロジー専門の会社として再編した。
高い技術力によって生み出された大気清浄用装置を搭載した宇宙ステーションは地球の汚れた大気を綺麗にし、ブルースペイダー等ライダー専用マシンに搭載された地球環境に無害のエンジン、「アトミックブラスト」の簡易型が全世界の一般車両に普及し、CO2排出にも歯止めがかかってきた。
世界中に散らばる危険な廃棄物も派遣した社員達に処理させるだけではなく、自分の仲間である菱形サクヤ、黒葉ムツキ、非常時には社長である自分もライダーの力を使って処理している。
今後は冷暖房にも特殊な装置を組み込み、温室効果ガスを一切放出しない機械を開発する予定である。

「BOARDは地球環境再生の為の会社として経営していく…これからは、この世界を清潔にするために俺達は戦っていくんだ。」

カズマはふと自分の脳裏に、仲間と共に働き、進化していくことを教えてくれた男の顔を思い浮かべた。

「もしこの世界が綺麗になったら…士に見てもらいたいな。」

もしこの世界が綺麗になったら、自分に大切なことを教えてくれた士に一番に見てもらいたいと、カズマは考えていた。
だが些細な願望を抱いた矢先、カズマの前に不気味なオーロラが現れた。

「!?」
「残念だが…この世界に士はまだ来ない。かわりに…」

そしてその中から黒尽くめの服装を身に纏った男が現れ、カズマの前に立つ。
その男は「オリジナル」ライダーの一人、剣崎一真であった。

「お前が士に会いに行ってもらう。」
「な、何だアンタ!?どっから入った!?」

カズマは椅子から立ち上がり、慌てて身構えた。
剣崎はそんなカズマを冷静な目で見つめ、話を続ける。

「剣立カズマ…もう一人の俺よ。」
「もう一人の…?アンタ一体…」
「士は今戦いの中にいる。だが、あいつの力だけでは切り抜けることが難しいかもしれない。カズマ…仮面ライダーブレイド。
悪いが、お前には俺の代わりになってもらう。」
「代わり…だと…?」


ディエンドの世界…海東大樹が生まれ育った世界である。
その世界の片隅に、マントを纏い、雪に覆われた平原を歩く一人の男の姿があった。
大樹の兄、仮面ライダーグレイブ・海東純一である。
純一は自らの本性を弟と仲間たちに暴露した後、たった一人で自分の世界を旅していた。
それが以前この世界を支配していた「14」と同等の力を得るための旅なのか、それとも彼には別の本意があるのか、それは誰にも分からなかった…
そして純一が歩く道を、突如謎のオーロラが塞いだ。
そしてその中から、鋼の体を持った異形の怪物と、植物に似た姿の女性的な姿を持った怪人が現れた。
スーパーショッカーの改造魔人、鋼鉄参謀とドクターケイトである。

「何者だ?」

純一は冷めた瞳で二人をにらみつけると、二人は不適に笑い、言葉を発した。

「イッヒッヒッヒ…アンタ、海東純一だね?」
「貴様の事は調べている。この世界を自分の物にしたいのだろう?ならば、我々に力を貸してもらう…」


「君の持っているハンプティロックとダンプティキー…貰うよ♪」

大樹はさわやかな顔で指を解いて平手に買え、催促するような態度を取った。
少年・イクトは目付きを鋭くし、ゆっくりと立ち上がると、弱々しく身構えて警戒する。

「アンタ…スーパーショッカーか…?」
「へぇ…スーパーショッカーを知ってるのか…もしかして、あいつらもキーとロックを狙ってるのかな?なら早く奪わなければいけない…それはエンブリオへの鍵だからね。」
「悪いけど…アンタに渡すつもりはねぇよ!」

イクトは素早い身のこなしで大樹の顔へと拳を突き出した。
だがそれはやはり弱々しく、簡単に大樹に片手で受け止められてしまう。

「やめたまえ。そんな体じゃ満足に抵抗もできないだろう?」
「へ、ほざいてろ!」

イクトは蹴りを繰り出し、大樹から距離をとった。
大樹は「仕方ないな…」と呟きディエンドライバーを取り出し、その銃口を向けようとする。
だがすでにイクトの姿はそこには無かった。

「やれやれ…流石、野良猫君、逃げ足だけは天下一品だな。」

大樹はディエンドライバーをクルクルと回転させ、それをしまうと、持っていたトランクを肩に担ぎ、その場から去っていった。


「はぁ…はぁ…」

大樹から逃げたイクトは、さっきまで体を休めていた廃ビル付近の路地裏に身を隠していた。
大樹から間合いを取った隙に自分のしゅごキャラ「ヨル」とキャラチェンジし、猫のように俊敏な動きでここまで移動していたのだ。
だが既にイクトの体にはキャラチェンジに耐える体力はなく、すぐまた壁に寄りかかるように倒れた。

「イクト~!」

ヨルは涙目になりながらイクトにすがり付く。
イクトは少し呆れ気味にヨルを横目で見ると、微笑しながら唇を開いた。

「大丈夫だ…少し疲れただけだ…」
「嘘ニャ!もうイクトの体は限界ニャ!このままキャラチェンジやキャラなりをし続けたら、死んじゃうかもしれないニャ!」
「心配するなって、俺は死なな…!?」

ヨルを慰めようとしたその時、イクトは何者かの殺気を感じ取り、うつむいていた顔を上げた。
そこにはスーパーショッカーの送り込んだ刺客、ゼブラファンガイアの姿があったのだ。

「見つけたぞ小僧…さあ、ロックとキーを渡してもらおう…」
「チッ…!」

イクトは壁を支えにして立ち上がると、ゼブラファンガイアを睨み付け、弱々しく身構えた。


その頃、士達は歌唄の家で彼女手製のシフォンケーキを頬張っていた。
本当はすぐ帰るつもりだったのだが、あむが迷惑をかけたお礼ということで歌唄からケーキを出され、士が人からの厚意は受け取るべきだと言うことで結局歌唄手製のケーキを皆で食べることになった。

「美味しい!歌唄ちゃん、お菓子作り上手なんですね!」

夏海はケーキに舌鼓を打ち、味を褒めると、歌唄は恥ずかしそうに笑った。

「あはは…これでも、家事の事は結構勉強してきたんです。両親にはわがままを言ってましたから、時間がある時は手伝えるようにって、自分から母に教わってたんです。」
「そういえばあむちゃん、歌唄が活動がどうたらって言ってたけど、あれどういうこと?」

ユウスケが思い出したように歌うに聞くと、歌唄はほんのりと頬を染める。

「恥ずかしいんですが…私、歌手なんです。」
『ええええええ!?』

夏海とユウスケは目を見開いて驚き、危うく持っていたフォークを落としかけた。
士はあまり動じずに話を聞いていると、歌唄は話を続ける。

「とはいっても、そんなに売れているわけじゃないし、CDも一枚しか出してませんけど…」
「でもCD出すなんてすごいじゃないですか!?どうして活動休んでるんですか?」

夏海は子供のような瞳で歌唄に聞くと、歌唄は表情を暗くし、椅子から立ち上がった。
そして窓際に置いた写真立てを手に取ると、再びテーブルについて写真立てを食卓の中心においた。
中の写真には、小学生位の身なりをした歌唄とあむ、そして陽気に笑う歌唄とあむに挟まれた青髪の少年と、あむに抱きつく小さな少女、そして優しそうに笑う二人の男女の姿があった。

「なんだこれは?」

士が聞くと、歌唄は悲しく、辛そうにしゃべりだした。

「私とあむの子供の頃の写真です。私とあむに絡まれてる男の子は、私の兄さんの日奈森イクト…それからあむに抱きついているのがあむの妹のあみ…それから私とイクトの義理の両親、あむとあみのお父さんとお母さんです。」
「そういえばあのガキ、お前に血が繋がってないくせにって言ってたな?あれはどういうことだ?」
「…すべて、お話します。私が歌手を休んでいる理由と、あむが笑わなくなった訳を…」


今から十年程前、幼いイクトと歌唄は、親戚の日奈森家に引き取られ、しゅごキャラの研究を行っていたあむの父と、その妻であるあむの母の養子となった。
理由は天才バイオリニストだった二人の父、月詠或斗が飛行機事故に合って亡くなり、母の居なかった二人は家族を失ってしまったからであった。

「今日から、ここが二人の家よ。」
「これから、皆で仲良く暮らしていこう。」

あむの父と母はリビングに訪れた二人を祝福したが、二人の顔は悲しみに染まったままであった。
やがて歌唄は声を上げて泣き始め、イクトも唇を噛んで泣き始めた。
あむの父と母は二人を安易に慰めることができず、困り果ててしまったが、そんな時、イクトと歌唄の服の袖が引っ張られた。
二人がふと見てみると、そこには或斗が亡くなる以前から二人になついていた幼いあむの姿があった。

「イクト兄ちゃん、歌唄お姉ちゃん、泣かないで。今度は、あたしが二人の妹になるよ…だから泣かないで…」

あむは二人を自分なりに慰めると、自分が折った不恰好な折り紙の花を渡した。



「それからのこの家での日々はとても楽しかった…初めて家族旅行に行った日も、あむが小学校に上がった日の入学パーティーも、あみが生まれた日も、私達三人にしゅごキャラが生まれた日も、みんなかけがえのない思い出です。
私もあむもイクトも、こんな楽しい日々がずっと続くって思ってました…けど去年…」


一年前…三人の楽しい日々は突如終わりを告げた。
三人の両親と妹のあみが交通事故で事故死したのだ。
幼稚園まで車であみを迎えに行った帰り、居眠り運転のトラックと三人が乗った乗用車が激突したのである。

「ひっく…お母さぁん…お父さぁん…あみぃ…こんなの…嫌だよぉ…」

中学に入学したばかりのあむは病院のベッドに横たわり、顔に布を被せられた三人の前で大粒の涙をこぼし続けた。
歌唄とイクトも声に嗚咽をまじらせ、目から涙を流す。
三人の幸せな十年が終わりを告げた日であった…


そして、士達がこの世界を訪れる一ヶ月前…
それは大雨が降る夜であった…

「待って!」

家の門の前であむはずぶ濡れになりながら、リュックサックを背負い、或斗の形見であるバイオリンのケースを片手に持ち、家から出て行こうとするイクトにすがりついた。
イクトが急にこの家を出て行くと言い出したのだ。

「放せよ、あむ。」
「イクト…なんで…なんで出て行くの!?」
「…」
「お父さんもお母さんもあみも居なくなって…イクトまで居なくなっちゃったら私…私…」
「…!」

イクトは強引にあむを振り払うと、彼女の方を振り返り、静かに言葉を発した。

「さよなら…」

イクトはあむに別れを告げると、彼女の前から走り去っていった。
まるで夜の暗闇へと消えていくように…

「イクトォーーーーーーーー!!」


歌唄が話を終えると、周囲の雰囲気は重く沈み、士達の顔も暗く彩られていた。
歌唄は再び三人の顔を交互に見ると、また口を開く。

「私はイクトが出て行った後、家計を支えるために仕事を休んでアルバイトを始めました。
でもイクトに兄以上の好意を持っていたあむは、彼がいなくなった後強く心を閉ざしてしまいました…あの子はイクトに裏切られたと思っているんです。
だからあの子の家はここなのに、帰る場所を失ったと思い込んでいるんです…」

歌唄の目に再び涙が光り、頬から流れ落ちる。
写真に映る笑顔とは対照的に、今の歌唄の姿は痛々しく、とても悲しそうだった…


三話終了です。
すみませんすさまじい原作ブレイカーで…
リ・イマジということで思い切りぶち壊しをやってみたかったのですが…やりすぎだったかなぁ…?
とりあえず次回は士に変身をさせます。
カズマと純一の役回りもいずれ…
しかしプロローグと一話の「彼女」が出てくるシーン…書き直したほうがいいかな…?



[15564] 四話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:e43c9190
Date: 2010/02/10 21:41
四話
歌唄の話を聞いた後、彼女のアルバイトの時間が近づいたため、士達は日奈森邸を後にした。

「あのあむちゃんって子…悪い子じゃなかったんですね…」
「うん…家族とお兄さんを一辺に無くしちゃったから、心がずたずたに傷ついてるんだ。」

夏海とユウスケはあむの生い立ちに同情した。
特にユウスケは自分の世界で大切な人を守れなかった過去を持っている。
愛した人を失うことがどれだけつらいかユウスケはよく知っているのだ。

「ったく、お前らはなんであんなクソガキに同情できるんだ?ただ単に悲劇のヒロイン気取ってるだけじゃねぇか。」
「士!」
「士君!」

だが士はあむに感情移入はせず、夏海とユウスケは士の無神経な発言に腹を立てた。

「だってそうだろ?自分が辛い目にあったからって、自分の姉貴や周りに当り散らすガキになんて、俺は同情できねーな。」

夏海とユウスケは士の冷たさに呆れ、何も言えなくなった。
士はいつもこうだ。他人には冷たく接し、他人への同情とはまったく無縁。
それも同情は優しさじゃないと考える士なりのスタイルなのは二人には分かっていたが、やはり士に同意はできなかった。
三人はこの気まずい雰囲気のまま、家への道を歩く。
だが三人はその道の途中、ぴたりと足を止めた。
自分達の前に、片手にバイオリンのケースを持ち、ズタボロになった少年が倒れていたのだ。

「!?、夏海ちゃん!」
「大変!」

ユウスケと夏海は少年に駆け寄り、彼を抱き起こす。
幸い息はあったが、かなり衰弱しており、肌も傷だらけだった。

「こいつ…?」

士は少年の顔を見ると、目を細め、唇を少し噛む。
この少年の顔をどこかで見たような気がしたのだ。
だが頭の中のイメージは曖昧で、よく思い出せない。
そんな時、少年の懐から小さな猫耳の妖精が現れた。

「ユウスケ!」
「これって、確かしゅごキャラ…ってことはこの子も「キャラ持ち」って奴なのか?」
「お前達、おいらが見えるのかニャ!?」

猫のしゅごキャラはユウスケ達が自分を見ることができることに驚いた。
歌唄によれば、しゅごキャラはキャラ持ちかココロのたまごが生まれる寸前の子供、以前キャラ持ちだった大人、もしくはキャラ持ちと長く一緒にいた者にしか見えないと士達は聞いた。
だが士達はその何にも当てはまらない。
おそらく自分達は異世界人のため、何らかの補正が働いているのだろうと士達は解釈していた。

「見えるのなら、おいらのお願いを聞いてほしいニャ!イクトを助けてくれニャ!」
「イクト…だと?」

士は瞳を少し大きく開いた。
イクトとは、先程歌唄から聞いた彼女の兄の名前だ。
まさか彼がそのイクトなのだろうか?
だが考える時間もなく、異形の影が突如出現した。
ゼブラファンガイアである。

「もう逃がさんぞこのくたばりぞこないめ…!」
『!?』

夏海とユウスケはイクトとそのしゅごキャラを守るように彼らの前に立ち、士は二人の中心まで移動する。
そしてポケットからディケイドライバーを取り出すと、ゼブラファンガイアを鋭い眼光で睨み付けた。

「なるほど、剣崎一真のお使いが言った事は本当だったらしいな。」

そして腰にベルトを装着してバックル部を展開し、「ディケイド」が描かれたライダーカードを取り出すと、それをベルトにセットする。

「変身!」

最後に掛け声とともにバックルを閉じると、「Kamenride…Decade!」と電子音声が流れ、士の周囲に無数の透明な「影」が現れる。
その影は士に吸い込まれるように彼と一体化すると、彼の体を灰色の鎧が包み込む。
鎧は鮮やかなマゼンタピンクに彩られると、仮面の前に数本の棒状の物体が現れ、顔に突き刺さるようにセットされた。
士は「仮面ライダーディケイド」へと変身を遂げたのだ。

「ディケイド!?なぜ我々がこの世界に居ると分かった!?」

ゼブラファンガイアは突然のディケイドの出現に驚き、数歩後ずさった。
対するディケイドは腰のライドブッカーを手に取り、ソードモードへと変形させると、その先端を指で研ぐように撫で、切っ先を敵へと向ける。

「どうだって良いだろ?そんなもんは。」
「クッ…おのれぇ!」

ゼブラファンガイアは自分の武器の剣を構えると、ディケイドに向けて突進した。
ディケイドも剣を構えて怪人に立ち向かうと、すれ違いざまに敵の体を切り裂いた。
それからの展開は圧倒的であった。
ディケイドは出会い頭の一撃を加えた後、すぐにこちらを振り向いたゼブラファンガイアに再び剣戟を喰らわせ、さらに三、四撃めと攻撃を加える。
もともとそれほどの兵ではないゼブラファンガイアはディケイドに全く歯が立たず、サンドバッグのように攻撃を受け続けた。

「Finalattackride…DeDeDeDecade!」

最後にディケイドはライドブッカーを仕舞い、ディケイドライバーにディケイドの紋章が描かれたカードをセットする。
そして電子音声と共に空中にジャンプすると、ディケイドの前に十枚の紋章が描かれたスクリーンが現れ、ディケイドはキックポーズをとって降下しながらスクリーンを潜り抜けていく。

「はあぁぁぁぁぁあ!!」

ディケイドのキックはゼブラファンガイアの胸部に直撃し、激しい火花を上げた。
ディケイドの必殺技「ディメンションキック」である。

「グギャアアアアアアア!!」

ゼブラファンガイアは断末魔の雄叫びと共に爆発すると、ディケイドは変身を解き、士の姿へと戻った。
そしてイクトの快方をしている二人の元に来ると、意識を失っている少年と彼のしゅごキャラを見下ろした。

「どうだ?そいつの様子は?」
「ここじゃどうにもできない…一旦家まで戻ってから、歌唄ちゃんに連絡しよう!」

ユウスケはイクトをおぶると、士達は光写真館への道を再び歩き出した。


光写真館に着くと、イクトはソファの上に寝かされ、暖かい毛布をかけられた。
肌の傷には夏海による手当てがされ、後は彼が目を覚まし、詳しい事情を聞くだけであった。

「イクト…皆、ありがとニャ!」

イクトのしゅごキャラ、ヨルは士達に礼をいい、ぴょこりと頭を下げる。

「良いんですよ。倒れてる人を放っとくなんて出来ませんから。」

夏海は笑顔でヨルに答え、ヨルは夏海のまぶしい笑顔にほんのりと頬を染める。
そんな時、光写真館のマスコット的存在、キバット族のキバーラがリビングに現われ、ヨルの隣りに並んだ。

「へぇ~、あんた妖精の癖に人間の女の子に弱いんだ~♪」
「ニャ!?なんニャお前は!?」
「私はキバット族のキバーラよ♪宜しくね、妖精おにゃん子ちゃ~ん♪」
「ニュニュ!おいらはおにゃん子じゃないニャ!おいらの名前はヨルだニャ!」
「はいは~い、おにゃん子ちゃ~ん!」
「ムニュ~!もう許さないニャ~!」

ヨルはキバーラを追いかけ、キバーラはヒラヒラと飛びながらヨルから逃亡する。

「お~にさ~ん、こっちら~♪」
「待つニャ~!」

二人は騒がしく室内を飛び回り、士達は呆れて苦笑いした。
そんな時、士はふとイクトが持っていたバイオリンケースを目にし、取っ手に何かキラキラと輝くものを見つけると、ケースを手にとってそれを目元に近づけた。

「なんだこれ?」
「ハンプティ・ロックとダンプティ・キーさ。」

士の疑問に答えるように、リビングにもう一人の人物が現れる。
大樹だ。

「やぁ、士、夏メロン、小野寺君。」
『海東…』
「大樹さん…」

大樹は三人にウィンクし、士に近づくと、ロックとキーに目を移し、説明をはじめた。

「これはこの世界で僕が狙っているお宝さ。まだ謎の部分はあるけど、ロックとキーはしゅごキャラの力を引き出す力を持っている。
君達が知っている日奈森あむと歌唄、そしてこのイクトが「キャラなり」できるのはこのロックとキーが幼い頃から近くにあったからさ。
そしてこの二つは対となり、エンブリオに繋がるものとも言われている。」
「エンブリオ…」

士は静かにその言葉を呟いた。
エンブリオ…願いをかなえる不思議なタマゴ…
歌唄は夢物語の代物といっていたが、スーパーショッカーが彼を狙っていたこと、そして大樹もこの二つを狙っていることから考え、エンブリオは実在するのだと士は改めて確信した。

「さ、説明したんだ、それは僕が貰う…」

大樹は士が持っているケースの取っ手に下がった二つに向けて手を伸ばした。
だが士は子供の意地悪のように大樹からそれを遠ざけ、盗られるのを防ぐ。

「士…君は興味ないのかい?何でも願い事がかなうんだよ?」
「くだらねぇな。願いってのは自分自身でかなえるもんだ。そんな夢みたいなモンに頼るなんてのは、自分に自信が無い奴だけだ。」
「相変わらずだな…まぁいい、今日は仲間の君達に免じて泥棒はお休みするよ。さっきから、その子も僕のことを睨んでるしね。」

士達はふとイクトの方を振り返ると、彼は目を覚まし、荒い呼吸をしながら大樹を睨んでいた。

「良かった!目を覚ましたんですね!」
「イクト~!良かったニャ~!」

夏海とヨルは彼が目を覚ましたことに喜んだが、イクトは大樹を睨みつけたまま口を静かに開いた。

「テメェ…」
「おっと、そこの士に感謝するんだね。僕は今日は君のことを見逃してあげるよ。でも、次こそはそれを貰うからね♪」

大樹は再びイクトに手で作った銃を向けると、リビングを後にした。
そしてイクトはソファーから飛び起きると、士の手からケースを奪い取り、彼の襟元を掴む。

「お前達もスーパーショッカーか?」
「ほう…あいつらを知ってるのか?」
「とぼけるな!お前らにロックとキーは渡さない!」
「落ち着けって!君の事は歌唄ちゃんから聞いてるよ!」

ユウスケはイクトを落ち着かせようとしたが、逆に火に油を注いだ。

「歌唄?お前ら!歌唄…まさかあむにまで手を出したのか!歌唄とあむまで巻き込みやがって…狙うなら俺を狙え!」
「止めるニャ!イクト!」

炎のように怒り狂う彼を止めたのは、彼のしゅごキャラであるヨルであった。

「ヨル…」
「こいつらはイクトを助けてくれたんだニャ!この人達はスーパーショッカーと戦ってる仮面ライダーニャ!」
「仮面…ライダー…?」

イクトは士の胸倉から手を離し、呆然としながら彼の瞳を見つめた。
その時、イクトの腹の虫が大きく鳴った。

「あ…」

イクトは腹部を抑え、声を漏らす。
夏海はそんなイクトを「可愛らしい」と思いながら笑うと、食卓を指差した。

「まずは、ご飯にしましょ。もう夕食の時間ですよ。」


イクトの食欲は凄まじかった。
ご飯を五杯おかわりし、メインディッシュのハンバーグステーキを二分で間食し、あさりの味噌汁二杯でそれを胃に流し込む。
最後にデザートの栄二郎特性ミルクプリンを飲むように食べると、両手を合わせた。

「ごちそうさま…」
「いやぁ…すごい食欲だねぇ…」

栄二郎はイクトの食欲に感服し、目を丸くした。
ここ最近イクトは良い物を何も食べていなかった為、空腹で仕方が無かったのだ。

「所で、君は何であむちゃん達の所を去ったんだい?」

ユウスケは箸を止め、イクトに聞いた。
先程の怒り振りから見るに、イクトが無責任に妹を捨てるとは思えなかったからである。

「あんたもさっき聞いたろ、あいつらを巻き込まない為だよ。他に理由があるか?」
「ほんとにそれだけか?だったら何で詳しい訳を歌唄達に話さずに家から飛び出した?特にあむってクソガキは、お前がいなくなったせいで荒れてるらしいぜ。
お前が妹を傷つけてまで、家族を捨てるような奴には見えないがな。それに、なんでスーパーショッカーを知ってるのかも気になる。」

士はぶっきらぼうな喋り方でイクトに問い掛けると、イクトは士から目を逸らし、夏海の方を見つめた。

「分かったよ、じゃあそこのおねーさんにだけ、訳を教えてやる…」
「え?」

イクトは椅子から立ち上がると、夏海に近づき、彼女の耳に唇を近づけていく。
そして…彼女の耳朶を軽く噛んだ。

「ひゃん!?」

夏海は頬を真っ赤に染めて驚き、栄二郎とユウスケは口を大きく開けて悶絶した。

「テメェ!」

士は椅子から立ち上がり、イクトに近づいて彼の胸倉を掴む。

「フフ…じゃあな、士さん。いくぜ、ヨル。」
「待つニャ~!」

イクトは士の手を払いのけ、ヨルと共にリビングから去っていった。

「待ちやがれこのクソガキ!」

士は早足でイクトを追いかけ、リビングから出て行く。

「夏海ちゃん!大丈夫!?」

ユウスケは夏海に駆け寄り、彼女の肩を揺する。
だが夏海は完全に顔を真っ赤にして惚けており、何の反応もしなかった。

「夏海ちゃん?お~い。」

ユウスケは夏海の顔の前で手を振ってみたが、やはり何の反応も無かった…


「エンジェルクレイドル!」

アルバイト帰りだった歌唄はバイト先付近の公園で×キャラを発見し、自分のしゅごキャラであるエルとのキャラなり、セラフィックチャームに変身して戦っていた。
あむを凌ぐ力を持っている歌唄の力は強大で、一瞬にして×キャラは浄化され、しゅごタマとなって何処かへと飛び去っていった。

「流石歌唄ちゃんですね!」

歌唄と合体していたエルは彼女の力を賞賛したが、歌唄の顔は曇ったままであった。
彼女は戦っているときでも、荒んだ妹と兄の事で一杯一杯なのだ。

「あむ…イクト…」

セラフィックチャームは二人の顔を脳裏に思い浮かべ、その名を呟いた。
そんな時、不気味な羽音が彼女の耳に届いた。

「何?」

セラフィックチャームはふと後ろを振り返ると、その目を大きく広げた。
そこには、鷲に似た異形の怪物の姿があったのだ。

「日奈森歌唄だな?」

スーパーショッカーの改造魔人・荒ワシ師団長である。

「化け物…!?」
「兄を誘き出す…エサになってもらうぞ!」


そのころ、剣崎一真によって選ばれたもうひとりの戦士が、しゅごキャラの世界を訪れた。

「参ったなぁ…アイツ、何で正確な場所まで教えてくれないんだ?」

剣立カズマ、仮面ライダーブレイドである。

「何処にいるんだ…士…」

勇気の剣を受け継いだ戦士は心から信ずる仲間を探し、夜の街を彷徨いだす。
その刃が抜かれる時が近いことをまだ知らずに…



今気付いた。あむちゃんが全然出てきてない…
以上、四話でした。
思った以上にスローペースです。十二話じゃ終わらないかも…
とりあえず次回はブレイドと…出きればガーディアン出そうかなと…

ps
鋼鉄参謀を演じた声優さんは亡くなっていると聞きました…
確かガンダムでノリスを演じた方でしたよね?
昭和ライダーシリーズに何度も出演されていた方でしたので心が痛みます…
そういえば声優さんで思い出しましたがキバーラとヨルも同じ沢城さんでしたっけ?



[15564] 五話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:f81ad1a6
Date: 2010/02/10 21:49
五話
「ホワイトウィング!」

セラフィックチャームは大きな白い翼を広げ、無数の白い羽を手裏剣のように荒ワシ師団長へ向けて放った。
しかし荒ワシ師団長は持っていた斧で羽を切り払いながらセラフィックチャームへと突進してくる。

「効かんなぁ!」
「クッ…イル!」
「っしゃあ!」

セラフィックチャームの隣にイルが現れ、黒い卵となってセラフィックチャームと合体する。
するとイルと変わるようにエルが歌唄の外へと飛び出し、セラフィックチャームは姿を変えた。

「キャラなり!ルナティックチャーム!」

服装は赤のボンテージへと変わり、背中には悪魔の翼が生え、手には悪魔の尾を象った槍が握られる。
歌唄のもう一つのキャラなり、ルナティックチャームである。

「リリントライデント!」

ルナティックチャームは槍で荒ワシ師団長の斧をガードし、鍔迫り合いに入る。
だが人間の少女と改造魔人の腕力では大きく差があり、ルナティックチャームは槍を弾かれ、その隙を突かれて首を強く掴まれた。

「うあっ!」
「歌唄ちゃん!この~!」

エルは荒ワシ師団長に突進し、ルナティックチャームを助けようとした。
だが荒ワシ師団長に片手で弾かれ、地面に激突する。

「ふぎゃ!」
「エル!」
「このままアジトに連れ去ってやる。」

荒ワシ師団長はその翼を広げ、空へと飛び立とうとした。

「(誰か…助けて…)」

ルナティックチャームは瞳を閉じ、助けを求めた。
その時、彼女の願いに答えるようにバイクの爆音が聞こえて来た。

「何だ!?」

荒ワシ師団長はエンジン音が聞こえた方向を振り向くと、公園の門を飛び越える青いマシンをその目に映した。
仮面ライダーブレイド専用マシン・ブルースペイダーである。
ブルースペイダーは荒ワシ師団長に激突し、敵を吹っ飛ばすと、ルナティックチャームは地面へと落ち、酸素を求めて咳き込んだ。

「ゴホ!ゴホ!誰…?」

ルナティックチャームは地面に座り込んだままブルースペイダーに乗った者の姿を見上げると、ブルースペイダーの搭乗者はマシンから降り、ヘルメットを外した。
剣立カズマである。

「貴様は…剣立カズマ!」

荒ワシ師団長はカズマの登場に驚愕し、地面から立ち上がると、カズマはブレイバックルとスペードA「チェンジビートル」のカードを取り出し、それをバックルへと装填する。
そして腰へと装着し、斜めに右手を突き出すと、大きく叫んだ。

「変身!」

そして右手を引いて左手を突き出し、下げた右手でバックルのレバーを引く。

「Turn up!」

ベルトの中心部が裏返り、そこからヘラクレスオオカブトが描かれたスクリーンが放たれる。

「うおおおおおおおおおおおお!!」

カズマはそのスクリーンに向けて全速速力でダッシュし、潜り抜ける。
そしてカズマはその身にブレイドアーマーを身に纏い、仮面ライダーブレイドへと変身を遂げた。

「あれは…」

歌唄はブレイドの登場に驚き、目を大きく開いた。

「おのれブレイド!」
「うおおおおおおお!ハァッ!!」

ブレイドは素早い身のこなしで荒ワシ師団長に殴りかかり、パンチとキックのコンボで敵を攻め立てていく。
カズマの戦い方は力で戦いを有利に進める剣崎一真と違い、鮮やかなキレと速さを駆使した攻撃を繰り出すのが特徴である。
さらにブレイドはホルスターからブレイラウザーを抜き、荒ワシ師団長を切り付けると、間髪居れずにまた素早い剣戟を敵に打ち込んでいく。
最後に荒ワシ師団長を突き飛ばすと、剣を逆手に持ち替えてカードホルダーを展開した。
そして「キックローカスト」、「サンダーディアー」、「マッハジャガー」のラウズカードを取り出し、それをカードリーダーにラウズした。

「Kick…Thunder…Mach…Lightning sonic!」
「うおおおおおおおお!」

ブレイドは上半身を一回転させてからラウザーを地面に突き刺すと、上空にジャンプし、キックポーズを取って荒ワシ師団長に降下した。

「ハアァァァァァァァア!!」

ブレイドが放った必殺キック「ライトニングソニック」は凄まじい稲妻を走らせ、荒ワシ師団長に直撃した。

「グアァァァァァァア!!」

荒ワシ師団長は断末魔の雄叫びを上げ、粉々に爆発した。
戦闘を終えたブレイドは変身を解除し、座り込んでいるルナティックチャームに近づいて手を差し伸べた。

「大丈夫?」
「ありがとうございます…」

ルナティックチャームは歌唄に戻り、カズマの手を取った。


その後、カズマは歌唄をブルースペイダーに乗せ、彼女の家に送り届けた。(しゅごキャラの事情は道中歌唄から聞いた。)

「あ、ここです。」
「分かった。」

カズマはマシンを止め、歌唄を彼女の家の前で下ろすと、ヘルメットのバイザーを開いて彼女に視線を合わせた。
歌唄も借りたヘルメットを外し、胸元に持つと、カズマに頭を下げる。

「今日は本当にありがとうございます。」
「いいって、人を助けるのが俺の仕事だからさ。」

カズマは歌唄に微笑み、歌唄はカズマの眩しい笑顔に少し頬を染める。

「そういえばさ、俺、人を探してるんだけど、「だいたい分かった」って台詞が口癖の奴、知らないかな?」
「だいたい分かった?」

歌唄は考えてみた。
そういえば今日どこかで聞いたような気はするが、詳しくは思い出せない。

「…ごめんなさい。」
「やっぱり知らないよな…じゃあね!」
「すみません…今日のお礼は、今度きっちりしますから。」

歌唄からヘルメットを受け取ると、カズマはマシンを走らせ、去っていく。
歌唄はそんなカズマの姿が見えなくなるまで見つめていた…


翌日の午後、士達はあむが通う学校、聖夜学園を訪れていた。
歌唄から彼女が通う学校を聞いていた士達は、家は出たものの通学は続けているという彼女を説得するためにここに来たのだ。
聖夜学園は幼等部から大学まである学校で、あむはここの中学二年生である。

「しかし、随分洒落た学校だな。」

聖夜学園は歴史のある学校の割りに綺麗な西洋風のつくりをしていて、建物の塗装のはがれも見当たらない。
そして授業を終え、校庭で遊ぶ小学生たちも、目に輝きを持ち、元気に走り回っていた。

「子供達、皆生き生きしてますね。」
「それにしても、あむちゃん何処かな?」

微笑ましい瞳で子供たちを見る夏海をよそに、ユウスケは中等部の校舎を見つめる。
だが校舎から出て行く生徒達の数は多く、中々あむの姿を見つけられない。

「もしかして、あむちゃんもう帰っちゃったのかな?」
「聞いてみましょう!」

夏海は下校する男子中学生の一人に近づき、彼の肩をたたいて話しかけた。

「すみません。」
「あ?誰お姉さん?」
「私達、日奈森あむちゃんって子を探してるんですけど、知りませんか?」
「日奈森?ああ、それなら俺と同じクラスだよ。あいつならホームルーム終わったらちゃっちゃと帰ったよ。多分今、辺里と一緒に商店街のゲーセンで遊んでると思うよ。」
「辺里?」
「うん、辺里唯世。この学園でも指折りのお坊ちゃんだよ。金持ちの癖に日奈森なんかと一緒にいるから、みんな不思議がってるんだ。」
「ありがとう。」

夏海は男子中学生に礼を言うと、再び士達の元に戻った。

「あむちゃん、今商店街のゲームセンターにいるみたいなんです。」
「やれやれ、骨折り損かよ。」
「まぁまぁ士、そう言うなって。」

士達は門から出て行くと、商店街の方へと再び足を進めた。


商店街にあるゲームセンターで、あむは不貞腐れた顔をしながらクレーンゲームをしていた。
あむはここの常連であったが、特別上手い技術を持っているわけではなく、クレーンでぬいぐるみを掴めずに居た。

「また落ちた…」

あむは財布を取り出し、小銭入れのチャックを開けたが、既に小銭は尽きていた。
そして今度は千円札を取り出すと、それを隣に居た金髪の少年に渡した。

「唯世、両替。」
「うん、待ってて。」

少年はあむから千円札を受け取ると、笑顔で両替機へと歩いていった。
するとあむの周囲に彼女のしゅごキャラであるラン、ミキ、スゥの三人が現れた。

「あむちゃん!さっきから無駄遣いしすぎだよ!」
「もう三千円も使ってるよ!」
「お金がなくなっちゃいますよぉ~。唯世君も疲れちゃいますし…」
「うっさい。あたしのお金なんだからどう使おうが自由でしょ。それに、あいつはあたしの事好きだから、何だって言うこと聞いてくれるし。」
「こんどは片思いしてる男を下僕扱いか。とことん人間が腐ったガキだな。」

あむは驚いて後ろを振り返りる。
そこには呆れた瞳で自分を見る士と、あむを心配そうに見つめる夏海とユウスケの姿があった。

「何?またあんたらなの?」
「あむちゃん、歌唄ちゃんが心配してるよ。」
「帰りましょうよ。」

ユウスケと夏海はあむに帰るよう進めたが、やはりあむは彼らから冷たく目を背けた。

「関係ないでしょ…あんたらには何も…」
「昨日、イクトに会ったぜ。」

士はイクトの名を持ち出し、あむの動揺を誘った。
そして案の定あむは目を大きく開き、口を少し開いていた。

「やっぱり、自分の兄ちゃんが気になるのか?」
「…関係ない、あんな裏切り者。」

あむは再び冷めた表情へと戻ると、士達から目をそらした。

「イクトは、あたしからハンプティ・ロックを奪って、家族を捨てたんだ…」
「それは、スーパーショッカーから二人を守るためです!」

夏海はイクトがあむ達の元を去った理由を話した。
だが…

「スーパーショッカー?何それ?」

あむはその話を信用しようとはしなかった。

「全世界を又にかける、悪の組織って奴だよ。」

士は大雑把に説明したが、あむはそれを聞いた途端、ぷっと吹き出して笑い始めた。

「ぷ…アッハッハッハッハ!何それ?あんたら頭どうかしちゃったの?」
「嘘じゃないんだ!俺達は、別の世界から来た!」
「…くだらな、イクトに会ったら言っといて。大嫌いだって。」

あむは床に置いていた自分のカバンを拾うと、早足で店から出て行った。

『あむちゃん!』

あむのしゅごキャラ達も彼女の後を追いかけていく。
そして彼女達が去った後、両替機で千円札の両替を終えた唯世が戻ってきた。

「あむちゃん…あれ?」

だが唯世はあむの姿がそこになく、代わりに士達がいる事に驚き、その場に硬直した。

「あの…ここに女の子居ませんでしたか?」
「居たさ。我侭で生意気なガキが、さっきまでな。」
「あむちゃん…!」

唯世は持っていた小銭をポケットにしまうと、彼女を追うように店から出て行った。

「士、俺達も…」
「ったく、しゃーねぇな。」

士達も唯世を追い、店内を出て行った。


一方その頃、大樹はイクトを探し、廃ビルの中に居た。

「野良猫君は、こういう所に居るのがセオリーだよね。」

スーパーショッカーから身を隠しているイクトに取って、こういった場所は格好の隠れ家だ。
大樹は子供のような瞳で周囲を見回し、標的を探す。
そんな大樹の耳に、乾いた靴音が聞こえてきた。

「へぇ…諦めたのかな?」

大樹はウキウキしながら靴音が聞こえた方角を振り向く。
だがその瞬間、大樹の顔から笑顔が消えた。

「!?」
「久しぶりだな、大樹。」

そこには、袂を分かった自分の実兄・海東純一の姿があったのだ。

「兄さん…」

純一はグレイブバックルを取り出し、「チェンジケルベロス」のカードをセットして腰に装着する。

「変身。」

そしてバックルを操作し、自分の正面にエネルギースクリーンを出現させると、それを潜り抜け、仮面ライダーグレイブへと変身を遂げた。
そして自らの武器「醒剣グレイブラウザー」を引き抜くと、その切っ先を大樹へと向けた。

「スーパーショッカーとの契約だ…命を貰うぞ、大樹。」


ガーディアンは唯世だけにしました。
私的になでなぎ好きだからなでしこ出したかったんですけど、影薄くなりそうなので…
ああ、なでなぎ…



[15564] 六話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2010/02/27 01:30
六話
「スーパーショッカーとの契約だ…命を貰うぞ、大樹。」

グレイブは突きつけたグレイブラウザーを胸元に構えると、呆然とする大樹に向けて走り出した。
そして彼の傍まで来ると肉親の情など微塵も感じられない躊躇いの無さで剣を振り下ろす。
大樹はそんな兄の剣を受身を取って交わすと、先程の好奇心旺盛な笑顔が嘘のような悲痛な顔でグレイブを見た。

「兄さん止めてくれ!僕は兄さんと戦いたくない!」
「甘言を…戦え大樹!」

グレイブは再び大樹に襲い掛かり、剣を振るう。
大樹はまたその剣を交わすと、ディエンドライバーを取り出し、ディエンドのライダーカードをセットして頭上に構え、引鉄を引いた。

「変身!」
「Kamenride…Diend!」

電子音声と共に大樹の体はライダーの鎧を纏い、被った仮面の眼前に現れた棒線上の物体が顔面に突き刺さる。
そしてその体が鮮やかな青に彩られると、大樹は仮面ライダーディエンドへと変身を完了した。
ディエンドはグレイブの剣をその銃身で受け止めると、鍔迫り合いのままお互いの顔を近づけた。

「兄さん…本当にスーパーショッカーに魂を売ったのか!?」
「俺は第二のフォーティーンとなり、俺の世界を支配する!スーパーショッカーはその為の力を俺に貸してくれるといった!お前やディケイドの命は、ショッカーへの勘定だ!」
「兄さんは騙されてるだけなんだ!もし僕に止めをさせなかった兄さんがまだ生きているのなら、目を覚まして!」
「馬鹿が、以前の俺は当の昔に死んだ!」

グレイブはディエンドを突き飛ばし、均衡を解くと、ディエンドは撹乱逃走用のインビジブルのカードを取り出し、ディエンドライバーにセットする。

「attackride…Invisible!」

ディエンドは姿を消し、後にはグレイブだけが残される。
グレイブは純一の姿へと戻ると、考えの読めない無表情のままその場を後にした…


一方、士達はあむを追いかけていた唯世に追いつき、彼からの話を聞いていた。

「じゃあ、あむちゃんは家を飛び出してからずっと唯世君の家に泊まってたんですか!?」
「はい。あむちゃんの頼みですから。」

夏海は女の子を家に泊めるという唯世の大胆さに驚き、士とユウスケは少しやらしいものを見るような目で唯世を見ていた。

「べ、別に何も変な事はしてませんよ!それに…あむちゃん、僕を男としてみてませんから…」

唯世は少し悲しそうに言うと、士達は不謹慎ながらも少し安心した。
唯世の元で二人に何があったかまでは聞かないが、おかしな事態に発展していたらあむの姉である歌唄がなんと言うか分からない。

「ところで、お前はなんであんな性悪女にベタベタしてんだ?いい育ちのお坊ちゃんにしちゃ趣味悪すぎだぜ。」
「全くだ!」

士の悪ぶった質問の仕方に答えるように、唯世の傍に御伽話に登場するような国王に似たコスチュームを着た妖精が現れる。
唯世のしゅごキャラ、キセキである。
とりあえず士達はこの世界の子供達は皆ココロのたまごを持っていると聞いていたので、今更驚きはしなかった。

「唯世はあの女に甘すぎだ!将来辺里家を継ぐ王となる者が、あんな庶民に恋心を抱くなど言語道断だ!」
「あむちゃんを悪く言わないで!」

唯世は先程のおとなしい喋り方から一転し、声を荒げた。
士達はそんな唯世の豹変に驚くと、唯世は慌てて表情を戻した。

「ご、ごめんなさい…キセキも、ごめん…」

唯世は頬を高潮させながら下を向くと、自分とあむがはじめて会った時の事を話し始めた。


「痛っ!」

今より少し幼い唯世は、人目につかない教室で目の前にいる目付きの悪い男子生徒にその美しい髪を引っ張られ、床に倒れていたところを無理やり起こされた。
男子生徒の周りには他にも数人の男子生徒がおり、皆下卑た笑みで痛がる唯世を笑っていた。

「はっはっは!「痛っ!」だってよ!流石坊ちゃま、痛がり方も大変上品ですこと!」

男子生徒は唯世の髪を掴んだまま再び床に彼を叩き付けた。
唯世また痛みで喘ぐと、男子生徒は今度は唯世の頭を強く踏みつけた。

「痛い…!痛い!止めて…!許して…!」
「ハン!よわっちぃ癖にちやほやされやがって!お前みたいなろくな抵抗も出来ない根性無しは、見ててイラつくんだよ!」

男子生徒は声を荒げ、頭から足をどけると、唯世の腹部を強く蹴った。

「がは!」

唯世はまた痛みに苦しむと、ついに耐え切れず涙を流し始めた。

「ハハ!泣いてるぜこいつ!おもしれぇや、じゃあ今度は生でその体痛めつけた後、校庭にさらしてやるよ!」

男子生徒が指を鳴らすと、傍観していた他の男子生徒たちが唯世の周りを取り囲んだ。そしてその内二人が唯世の体の自由を封じると、残った者達は皆唯世の衣服を引き剥がし始めた。

「嫌だ!嫌だ!!」

唯世は大声を出して彼らに抵抗したが、ひ弱な力では何の抗いにもならない。
このまま肌を痛めつけられ、さらし者にならなければならない自分の弱さを唯世は嘆き、悲しんだ。
だがそんな唯世に、一筋の光が差し込んだのはその時だった。

「自分より弱い男の子苛めて根性無し?馬鹿馬鹿し、根性腐ってるのはあんたらの方じゃん。」

男子生徒達は突然聞こえた声に驚き、後ろを振り返る。
そこには当時小学五年生のあむのクールな顔がそこにあった。

「ひ、日奈森あむ!?」

男子生徒たちはあむの姿に恐怖を抱き、震え始めた。
あむは喧嘩が強く、友人をいじめた男子生徒とその取り巻き達と喧嘩をしたときは一人で男子生徒数人を倒したという逸話を持っていた。
分が悪いと判断した男子生徒達は、冷や汗を掻いたまま舌打ちをすると、一目散に教室から出て行った
あむは彼らが逃げ去ったことに呆れ、ため息をつくと、少し衣服が乱れた唯世に歩み寄り、笑顔で手を差し伸べた。

「大丈夫?」
「あ、ありがとう…」

唯世は彼女の手をとると、今まで感じたことの無い柔らかな温かさを感じ、あむの笑顔の虜となって頬を染めた。


「…あむちゃんは、とても優しい子なんです。あむちゃんが僕を助けてくれなかったら、僕はきっともう学校には来れなかった。僕はあの時から、あむちゃんの為に生きようって決めたんです。」

唯世は空を見上げると、太陽を見つめ、再び口を開く。

「あむちゃんは僕にとって光です。あむちゃんが幸せなら、僕は利用されたって、彼女と結ばれなくたっていい。ただあむちゃんのためだけに生きるのが、今の僕の存在理由なんです。だから…!」

唯世は目付きを鋭くし、拳を握り締める。

「あむちゃんを苦しめる存在だけは…許せない…!」
「イクトの事か?」

士が聞くと、唯世は頷き、話を続けた。

「あむちゃんのお兄さん…イクトさんはあむちゃんがずっと大事にしていたハンプティ・ロックを奪って姿を消した…あの人はあむちゃんの信頼と好意を裏切ったんだ…!
あむちゃんは、イクトさんの事が好きだってあの人も分かっていたのに…あの人だけは許せない…僕の手で…!」

士は唯世の中に一抹の狂気を感じ取った。
彼はあむを愛しすぎている。
これが後に悲劇の引鉄にならない事を士は願い、よりイクトがなぜ妹やその友からの信頼を踏みにじってまでスーパーショッカーのことを話さずに逃げているのかが気になった。
だが士の思考を中断するかのように、奇怪な泣き声が周囲から聞こえ始めた。
そして気がつくと、士達の前には大勢のショッカー戦闘員が現れ、行く手をさえぎった。

「スーパーショッカー!?」
「やっぱり居たんですね!」
「何だ…こいつら?」

ユウスケと夏海は身構え、唯世は突然の襲撃に困惑した。
すると戦闘員達の間をかき分け、鳴滝ことゾル大佐と改造魔人・ドクロ少佐がその姿を現した。

「鳴滝…!」
「久しぶりだな、ディケイド。」

士はゾルを睨み、ゾルは士をあざ笑い、そして激高する。

「ディケイド!我々は貴様のせいで煮え湯を飲んだ!だが、今度はそうはさせない!エンブリオを手に入れ、必ず貴様の息の根を止めてくれる!かかれ!」
『イィーーーーー!!』

ディケイドに並々ならぬ憎しみを持ち、スーパーショッカーに組したゾルは片手に持った鞭を振るうと、戦闘員たちは一斉に士に襲い掛かった。

「夏みかん、そいつを守ってろ。行くぜ、ユウスケ!」
「ああ!」

士は唯世を夏海に任せると、士は腰にディケイドライバーを出現させ、ユウスケは変身ベルト・アークルを出現させる。

『変身!』

そして二人はそれぞれ仮面ライダーディケイド、仮面ライダークウガ・マイティフォームへと変身すると、戦闘員達に立ち向かった。
二人のライダーは絶妙なコンビネーションで戦闘員達に格闘戦を挑み、大勢を物ともせずに敵を蹴散らしていく。
多くの戦いを潜り抜けてきた二人にとって、数の暴力など問題にならないのである。

「おのれディケイド!」

ゾルはディケイドの優勢に激怒すると、彼の隣に居たドクロ少佐がゾルに視線を合わせ、言葉を発した。

「ゾル大佐、ここは俺に任せてくれ。」
「おお!頼むぞドクロ少佐!」

ドクロ少佐はディケイド達の方を向くと、口から灼熱の火炎を発射した。
ディケイドとクウガはそれに気付き、身を低くして攻撃をよけたが、残った戦闘員達は炎をまともに受け、焼死してしまった。

「士!あいつ…仲間同士で…」
「お構いなしってタイプかよ!」

二人のライダーはドクロ少佐の非情さを軽蔑すると、ドクロ少佐は手に巨大な鎌を構え、二人に襲い掛かってきた。

「ヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョ!!」

二人はドクロ少佐の攻撃を回避し、攻撃していくが、敵は攻撃を全て受け流し、反撃をしてくる。
改造魔人は一人一人が大幹部クラスの力を持った強敵なのだ。
やがてドクロ少佐の鎌はクウガを捉え、その赤い体を斬りつけた。

「うわ!」

クウガは数メートル吹っ飛ばされると、地面に激突し、変身が解除される。

「ユウスケ!」
「ヒョヒョヒョ!余所見をするな!」

ドクロ少佐の鎌は仲間の身を案じたディケイドの体をも切り裂き、ダメージを与えた。

「ぐああああ!」

地面に叩きつけられたディケイドはすぐに立ち上がり、反撃を試みる。
だが既に自分の前にはドクロ少佐が立ちはだかっており、自らの鎌を振り下ろそうとしていた。

「止めだ!」

ドクロ少佐はディケイドに止めを刺すため、鎌を振り下ろす。
ここまでかとディケイドが諦めたとき、一閃の雷がディケイドの頭上を走り、ドクロ少佐の体を撃った。

「うわあああああ!」

ドクロ少佐は吹っ飛ばされ、ディケイドは雷が飛来した方向を振り返る。
そこには、ブレイラウザーを構える仮面ライダーブレイドの姿があった。

「士!」
「カズマ!?」

ブレイドはディケイドに駆け寄り、彼に手を差し伸べると、ディケイドはその手を取って立ち上がる。

「士、大丈夫か?」
「カズマ…お前何でここに?」
「俺もまだよく分からないけど、剣崎一真って奴にこの世界に導かれたんだ。」
「何?…なるほど、大体分かった。」

ブレイドはディケイドの不適に発言に首をかしげると、ドクロ少佐は鎌を杖代わりに立ち上がろうとしていた。

「カズマ、話は後だ。まずはあいつを倒すぜ。」
「ああ!」

ディケイドはブレイドとブレイラウザーを模した大剣が描かれたカードを取り出すと、それをディケイドライバーにセットし、カードを読み込ませる。

「finalformride…BBBBlade!」
「ちょっとくすぐったいぞ。」

そしてブレイドの背後に回り、背中を両手の指で一突きすると、ブレイドの体は巨大な剣へと変形し、ディケイドの手に握られた。
ファイナルフォームライド…ディケイドが他の仮面ライダーを武器へと変形させる特殊能力である。
ブレイドが変形したこの剣は「ブレイドブレード」と呼ばれ、あらゆる物質を両断する凄まじい切れ味を持っている。
ディケイドはブレイドブレードを構えると、ブレイドの紋章が描かれたカードを新たに取り出し、ベルトに再びセットした。

「Finalattackride…BBBBlade!」

電子音声と共にブレイドブレードの刀身にエネルギーが集中され、巨大な刃を生成する。

「うおおおおおお!!はあぁぁぁぁぁぁあ!!」

ディケイドはドクロ少佐に向け、その刃を振り下ろすと、生成された青い刃は一直線にドクロ少佐に向けて走る。
ディケイドがブレイドブレードの力を用いて繰り出す必殺技「ディケイドエッジ」である。

「ヒョーーーーーーーーーー!!」

ディケイドエッジの直撃を受けたドクロ少佐は真っ二つになり、爆発した。
そしてディケイドは大剣を持ったまま残ったゾルを睨むと、ゾルは鞭を強く握ったままディケイドを忌々しく見つめた。

「クッ…ディケイドめ!次こそはその命、必ず!」

ゾルは捨て台詞を残すと、背後に出現したオーロラを潜り抜け、姿を消した。
戦いを終えたディケイドは上空にブレイドブレードを放り投げ、ブレイドブレードはブレイドの姿に戻る。

「うわああああああああ!!」

だがブレイドは着地に失敗し、地面に体を打ちつけてしまってからカズマの姿に戻った。
ディケイドも士に戻ると、そんなカズマの姿に苦笑し、溜息を漏らした。

「いててて…何すんだよ士!」
「お前…いい加減慣れろ。」


その頃、あむは一人街を歩いていた。
唯世とも別れ、面白くない話を聞いた腹いせにまた喧嘩でもしたい気分だったが、生憎今回は誰にも絡まれない。
あむのイライラは募っていくばかりであった。

「どうしてどいつもこいつも…あたしをこんなにイラつかせるの…!」

あむは奥歯を強く噛み、行き場の無い怒りに心を乱される。
だが怒りに支配されたあむの表情は突如驚愕に彩られた。
ふと前を見ると、そこには自分を裏切った義兄の姿がそこにあったのだ。

「!?…イクト…?」
「…あむ。」

それは全くの偶然だったのであろうか?それとも決められた運命だったのであろうか?
一ヶ月の別離の末、兄妹は再び出会ったのだ


一週間ほどインフルで休んでました。
おかげで追試験が確定してしまったです…
ああ、さらに予定が遅れる…
ライダー大戦後のオリジナルライダーズの妄想後日談も予定してるのに…



[15564] 七話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2010/03/15 01:09
七話
「イクト…」
「あむ…」

再会した兄妹は自分達をめぐり合わせた偶然に驚き目を見開いた。
だが、あむはすぐに目付きを尖らせると、イクトに強く掴みかかった。

「やっと見つけた…裏切り者!」

イクトはその一言に唇を噛むと、あむは強い口調で話を続けた。

「何?お腹がすいたから家に帰してとでも言いに来たの?だったらお生憎様、あたしも今家出中なの。」
「…偶然だよ。お前となんか、会いたくもねぇ。」
「くっ…!」

あむは腕の力を強くし、イクトの襟元を締め上げた。

「返しなさいよ…あたしのハンプティ・ロック!あれはお父さんがくれた片身なんだよ!それをよくも…」
「…」

イクトは無言のままあむの手を振りほどくと、彼女に背を向け、歩き出した。

「待ちなさい!」

あむはイクトを呼び止めたが、彼は聴く耳持たずに歩を進める。
そんな時、士達があむの元にやって来た。

「あむちゃん!」
「唯世…」
「良かった…探したんだよ…!?」

唯世はあむを見つけたことを喜んだが、あむの先を歩く少年の姿を見た瞬間、表情を変えて驚いた。
そしてその少年に向け、大声で叫ぶ。

「イクトさん!」

少年・イクトはその声に振り返ると、唯世の姿を見つけ、目を細めた。

「唯世…」

唯世はイクトに詰め寄ると、鋭い眼差しで彼を問い詰め始めた。

「イクトさん!何であむちゃんを裏切ったんですか!?」
「お前に関係ないだろう。」
「あむちゃんは貴方が好きだった!それなのに貴方は…」

イクトは一瞬寂しげな目をしてからすぐまた不適な瞳に戻る。

「あ、そう。迷惑な話だぜ。兄妹同士だっつのに、そんな感情抱かれちゃさ。俺、家出して良かったな。」
「…!」

唯世は右拳を強く握ると、イクトの頬を力強く殴った。
イクトの頬は赤く腫れ上がり、唯世は人を拳で殴る痛みに一瞬瞳を閉じた後、イクトをまた強く睨んだ。

「…はっ、そんなに好きなら、お前が貰っちまえよ。遠慮は要らねぇぜ?」
「僕じゃ駄目なんだ…僕じゃ…駄目なのに…キセキ!」
「任せろ唯世!」

唯世の呼び声と共に彼の頭上に彼のしゅごキャラ・キセキが出現し、神々しい光を放って唯世と一体化する。
すると唯世はその身に金色の王衣と赤いマントを身に纏い、頭に王冠を被る。
そして手に杖を握ると、それを胸元に構えた。

「キャラなり!プラチナロワイヤル!」

自らのキャラなり・プラチナロワイヤルへと姿を変えた唯世は、その杖をイクトへと向けた。

「僕は貴方を許さない…あむちゃんの気持ちを踏みにじった貴方を…!」
「面倒な奴だな…ヨル!」
「任せるニャ!」

イクトの頭上にもヨルが現れ、イクトの体と一体化する。
するとイクトの服装は動きやすい軽装へと代わり、頭部には猫耳が生え、片手には猫の爪を模した鋭い鉤爪が装備された

「キャラなり!ブラックリンクス!」

イクトとヨルのキャラなり、ブラックリンクスである。

「唯世…止めんなら今の内だぜ?」
「甘く見るな!」

プラチナロワイヤルは杖を構え、ブラックリンクスに飛び掛った。
ブラックリンクスも爪でプラチナロワイヤルの杖を防御すると、二人は素早い動きで移動し、戦いを開始した。

「すげぇ…」

ユウスケは二人の速さに驚き、目を丸くした。
生身の分攻撃力は劣るものの、速さはライダーに匹敵している。
スーパーショッカーの怪人とも互角に戦えるレベルだ。

「…馬鹿馬鹿し。」

あむはそんな二人の様子を冷めた目で見つめると、その場から去ろうと後ろを向いた。
だがそんな彼女の前を、士が立ち塞ぐ。

「邪魔なんだけど。」
「お前、あの二人が何で戦ってるか分かってるのか?」
「は?」
「あいつらがああなったのはお前が原因だ。お前がちゃんとあの二人を見てやらないから、あいつらは今戦ってるんだ。」
「何それ?意味分かんな…」

あむは人を馬鹿にするような喋り方を無理やりと中断させられた。
士の平手があむの頬を強く打ったのだ。

「きゃ!?」

あむは小さな悲鳴を上げ、腫れる頬を押さえる。

「士君!?」
『士!?』

夏海、ユウスケ、カズマの三人は士の行動に驚き、思わず声を上げた。
士は鋭い眼差しのまま頬を押さえているあむの両肩を掴み、無理やりと唯世とイクトの戦いに目を向けさせた。

「唯世を見ろ。あいつはお前の事が好きなんだ。だからイクトが許せない。だが、あいつだって本当はこんな戦いを望んでいない。
でもあいつはお前が好きだから…好きだから無理やりとイクトを憎んでいる。けどそれはイクトがお前を傷つけたから憎んでいるんじゃない。
お前の気持ちを独り占めしているイクトに嫉妬しているからだ。お前が唯世を唯世として見てやら無い限り、あいつはしたくも無い戦いをしなければならないんだ。
それからイクトだ。あいつは女たらしの嫌味なヤローだが、家族を捨てるほど性根は腐ってない。俺にもまだわからないが、あいつはお前や歌唄に何かを隠している。
多分、お前達に関わる大きな何かだ。お前が大好きだったイクトは、理由も無く人を裏切るような奴だったのか?お前の兄貴は、そんな薄情者だったのか?
歌唄が俺達に見せてくれた写真に写るお前は、本当に幸せそうに笑っていた。兄貴が冷たい人間なら、あんな風には笑えないはずだ!
だから、お前が信じるイクトを信じろ。あいつは、お前が大好きなイクトのままだ!」

士の言葉を耳にしたあむは二人の戦いを呆然としながら見つめていた。
すると今度は彼女のしゅごキャラ達があむの前に現れた。

「あむちゃん!その人の言うとおりだよ!」
「ラン…」
「唯世君とイクトを止められるのはあむちゃんだけだ!」
「唯世君を唯世君として見てあげましょう!それから、イクトを信じるんですぅ~!」
「ミキ…スゥ…」

三人のしゅごキャラは小さな体を一杯に使い、あむに必死に訴えかける。
あむはうつむき少しの間考え込むも、やがて顔を上げ、凛々しく瞳を開いた。

「行くよ!スゥ!」
「はいですぅ~!」

スゥはあむと一体化すると、頭部にカチューシャを被り、大きなバルーンスカートが目立つ緑色を基調としたウェイトレスに似た服装へと姿を買え、手には泡立て器が握られた。

「キャラなり!アミュレットクローバー!」

あむの第三のキャラなり、アミュレットクローバーである。
アミュレットクローバーは激闘を続ける二人の傍に駆け寄り、大きな声で叫んだ。

「唯世!イクト!止めて!二人が戦う理由なんて無いよ!」

だが二人はアミュレットクローバーの言葉に耳を傾けることなく、お互いの武器を叩きつけ合う。
お互いの感情を爆発させる二人に既に他人の言葉は届かないのである。

「どうしても…聞かないのなら…!」

アミュレットクローバーは手に持った泡立て器を二人に向けると、宙にジャンプし、それを振りかぶって二人に振り下ろした。

「リメイクハニー!」

泡立て器からは膨大な量の蜂蜜が放射され、容赦なく二人を巻き込む。

『うわあぁぁぁぁぁあ!?』

二人は突然の出来事に驚き、蜂蜜の波に飲み込まれた。
そして蜂蜜が消えると同時に路上に打ち上げられ、意識を失った。

「すっげー…」
「ハハ…」

ユウスケはあむの容赦の無さに呆然とし、カズマは苦笑いをした。
士は「ま、一件落着かな?」と肩を下ろし、あむに歩み寄ろうとした。
だがそんな時、奇怪な叫び声が士達の耳に響いてきた。

『イィー!!』
『!?』

ショッカー戦闘員達である。
イクトを狙い、隙を突いてロックとキーを奪おうと見張っていたのである。

「何…こいつら…?」
「スーパー…ショッカーだ…こいつらが…ロックとキーを狙ってる…!」

ブラックリンクスは頭部を押さえながら起き上がると、アミュレットクローバーに教えた。

「スーパー…ショッカー…?嘘…」

アミュレットクローバーは信じていなかった士の言葉が真実だったことに驚き、瞳を大きく開いた。
そして士は戦闘員達を静かな怒りを秘めた目付きで睨むと、ディケイドライバーを取り出し、ユウスケとカズマも士に続いて変身の準備を行った。

「行くぞユウスケ!カズマ!」
『ああ!』

三人はそれぞれの手順を素早く行い、ポーズを決めると、ベルトの操作を行って自らの戦士の姿を象った。

『変身!』

ディケイド、クウガ、ブレイド…三人の仮面ライダーはファイティングポーズを取ると、大群で押し寄せる戦闘員達に戦いを挑んでいく。
だが、三人にとって戦闘員など物の数ではなかった。
クウガの烈火の如き拳が、ブレイドの稲妻のような剣戟が、ディケイドの姿を変える武装が戦闘員達を次々になぎ払っていく。
やがて戦闘員達が爆散し、消滅すると、アミュレットクローバーはディケイドに近づき、口を開いた。

「貴方は…誰?」

ディケイドは自分を見つめる少女へとその翠の瞳を向け、不遜な態度で答えた。

「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ。」


今日はここまでです。
次回からは物語をもう少し進めようと思っています。
来週再試験なので更新は遅れると思いますが…



[15564] 八話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2010/02/12 02:19
八話
歌唄は自宅で夕飯の支度をしていた。
今日はアルバイトは休みで久しぶりに工夫した料理が出来るのだが、食べさせる相手が居なかった。
食べてくれる家族が居ないほどむなしい料理は無い。
歌唄は浮かない顔のまま、まな板にのった野菜を包丁で刻む。
そんな時、インターホンがリビングに響いた。

「誰だろ?」

歌唄は手を止め、玄関に向かうと、鍵を開けてドアを開く。
そして来客の顔を見たとたん、歌唄は目を丸くした。
そこにはあむの姿があったのである。

「あむ…」
「歌唄…」

あむは頬を真っ赤に染め、もじもじしながら歌唄を見ると、か細い声で言った。

「…ただいま。」

その言葉を耳にしたとたん、歌唄の目からじわりと涙が溢れ出した。
そして歌唄は両手を広げると、あむを強く抱きしめた。

「う、歌唄!?」
「馬鹿!心配したのよ!あんたはほんとに…もう!」

歌唄は涙声のままあむのぬくもりを胸に感じ、家出をしていた妹が帰ってきたことを心の底から嬉しく思っていた。
それからあむの背後に士とカズマ、唯世が現れ、士とカズマは二人の姉妹に向けて微笑んだ。

「どうやら、まず一つは一件落着みたいだな。ったく、世話焼かせるぜ。」
「士さん…それに…」

歌唄はカズマの方を見ると、カズマは歌唄に軽く手を上に上げて挨拶した。

「やあ!歌唄ちゃん!」


士、カズマ、唯世の三人は日奈森邸に招待され、夕食を出されていた。
歌唄は急に人数が増えたため、量を多くすると、笑顔で料理を再開した。
トントンという包丁の音とコトコトと煮立つ鍋の音がキッチンに鳴り響き、良い香りがリビングに澄み渡っていく。
やがて食卓にはハヤシライスとコーンスープ、トマトサラダが並び、五人は食卓に着いた。

『いただきます。』

五人はスプーンを使い、ハヤシライスを口に運んでいく。
するとカズマは、舌鼓を打って思わず声を上げた。

「うん!美味い!歌唄ちゃん料理上手だね!」
「あ、ありがとうございます!」

歌唄は頬を染め、カズマに頭を下げた。

「今度サクヤ先輩やムツキにも食べさせてやりたいな…後でレシピ教えてよ。俺の会社の社員食堂の皆に作ってもらうからさ。」
「はい…って、カズマさん社長だったんですか!?」

歌唄はカズマの意外な立場に驚き、少し身を乗り出した。

「うん、まぁね。」
「ちょっと頼りないけどな。」

カズマの横で食べていた士はからかう様な口調で言うと、カズマは「おいおい士!」と抗議した。
歌唄は次に唯世の方を向くと、申し訳なさそうな顔で口を開いた。

「唯世君もごめんね…あむが迷惑かけちゃって…」
「いえ!良いんです。僕が勝手にしたことですから。」
「今度大した物は出来ないけどお礼をするわ。ほら、あむも謝りなさい!」

歌唄は強い口調で言うと、あむの頭を掴んで、頭を下げさせた。

「痛い!痛いって!」

あむはじたばたと抵抗し、士とカズマはそれを見て歌唄の容赦の無さに苦笑した。
しかし、歌唄はまた寂しそうな顔をすると、手に持ったスプーンを置いて口を開いた。

「でも…あむがやっと帰ってきたのに…イクトは帰ってこないなんて…」

その言葉と共に、場の雰囲気は少し暗くなった。
イクトは戦いの後、ロックをあむに返さないまま再びどこかに姿を消した。
家族を捨てた理由も何も話さずに…

「…でも、私はイクトを信じるよ。」

だがあむは少し強くスプーンを握り、そう口にした。

「イクトは家族を理由も無く裏切ったりしない。きっと何か訳があるんだよ。私は…私が大好きなイクトをもう一度信じてみる…だよね、士さん。」
「ああ。」

士は頷くと、あむは笑顔になり、歌唄はあむが憎しみを克服したことを喜んだ。
すると士は、何かを思い出したようにはっとし、歌唄に話しかけた。

「そういえば、歌唄は歌手の活動を休んでバイトしてるんだよな?」
「ええ…両親の遺産と私の不安定な収入だけじゃとても生活できないから、今まではイクトがアルバイトで家計を助けていたんですけど…」
「え!?歌唄ちゃん歌手だったの!?」

歌唄の職業を知らなかったカズマはサラダを食べる手を止めて驚いた。
士は少しの間足を組んで考え込み、それから手をパチンと叩いた。

「…カズマ。」
「何だよ?」
「お前、確かスーパーショッカーに襲われそうになった歌唄を助けたんだったよな?」
「ああ…そうだけど…」
「お前、歌唄の代わりにバイトしろ。」
「はぁ!?」
「ええ!?」

カズマと歌唄は同時に驚き、口を大きく開けた。

「士!何言ってるんだよ!?」
「この世界で最初にあったのも何かの縁だ。歌唄の為に、ちょっと位協力してやったっていいんじゃないか?」
「そりゃ…協力したい気持ちもあるけど…」
「ちょっと待ってください!」

歌唄は椅子から立ち上がると、士に抗議の視線をぶつけた。

「何だよ?」
「そんな…私を助けてくれた人を利用するなんて真似私には出来ません!そんなことして歌手に戻ったって、嬉しくなんてありません!」
「強情だな。」
「…ちょっと待った。」

カズマは歌唄にそう言うと、彼女の目を真っ直ぐ見て話を続けた。

「士、分かったよ。歌唄ちゃんを助ける。」
「カズマさん!私の話を…」
「歌唄ちゃん、俺は利用されそうになってるなんて思ってない。さっきはちょっと驚いたけど、君がそこまで自分の仕事に思い入れを持っているというなら、俺は是非君に協力したい。」
「でも…」
「俺も自分の仕事に誇りを持ってる。歌唄ちゃんの気持ちは分かるけど、君はまだ子供なんだ。だから、大人に甘えなよ。」

歌唄は真剣な表情で言うカズマの顔に赤面すると、下を向いてもじもじし始めた。
それから少しすると、顔を上げて口を開いた。

「…分かり…ました…お願い…します…」
「ああ!」

カズマは歌唄の言葉に元気に答えた。
一方、その様子をひっそりと見ていたイルとエルは順に口を開いていった。

「惚れたな。」
「惚れましたね。」


翌日、カズマのアルバイトがスタートした。
歌唄のアルバイト量は女子のやる物としてはかなりハードな物であった。
朝は四時に起きて新聞配達に向かい、昼はレストランのウェイトレス、夜はコンビニの店員と、朝昼晩のバイトざんまいであった。
だがカズマもライダーとしての戦いと以前自分の身に訪れた不運の経験から、バイト量にひるむことなく仕事をこなしていく。
そしてレストランでウェイターのバイトを終えると、カズマは店を出て背伸びをした。

「うーん…腹減ったな…」

このレストランは自給は高いもののまかない物が出ず、食事は別にしなければならなかった。
女の子である歌唄がこんなきつい場所で働いていたと思うと、少し心が痛む。

「一体、歌唄ちゃんの兄貴はなんで妹にこんなきつい仕事させるような真似したんだ…?」

カズマは首をひねって考えてみたが、空腹で頭が回りそうに無い。
仕方なくハンバーガーショップに行ってハンバーガーでも買おうと思っていると、自分の名を呼ぶ声が隣から耳に届いた。

「カズマさん?」
「ん?」

カズマは自分を呼ぶ声を耳にし、ふと隣を見ると、そこには黒が基調のワンピースとニーソックスを身に着けた歌唄の姿があった。

「歌唄ちゃん?」
「心配だったから、休憩時間を利用してきてみたんです。」
「ああ!全然大丈夫だよ!まだまだ足りないくらい!それにしてもその服、すごく可愛いね。」

歌唄はまた恥ずかしそうに赤面すると、慌ててそっぽを向いた。

「そんなこと…ないです…」
「いやいや!そんなことあるって。」
「…このワンピース、本当は着るの嫌なんです…スカート短いから転んだらあれですし…男の人から嫌らしい目で見られるし…あ!カズマさんが嫌らしい目で見てるなんて思ってませんよ!本当ですよ!
でも…マネージャーの三条さんが、売れればスカートでライブすることもあるからファンサービスのために慣れとけって言うから仕方なく…三条さん気が早くて我も強いから、逆らえるに逆らえなくて…」

歌唄は少しパニックになり、キョロキョロしながら話す。
カズマは少しつまらなそうな顔をすると、腕組みをして残念そうに口を開いた。

「そっか…俺は結構好きなのにな…その服着た歌唄ちゃん…」
「ふぇ!?」

歌唄はさらに顔を真っ赤にし、さらに落ち着き無くキョロキョロし始めた。
するとカズマは何かを思いついてはっとし、パニック状態になっている歌唄に話しかけた。

「そういえば歌唄ちゃん、飯まだ?」
「え!?は…はい!まだです!」
「だったらさ、ハンバーガーでも奢るよ。ほんとはもっと良い物奢りたいけど、持ち合わせなくて…」
「い、いえ!そんな悪いです!むしろ、あの時怪物から助けてもらったお礼に、私がご飯奢りたいくらいです!」
「いや、でもそれじゃ俺の面目が立たないよ。」
「うぅ…じゃあ、ジャンケンで決めましょう!」
「よし…負けたほうが奢るってことで…」

二人はお互いの拳を引き下げると、細かく揺らしながら自分が出す手を考える。
そして思考を終えると、口を揃えて言った。

『ジャン、ケン…ポン!』


結果は歌唄の勝利だった。
ハンバーガーを奢ることになったカズマは歌唄にダブルバーガーとアップルパイ、ポテトとコーヒーを奢り、自分はハンバーガーとコーラ、チキンナゲットを注文し、同じ席で向かい合って食事を始めた。

「すみません…またお世話になっちゃって…」
「いいって!それに社長の癖に、こんな物しか奢ってやれなくてごめんね。」
「いえ!十分です!」
「…そういえばさ、歌唄ちゃんはなんで歌手になろうと思ったの?」

歌唄は飲んでいたコーヒーを置くと、カズマの目をまっすぐに見つめる。

「私、小さい頃から歌うのが大好きだったんです。夢は、ずっと歌手になることでした。だから、あむのお父さんとお母さんにこの夢を許してもらえたときは、必死に歌手になれるよう努力しました。」
「じゃあ、夢を叶えたんだ。」
「…いえ、まだです。」

歌唄はポケットからイルとエルのタマゴを取り出すと、それをテーブルに置く、するとそこからイルとエルが現れ、歌唄は話を再開した。

「私は、色んな歌を歌ってみたい…優しくて心が温まる歌も、ワイルドで人を楽しませる歌も…そういった思いから、この子達が生まれたんです。」
「へぇ~」

カズマは歌唄のさらなる夢に感心して微笑むと、イルとエルはカズマにぴょこぴょこと歩み寄り、彼に話しかけた。

「カズマさん!歌唄ちゃんは今歌手に戻れて本当に喜んでいるんです!これもカズマさんのおかげです!本当にありがとうございます!」
「ありがとな!カズマ!」
「どうってことないよ、こんなの。」

カズマは二人のしゅごキャラの感謝の気持ちを素直に受け取ると、食べ終えた歌唄は時計を見て椅子から立ち上がった。

「そろそろ午後のレッスン始まるんで、事務所帰ります。」
「送っていこうか?」
「大丈夫です。本当にありがとうございます。」

歌唄はカズマに頭を下げると、椅子から立って店から出て行った。

「さて、俺もそろそろ次のバイト行くか!」

カズマも大急ぎで食べ終えると、椅子から立ち上がり、次のバイト先へと向かった。


それから二週間がたった。
カズマはバイトを順調にこなし、歌唄はレッスンを受けてみるみるブランクを克服した。
やがて歌唄は数ヶ月ぶりの新曲を歌い、レコーディングを終えた。
レコーディングを終えた歌唄は再び昼食にカズマを誘うと、西洋料理店でオムライスを奢ってカズマに新曲の発売を公表した。

「ほんと!?」
「はい!」

歌唄は元気な笑顔で言うと、カズマにサンプルCDを見せた。

「まだサンプルですけど、私の新曲です。」
「すごいな…俺も聞きたいなぁ…歌唄ちゃんの歌…」
「それで…相談なんですけど…」

歌唄はまた頬を染め、もじもじすると、勇気を振り絞って、口から言葉を発した。

「明後日、確か夜のバイトのシフト入ってませんよね?あの…よければ一緒にカラオケに行きませんか?」
「良いの?でも、俺歌は自信ないな…」
「嫌…ですか?」
「そういうわけじゃないよ。俺なんかで良いなら、良いけど。」
「お、お願いします!是が非でも!」

歌唄は顔を真っ赤に染めたままカズマに頭を下げ、心の底から喜んだ。
カズマは歌唄の喜びようが分からず、首をかしげていたが、それを見ていたイルとエルは呆れてため息をついた。

「カズマさん…デートのお誘いだって全然気付いて無いですね…」
「鈍い奴だぜ…」


「ふぅ…今日も終わったぜ…」

それから数時間後、夜のコンビニのバイトを終えたカズマは、光写真館への道を歩いていた。
もう疲れて腹が減り、シャワーを浴びて眠りたいくらいだ。

「今日の飯は何かな?へへ、楽しみだ。」

カズマは栄二郎が作る夕食を楽しみにし、うきうきしながら早歩きで歩く。
だが、カズマはふとぴたりと足を止め、表情を驚愕でこわばらせた。
自分の前に再びあの不気味な不透明なオーロラが現れたのである。

「これは…!」

すぐにオーロラの中からは人影が現れ、その人物はオーロラが消えると同時にカズマの前に立った。
その人物はカズマをこの世界に導いた剣崎一真である。

「あんたは…」
「久しぶりだな、カズマ。」

剣崎は冷淡な口調でカズマに話しかけると、その無感情な目でカズマの瞳を見つめた。

「早速で悪いが、お前はこの世界で何をしている?」
「何って、あんたの言うとおり士を助けに…」
「違う!」

剣崎の威圧的な大声にカズマは少しびくつくと、剣崎は再び冷静な声で話を再開する。

「お前はこの世界で余計なことをしすぎている。」
「何?」
「あの歌唄という娘のことだ。」
「歌唄ちゃんの…?」
「俺は士を助けるためにお前をこの世界に送り込んだ。だが、今のお前はあの娘に入れ込み、あろうことか仄かな恋心まで抱かせてしまっている。」
「はぁ?歌唄ちゃんが俺を?そんなわけないだろ。」
「お前は俺の言うとおり、士の事だけを助けていれば良い。この世界の人間に入れ込んだところで、結局お前は他の世界の人間、このまま親しくなりすぎれば何れはあの娘を傷つけてしまうことになる。
手遅れになる前に言うぞ。あの娘とはもう会うな。」
「ふざけるな!」

カズマは剣崎の言葉に腹を立て、大声で叫んだ。

「あの娘は今、やっと歌手に戻れて喜んでるんだ!それを今更…」
「お前は親しくなった人々と別れる辛さを知らない。今は楽しいが、それは何れお前を、あの娘を苦しめる。その前に手を引くんだ。」
「断る!今引き下がれば、それこそあの娘は傷付いてしまう!俺には彼女を裏切ることは出来ない!」
「ふん、強情だな。流石はもう一人の俺だ…良いだろう、ならば…」

剣崎はブレイバックルを取り出し、チェンジビートルのカードをセットした。

「お前の覚悟を…試させてもらう。」
「…!」

カズマもブレイバックルを取り出し、エースのカードをセットする。
そして二人はそれを腰に装着すると、険しい表情で睨み合ったまま右手を前に突き出し、大きな声で叫んだ。

『変身!』
『Turn up!』

二人はベルトを操作し、バックルから放射された青いエネルギースクリーンを潜り抜ける。
そして夜の暗闇の中に、二人の紫紺の剣士・仮面ライダーブレイドが並び立った。
一真とカズマ…二人のブレイドが世界の壁を越え、ここに合間見えたのである。
二人のブレイドはホルスターからブレイラウザーを引き抜くと、お互いにゆっくりと近づいていく。
それから雄たけびと共に剣を振り上げ、火花を上げて刃と刃をぶつかり合わせた。
二人のブレイドの激闘が、今開始された…



原作の兄であるイクトに執着する歌唄が苦手だったので今作ではこのように改変してしまいました…
批判は受け付けます…
一真とカズマの戦いは正直に言ってしまうと完全に僕の趣味ですね。
二人のブレイドが並び立つ姿を稚拙ながらやはり文章にしてみたかったので。
とりあえず次回もまたカズマ回やってそれから話を進めます。



[15564] 九話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2010/02/23 23:54
九話
「うおおおおおおおおお!!」

カズマブレイドはブレイラウザーを振りかぶり、素早い動作でそれを一真ブレイドに向けて振り回す。
ブレイドとブレイド、全く同じ姿をもつ二人のライダーの戦いは互角の展開になるとカズマは考えていた。
だがその考えはもろくも砕け散ることになった。
一真ブレイドはカズマブレイドの剣戟を避け、防ぎ、一撃たりともその身にカズマの剣を受けることは無かったのである。

「どうした?その程度か?」
「黙れ!」

カズマブレイドはより怒りを滾らせ、剣を振り下ろす。
しかし、やはり怒りの剣は一真ブレイドの剣によっていとも簡単に受け止められてしまった。

「何で…スペックは同じはずなのに…」
「まだ分からないのか?」

一真ブレイドは冷淡な声で呟くと、カズマブレイドを押し返す。

「うわ!?」
「お前が甘いからだ!」

そして力強い剣戟をカズマブレイドのアーマーに叩き込む。

「グッ…!」
「お前は優しすぎる…だがその優しさは、何れあの娘を傷つけてしまう!」

さらに一撃、アーマーを切り付ける。

「うあっ!」
「お前に、最後に人の心を傷つけてでも一緒にいてやる覚悟はあるのか!?」

再び剣戟がカズマブレイドのアーマーを切る。

「ぐああっ!」
「もしこの世界を去るときに罪悪感を感じるようであれば、もう彼女には会うな!」

一真ブレイドの剣戟は止まることなく、カズマブレイドを切り刻んでいく。

「うあっ!ぐぅ…うあぁぁぁぁぁあ!!」
「それがお前の為でも彼女の為でもある。中途半端な覚悟で優しい人を演じる気なら、いっそのこと彼女を冷たく突き放せ!お前は…甘すぎる!」

無数の斬撃がカズマブレイドを切り刻んだ後、一真ブレイドはブレイラウザーでカズマブレイドを突き飛ばす、そしてキック、サンダー、マッハのカードを取り出し、カードリーダーにラウズした。

「くっ…クソォ…!」

カズマブレイドも立ち上がり、相手と同名のラウズカードを取り出し、ラウザーにラウズする。

『はあぁぁぁあ…!』
『Lightning sonic!』

二人のブレイドはアンデッドの力をその鎧に取り込むと、ブレイラウザーを地面に突き刺す。
そして同時に空中にジャンプすると、キックポーズを取り、右足に激しい雷を纏わせた。

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
「ウェーーーーーーーーーーーイ!!」

二人のブレイドのライトニングソニックは空中で激突し、激しい稲光で夜の闇を彩った。
しかし、互角に見えた激突もやはり一真ブレイドに軍配が上がり、カズマブレイドのキックを押し切ってその胴部に強烈な一撃を喰らわせた。

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

カズマブレイドはアスファルトに強く激突すると、変身が解除され、ダメージで傷だらけのカズマの姿に戻った。
一真ブレイドも地面に着地し、変身を解除して剣崎に戻ると、カズマを眼下に見下ろして口を開いた。

「よく考えるんだな…俺の言うとおりあの娘の為に引き下がるか、あの娘を傷つけてでも傍にいて守る覚悟を決めるかを…」

剣崎はそれだけ言うと、再び背後に出現したオーロラを潜り、去っていった。

「クソ…!」

残されたカズマは寝そべったままアスファルトに拳を叩きつけると、強く唇を噛み、悔しさに打ち震えた。


「ったく、カズマの奴…遅いな…飯が冷めちまうぜ。」

一方、士達は写真館でカズマの帰りを待っていた。
今日は栄次郎が焼いてくれたスペアリブがメインディッシュで、食欲をそそる香りをリビングにたゆらせている。
士達は今すぐにでも美味そうな肉にかぶりつきたい気分だったが、カズマが居ないのでまだ食事を開始することが出来ない。
次第にイライラが士、ユウスケ、夏海の心に積もってきた。

「腹減ったな~…」
「一体何してるんでしょう?」
「まぁまぁ!もうちょっと待ってみようよ!」

栄次郎はむすりとしている三人を宥めると、玄関からドアの開く音が聞こえた。

「やれやれ、やっと帰ってきやがったか…」

士は呆れてため息をつくと、リビングのドアが開き、カズマが現れる。
だがその瞬間、士達の顔は蒼白となった。
カズマの体は傷だらけでいたるところが擦り剥けており、リビングに入ったとたん床にばたりと倒れこんだのだ。

「カズマ!?」

士はカズマに駆け寄ると、彼を抱き起こす。

「どうした!?おい!」

士は必死に呼びかけるが、カズマはダメージが大きく、反応が無い。
栄次郎、夏海、ユウスケの三人は急いで手当ての準備に取り掛かり、士はカズマをソファーへと運んだ。


それから二時間後、士達の手当てもあり、カズマは目を覚ました。
カズマは一杯の水を飲み、心を落ち着かせると、グラスを栄次郎に返し、士達の方を見て口を開く。

「ありがとう…助かったよ。」
「良かった…一体何があったんだ?」

ユウスケがカズマに聞くと、カズマはうつむきながら、剣崎一真と写真館の近くで出会い、歌唄から手を引けと忠告され、彼と戦ったことを話した。

「酷いです!そんなの!」

話が終わると、夏海は頬を膨らませ、怒りをあらわにした。

「歌唄ちゃんはせっかくやりたい仕事に戻れたって言うのに、カズマが歌唄ちゃんの前から消えたら全部水の泡じゃないですか!」
「ホントだよ!一体何考えてるんだ!?」

ユウスケも夏海と同じように剣崎の行為に難色を示したが、士は違った。
士は少し考え込むように呻ると、ぼそりと呟く。

「なるほど…確かにそうかもな…」
「士…?」

カズマは士に話しかけると、士はカズマの方を向いて再び口を開く。

「あいつの言う事にも一理ある…確かに歌唄はお前のおかげでショッカーから救われ、仕事に戻れたが、同時にお前に入れ込んじまった。これ以上仲良くしてたら、別れる時にあいつがどれだけ悲しむか目に見えてるな…
俺としたことが、間違った提案をしちまったかもしれない…」
「…!」

カズマは奥歯をかみ締め、拳を強く握る。
だが士の言葉はそこで終わりではなかった。

「カズマ、お前覚悟はあるか?」
「覚悟…?」
「あいつもお前に聞いたんだろ?歌唄を傷つけることになっても、最後まで一緒に居て助けてやる覚悟だよ。いずれにせよ、お前はあの娘を助ける立場になっちまった。
その立場に立ったからには、あの娘を最後まで見届ける義務がある。お前にその義務を背負う覚悟はあるのか?」
「俺は…」
「言いだしっぺの俺が言えた事じゃないかも知れないが、覚悟が無いならあいつの言うとおり歌唄が辛くなる前に別れるべきだ。もし嫌なら、覚悟を決めるんだな。」

カズマは何も言えなくなり、唇を強く噛んだ。
それからカズマは食事もせず、借りた部屋に閉じこもり、布団にもぐりこんでそこから出てこなかった。


翌日、レストランのバイトを終えたカズマはラーメン屋に入り、カウンター席に座っていた。
だがカズマは注文をするでもなく、ただぼーっとしながらうつむき、昨日剣崎と士が言った覚悟について考えていた。
自分は確かに士の提案に乗り、歌唄を助けるために彼女のバイトを肩代わりした。
そのことを後悔してはいないし、自分がこの世界にいる間は彼女を助けてやりたい。
だが剣崎や士の言うとおり、このまま歌唄と一緒にいればこの世界を去るときに自分に心を開いている歌唄を傷つけてしまう。
親しくなりすぎてしまうわけには行かないかもしれない。
だが今引き下がってしまえば結局彼女を傷つけてしまい、また歌唄の歌手活動をストップさせてしまう。
カズマはもう分からなかった。このまま彼女の手伝いを続けるべきか、彼女と親しくなりすぎる前に彼女の前から去るべきか…

「カズマさん?」

そんなカズマの耳に、たった今考えていた少女の声が聞こえた。
ふと後ろを振り向いてみると、そこには自分が気に入った黒のワンピースを着た歌唄の姿があったのだ。

「歌唄ちゃん…」
「…!?」

歌唄は恥ずかしそうに後ろを振り向くと、キョロキョロと慌て始めた。
カズマは歌唄の行為に首をかしげると、イルとエルが歌唄の前に現れ、彼女に話しかけた。

「歌唄ちゃん、どうしたんですか?」
「だって…カズマさんに見られた…」
「はぁ?どうでもいいじゃんそんなの。」
「良くないよ!イメージ崩したかも…うわ、恥ずかしい~!」

二人のしゅごキャラはシャイな歌唄に呆れ、溜息をついた。
カズマはそんな歌唄を見てクスりと笑うと、慌てている歌唄に話しかけた。

「歌唄ちゃん、隣空いてるよ。」

歌唄はそれを聞いて直立すると、ゆっくりとカズマのほうを向いた。
そして目を羞恥で潤ませたままぎこちなく歩くと、カズマの隣に座った。

「びっくりしたよ、歌唄ちゃんがラーメン屋に来るなんて。」
「お、お気に入りの店なんです、ここ。」
「へぇ~」

歌唄はまだ恥ずかしそうにもじもじすると、カズマはそれが少しおかしくて少し噴出してしまった。

「あ!?今笑いましたね!」
「あ…いやいや!笑ってない笑ってない!」

カズマは必死にごまかしたが、歌唄は頬を赤くしながらカズマに抗議する。
だがそんな時、歌唄はカズマの顔に絆創膏が何枚か貼ってあることに気づいた。

「そういえば…どうしたんですか?その絆創膏?」
「え?ああ…ちょっと夜のバイト帰りに絡まれちゃって…」

カズマはとぼけた喋り方で歌唄をごまかすと、歌唄は心配そうな顔でカズマの顔を覗き込んだ。

「大丈夫ですか?」
「どうってことないよ!こんなのもう戦いで慣れてるからさ!」

カズマは作り笑いでまた彼女をごまかした。
だがカズマの胸には昨日の剣崎一真の言葉が突き刺さっていた。
今の歌唄は本当に生き生きしている。
今まで我慢してきた分重荷から解放された今彼女はとても充実しているだろう。
だが彼女が自分に心を開いているのも事実であり、彼女の前から去ってしまえばまた重荷を背負わせてしまうことになる。
そんなことはしたくない。
しかしこのまま一緒に居れば間違いなく剣崎の言うとおり彼女を傷つけてしまうだろう。
だがカズマにはまだ明確な答えを出すことはできなかった。
とりあえずこの場は歌唄おすすめのとんこつラーメンを二人で食べ、日常的な話をした後二人で店を出た。


店を出た二人は肩を並べて人気の無い路地を歩いていた。
カズマはまだ悩んでいた。このまま共にいるか、彼女から手を引くべきか。
迷い続けているカズマの様子が気になってか、歌唄は心配そうな顔でカズマに話しかけた。

「カズマさん?」
「あ…どうしたの?」
「本当に大丈夫ですか?さっきからずっとぼんやりしてますけど…」
「あ、ああ!俺は元気だよ!」
「もしかして…バイトで疲れてるんですか?やっぱり私が…」
「違うって!そんなんじゃないよ!」

カズマは再び作り笑いで歌唄をごまかした。
やはりこの女の子を裏切ることはできない。しかし、彼女を傷つけたくも無い。
二つの思いはカズマを挟み込んで苦しめた。
だが迷っている時間は突如終わりを告げた。
突如エルが歌唄の前に現れ、慌てて喋りだしたのだ。

「歌唄ちゃん!×たまの気配です!」
『!?』

カズマと歌唄は表情を驚愕で染め、エルは急いで×たまの元へと飛び立っていく。
カズマと歌唄はエルに導かれ、駆け足でエルの後に続いた。


エルに案内され、カズマと歌唄がたどり着いたのは先程の場所から数十メートル先の公園だった。
そこでは、人々が恐怖を顔に現したまま石化するという異様な光景が広がっていた。

「これは…」

カズマはその光景に絶句し、辺りを見回す。
だが無事な人間は誰もおらず、全て石に成り果てていた。

「酷い…一体誰がこんなことを…」

カズマは石化した人の一人に近づこうとした。
だがその瞬間、一筋の光がカズマに向けて放たれた。

「カズマさん!」

歌唄はカズマに向けて走り、彼に体当たりして共に光を回避する。
二人は地面に倒れると、すぐに起き上がって上空を見上げた。

「なんだあれ…?」

カズマはソレを見た瞬間、大きく瞳を開いた。
そこには無数の蛇を頭部に纏ったアフリカゾウ五匹分はありそうな巨大な黒い怪物が空中に浮いていたのだ。

「×キャラ…でも、あんなに大きな個体なんて…」

歌唄は怪物を見た瞬間、異様な影が×キャラであると見抜いたが、歌唄はその個体の大きさに驚いていた。
本来×キャラは大きくなっても人型までが限界で、あそこまで大きくなることはありえない。
なのになぜあそこまで巨大な個体が居るのか驚いていると、奇怪な声が周囲に響き、ショッカー戦闘員達がカズマと歌唄の周囲に現れた。

「何なのこいつら!?」
「スーパーショッカーだ!」

歌唄は初めて目にする奇怪な集団の出現に驚き、カズマは歌唄の前に立って彼女を庇いながら身構えた。
すると戦闘員達の間を書き分け、狼の頭を持った怪人が現れた。
改造魔人・オオカミ長官である。

「スーパーショッカー!貴様らの仕業か!?」
「そのとおりだ剣立カズマ。あの×キャラは我々が大量の×たまを集め、合成したものだ。」

オオカミ長官は説明口調で言うと、歌唄も表情を怒りで染め、オオカミ長官に向けて叫んだ。

「なんでこんなことをするの!?×キャラだってしゅごキャラにはかわりないのに!」
「エンブリオは×たまある所に現れるという説がある。それを実験したまでのことだ。」
「そんな…」
「ふざけやがって…!」

歌唄はスーパーショッカーの卑劣な行為に悲しみ、怒るカズマはブレイバックルを取り出してエースのカードをセットし、腰に装着した。

「変身!」

そして放出されたエネルギースクリーンをくぐって仮面ライダーブレイドに変身すると、ブレイラウザーを引き抜き、オオカミ長官と戦闘員達に立ち向かった。

「エル!私達は×キャラを!」
「ハイ!」

エルは光と共にしゅごタマへと包まれ、歌唄はそれを胸に当てる。

「私の心…アンロック!」

歌唄の体は眩い光を纏い、純白の美しいドレスをその身に纏う。
そして背中に大きな二枚の天使の翼が生えると、それを展開し、凛々しい瞳で前を向いた。

「キャラなり!セラフィックチャーム!」

セラフィックチャームへとキャラなりした歌唄は翼を羽ばたかせ、上空の×キャラへと立ち向かった。
空と地上、二つの場所でのスーパーショッカーとの戦いが開始された。

「うおおおおおおおお!!」

ブレイドはブレイラウザーを自在に操り、大群で襲い来る戦闘員達を切り裂き、倒していく。
戦闘員達が使うのは短剣に対し、ブレイドが使うのはオリハルコンプラチナを研磨したブレイラウザー。
武器の差からも勝敗は決していたようなものであった。
ブレイドはラウザーを手足のように振るい、次々に戦闘員達を切り倒していく。
やがてブレイドは全ての戦闘員を倒し、その刃をオオカミ長官に向けたが、敵は一歩も動じずに武器のスティックを取り出した。

「中々やるなブレイド…だが俺に勝てるかな?」
「やってやる!」

ブレイドは再びブレイラウザーを構え、オオカミ長官へと立ち向かった。


「ホワイトウィング!」

セラフィックチャームはその白い翼から無数の羽手裏剣を放ち、×キャラを攻撃する。
しかし、羽は巨大な×キャラに全て命中したが全く効力は無く、敵は当たった箇所を痒そうに掻いてからセラフィックチャームを睨んだ。
そして大きな雄たけびを上げると、蛇が集まって出来た髪が不気味に蠢き、その蛇一匹一匹の目から不気味な光がセラフィックチャームに向けて放たれた。

「クッ…!」

セラフィックチャームは何とか攻撃を回避するが、自分の力だけでは勝てないのは明白だった。

「イル!」
「おう!」

セラフィックチャームはイルを呼び、彼女の傍にはイルが出現する。

「私だけじゃこの×キャラは倒せない…あむを呼んできて!」
「任せろ歌唄!」

イルはセラフィックチャームの頼みごとを承諾すると、猛スピードであむを探しに行った。
残ったセラフィックチャームは出来るだけ敵を足止めするため、戦闘を再開した。


「はっ!はあぁぁぁぁあ!!」

ブレイドは剣を振るい、オオカミ長官をその素早い剣戟で攻め立てる。
だが、その剣は敵の体を傷つけることは無く、空ぶるばかりでまともにヒットしなかった。
やがてその刃はオオカミ長官のスティックで防がれ、二人は鍔迫り合いの状態に入った。

「クッ…!」
「貴様…迷っているな?」

オオカミ長官の一言にブレイドの脳裏に昨日の剣崎の言葉が蘇った。
彼女を手伝い続けて分かれる時に辛い思いをさせてしまうか、それとも彼女が自分により深く入れ込む前にきっぱりと自分と彼女は別の世界の人間だからといって別れ、心の傷の深さを最小限にさせるか…
自分はまだこのまま歌唄と接していて良いのか迷っていた。

「迷う剣で、このオオカミ長官を倒そうなど笑わせる!」

オオカミ長官は狼のように素早い動きでブレイドを押し返すと、高速でスティックを連続で突き出し、ブレイドを攻撃し始めた。

「うわああああああ!」

オオカミ長官の攻撃は休まることを知らず、執拗にブレイドを攻め立てる。
その姿はまさに獲物を襲う狼そのものであった。
やがてブレイドはオオカミ長官に突き飛ばされ、地面に激突した。

「こ…の…!」
「ヌン!」

オオカミ長官のスティックからは一閃の光線が放たれ、ブレイドの胸部に直撃した。

「ぐああああああ!!」

ブレイドは大きなダメージから変身が解除され、カズマの姿に戻ると、地面に倒れ、痛みにもだえ苦しんだ。
オオカミ長官はこれを好機とばかりにその鋭い爪でスティックの先端を研ぎ、カズマに近づく。

「止めを刺してくれる…!」


一方、空で戦っていたセラフィックチャームもカズマの危機に気付いた。

「カズマさん!」

セラフィックチャームは戦いを中断すると、カズマの方に向けて一直線に飛んでいく。

「ホワイトウィング!」

そしてまた無数の羽手裏剣を出現させ、それをオオカミ長官に向けて放った。


「ぐお!?」

オオカミ長官は不意打ちに驚き、攻撃を受けて吹き飛ばされる。
そして降りてきたセラフィックチャームは地面に膝をつき、カズマに手を貸した。

「大丈夫ですかカズマさん?」
「ありがとう、歌唄ちゃん…」

カズマは上半身を起こし、何とか立ち上がろうとする。
だがオオカミ長官は既に武器の矛先をカズマへと向けていた。

「おのれ…今度こそ死ね!」
「はっ!」

オオカミ長官のスティックからは再び鋭い光線が放たれ、カズマに向けて飛んでくる。
セラフィックチャームは迷うことなくカズマを抱きしめ、彼を庇うと、光線はセラフィックチャームの左の翼を直撃した。

「歌唄ちゃん!」
「きゃああああああああああ!!」

セラフィックチャームの翼は痛々しく千切れ、鮮血と羽吹雪が舞うと共に歌唄へと戻り、カズマの胸の中へと倒れこむ。

「歌唄ちゃん!エル!しっかりしろ!」

カズマは歌唄に呼びかけるも返事は無い。
歌唄の傍にはキャラなりが解けたエルも、大ダメージによって意識を失い、倒れていた。
そしてオオカミ長官はそんな歌唄の姿を見て、静かに笑い始めた。

「クックックック…他人を助けるために盾になるとは…馬鹿な女よ!」
「…許さない!」

カズマは歌唄を地面に寝かせ、ゆっくりと立ち上がると、鋭い眼光でオオカミ長官を睨んだ。

「やっと分かった…傷つけるとかつけないとか、そんな物は関係ない!俺は…目に映る苦しむ人や悩んでいる人をただ助けたい!それが例え間違っていたとしても、その人の幸せの為なら、どんな結果になったとしても俺は全力で力を貸したい!
俺は人を愛しているから仮面ライダーになったんだ!答えになっていなくても良い…人を助けることが出来るなら、覚悟だって決めてやる!」
「貴様…何を言っている?」

オオカミ長官はカズマの言葉の意味が理解できず、獣のような唸り声を出した。
そんなカズマの隣にオーロラが現れ、再び中から人影が出現する。
それは昨日と同じように、剣崎一真の姿であった。

「答えをみつけたようだな。」

カズマは剣崎の問いに強く頷くと、二人はオオカミ長官を睨む。
そして二人はブレイバックルを取り出し、エースのカードをセットして腰にベルトを装着した。
電子音声が周囲に大きく響き、二人はゆっくりと右手を突き出す、そして手首を勢いよく返すと、同時に叫んだ。

『変身!』
『Turn up!』

二人はバックルのレバーを引き、自分達の正面にヘラクレスオオカブトが描かれた青いオリハルコンエレメントで生成されたエネルギースクリーンを走りながら潜り抜ける。
一真とカズマ…二人のブレイドが再び同じ時、同じ場所へと並び立った。
ただし今度は、悪を倒すために集った仲間として。

「うおおおおおおお!…はぁ!」
「ウェェェェェェイ!…ウェイ!」

ダブルブレイドはスクリーンを抜け、アーマーの装着を終えると、同時に一発の拳をオオカミ長官に向けて放った。

「うお!?」

オオカミ長官は何とか両手で拳を防御するも、その勢いに押され、数歩後退する。
二人のブレイドはその隙をつくと腰のホルスターからブレイラウザーを引き抜き、一閃してオオカミ長官に切りかかった。

「ハッ!ヤアッ!はあぁぁああ!」
「ハァッ!ヌン!ウェイ!」

カズマブレイドの素早く鮮やかな剣閃と一真ブレイドの力強く豪快な剣戟は美しく重なり合うようにオオカミ長官の体をズタズタに引き裂く。
少しの抵抗も許さず、二人の剣は容赦なく人の思いを嘲り笑う悪を切り刻んでいく。
オオカミ長官はただ二人のブレイドのコンビネーションに圧倒された。
やがて二人は胴払いでオオカミ長官を切りつけながら敵の背後に立つと、ブレイラウザーのカードホルダーを展開し、カテゴリー5、6の二枚を取り出し、それぞれのラウザーにラウズした。

『Kick…Thunder…Lightning blast!』

ダブルブレイドはブレイラウザーを地表に突き刺し、その身に二枚のカードの力を宿すと、宙にジャンプし、カズマブレイドはそのまま、一真ブレイドは一回転宙返りしてからキックポーズを取った。

「うおぉぉぉぉぉお!はあぁぁぁぁあ!!」
「ウェーーーーーーーーーーーーーイ!!」

二人の必殺キック「ライトニングブラスト」は、強烈な雷をその鋼の足に纏わせ、強烈な蹴りをオオカミ長官の胴部に叩き込んだ。

「グアァァァァァァァァァァア!!」

オオカミ長官は断末魔の絶叫を上げ、雷と共に粉々に爆発した。
敵の一人を倒した二人のブレイドはお互いの顔を見つめ、軽く共に笑いあう。
だがそんな安心もつかの間、上空に居た×キャラが二人に向けて石化光線を放ってきた。

『!?』

二人は後方にジャンプしてその攻撃を回避すると、ブレイラウザーの傍に着地し、柄を手にとって引き抜いた。

「行くぞ!カズマ!」
「ああ!」

さらに二人は左手に装備されたラウズアブゾーバーを起動させ、カードトレイを展開すると、カテゴリーJ、Qの二枚のラウズカードを取り出した。
そしてQのカードをアブゾーバーにセットし、Jのカードをアブゾーバーのカードリーダーにラウズすると、電子音声がそこから発せられた。

『AbsorbQueen! FusionJack!』

するとブレイドの正面に金色の鷲の紋章が現れ、鎧と重なり合い、アーマーと仮面は金色の光に彩られ、背には赤い六枚の翼が出現した。
ダブルブレイドはアブゾーバーの力により、ジャックフォームへと強化変身したのだ。
二人のブレイラウザーの先端の刃もより鋭い切れ味を持つディアマウンテゴールドへと強化され、二人はより強くなった剣を構え、翼を広げて空へと飛び立った。
敵は再び無数の蛇の髪の毛から光線を発射し、二人を石化させようとする。
だが二人は超高速のスピードで光線を回避し、敵の髪の毛に接近した。

『うおおおおおおおおおおお!!』

そして敵の頭上を飛び回りながらブレイラウザーを振るい、髪の毛を全て切り落とした。
×キャラは痛みに絶叫を上げると、二人のブレイドは×キャラの背中に強烈なキックを浴びせる。
×キャラは強烈な勢いで地面に落下し、激突すると、元の小さな×たまに戻り、地面へと散らばった。


戦闘後、石化した人々は元に戻って何事か分からぬまま公園を去り、カズマと剣崎は×たまを拾い集め、箒で積んだ木の葉のように一箇所に集めた。
そして二人はお互い向かい合い、剣崎の方から口を開いた。

「カズマ、お前は自分なりの答えを見つけた…もう、迷うことは無いな?」
「ああ、例えどんな結果になろうと、歌唄ちゃんを助けるよ。今止めたら、きっと後悔するから。」
「…それでいい、自分の行動に後悔だけは残すな。 例えその行為の代償として罰を受けようと、苦しむことになろうと、そうして結んだ絆はきっとお前の力になってくれる。」
「ありがとう…」
「…さらばだ、カズマ。」

剣崎はそういうと、カズマに微笑み、背後に出現したオーロラを潜り抜けて消えていき、カズマも笑顔で剣崎を見送った。

「う~ん…」

すると次はダメージを負っていた歌唄が目を覚まし、起き上がった。

「私…」
「歌唄ちゃん!」

カズマは歌唄に駆け寄ると、右手を彼女に差し出した。

「大丈夫?」
「カズマさん…あ、ありがとう…」

歌唄は少しおどおどしながらカズマの手を取ると、その優しい温かさが少しこそばゆかった。
カズマの手を借りて立ち上がった歌唄はキョロキョロと辺りを見回すと、山のように詰まれた×たまを発見した。

「これ…」
「ああ、倒しておいたよ。後は浄化するのを待つばかりだ。」
「良かった…あっ!」

歌唄は残ったダメージから足をもつれさせると、前のめりに転んだ。

「おっと!」

カズマは素早く反応し、歌唄を抱きとめた。
すると歌唄は顔を真っ赤に染め、動揺したが、カズマの暖かなぬくもりをもっと感じていたくなり、そのまま離れなかった。

「歌唄ちゃん?」
「もうちょっと…このままで良いですか?」
「う…うん…」

流石にこれはカズマも恥ずかしく、顔を彼女から背けた。
しかし、タイミング悪くイルとあむがその場に到着してしまった。

「歌唄!あむを連れてき…」
「歌唄!助けに…」

あむとイルの二人はその場に膠着し、口をぽかんと開けて絶句した。
そしてカズマと歌唄も気まずさに凍りつくと、あむとイルの二人は素早く二人から目をそらした。

「わ、悪かったな!邪魔して!」
「う、歌唄!大丈夫だよ!スキャンダルになんかしないから!」

カズマと歌唄は情けなく口をぱくぱくと動かすと、渾身の力を込めて大声で叫んだ。

『ご…誤解だーーーーーーーーーーーー!!』



さて、まずカズマ主役回は終わりです。
そろそろイクト関連を突き詰めて動かす予定です。
もうちょっと続くと思いますのでお付き合いください…
そういえば新電王の映画にディエンド編があるようで…
もしかして純一出したのはミスだったかな…
しかしもし映画に純一が出るなら脚本は井上氏にお願いしたいですね。
高野一文字と同じで純一は井上氏にしか描けないと思いますので。



[15564] 十話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2010/03/17 21:05
十話
ダブルブレイドとスーパーショッカーとの戦いから三日後、士はマシンディケイダーを走らせ、スーパーショッカーとイクトを探していた。

「ったく、どいつもこいつも、何処にいやがる…」

この世界に潜伏している敵組織を捜すのは当然だが、士はそれと同じようにイクトのことが気になっていた。
あむの父親の形見であるハンプティ・ロックを奪い、愛する家族と距離をおいてまでスーパーショッカーから逃げる理由は何なのであろうか?
何か彼はとてつもない理由を隠しているに違いないと、士は確信していた。
だからイクトを見つけ出し、今度こそこの世界での問題の解決策となりうるかもしれない「何か」を聞き出さなければならないと感じていた。
しかし、どれだけさがしてもイクトの姿は見つからない。
午前中から探しているが、影も形もさっぱりであった。
時計は既に15時を指し、そろそろ引き上げようかと士が思い始めたとき、士は歩道を歩く見慣れた桃髪の少女と金髪の少年の姿を見つけた。
あむと唯世である。

「あむ!唯世!」

あむと唯世は自分達を呼ぶ声に振り向くと、士は二人の傍のガードレールまで移動し、マシンを停めた。

「あ、士さん!」
「こんにちは!お久しぶりです。」

二人は士に挨拶すると、士はゴーグルを外し、二人に視線を合わせた。

「よぉ!デートか?」
「ち、違いますよ!一緒に帰ってるだけです!」

唯世は頬を桃色に染めて否定し、士とあむはそれを見てくすりと笑った。
すると近くのビルディングの大型モニターから歌唄の歌声が聞こえ、三人は同時にモニターを見た。
モニターには艶やかな衣装を来た歌唄がセクシーな眼差しで歌う姿が映されており、「アイドル界の新星!ほしな歌唄カムバッグ!新シングル「迷宮バタフライ」発売決定」と芸能ニュースが報道されていた。(ほしなはマネージャーが考えた芸名らしい)
歌唄は歌手を休業する前は曲を一つしか出していなかったが、アイドルファンや業界からの注目度は高く、休業を惜しまれていた。
しかし、カズマの助けでカムバッグした今、再びその人気と注目度は上昇し始めたのだ。

「歌唄の奴も、生き生きしてるな。」
「これも、士さんとカズマさんのおかげだよ。」

士は二日前、自分とユウスケ、そして夏海、カズマの四人がこの歌唄と共にカラオケに行ったのだから少し滑稽だと思った。(本当はあむと共に自分達もカズマと歌唄のデートに付いていき、カズマは楽しそうだったが歌唄はどこか不満そうだった)
そこでユウスケは村井良大の歌う「烈風の証~wind and blaze~」、士は井上正大が歌う「Ride The Wind」を歌い、高得点を出したが、歌唄の歌唱力には全く敵わなかった。
本場の歌手はやはりすごいと実感した瞬間であった。
だが三人が歌唄のニュースに見入っている最中、あむの携帯電話が鳴り響いた。
あむは携帯を取り出すと、そこには一通のメールが届いており、あむはそのメールの差出人を見て歓喜した。

「ウソ!?唯世!なでしこからだ!」
「本当!?」

唯世も嬉しそうにあむの携帯を覗き込み、士は首をかしげて二人に聞いた。

「なでしこって誰だ?」
「あたしの親友だよ!藤咲なでしこ!役者の卵で、私達と同じキャラ持ちなんだよ!」
「藤咲さんは、演技の上達のために他県を転々としながら修行してるんです。」
「やれやれ、歌手のおねーちゃんの次は役者の友達か…あむ、大した奴だよ、お前は。」

士はあむの交流関係に呆然とし、肩を落とした。

「あむちゃん、なんて書いてあるの?」
「えっと…」

あむは脳内でなでしこの声と姿を思い出しながら、ウキウキとメールを読み始めた。

『ハローあむちゃん!お久しぶり!私は今京都の劇団に居ます。修行は厳しいし、怒られることもあるけれど、てまりと一緒に楽しい日々を送っているわ。
そういえば、辺里君とイクトさん、どっちを選ぶか決めた?次にそっちに来る頃には、三角関係の結果を期待しているわ♪』

そこまで読むとあむと唯世は頬を真っ赤に染めて絶句し、士はそれを見てまたふっと笑った。

『色々話したいけれど、実はなによりも話さなきゃならないことがあります。私達キャラ持ちの間で伝説となっているエンブリオについてです。』

「エンブリオ」
その単語を聞いた瞬間、三人の顔から笑顔が消え、表情をこわばらせた。

『これは元キャラ持ちの家の座長から聞いた眉唾物の話なんだけど…エンブリオはあるキャラ持ちの子供を媒体にして生成する究極のしゅごたまらしいわ。
昔の心無い人たちはエンブリオを作るためにしゅごキャラの研究を進めたらしいけど、結局その媒体の子供は見つからなかったみたい。
それに、エンブリオの生成には今あむちゃんが持っているハンプティ・ロックと、イクトさんが持っているダンプティ・キーも必要不可欠だと言われていたらしいわ。
ロックとキー、そして媒体…これでどうやってエンブリオを作るのかは分からないけど、子供を媒体にしてしゅごたまにしてしまうなんて恐ろしい話ね。人間が考えることとは思えないわ。
あ、恐い話をしてごめんなさい。ただ、ロックとキーを持っている貴方達兄妹には、話しておかなきゃと思ったから…まだエンブリオを狙う人間がいるとしたら、危険なので気をつけてね。
もしあむちゃんに何かあったら、私泣いちゃうよ…
それじゃ、時間が出来たらまたメールします。さようなら。』

そこでなでしこからのメールは終わっていた。
あむは携帯をしまうと、うつむいたまま口を開いた。

「まさか…イクトはこの事知ってて…」

あむはふるふると震えだし、唯世はあむを温めるように肩を抱いた。
そしてあむは震えたまま士に視線を合わせる。

「士さん…もしかして、イクトはこの事を知っていたからあたしからロックを奪ったのかも…あのスーパーショッカーって奴らが、私からロックを奪おうと襲ってこないように…」
「もしかしたら…イクトさんがその媒体なのかも…」

唯世の一言であむは凍りつき、唯世はしまったと口を押さえる。
だが士はその可能性も無くはないと思っていた。
自分が媒体だからこそ家族に何も知らせず、あむを傷つけるような真似までしてロックとキーを持って逃げたのかもしれない。
あむの不安と恐怖は止まらず、唯世の腕の中で恐がることを止めない。
そんなあむの頭上に、彼女の三人のしゅごキャラと、唯世の隣にキセキが出現した。

「あむちゃん!私達もイクトを探すよ!」
「きっとまだ間に合う!あいつらより先に僕達と一緒にイクトを探すんだ!」
「イクト君をエンブリオになんかさせません!」
「ラン…ミキ…スゥ…」

キセキも偉そうに鼻息を鳴らすと、胸を叩いて豪語し始める。

「庶民を助けるのは王の仕事だ!僕も手伝うぞ唯世!」
「キセキ…ありがとう!」

唯世は普段傲慢なキセキに笑顔で礼を言った。
そして士も、バイクから降り、震えているあむの頭をなでる。

「士さん…」
「安心しろ。あいつはそんな簡単につかまるような奴じゃねーよ。ユウスケ達にも連絡して、俺達も探してやる。」
「ありがとう…士さん。こんな時…ダイヤも居てくれれば心強いのに…」
「ダイヤ?」

士が首をかしげると、あむは制服のポケットからダイヤのマークが描かれたオレンジ色のタマゴを取り出し、士に見せた。

「ダイヤは、あたしの四人目のしゅごキャラなの。でも…イクトが家出してあたしが心を閉ざした日に、しゅごたまに戻っちゃったんだ…」

あむは悲しげにダイヤのタマゴを見つめた。
そんなあむを、三人のしゅごキャラが彼女を励ました。

「あむちゃん、大丈夫だよ!」
「ダイヤの分まで、僕達が頑張るよ!」
「それに、今にダイヤも帰ってきますよぉ~!」
「ラン、ミキ、スゥ…ありがと。」
「じゃあ行こう!あむちゃん、士さん!」

唯世の一言で士達は各方面へ散り、イクトの捜索に向かった。


その頃、スーパーショッカーのアジトでは、ある男の拷問が行われていた。

「日奈森博士…いい加減口を割りませんか?」

ゾル大佐は鞭をその男の首元に当て、嫌味な口調で言った。
男は服も体もズタボロになり、至る所から出血していたが、強気な姿勢を崩さず、断固たる態度で答えた。

「断る!貴様らなんかに、エンブリオの秘密を渡してたまるか!」

彼の名は日奈森紡、あむの父親であり、イクト、歌唄の養父である。

「どうしても言いませんか?」
「当たり前だ!私の妻と娘を…緑とあみを殺した貴様らの言うことなど…!」
「…フン!」

ゾルは鞭を振るい、男の顔面に再び痛烈な一撃を見舞った。

「ぐああああ!!」
「仕方ない、今日はここまでにしておいてやる。岩石男爵!この男を牢まで連れて行け!」
「へっへっへ、さぁ!しっかり歩け!」

紡は改造魔人・岩石男爵によって無理矢理立たされ、乱暴に連行された。

「(イクト…歌唄…あむを…守ってくれ…私はもうそろそろ限界だ…私が願えたことではないかもしれないが、三人とも、どうか幸せに…)」


士はマシンディケイダーを走らせ、引き続きイクトの捜索を続けていた。
しかし、路地裏、空地等人気の無い場所を徹底的に探しては見たものの、彼の姿はまだ見つからない。
やがて士は同じようにマシンで捜索を手伝っていたユウスケ、カズマと合流した。

「居たか?」
「駄目だ…こっちは見つからない。」
「カズマは?」
「俺も駄目だ…」

士は舌打ちをし、ハンドルを少し強く握り締めた。
このままではいつイクトにスーパーショッカーの魔の手が降りかかるか分からない。
一刻も早く彼を発見しなければ、スーパーショッカーにエンブリオを与えてしまうことになるかもしれないのだ。

「とにかく、このままあいつを探す。ユウスケ、カズマ、何かあったら連絡しろよ。」
『ああ!』

三人はそれぞれ別の方向にマシンを走らせ、再びイクトの捜索を開始した。


その頃、イクトは付近の廃ビルの駐車場の中に隠れ、コンビニで購入したおにぎりを食べていた。
ここ最近またイクトは貧相なホームレス生活を送っていたが、以前に比べれば随分調子も良かった。

「イクトォ~、いい加減家に帰ろうニャ~!」

だがヨルはやはりイクトの行動には否定的で、今すぐにでも家に帰りたがっていた。
しかしイクトはぶっきらぼうな態度で答える。

「駄目だっつってんだろ。」
「何でニャ!?スーパーショッカーが心配なら士達に守って貰えばいいじゃニャいか!」
「バカ、俺は男に守ってもらう趣味はねぇよ。」
「イクトのバカ!」

堪忍袋の緒が切れたヨルはイクトの元から離れると、彼に抗議した。

「もうイクトなんて知らないニャ!こうなったらオイラが士に頼んでイクトを守ってもらうニャ!じゃあニャ!」

ヨルはむすりと怒りながらイクトの元から飛び去っていった。
イクトは「勝手にしやがれ…」と言いながら食事の続きをしようと、口元におにぎりを運んだ。
だが食べ物を口に入れる瞬間、一発の銃弾が走り、イクトのおにぎりを打ち抜いた。

「!?」

イクトは飛散ったおにぎりを地面に落とし、銃弾が飛んできた方向を見ると、そこには改造魔人・隊長ブランクの姿があった。

「チッ…食事の邪魔しやがって…」
「日奈森イクト!ロックとキーを貰うぞ!」


「ふぅ…」

イクトを探す途中、士は街の自動販売機の傍でマシンに乗ったままオロナミンCを飲み、しばし休憩していた。
未だイクトは見つからず、手がかりすら何処にもない。
早く見つけなければスーパーショッカーにロックとキーが奪われてしまうかもしれず、イクトが媒体だったなら彼がエンブリオにされてしまうかもしれない。
この世界のためにも日奈森姉妹の為にも、一刻も早くイクトを見つけなければならなかった。

「よし…」

体力の充電を終えた士はポケットにビンを仕舞い、再びヘルメットを被り、ゴーグルを目に付けると、マシンのエンジンに灯を入れる。
だが走り出す直前、士の下にヨルがやってきた。

「士~!」
「ヨル!」

ヨルは士の眼前で止まると、ぴょこりとその頭を下げた。

「頼むニャ!イクトを守って欲しいニャ!」
「何だって?」
「イクトの奴、意地張って士の助けを借りずにスーパーショッカーから逃げ続けるつもりニャ!このままじゃいつか奴らに殺されてしまうニャ!だから…だから…」

ヨルは目を潤ませながら士に懇願し、より深く頭を下げる。
士はそれを見て微笑むと、優しげ口調で言った。

「頼まれなくたってそうするぜ、俺達も丁度イクトを探してたんだ。それから、お前にも詳しく話を聞きたい。乗れよ!イクトの所に案内しろ。」
「分かったニャ!」

ヨルは喜んで士の肩にしがみ付くと、士はマシンを走らせ、ヨルが案内する方角へと走り出した。


一方、イクトは物影を利用し、隊長ブランクによるライフルの狙撃を回避していた。
タイミング悪くヨルが居ないため、ブラックリンクスになれず、応戦することは出来ない。
抵抗できない自分が隊長ブランクの銃弾を受けるのは時間の問題であった。

「クソ…ヨルの奴…」
「どうした?キャラなりとやらはしないのか?ならば大人しく投降しろ。」
「誰がテメェらの言うことなんか聞くかよ!」
「ならば仕方ない、行動を停止させてロックとキーを頂く!」

隊長ブランクはライフルの銃弾を爆発力のある強化型弾丸に変えると、それをイクトが隠れている極太の柱に向けて打った。
そしてその弾がコンクリートの壁に当たると同時に、強烈な爆発が起き、イクトは爆風に飲み込まれた。

「ぐああああああ!」

イクトは何度も床に叩きつけられる。
同時に持っていたバイオリンケースを落としてしまい、隊長ブランクはその取っ手に付いたロックとキーを発見した。

「ふん!手間をかけさせおって…」

隊長ブランクはゆっくりとバイオリンケースに近づき、イクトは地面を這いながらケースを拾おうとしたが、痛みで体が動かない。
このままでは不味いと感じたイクトは、舌を噛み切ろうとした。
自分が居なくなればあとはロックとキーがあろうと何も意味を成さない。

「あむ…歌唄…俺を許してくれ…」

イクトは二人の妹の笑顔を思い浮かべた。
このまま二人を残して自分の本当の父親とあむの家族の下に逝ってしまうのは嫌だ。
だがそうしなければもうこの世界はスーパーショッカーの手に渡ってしまうのだ。
あむ達の為にはもうこれしか手はない。
イクトは覚悟を決め、自分の舌に歯を立てた。
だかそのまま噛み切ろうとしたその時、一発の銃弾が飛来し、隊長ブランクの体に命中した。

『!?』

ブランクとイクトは驚き、銃弾が飛来した方向を振り向く。
そこには、ディエンドライバーを構える大樹の姿があった。

「貴様はディエンド!?」
「あいつ…」

イクトは意外な援軍に驚き、目を大きく開くと、大樹はディエンドのライダーカードを取り出し、ドライバーにセットした。

「困るな…それは僕のお宝だ…変身!」
「Kamenride…Diend!」

大樹はディエンドライバーの引き金を引き、ディエンドに変身すると、ディエンドライバーを片手に隊長ブランクへと挑んでいった。


その頃、士はヨルにイクトが家を出た理由の一部を聞き出していた。

「じゃあ、イクトはエンブリオの生成にキャラ持ちの子供が必要だって知ってたのか?」
「ああ!だからロックとキーを持って家出したんだニャ!」
「だがまだ分からない…そのこととスーパーショッカーのことは何で知った?それに、エンブリオの媒体に適合しているのはイクトなのか?」
「それは…」

ヨルは士から顔を背け、話すかどうかを迷った。

「…分かった。無理に話さなくていい。あの女たらしのクソガキの口から直接聞いてやる。」

士は乱暴な口調でヨルを諭すと、イクトが居る廃ビルの駐車場まで急いだ。
こうしている間にも、スーパーショッカーの刺客がイクトを狙いにきているかもしれないからである。
だが士の前に人影が現れ、彼の行き先をさえぎった。
士はマシンのブレーキを操作して急停止すると、その人物の正体に驚愕し、目を開いた。

「お前は…」
「久しいな、ディケイド。」

大樹の兄、海東純一である。

「海東…純一…」
「ディケイド、俺が力を手に入れるための…犠牲になってもらうぞ。」

純一はグレイブバックルにカードをセットし、腰に装着すると、滑らかな手つきでそれを操作した。

「変身!」

グレイブバックルからはエネルギースクリーンが現れ、純一は迫ってくるスクリーンを潜り抜けると、グレイブへと変身し、グレイブラウザーを構えた。

「なるほど、そういうことか。」

士はヘルメットを外し、マシンから降りると、ディケイドライバーを取り出し、腰に装着してカードをセットした。

「変身!」
「Kamenride…Decade!」

そしてディケイドに変身を遂げると、ライドブッカーをソードモードに変形させて横目でヨルの方を見た。

「ヨル、俺はこいつの相手をする。お前はイクトの所に行け。多分刺客がイクトを襲ってる。」
「分かったニャ!」

ヨルは一目散にイクトの元へと飛び立っていった。
そして二人のライダーはお互いの剣を構え、対峙する。

「まさか、スーパーショッカーに居たとはな。」
「これが奴らとの契約だからな。」
「本当にそれが本心か?…まぁいい、邪魔をするなら、蹴散らすぜ!」

ディケイドとグレイブはお互いダッシュで接近し、互いの剣を叩き合わせた。


ディエンドとブランクは駐車場の中で激しい銃撃戦を繰り広げていた。
ディエンドの目にも止まらぬ早撃ちもブランクの正確なライフル射撃もお互い一歩も譲らず、激しく火花を散らす。
やがて二人は物影に隠れ、戦闘を中断した。

「やるなディエンド!だが、このままいつまで持ちこたえられるかな?」
「生憎、僕は真面目に戦うつもりなんて無いよ。」

ディエンドは腰のホルダーから仮面ライダーストロンガーが描かれたライダーカードを取り出すと、ディエンドライバーにセットして引き金を引いた。

「Kamenride…stronger!」

すると赤、青、黄の三色の人影が銃口から放たれ、やがてそれは一つになってストロンガーの姿を形作った。

「天が呼ぶ!地が呼ぶ!人が呼ぶ!俺は正義の戦士!仮面ライダーストロンガー!」

意思の無い人形と同じ存在であるストロンガーはオリジナルと同じ口上を叫ぶと、隊長ブランクのライフルに掴みかかった。

「ぬお!ストロンガーだと!?」

ストロンガーはブランクをコンクリートの柱の外へと引きずり出し、ライフルを奪い、捨てて接近戦を挑んだ。

「おのれぇ!」

ブランクとストロンガーは互角の戦いを繰り広げ、ディエンドも柱の外に出て新たなライダーカードをドライバーにセットした。

「これで形勢は逆転だね♪」
「attackride…blast!」

ディエンドが銃口を戦っているブランクに向けて引くと、無数の青い光弾が発射され、それは戦っているストロンガーを避けて全弾ブランクに命中した。

「うおおおおおお!」

ブランクは銃撃に跳ね飛ばされると、ディエンドはディエンド用のファイナルアタックライドカードを取り出し、再びディエンドライバーにセットする。

「Finalattackride…DiDiDiDiend!」
「終焉だ。」

ディエンドは再びブランクに銃口を向けると、ディエンドライバーの銃口の先に何枚ものライダーカードが数本のリング状に組み合わさって出現し、召還したストロンガーもそのリングの中に吸い込まれて消える。
そしてディエンドは容赦なくその引き金を引き、ディエンドライバーから黒色の巨大な光線が発射された。
ディエンドの必殺技「ディメンションシュート」である。

「バカなあぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

隊長ブランクは絶叫を残し、光線の直撃を受けて消滅した。
ディエンドはため息をつき、大樹へと戻ると、ゆっくりと戦闘を見物していたイクトに近づいた。

「クッ…」

イクトは必死に逃げようとしたが、先程のダメージで体が上手く動かない。
大樹はそんなイクトに同情のかけらも見せることは無く、容赦なくバイオリンケースを奪い、取っ手からロックとキーを奪った。

「それを…返せ…!」

イクトは大樹に向けて手を伸ばすが、大樹は無言でバイオリンだけをイクトに返すと、背を向け、歩き去っていく。
やがて大樹は車用の出口に出て下へと下りていった。
イクトは悔しさに打ち震え、アスファルトを何度も殴ると、外からヨルがイクトの元へ駆けつけてきた。

「イクトォ~!」
「ヨル…」
「良かったニャ~!生きてたニャ~!」

ヨルは嬉し泣きをしながらなんどもイクトに頬づりをし、イクトが無事であったことを喜んだ。


一方、ディケイドと剣戟戦で戦っていたグレイブは隊長ブランクが倒されたという連絡が入ると同時に、ディケイドから距離をとって剣を引いた。

「何のつもりだ?」
「隊長ブランクがやられた。それと、ロックとキーも大樹に奪われてしまったようだ。」
「何だと!?」
「ディケイド、その命預けるぞ。」

グレイブはディケイドに背を向け、撤退していった。
ディケイドも変身を解き、士に戻ると、イクトが待つ廃ビルの駐車場へと入っていった。


イクトからロックとキーを奪い取った大樹は、付近の河川敷まで移動し、奪ったロックとキーを眺めていた。
だがその目は喜んではおらず、どこか悲しげな目をしていた。
やがて背後を振り向くと、そこには兄・純一の姿があった。

「兄さん…」

大樹は分かっていた。
ロックとキーを奪えば必ず兄が自分の元へとやってくると…
大樹はもうエンブリオになど興味は無く、ただ純一との決着をつけるつもりだったのだ。

「大樹、ハンプティ・ロックとダンプティ・キーを渡して貰うぞ。」
「兄さん…兄さんは本当にスーパーショッカーに魂を売ってしまったのかい?」
「くどいぞ。同じことを二度言わせるな。」
「…分かった。」

大樹はハンプティ・ロックとダンプティ・キーを自分の背後に投げ捨てると、ゆっくりとディエンドライバーを取り出すと、ディエンドのカードをドライバーにセットし、純一もグレイブバックルにチェンジケルベロスのカードをセットして腰に装着した。

「僕は…兄さんを倒す!」
「やってみろ…大樹!」

二人は仮面ライダーに変身すると、武器は持たずにそのままお互いに殴りかかった。
まず二人は至近距離で拳と蹴りの応酬を繰り返したが、やはりここは格闘タイプのライダーであるグレイブに分があり、ディエンドは何度もグレイブに競り負けた。
次にディエンドは持ち前の高速移動で移動し、グレイブに拳を仕掛けたが、グレイブは難なくその動きに順応し、ディエンドの拳を回避し、最後の一発のパンチを受け止めた。

「この程度か…甘いな。」
「いや…これは僕の間合いだ!」

ディエンドはとっさに「ファイナルアタックライド」のカードをセットしていたディエンドライバーを取り出し、グレイブの腹部に銃口を密着させた。

「大樹…お前…」

この距離でディメンションシュートを使えば、二人とも巻き込まれるのは明白であった。
だが、ディエンドの声には全く躊躇いの感情は無かった。

「兄さん、安心して…僕も一緒に行くよ。」

ディエンド・大樹は兄である純一と心中覚悟で戦っていたのである。
このまま純一が生きて居れば何れ純一の元戦友である仮面ライダーラルク・三輪春香、仮面ライダーランス・禍木慎達ディエンドの世界の人々を苦しめる存在となってしまう。
もしかしたら他世界にまで迷惑がかかるかもしれない。
しかし、純一を殺すような真似だけはしたくない。
だからこのような形を取ったのだ。
ディエンドは仮面の下で微笑みながら、引鉄を引こうとした。
しかしディメンションシュートが放たれる直前、一発の銃声が響き、強烈な弾丸がディエンドの脇腹を直撃した。

「うわああああああ!!」

ディエンドはその衝撃に吹き飛ばされ、地面を転がった。
グレイブとディエンドは銃声が響いた方向を見ると、そこには改造魔人達の統率者であるマシーン大元帥の銃を構える姿があった。

「危なかったな、グレイブ。」
「マシーン大元帥…」

マシーン大元帥は銃を仕舞い、グレイブに近づくと、再び命令口調で言う。

「さぁ、折角俺が手を貸してやったのだ。ディエンドに止めを刺せ。」
「…」

グレイブはディエンドの方に視線を移すと、グレイブラウザーを取り出し、ディエンドに近づいていった。
ディエンドはなんとか立ち上がったが、抵抗する力はもう無く、グレイブは容赦なく弱ったディエンドを横一線に斬りつけた。

「うあああああああ!!」

ディエンドは後方に吹っ飛ばされ、再び地面に激突すると。
グレイブはカードホルダーを展開し、「マイティグラビティ」のカードを取り出した。

「兄…さん…」

ディエンドはよろよろと立ち上がり、グレイブに向けて手を伸ばすが、グレイブは何も答えることはせず、カードをラウズした。

「兄さん…兄…さん…!」

グレイブラウザーの刃が金色に輝き、刃の切れ味を高めていく。
そしてグレイブはその輝く剣で容赦なくディエンドの体を再び切り裂いた。

「ぐあああああああああ!!」

グレイブの必殺技「グラビティスラッシュ」をその身に受けたディエンドは、激しい勢いで吹き飛ばされ、川の水面に激突して沈んでいった。
そしてグレイブは戦いを終えると、先程大樹が捨てたロックとキーを拾い、純一へと戻った。

「よくやったぞ。それでこそスカウトした甲斐がある。エンブリオ獲得の際には、貴様の世界の征服に協力することを約束してやる。」

純一は無言でマシーン大元帥の賞賛を受け取ると、彼と共にその場を去っていった。
やがて水面に、傷だらけになった大樹が浮かび上がった…



出してしまった…なでしこ出してしまった…我慢できなかったんだ、だが私は謝らない。
なでしこが正真正銘の女の子なのかそれともこちらでも男の娘なのかはみなさんのご想像にお任せします。
強引ですが何とか話は進めたつもりです。
ここから次第に最終決戦に持って行きます。
なでしこが居るってことは他のキャラは居るのだろうかというと…
りまややも海里も空海も二階堂先生もゆかりさんも管理人さんもぺぺもクスクスもムサシもダイチも居るけど出てこない物と脳内保管していただければありがたいです…



[15564] 十一話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2010/03/05 18:24
十一話
「歌唄ちゃ~ん!可愛いね。その笑顔だよ~!」

歌唄は雑誌掲載のためのグラビアの撮影途中だった。
黒い胸元が目立つ艶やかなドレスをその身に纏い、優しい笑顔でカメラのファインダーに微笑む笑顔にはカメラマンもつい見とれてしまい、「もう少し俺がかっこよかったら口説いたのに…」と残念そうに呟いた。
だが撮影の途中、歌唄のマネージャーである三条ゆかりが撮影所内に現れ、撮影を中断させて歌唄に歩み寄った。

「あ、三条さん。」

歌唄は先程の笑顔を一変させると、三条は特徴的なきりりとした顔立ちで口を開いた。

「歌唄、あんたにお客さんよ。剣立カズマって人がエントランスであんたを待ってるわ。」
「え?カズマさんが?」

歌唄は突然来訪に驚くと、三条は凛々しい表情を朗らかなものに崩し、歌唄の耳元に口を近づけて呟いた。

「あの人結構イケメンねぇ…彼氏?」
「ち、違います!」

歌唄は頬を染めて否定すると、ドレスのままカズマが待つエントレスへと向かって靴音を立てながら歩いていった。

「若いわねぇ…」

三条は顎に手を当てると、歌唄の若々しさに感心した。


歌唄はエントランスに来ると、受付で手を振るカズマを見つけた。

「歌唄ちゃん!」
「カズマさん!」

歌唄はカズマに駆け寄り、彼と向かい合った。

「ごめんね、仕事中に。」
「いえ…でも、一体どうしたんですか?」
「うん…君の兄さんのことなんだ。」
「イクトの?」
「今すぐ俺と一緒に来て欲しい…んだけど…」

カズマは扇情的な歌唄のドレス姿に目を泳がせ、苦笑いしながら目をそらした。

「その格好じゃバイクには乗れないかな…」
「きゃっ!?す…すみません…」

歌唄は慌てて胸元を隠すと、カズマに背を向けた。


「はぁ…はぁ…!」

士からイクトが見つかったと連絡を受けたあむは、士達の根城である光写真館のリビングに唯世と共に駆け込んできた。
イクトが負傷したと聞いていたあむと唯世はリビングに入るや否や士達の視線を気にせず、ソファの方に視線を移す。
そこには頭に包帯を巻き、顔中に絆創膏を張ったイクトが毛布をかけて寝そべっていた。

「イクト…」
「イクトさん…」
「あむ…唯世…」

イクトは二人の姿を見つけた瞬間表情を悲しげに曇らせ、あむは目に涙をにじませ、寝そべる彼の胸に泣きついた。

「あむ…」
「バカ!心配させるなこのエロネコ!うわああああああん!」

あむはそのままイクトの胸に顔を埋め、声を上げて泣き続けた。
イクトはそんなあむの頭を優しく撫で、唯世はその様子を少し淋しげに見つめつつも、あむの気持ちを尊重し、微笑を浮かべた。

「イクト!」

そしてカズマに連れられ、歌唄もリビングにやってきた。
歌唄は士達に頭を下げると、駆け足でイクトとあむの元に駆け寄り、泣きじゃくるあむの隣で膝を折ってイクトの手を握った。

「歌唄…ったく、心配性な妹ばっかで困るぜ…」
「イクト…良かった…!」

歌唄もイクトの手を握る力を強くし、彼の無事を喜んだ。

「良かったですね…」

なつみは再び揃う事が出来た日奈森家の兄妹の様子に感動し、瞳から流れた涙をぬぐった。
ユウスケ、カズマ、栄次郎の三人も彼らの様子に微笑んだが、士は強引に彼らの間に入り込んだ。

「感動の対面中悪いが、イクト、お前に聞きたいことがある。」

ユウスケ達はあまりの士の空気の読めなさに思わず大声を出しそうになったが、イクトはあむと歌唄を自分から少し遠ざけ、上半身を起こして口を開いた。

「良いっすよ。ここまで来たら、流石に野良猫だ何て言ってられねぇ。」


その頃、スーパーショッカーのアジトでは再び紡が戦闘員二人によって牢から出され、司令室のゾルの元に連れて来られていた。

「何だ?拷問は今日は終わりじゃなかったのか?」

紡は皮肉っぽく言ったが、ゾルはその様子を見下すように笑うと、制服のポケットからハンプティ・ロックとダンプティ・キーを取り出し、それを紡に見せた。

「な!?」
「鍵はこちらに揃いましたよ。残念ながら、貴方の息子は仕留め損ねましたがね。」

紡はロックとキーがスーパーショッカーの手に渡ってしまったことに絶望したが、イクトが無事だということは不幸中の幸いだと思い、少しほっとした。
ゾルはロックとキーを仕舞うと、再び不適な喋り方で紡に話しかける。

「さて、そろそろ教えてもらえませんか?エンブリオの媒体について…知っているのでしょう?」
「知らん!知っていたとしても、貴様らには教えない!」
「貴方はウソを付くのがへたくそだ。挙動ですぐに分かってしまう。しかし、私達はすでに媒体に心当たりがあるのですよ。その人物は、貴方もよく知っている人物です…
確証を得るために拷問という手段をとっていましたが、貴方の態度から見てほぼ確実でしょう。」

紡はそれを聞き、奥歯を強く噛み閉めた。
そしてゾルは鞭を高く振り上げ、大声で叫ぶ。

「岩石男爵!」

ゾルの叫びと共に司令室の床が砕け、そこから出来た穴から岩の改造魔人・岩石男爵が出現した。

「岩石男爵…鍵は揃った。後は媒体を覚醒させ、ロックとキーを用いてそやつの心をアンロックし、エンブリオを完成させる…ゆけ!」
「おう!ワシに任せんしゃい!」

岩石男爵は訛った喋り方でゾルの指令を受けとると、再び床にもぐり、姿を消した。
残された紡は拳を強く握り締め、媒体である子供の無事を祈ることしかできなかった…


一方、光写真館では士達としゅごキャラ達がイクトの前に立ち並び、彼の話を聞いていた。

「あれは一年前…父さん達が事故で死んだ後、俺が父さんの遺品を整理していたときだった…」


一年前、両親と幼い妹がこの世を去った後、イクトは父・紡の書斎で大きなダンボールを隣に置き、本棚に並べられたしゅごキャラの研究者だった父が残した資料を整理していた。
父は自分と歌唄が養子に来る前からしゅごキャラの研究を行っており、幻といわれたエンブリオの研究もしていたと聞いていた。
何年も前から研究者だった父が残した資料は膨大で、ダンボール一つ二つではとても収まりきらない量があった。
それでもこのままというわけにも行かないため、イクトは不満そうな顔一つせず父の資料をダンボールに詰め続ける。
だがイクトは作業を突然中断し、空になった本棚の奥の壁に目が釘付けになった。
そこには簡易的な作りのスイッチが備えられていたからである。

「何だこれ?」

イクトは不思議そうに思いながらスイッチを押す。
すると、父が使っていた机の引き出しの一つが機械的な音を立てながら自動で開いたのである。

「この引き出し…」

開いた引き出しはずっと鍵がかかっており、開ける事が出来なかった。
そういえば日奈森家に来たばかりの時、幼いあむと歌唄と共にかくれんぼをして遊んでいた際、興味本位に引っ張ったこの引き出しが開かず、なぜ開かないのか父に聞いたらはぐらかされた記憶があった。
イクトはゆっくりと机へと近づき、開いた引き出しの中を覗き込む。
そこには数枚の資料が入っており、イクトは手に取ってそれを読み始めた。
そしてイクトは大きく瞳を開き、紙を強く握り締めた。
それにはエンブリオに関する重要な記述が記されていたのだ。
昔、ハンプティ・ロックとダンプティ・キーが作られた経緯、エンブリオ生成の方法、そして…エンブリオ生成に適合した媒体の子供の条件…
全てがそこに書かれていた。


「ハンプティ・ロックとダンプティ・キーは、エンブリオ生成のためのエネルギー増幅のためのアイテムとして、昔のキャラ持ちだった大人達が特殊な錬金術で作り上げた物らしい。
だから俺達兄妹は小学の頃からキャラなり出来るようになったし、あむの友達の唯世はあむと触れ合ううちに一気に心の内に仕舞っていたしゅごたまが帰り、短い期間でキャラなりを得た。」
「それだけじゃありませんイクトさん…僕はあむちゃんと友達になってすぐ…キセキが生まれる前にラン達の姿が見えるようになりました…」

唯世は表情を引き締めながらそういうと、イクトは唯世を一瞬見つめて頷き、また話を続けた。

「ロックとキーは、しゅごキャラの力を引き出す力を持っている。エンブリオはロックとキーでしゅごキャラの力を最大限に上昇させ、子供を自分のしゅごたまと融合させて作るんだ。父さんは危険性から、ロックの鍵穴を塞いでいたらしい。
俺も資料を記憶した後、全部燃やした。」
「そういえば子供の頃、お父さんからロックとキーを貰ったとき、あたしとイクト、遊び半分でロックとキー合わせようとしたよね?でも、鍵穴がふさがってて無理だった…」

あむも幼い頃の記憶を思い出し、その本当の訳を知って冷や汗を流した。
そして士は一歩身を乗り出すと、いつもどおり不遜な態度で口を開いた。

「それで、エンブリオに適合した媒体ってのは誰なんだ?それが今一番知りたいぜ。」

それを聞いたとたん、ユウスケやあむ達もイクトも沈黙し、言葉を失う。
だがここまで話を聞いてしまったのだ。今更引き返すことも出来ない。
それにこれはスーパーショッカーの野望を防ぐためにはどうしても知らなければならないことなのだ。

「媒体は…」

イクトは息を呑んでからゆっくりと口を開くと、うつむきながら静かに答えた。

「…俺だ。」


それから数時間後、太陽が沈み、夜の闇が空を彩った。
唯世と歌唄は帰宅し、イクトは安全性から光写真館の二階の空いている部屋に泊めることになり、心配したあむもイクトと同じ部屋に泊まることになった。

「イクト、ご飯持ってきたよ。」
「…ああ。」

あむは布団に寝そべるイクトの枕元にシチューが乗ったトレイを置くと、床に胡坐で座る。
イクトはゆっくりと起きながらシチューとスプーンを手に取り、食べ始めた。

「ふぅ…やっぱりここの飯は美味いぜ。」
「あ!歌唄にいいつけるぞ!」
「む…そりゃ勘弁。」
「あはは♪」

あむははにかむイクトの姿を笑うと、イクトはあむから目をそらしてシチューの皿をトレイの上に置いた。

「ったく、お前まで同じ部屋に泊まることは無いだろ。」
「だって、ここには夏海さんもいるんだよ?イクトが問題起こしたら困るじゃん。あんたが夏海さんの耳朶咥えたって士さんから聞いたよ。」
「ちっ…ほんの冗談だっての…」

イクトは面白くなさそうに呟いた。
するとあむは突然うつむき、拳を強く握って唇を噛んだ。

「どうした?」
「あたし…イクトの事何も分かってなかった…それなのに…それなのに…」

「裏切り者」「大嫌い」
自分がイクトを罵った言葉があむの脳裏に蘇ってくる。
次第にあむの目尻に涙が光り、彼女の太腿にぽたぽたと落ち始めた。

「イクトは…あたしや歌唄が巻き込まれないようにハンプティ・ロックを持って逃げてたのに…本当に恐かったのは媒体のイクトの方だったのに…イクトの事を何も分かろうとしなかった…
ただ勝手に暴れて、歌唄や唯世に迷惑かけて…最低だよ…あたし…」

あむは嗚咽を声に混じらせ、しくしくと泣き始めた。
イクトはそんなあむを抱きしめ、優しく髪を撫でる。

「イクトぉ…」
「泣くな。俺だって結局、あの海東って奴にロックとキーを盗られちまった。ださすぎて呆れちまうぜ。」
「イクト…もう何処にも行かないよね…?」
「…ああ、ずっとお前と一緒だ。」

あむはより深くイクトの胸に顔を埋め、今イクトに自分の思いを告げることに決めた。
幼い頃からずっと胸に仕舞っていた気持ちを告げるのは、今しかないと思ったのである。
あむはイクトの胸板から少し顔を離し、上目遣いで彼の顔を見上げた。

「イクト…あたしは、イクトの事が好き。イクトが家に養子に来る前から、ずっとずっと好きだった…だからお願い、あたしの…彼氏になって…」

イクトはそんなあむの告白を聞いた後、優しく微笑んであむの頬に触れた。

「ああ、俺もお前が好きだ。俺の場合、いつから好きだったかは分かんないけどな。」
「それでもいいよ…嬉しい。」

あむとイクトはお互いの唇をゆっくりと近づけ、重ね合わせた。
ラン、ミキ、スゥ、ヨルのしゅごキャラ達は二人が結ばれたことを喜び、笑顔で祝福した。


「やれやれ、こりゃ中に入ったらKYだな。」

そしてその様子は、イクトとあむに貸した部屋の扉の前で二人の会話が終わるのを待っていた士にも筒抜けであった。
士はイクトにある話があったため、二人の会話が終わるのを待っていたが、これはもう自分が入りこむ余地の無い状態であったため、無理やり割り込むような真似はしなかった。

「しかし、本当に媒体はイクトなのか?」

士がイクトに聞こうとした疑問はそれであった。
昼間のヨルの様子から見ても、先程のイクトの口ぶりから見ても、それが真実とは思えない。
きっとまだ何かあると、士は確信していた。
すると、下の方から夏海たちのざわついた声が聞こえてきた。
士は何事かと首をかしげると、下に向かい、階段を下りていった。


士はリビングにたどり着くと、瞳を大きく開いた。
そこにはユウスケとカズマの肩を借り、ソファに寝かされる海東の姿があったのだ。

「海東!」
「士…」

海東は士の姿を見つけ、その名を呟いた後、意識を失い気絶した。

「海東…一体何があったんだ…?」

士は表情を驚愕で染め、気絶した海東の表情を見つめた。
一つの幸せが成就し、一つの絶望の歯車が回り始めた…


兄妹同士の恋愛は否定するくせに義兄妹の恋愛は肯定する私は矛盾しているのでしょうか?
とりあえずアニメ方面ではあむ唯カプが優先されていましたのでこちらの方ではあむイクにしてみました。
しかし本当にしゅごキャラが目立ってませんね…作品の特徴であるキャラチェンジすらイクトしかしてないし、あむのメインフォームであるアミュレットハート…それどころかアミュレット全ての目だった活躍がゼロ…
僕はいつも重要な部分が適当になっちゃうなぁ…



[15564] 十二話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2010/03/17 21:06
十二話
光写真館に傷だらけで転がり込んだ大樹はソファの上で眠っており、夏海によって毛布をかけられた。

「大樹さん…どうしたんでしょう?」
「まさか海東がこんなにズタボロにされるなんて…一体誰に…」

夏海とユウスケは大樹を心配し、彼をここまで追い込んだ敵の正体が気になった。
だが二人と対照的に士はいつもどおりの冷淡な顔のまま腕組みをし、口を開く。

「多分、海東純一にやられたんだろ。」
「え?確か海東純一って…」
「大樹さんのお兄さん…士君、会ったんですか?」

夏海とユウスケはディエンドの世界で出会った大樹の兄・純一の姿を思い出し、脳裏にその姿を思い浮かべた。

「誰だよ?純一って?」

一方、大樹との面識もスーパーショッカーとの決戦時しかなく、彼の事情も知らないカズマは純一の事を士に聞いた。
士はカズマに純一とはかつて大樹の故郷である「ディエンドの世界」で出会った大樹の実兄であり、自分達と同じ仮面ライダーであると話した。
そして、自分の世界で反乱分子をあぶりだすために他のライダー達の仲間へとなりすまして騙したこと。その世界の支配者であるフォーティーンが倒れた際には本性を現し、「ディエンドの世界」征服を宣言したこと。
現在スーパーショッカーの一員としてエンブリオを手に入れるための手伝いをしていることを話すと、カズマは左手で右拳を叩いて怒りをあらわにした。

「許せない…自分達の仲間や弟を騙した次はスーパーショッカーの仲間になるなんて…!」
「ま、俺にはあれが本心だとはあんまり思えないけどな。」

士は未だ純一の行動の真意を理解できずに居た。
純一は大樹の兄ということもあり、弟と同様に考えが読めず、想像以上に甘い男である。
ディエンドの世界で本性を表した時もこの世界の支配者となると宣言しながら、結局大樹を倒すことが出来なかった。
それは人々を洗脳し、支配していたフォーティーンとは違い、純一が人間の「自由」の概念を認めている証であった。
そんな純一が第二のフォーティーンになどなれるはずが無く、ましてやスーパーショッカーの協力者になどなれるはずが無い。
一体彼の狙いは何なのだと頭を悩ませると、二階からあむとイクトが降りてきてリビングに顔を出した。

「あむちゃん…イクト君…」

夏海は二人が突然やってきたことに驚き、目を丸くする。

「なんだ?久々の二人の時間をお楽しみじゃなかったのか?」

士は二人をからかうが、イクトは士の言葉を無視し、大樹が眠っているソファに向けてズカズカと歩くと、毛布をはいで大樹の胸倉を掴み、むりやり持ち上げた。

「うっ…!」

大樹は痛みで目を覚ますと、目の前には怒り一色に染まったイクトの顔があった。

「なんだ、猫君か…」
「テメェ…ただで済むと思うな!」

イクトは空いている右手で握り拳を作り、大樹の頬を強く殴った。

『イクト(君)!?』

夏海、ユウスケ、カズマ、あむの四人はイクトの突然の暴挙に驚いたが、イクトの怒りは収まらず、床でもがく大樹に再び詰め寄って襟元を再び掴んだ。

「ロックとキーを返せ!今すぐに!」
「悪いけど無理だよ。もうスーパーショッカーに取られちゃった。」
「な…テメェ!」

イクトは今度は大樹の頭を掴み、硬いタイルの上に叩き付けた。

「ぐあっ…!」
「あれがどれだけ危険か分かってるのか!?あれが…あれが奴らに渡れば…!」

イクトはもう一発大樹を殴ろうとしたが、間一髪ユウスケによって押さえられた。

「止めるんだイクト!」
「離せ!こいつだけは許せない!」
「止めて!」

イクトの暴れる姿を見ていられなくなったあむは涙声になりながら叫んだ。
するとユウスケに止められても怒りが収まらなかったイクトは突然落ち着きを取り戻し、あむの方を見た。

「あむ…」
「こんなの…イクトらしくないよ…」

イクトは唇をかみ締め、大樹から離れると、あむを見つめたまま少しだけ頭を下げて言った。

「ごめん…」


それから夜が更けた後、一向はとりあえず事態を水に流し、寝静まった。
イクトとあむが借りた部屋では二つの布団が隣同士並び、右側の青い布団にはイクトが、左側の黄色い布団にはあむが眠っていた。
本当は「もう恋人同士なんだから同じ布団で寝たい」とあむがゴネたが、イクトが調子に乗るなとなだめ、こういう形となった。
それでもあむは自分の手をイクトの布団へと忍ばせ、彼の手を握りながら幸せそうな笑顔で眠っていた。
しかし、イクトは突如目を開けると、あむの手を離して起き上がった。
だがあむは眠りながらすぐにイクトの手をまた握ると、寝言で呟いた。

「イクトぉ…大好きぃ…」

イクトは少し罪悪感を感じながらも、あむの手を再び離した。

「ごめんな…俺も愛してる…」

そして彼女の頬にキスを落とすと、借りた寝巻きから自分の服へと着替え、布団をたたみ、バイオリンケースを持って部屋から出て行った。


イクトは誰にも気付かれずに写真館を抜け出すと、月の光に照らされた路地を歩き始めた。

「イクト…ほんとにいいのかニャ?」

イクトと共に写真館を抜け出したヨルはイクトにそう聞くと、イクトは無言で歩き続け、ヨルの問いに答えなかった。
しかし、二人の足は正面に現れた人影により突如止まることとなる。
二人の前には、この事態を予測していた士の姿があったのだ。

「やっぱりな。来ると思ってたぜ。」
「士…」

イクトは驚いて目を丸くし、士は不敵な笑顔のままイクトに歩み寄った。

「お前、せっかくあむと和解して、あまつさえガキの癖に強烈にイチャイチャしたくせにまたあいつを捨てるのか?今度はあいつ、立ち直れなくなるかもしれないぜ。」
「あんたに関係ないだろ?」
「確かに関係ないが、お前はまだ何か隠してる。さっきは雰囲気に呑まれて聞き忘れちまったが、何でお前はスーパーショッカーを知ってる?それに本当に媒体はお前なのか?」
「ああ、そうだよ。」
「おかしいじゃないか?だったら俺達と一緒に居たほうがずっと安全なはずだ。だがお前はこんな真似をしてまで大好きなあむから遠ざかろうとしている。何でだ?」
「それに答える気は無ぇよ。」
「…悪いが、俺は気が短い。」

士は瞳を凛々しく尖らせ、イクトを睨んだ。

「どかないなら…あんたを倒して通らせてもらうぜ。」
「やってみな…」

士はディケイドライバーを取り出して腰に装着し、イクトはヨルが閉じこもったしゅごタマをその手に握ると、二人は激しい眼光で睨みあう。

「俺の心…アンロック!」
「変身!」

そして士はディケイドに、イクトはブラックリンクスに変身すると、ディケイドはライドブッカー・ソードモードを、ブラックリンクスは鋭い鉤爪を構えると、刃を強く叩き合わせた。

「俺はあむを守らなきゃならない!」

ブラックリンクスはディケイドを押し返すと素早い手つきで鉤爪を何度も突き出し、ディケイドを攻撃する。
ディケイドは無駄の無い動きでそれらの攻撃すべてを剣で防ぐと、二人は再び鍔迫り合いを展開した。

「ならなんで遠ざかる?」
「俺がやらなきゃ…俺がやらなきゃ駄目なんだ!」

ブラックリンクスはディケイドと距離をとり、驚異的な跳躍力でジャンプすると、再び爪を構え、ディケイドに向けて急降下した。

「俺が…俺があむを守らなきゃ!」
「…なるほどな。」

ディケイドはライドブッカーをガンモードに変形させると、その銃口をブラックリンクスに向け、一発発砲した。

「ぐはっ…!」

エネルギー弾を腹部に受けたブラックリンクスはアスファルトに落下し、イクトに戻ると、ディケイドも変身を解除し、士へと戻った。

「だいたい分かったぜ。お前があむから遠ざかる理由がさ。」
「くっ…」
「媒体はお前じゃない…あむだ。」


「う~ん…」

その頃、あむはイクトの手を握っていたはずの掌に寂しさをふと感じ、目を覚ました。

「イクト…?」

あむは上半身を起こし、眠い目をこすりながら隣を見ると、そこには既にイクトの姿は無く、彼が寝ていた布団もたたまれていた。

「イクト…まさか…!」

あむは慌てて枕元に置いた桃、青、緑色のしゅごたまをひとつひとつ強くゆすり始めた。

「ラン!ミキ!スゥ!起きて!」

するとしゅごたまが開き、あむのしゅごキャラ達が眠たそうな目でおきてきた。

「ふぁ~あ…あむちゃんどうしたのぉ~?」
「まだ三時だよぉ…」
「寝かせてくださいですぅ~」

眠りを邪魔された三人はあむに文句を言うと、あむは慌てながら彼らに言った。

「イクトが…イクトが居ないの!」
『ええ!?』

三人のしゅごキャラはその衝撃に眠気が吹き飛び、あむは急いで服を着替えた。
そしてあむとしゅごキャラ達は別の部屋で眠っている夏海たちに気付かれないよう注意しながら歩き、写真館から出て行った。


一方、イクトは士にこれ以上は隠し通せないと諦め、自分がスーパーショッカーを知った理由、そして父が遺した資料に書かれていた真実を話し始めた。

「父さんが残した資料…あれにはこう書かれていた…「エンブリオへと適合する媒体は、多くのしゅごキャラを持つ子供で無ければならない」。しゅごキャラが多いということは、それほどなりたい自分が多く、より大きな希望と夢を持っている証だからだそうだ。
そういう子供ほど、エンブリオの生成はしやすくなるらしい。」
「ほう…」
「それから…強力な×たま浄化力を持つしゅごキャラを持っていること…あむには、ダイヤがいる。」

士はあむが持っていたオレンジ色のしゅごたまと、ダイヤという四人目のあむのしゅごキャラの存在を思い出し、眉間にしわを寄せた。

「ダイヤの力は強力だ。歌唄のセラフィックチャームを遥かに凌ぐ浄化力を持っている。」
「そんなにすごいのか?」
「ダイヤが孵ったのは一年と数ヶ月前…×たまが大量発生し、俺とあむ、歌唄、唯世となでしこの五人で戦ったときだった。その時のあむのキャラなり…「アミュレットダイヤ」の力はハート、スぺード、クローバーの三つを凌駕する力があった。
あいつは…一万個の×たまを一瞬で浄化したんだ…そして、あむが持つしゅごキャラの数は異例の四つ…条件は全て整っていた。」
「で、スーパーショッカーを知ったのはいつなんだ?」
「その事件から少し経った後…まだ奴らが「大ショッカー」だった頃からだ。その時俺は、ヨロイ騎士って奴に襲われて奴らの存在を知ったんだ…そして、あむ達に内緒で奴らを調べていて分かったよ…
父さんと母さん、あみは事故で死んだんじゃない…あいつらに殺されたんだって…!」
「何!?」

士は思わず大きな声を上げ、瞳を大きく開いた。

「奴らのアジトに潜入したとき科学員の一人を捕まえて聞いたんだ。ショッカーの改造魔人、ドクターケイトって奴が父さんと母さん、あみが乗っていた車の対向車線を走っていたトラックに向かって、体内に残らない特殊な睡眠用の薬粉を放ったらしい。
偶然換気の為に窓を開けて走っていたトラックの運転手はその粉を浴びて、眠りに落ちてしまった…そして…!」

イクトは奥歯を強く噛み、拳をねじ切れんばかりに握り締めた。

「奴らは、エンブリオの研究員の一人だった父さんに昔からコンタクトを取っていたんだ!だが父さんはエンブリオの資料を奴らには渡さなかったし、協力も断っていたんだ!だから奴らは父さんが邪魔になって…母さんとあみまで…!」
「それで、あむを守るためにロックとキーを奪い、いかにも「ロックとキーを一緒に持って逃げてる自分は媒体です」なんてアピールをしてたって訳か。」
「効果的かどうかだったかは知らないが、結果的にあむに奴らの手が伸びることは無かった。俺はあむに嫌われたっていい。あいつには唯世がいる。唯世はきっと何が何でもあむを守ってくれる。俺なんか居なくても幸せに…」

そういいかけたイクトの頬を、士の平手が強く打った。

「なっ…!?」

イクトは突然の痛みに驚き、腫れていく頬を押さえる。
士は凛々しい瞳でイクトの眼を見ると、子供を叱る大人のような口調で話し始めた。

「お前、自分が家から離れてる間あむがどれだけ辛かったか分かってるのか?」
「え…?」
「あいつはお前が居ない間、心の中で寂しくてずっと泣いてたんだ。なのにお前はそれが分かってて、またあむから遠ざかろうと…いや、逃げようとしている。お前のあむに対する思いとやらは、その程度の物なのか?」
「くっ…あんたに何が分かる!」

イクトは士の胸倉を掴み、激しい剣幕で詰め寄った。

「俺はあむが好きだよ!いや!愛してる!離れたくなんか無いし、もっとあいつと一緒にいたい!抱きしめてやりたい…けど、俺は俺自身なんかよりあむのほうが大事なんだ…
あいつには、辛いことを何も知らないで生きていて欲しい…だから俺は…」
「…やれやれ、本物の馬鹿だなお前は。」
「え?」
「お前がそれでよくても、あむがそれでいいなんて言うはず無いだろ。あむの幸せを願ってるお前があいつの幸せ奪うような真似してどうするんだよ。
あいつに辛いことを知らないで居て欲しいなら、傍にいて守ってやれ。あいつの気持ちに答えてやれるのは、他でもないお前だけなんだ。」

イクトはもうなにも士に反論をしようとはしなかった。
ただうつむき、声を震わせながら、静かに言葉を発した。

「今の俺じゃ、あむを守れない…」

やがて彼の瞳からは涙が流れ、頬を伝う。

「頼む士…力を貸してくれ…あむを…俺と一緒に、守ってくれ…!」

士はそれを聞き、不敵に微笑むと、彼の肩に手を置き、口を開いた。

「任せておけ。俺は破壊者…いや、通りすがりの仮面ライダーだからな。」


「(イクト…!)」

その頃、あむはしゅごキャラ達と共にイクトの姿を探し、深夜の路地を走っていた。
しかし、彼の姿は見つからない。
まさかもう自分の手の届かないところへ行ってしまったのではないだろうか?
あむの脳裏にそんな不安がよぎった。
そんな時、突如地面が揺れ始め、あむは驚愕して足を止めた。

「な、何!?」

宙に浮くしゅごキャラ達も前進を止め、口々に驚き始めた。

「な、何これ!?」
「地震!?」
「恐いですぅ~!」

揺れはさらに強くなっていき、あむは立っていられずに地面に膝を付く。
そして揺れが収まると、アスファルトが砕け、あむの前に岩石の体を持った怪物が出現し、行く手をふさいだ。
改造魔人・岩石男爵である。

「ば、化け物!?」
「ギッヒッヒッヒ…ようやくディケイド達から離れおったな…抵抗できねぇよう足の骨折ってとっ捕まえてやる!」

岩石男爵は武器の棍棒を構えると、ゆっくりとあむに向けて近づいてきた…



次回はアミュレットダイヤを出そうと思っています。
アミュレットはどれもコスチュームが可愛いですね。
皆様の好きなアミュレットは何でしょうか?
まぁ僕は何が一番かと聞かれたらヤマトマイヒメと答えますが(笑)
気付いたらユウスケがまだ何の活躍もしてませんね…
救済の為に最終決戦時にピンチのユウスケを助けるために「あの人」がやって来るネタをやろうかと思ったのですが…それでもユウスケがピンチになるということには変わりありませんね…
とりあえずライアルは出します。



[15564] 十三話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2010/03/17 02:10
十三話
イクトから全てを聞いた士は、これで後はスーパーショッカーのアジトを叩き潰し、この世界を救うと決意した。

「それで、スーパーショッカーのアジトは何処にあるんだ?」
「ああ。」

士はイクトにアジトの位置を聞き出すと、イクトは口頭で的確に行き方を教え、ここから二十キロほど離れた採石場にあると教えた。

「ったく、アジトの場所が分かるなら教えろってんだ。」
「あまり楽観視しないほうが良いぜ。俺を襲ってきたヨロイ騎士…それに奴らのボスであるマシーン大元帥と側近の磁石団長はかなりの奴らだ。あんたでも敵うかどうか…」
「舐めんなって俺はお前とちがって強い。何せ、大人だからな。」

イクトは舌打ちをし、「うるせぇよ…」と小声でつぶやと、士は彼の拗ねた姿を笑った。
そんな時、イクトの横顔の隣を浮遊していたヨルが突然ビクリと何かに反応した。
しゅごキャラとしゅごキャラを繋ぐ「ココロレーダー」が反応したのである。

「ヨル…?」

イクトはふとそんなヨルに視線を移すと、ヨルは慌てた喋り方で言葉を発した。

「イクト!あむとラン達が危ないニャ!」
「!?」

それを聞いたイクトはベンチから立ち上がると、ヨルと一体化し、猫耳と尻尾を体に出現させた。
しゅごキャラと一つとなり、その能力と性格を共有することが出来る「キャラ持ち」の能力・「キャラチェンジ」である。
キャラチェンジしたイクトは猫のような俊敏さで走り出すと、公園から駆け出していった。

「お…おい!」

士もベンチから立ち上がると、猛ダッシュで走り、イクトの後を追った。


「イワーーーーーーーー!!」

岩石男爵は手に持った棍棒を上げ、あむに向けて振り下ろした。

「あむちゃん危ない!」

あむの頭上に居たランはあむの体と一体化し、付けていた×印の髪飾りがハート型の髪飾りに変わった。

「ほっぷ!すてっぷ!ジャ~ンプ!」

ランと一体化したあむは大きく叫ぶと、驚異的なジャンプ力で跳躍し、岩石男爵の背後に着地した。
あむはランとキャラチェンジしたことにより高い運動能力を得たのである。
キャラチェンジの能力は勿論しゅごキャラの特性によって違い、他にもミキは芸術的な技術を最大限に発揮させ、スゥは日常生活において必要な知恵と応用力を宿主に与えると言った力を持っている。
「キャラなり」と比べれば戦闘には向かないキャラチェンジではあるが、ランのようにキャラチェンジがこういった応用が効く能力を持っている場合もあるのである。

「このぉ…ちょこまかしおって…!」

岩石男爵は棍棒を再び構えると、あむの方を振り返った。

「こいつがスーパーショッカーの怪人…ラン!行くよ!」
『うん!』

あむは胸の前に両の掌で扉を形作ると、それを開くように腕を大きく広げる。

「あたしの心!アンロック!」

するとあむの体が美しい桃色に輝き、その光の中であむはハートの髪飾りで髪サイドテールに纏め、サンバイザーを被り、桃色のヘソ出しの薄い上着とミニスカートを身に纏った。
そして最後にコスチュームと同じ桃色のローラースケートを両足に履くと、両手にポンポンを召還し、それを構えてキュートにウィンクした。

「キャラなり!アミュレットハート!」

アミュレットハートへと「キャラなり」したあむは先程のかわいらしい表情がウソの様に凛々しく表情を引き締めると、右手のポンポンを岩石男爵に向けて叫んだ。

「ちょっとそこの岩石お化け!今あたしは大事な人を探してるんだから!邪魔しないでよ!」
「フン!小娘が生意気言いおって!テメェなんぞ、とっとととっ捕まえてやるってもんよ!」

岩石男爵は再び棍棒を振りかざすと、再びアミュレットハートに襲い掛かった。
しかしアミュレットハートは自分専用のローラースケート「ハートスピーダー」の力で宙に飛び、そのまま縦横無尽に敵の周りを素早い速さで移動しながらポンポンを用いた攻撃を繰り返した。
このポンポンは元は×たま捕獲用の物ではあるが、先端にバリアを張り、打撃武器として使用することも可能なのである。
アミュレットハートはこの速さを利用し、岩石男爵に攻撃を繰り返した。

「どう!?のろま岩石お化け!」
「クソォ…ちょこまかしおって…」

アミュレットハートは「勝てる」と確信していた。
倒すことは出来ないかもしれないが、岩石男爵では自分の速さに追いつけない。
ランとのシンクロも好調だ。
これなら早く敵を追い払い、イクトを探しにいけるかもしれない。
しかしその驕りが彼女に油断を生んだ。
突如彼女に向けて真っ赤なガスが噴射され、アミュレットハートの体を包んだ。

「きゃあああああ!!」

アミュレットハートはアスファルトの上に落ちると、突如強烈な痺れを感じ、体が動かなくなった。

「何これ…体が…痺れて…」

アミュレットハートはもう一度手足を動かそうとしたが、まったく体は言うことを聞かなかった。
岩石男爵はふとガスが飛んできた方向を向くと、そこには植物の改造魔人・ドクターケイトの姿があった。

「まったく、岩石男爵!相変わらずドンくさいねぇ!」
「うるせぇ!黙れドクターケイト!」

二人の改造魔人は険悪な会話をすると、抵抗の出来ないアミュレットハートに目を移した。

「さ、とっとと連れて行きなさい。マシーン大元帥とゾル大佐がお待ちよ!」
「偉そうにしやがって!」

ケイトとの会話の後、岩石男爵はゆっくりとアミュレットハートに近づいてきた。
危機に陥るアミュレットハートを救うため、残されたミキとスゥは一斉に岩石男爵に飛び掛った。

「あむちゃんに触るな!」
「あむちゃんは私達が守るですぅ~!」

二人のしゅごキャラは非力な力を一杯に振るい、必死に抵抗した。
だが…

「うるせぇんだよ!」
「うあ!」
「きゃっ!」

岩石男爵の拳で二人ともすぐに叩き落され、意識を失ってしまった。

「ちっ、ハエどもが!」
「しゅごキャラもちゃんと拾うんだよ!じゃなきゃ意味が無いわ。」
「わぁってるよ!うるせぇな!」

ケイトの小言にイライラしながら、岩石男爵は左手でミキとスゥを小石のように拾い、右手でアミュレットハートを担ぎ上げた。
そしてそのままアジトまで連れ帰ろうとしたが、その直前、一陣の黒い風がミキ、スゥ、アミュレットハートを攫い、悪の手から彼女達を救った。

『何!?』

二人の改造魔人は慌てて風を目で追い、風は二人の背後に人型となって出現した。
その正体はイクト自身のもうひとつの「キャラなり」である猫耳の死神の姿を象ったキャラなり、「デスレーベル」の姿があった。

「貴様ら…絶対許さない…!」

デスレーベル・イクトの瞳は憎悪の炎に彩られ、二人の改造魔人に並々ならぬ威圧感を与えていた。
そしてデスレーベルはアミュレットハートと二人のしゅごキャラをアスファルトの上に寝かせると、全身が痺れているアミュレットハートの顔を覗き込んだ。

「あむ…」
「イクト…はっ!」

アミュレットハートはイクトに会えたことを喜んだが、その目はデスレーベルの姿を見た瞬間、すぐに驚愕に彩られてしまった。

「イクト…デスレーベルに…駄目…」

アミュレットハートは痺れた体を一杯に使い、彼のキャラなりの解除を訴えたが、デスレーベルは首を横に振った。

「大丈夫だ…俺は死なない。お前を絶対に守る!」

デスレーベルは彼女に微笑んだ後、その手に巨大な鎌を召還し、二体の改造魔人に視線を移した。
そしてデスリンクスを遥かに超えたスピードで移動し、はおったダークレッドのロングコートをはためかせながら二体に飛び掛った。

「はあああああああ!!」

デスレーベルの凄まじいスピードで左右上下全ての方向から攻撃を繰り出し、禍々しい鎌は凄まじい威力で二体の体を切り刻んでいく。
岩石男爵とドクターケイトはその速さに翻弄され、なすすべも無かった。

「な、何じゃこの力は!?」
「目、目で追いきれない!」

デスレーベルの力は「キャラ持ち」の人間の力を侮っていた二人の予想を凌駕していた。
そのままデスレーベルはさらに速さを上げて行き、攻撃の手をさらに強めた。
そして黒い一陣の風となったデスレーベルは怒りのままに敵を切り刻んだ後、二体の正面に出現し、鎌を大きく振り上げた。

「止めだ!」

そのまま二体に向けて突進し、鎌を用いて切断する…はずであった。
突如デスレーベルの体に激痛が走り、足が止まってしまったのだ。

「くっ…こんな時に…」

イクトのもう一つの姿・デスレーベルは特殊な形の「キャラなり」であった。
本来キャラなりは自分と心を通わせたしゅごキャラと一心同体となり、しゅごキャラの力を最大限に引き出す能力である。
だがイクトのヨル以外のもう一人のしゅごキャラは未だ孵ることなく、真っ黒なしゅごタマのまま彼の心の中に眠っているのである。
イクトは養父から貰ったダンプティ・キーの影響からか、しゅごタマを心の中に眠らせたままその黒いタマゴとキャラなりすることが可能になったのである。
しゅごキャラを四つも持ったあむとは別の形で、イクトのキャラなりも非常に特殊なケースだと養父が言っていたことを覚えている。
そしてその黒いタマゴとのキャラなりはブラックリンクスを遥かに凌ぐ力を持っていたが、同時に高いリスクを持っていた。
それは体力の消耗が普段のキャラなりの数倍激しいことである。
士達と会う以前、イクトはやむをえずデスレーベルになったことがあったが、その時は数分しか持たず、キャラなりを解いた後凄まじい疲労感に襲われた。
今回もデスレーベルへのキャラなりによる消耗で体が弱り、動きが止まってしまったのだ。

「クソ…体が…」
「イッヒッヒッ…どうやらあんたのソレは、諸刃の剣だったらしいねぇ…」
「面倒かけやがって!オメーのことは別に何も言われてねぇから、叩き殺してやるぜ!」

岩石男爵は棍棒を、ドクターケイトは先端が植物の形をした杖を取り出すと、じわじわとデスレーベルに近寄ってきた。
デスレーベルは再び鎌を持ち直し、戦闘体勢に入ったが、もう先程までのスピードは出せそうに無かった。
そしてこのキャラなりはいつまで保っていられるか分からない。
こんな状況で戦うなど無謀以外の何者でもなかった。
だがそんな状況の中、岩石男爵とケイトの背に数発の銃弾が命中した。

『ムッ!?』

二人の改造魔人は突然の奇襲に驚き、背後を振り返ると、そこにはライドブッカー・ガンモードを構えるディケイドの姿があった。

「ったく、このネコガキめ。協力を頼んでおいて置いてきぼりは無いだろ?」
「士!」

デスレーベルはディケイドの救援に表情を明るくすると、ケイトと岩石男爵は数歩後ずさった。

「ディケイド!?」
「オメー、なんでここさ居るんだ!?」
「スーパーショッカーある所、ディケイドあり…なんてな!」

ディケイドはライドブッカーをソードモードに変形させると、岩石男爵に向けて切りかかって行った。
そしてデスレーベルも気合を振り絞り、ドクターケイトへと立ち向かった。


「デイヤァ!!」

ディケイドはライドブッカーを振るい、岩石男爵の体を切り付けた。
だが、岩石男爵の硬い体はびくともせず、ライドブッカーの攻撃を全く受け付けない。

「何!?」
「へへへ…そんなもんかい!」

岩石男爵は再び棍棒を振るい、ディケイドの体に叩き付けた。

「うお!?」
「へへ…もう一丁!」

そして今度は棍棒を突き出し、ディケイドの腹部に強烈な突きを見舞う。
ディケイドはその威力に二メートルほど吹き飛ぶと、地面の上を数回激しく転がった。

「クソ…なんて硬い体だ…!」

ディケイドはライドブッカーを杖代わりにして立ち上がると、岩石男爵は再びディケイドに向けて襲い掛かる。
対するディケイドは再びライドブッカーを構え、敵に立ち向かっていった。


「うおおおおおおお!!」

デスレーベルは先程までとは行かずとも、自分の持つスピードを生かし、戦いを優位に進めていた。
デスレーベルの速さから繰り出す一撃はドクターケイトを捉え、その身に俊足の一撃を叩き込む。

「この…ガキの分際で…!」
「どれほど貴様らが強かろうが…今の俺は…」

すれ違いざまにドクターケイトを切り付けたデスレーベルはそのまま後方に足を強く突き出し、ドクターケイトの背中に強烈なバックキックを浴びせた。

「絶対に、負けない!」

ドクターケイトはその威力に地面に倒れ、アスファルトの上を擦りながら吹き飛ばされた。

「グギャアアアアアアアアアア!!」

ドクターケイトは地面の上でもがき、デスレーベルはその隙を逃さず再び鎌を振り上げて敵に飛び掛ろうとした。
たが再び体に激痛が走り、膝を地面についてしまう。

「くっ…!」

デスレーベルは奥歯を強く噛み、悔しさを露にした。

「情けない…俺の体はこの程度の疲労にも耐えられないのか…!」
「イッヒッヒ…随分好き勝手やってくれたようだけど、どうやら限界みたいだねぇ…」

ドクターケイトはゆっくりと立ち上がると、杖の先端をデスレーベルに向けた。

「ケイトガス!」

そして杖の先端から放たれた真っ赤な毒ガスは疲労で動けないデスレーベルを容赦なく包み込んだ。

「うわあああああ!!」

ガスの直撃を受けたデスレーベルは地面の上へと倒れ、もがき苦しみ始めた。

「なんだ…体が…痺れる…」
「どうやらお仕舞いのようだねぇ…」

ドクターケイトは妖しく笑いながら再び杖を構え、デスレーベルに近づいてきた。

「イッヒッヒ…じゃあ仕上げをしてあげようねぇ…!」


「イクト!」

その光景を見たディケイドは岩石男爵との戦いを中断し、彼の援護に回ろうとした。
しかし、容赦のない岩石男爵は背後からディケイドに棍棒の一撃を叩き込む。

「ぐあ!」

ディケイドは地面を転がり、そして立ち上がると、岩石男爵の方を睨んだ。

「クッ…!」
「ゲッヘッヘッ…ディケイド、にがしゃせんよ!」

岩石男爵は再び棍棒を振りかぶると、ディケイドに向けて襲い掛かった。


「イ…ク…ト…」

そして未だに痺れの消えぬアミュレットハートは必死に起き上がり、危機のデスレーベルの方を見ると、泣きそうな声で喋り始めた。

「やだ…イクト…」

アミュレットハートは必死にデスレーベルに向け、手を伸ばす。

「イクトを…失いたくない…もう、離れたくない…イクトを…守りたい!!」

アミュレットハートは一筋の涙を流しながら大きな声で叫んだ。
その時、彼女の思いに呼応するように不思議な現象が起こった。
突如アミュレットハートの体が眩い光を発し、朝日の様に美しく輝きだしたのだ。

「な、なんだい!?」

ドクターケイトはその輝きの眩しさに目を塞ぎ、ディケイドと岩石男爵も驚愕し、戦いを中断した。
そしてデスレーベルは瞳を大きく開き、彼女の名を呟く。

「あむ…まさか…」


「ん…?」

光に包まれたアミュレットハートは、ふと瞑った目をあけると、自分のキャラなりが解けており、周囲には白一色の光の世界が広がっていた。

「これは…」
「私よ、あむちゃん。」

あむはふと自分と全く同じ声質の声を耳にし、ふと気付くと、目の前には自分の四人目のしゅごキャラ「ダイヤ」のタマゴがそこにあった。
そしてゆっくりとタマゴが開くと、オレンジ色のツインテールに結んだ髪と、ダイヤ型の髪飾りが目立つしゅごキャラが現れた。

「ダイヤ!」

あむは微笑み、その名を呼んだ。
彼女こそが「ダイヤ」である。

「ダイヤ!やっと…やっと戻ってきてくれた!」
「久しぶりね、あむちゃん。ごめんなさい、あむちゃんが作った心の壁が邪魔をして、中々戻れなかったの。」
「ごめんねダイヤ…私が弱かったから…」

あむは自分が行った愚かな行為の数々を思い出し、ダイヤに謝罪した。
しかしは、ダイヤはそれを咎めることなくあむに微笑んだ。

「でも、今のあむちゃんは違うわ。ちゃんとイクトを信じて、思いを伝えることが出来た。もうあむちゃんは、私が居なくなった頃よりずっと強い。だから私もより強く、美しく輝けるわ。」
「ダイヤ…私はイクトを助けたい…お願い!力を貸して!」
「もちろんよ!」

ダイヤは再びしゅごタマに戻ると、あむの胸の中へと吸い込まれていった。
そしてダイヤが吸い込まれた箇所からは再び眩い光が輝き、あむは再び胸の前で手を組み、指で扉を形作ると、大きな声で叫んだ。

「あたしの心!アンロック!」


アミュレットハートが包まれた光はよりその輝きを増し、周囲を明るく照らした。
そしてその光が一気に晴れると、中からは黄のワンピースにコスチュームを変え、髪をツインテールに結び、大小二つのダイヤのデコレーションを付けたヘッドフォンを被り、インカムを付けた新たなアミュレットの姿があった。

「キャラなり!アミュレットダイヤ!」

アミュレットダイヤは背の大きな翼を羽ばたかせ、その美しい姿を現した。

「おいおい…お子ちゃまの癖に、輝くじゃねぇか。」

ディケイドは柄じゃないとは思いつつも、その美しさに目を奪われずに入られなかった。
彼女の輝きはどの世界でも見たことがない神々しいほどの美しさを秘めていたからである。
これが全てを乗り越えた彼女の本当の輝きなのだと、ディケイドはそう思った。
しかし、デスレーベル・イクトだけはそんなアミュレットダイヤの姿を見つめ、一人不安を抱いていたのである。

「あむ…クッ!ついに、条件が揃っちまった…!」

ついに最後のピースが揃ってしまった…
イクトだけはこの美しい光を前に、絶望を抱いていたのである。



アミュレットスペードとダイヤ…どちらかをとるならどっちをとるのかと聞かれたら私はすごく迷います。(ニーソックス的な意味で)
さて、今回デスレーベルを登場させました。
本来デスレーベルをここで出してしまうことは原作ガン無視以外の何者でもないのですが詰め込めるだけ詰め込んでみようと思ったので出してみました。
さて、アミュレットフォーチュンとセブンシーズトレジャーはどうしよう…
とりあえず次回は最終決戦前という設定ですごく短くなりそうです…

ps
「ココロレーダー」は原作の「なんとなくレーダー」の設定を改変したものです。



[15564] 十四話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2010/03/25 01:33
十四話
「キャラなり!アミュレットダイヤ!!」

ついにあむの四人目のしゅごキャラ、ダイヤが再び目を覚まし、アミュレットダイヤが大空に飛び立った。
その太陽のように眩しく、暖かな輝きは朝日のように周囲を明るく照らしだした。
アミュレットダイヤはイクトに止めを刺そうとしたドクターケイトを眼下に見下ろすと、敵を指差して叫んだ。

「そこの植物お化け!これ以上イクトに手を出したら、あたしはアンタを絶対に許さない!」
「フン!小娘が調子に乗るんじゃないよ!」

ケイトは再び杖をアミュレットダイヤに向け、毒ガスを彼女に向けて発射した。
しかしアミュレットダイヤは恐れることなく、翼と両腕を広げてより輝きを増した。

「シューティングスターシャワー!」

アミュレットダイヤの両腕から星の形をした無数の輝きが放たれ、ケイトの赤い毒ガスと衝突した。
輝きはそのままガスをゆっくりと押し戻して行き、やがてケイトの体を包み込む。

「ギャアアアアアアアア!!」

ケイトは絶叫を上げると、胸元を押さえてもがき苦しみ始めた。

「な、なんだいこれは!?私の毒が…中和された…グッ!おぼえておいで!」

ドクターケイトは悔しそうに捨て台詞を残すと、自分のマントをはためかせて姿を消した。
それを見た岩石男爵は、ケイトを馬鹿にするように笑い始めた。

「ガッハッハッハ!ケイトめ!魔女とほざきながらちっとも役に立たん!」
「おいおい、他人をけなすより自分の心配したらどうだ?」

岩石男爵と戦っていたディケイドは、不遜な態度で岩石男爵にそういうと、岩石男爵はディケイドの方を向いた。

「ハン!ディケイド!オメーの攻撃はきかねぇってのがまだ分かんねぇのか!?」
「さぁ、それはどうかな!」

ディケイドは自らの強化アイテム「ケータッチ」を取り出すと、九つの仮面ライダーの紋章が描かれたライダーカードを取り出し、それをセットした。
そしてケータッチの画面にはライダーの紋章がタッチパネル状に浮かび上がり、ディケイドは指で滑らかに紋章を一つずつ押していく。

『Finalkamenride…Decade!」』

最後にディケイドライバーのバックル部を取り外し、それを腰部にセットすると、ベルトのバックル部にケータッチを装着する。
するとディケイドのカラーリングが鮮やかなマゼンタピンクから重厚感のある黒と銀を基調とした物へと代わり、頭部、そしてより頑強な形に強化された胸部へと自身と他ライダー達が描かれたライダーカード計十枚が張り付いていく。
ディケイドはケータッチの能力で、自らの真の姿・コンプリートフォームへと変身したのだ。

「さて、本当の戦いはここからだ!」
「ほざけ!」

岩石男爵は再び棍棒を振りかぶり、ディケイドへと襲い掛かった。
振り下ろされた棍棒は一直線にディケイドに向けて落ちてきたが、ディケイドはその一撃をライドブッカーの刃で易々とガードした。

「何!?」
「ハアァァァァァア!!」

そのまま敵の武器を剣で弾き飛ばし、がら空きの胴部に剣戟を見舞う。
それからディケイドはその逞しいボディには見合わぬ俊敏な動きで剣を振るい、岩石男爵の体を切りつけ続けた。
そして回し蹴りで敵を蹴り飛ばすと、指で刃をなぞる。

「バ、バカな…」

岩石男爵は自分の岩のように硬い体が傷つけられたことが信じられず、驚愕を隠せなかった。

「さて、止めだ。」

ディケイドはそう言うと、ケータッチを取り外し、仮面ライダーカブトの紋章を指で押し、最後に「F」と書かれたボタンをタッチした。

『Kabuto…kamenride…Hyper!』

電子音声が終わると共にディケイドの隣に仮面ライダーカブト・ハイパーフォームが現れ、ディケイドはケータッチを再びバックルに装着してカブトの紋章が描かれたカードを取り出し、腰部のディケイドライバーにセットした。

『Finalattackride…Kakakakabuto!』

ディケイドとカブトは宙にジャンプし、岩石男爵に向けてキックポーズを取った。
二人の突き出した足には凄まじいエネルギーが集中し、激しくスパークする。
そしてダブルライダーの急転直下の一撃は岩石男爵の岩の体に強烈にぶち当たった。

「イワーーーーーーーーーーーー!!」

岩石男爵の体はその一撃に耐えることが出来ず、無残に消滅した。
止めの後、カブトは粒子となってその姿を消すと、ディケイドは士へと戻り、痺れの消えぬデスレーベルへと駆け寄った。

「大丈夫か?」
「ああ…どうってことはない。」

デスレーベルは強がったが、やはりガスの影響が強く、上手く動くことが出来なかった。
そしてキャラなりを解除し、イクトへと戻ると、アミュレットダイヤもダイヤと分離してあむに戻り、イクトの傍に駆け寄ってしゃがみ込み、彼に抱きついた。

「イクト!」
「あむ…」

あむは涙声になりながら腕の力を強くし、イクトのぬくもりをその胸に感じた。

「良かった…ほんとに良かった…」
「ったく、痺れて動けねぇんだから、もっと優しくしやがれ…」

イクトはあむの腕の力に痛みを感じながらも、彼女の暖かさが嬉しかった。
士、ラン、ミキ、スゥ、ダイヤ、ヨルの六人はその様子に微笑むと、一先ず肩を下ろした。
しかし、その安心も一瞬の物でしかなかった。
突如あむに向けて一本の長い古びた包帯が延び、彼女の腹部に巻きついて無理やり彼女を攫ったのだ。

「え?きゃ、きゃあああああああ!!」
『あむ!』
『あむちゃん!』

士とイクト、そしてしゅごキャラ達はとっさの事に反応ができなかった。
やがてあむの細身の体は、不気味ながっしりとした腕によって掴まれた。
そこには、スーパーショッカーの大幹部であるマシーン大元帥の姿があったのである。

「ハッハッハ!ディケイド!油断したな!」

マシーン大元帥は士達の失態を笑うと、士は大元帥を睨みつけた。

「お前!誰だ!?」
「わが名はマシーン大元帥!スーパーショッカー最高幹部の一人だ!ディケイド!条件は揃った!鍵は頂いていくぞ!そして!」

マシーン大元帥は右手を突き出し、再び包帯を鞭のように素早く操ると、ラン、ミキ、スゥ、ダイヤの四人のしゅごキャラ達まで一気に絡め取って捕獲した。

『うわぁ!?』

包帯にがんじがらめに捉えられた四人のしゅごキャラは成すすべなく、マシーン大元帥の左腕へと囚われた。

「こいつらも貰うぞ!」
『貴様!!』

士とイクトは再び変身しようとしたが、マシーン大元帥は頭部からレーザーを放ち、それを二人の足元に当てて変身を妨害した。

『クッ!』
「ハッハッハ!ついでに良いことを教えてやる!もうすぐ我らの元に、各世界に散っていたスーパーショッカーの残党達の中から増援が送られてくる!貴様らに勝ち目はない!さらばだ!」

マシーン大元帥は高笑いをしながらその姿をゆっくりと消していく。
そんな中、あむはイクトに向けて必死に手を伸ばした。

「イクトォーーーーーーーーー!!」
「あむ!!」

イクトはあむを助けに走ろうとしたが、再び体に痺れが走り、地面に転んでしまった。
その間にマシーン大元帥はあむとしゅごキャラ達を攫って姿を完全に消してしまい、イクトは悔しさに打ち震え、地面を殴りつけた。

「クソォーーーーーーー!!」

イクトはそのまま地面を殴り続け、士はまだ見ぬ強敵たちと着々と近づく増援部隊の襲来に息をのみ、拳を握り締めた。
エンブリオはスーパーショッカーの手に渡ってしまうのか?純一は本当にスーパーショッカーの味方となってしまったのか?そしてあむとイクトは再びお互いを抱きしめあうことが出来るのか?
今、ラストバトルの旋律が奏でられ始めた…


その頃、灰色に彩られた空間の歪んだ地平線の上に、黒尽くめの服装を身に付けた男が立っていた。
剣崎一真である。

「始まったか…」

剣崎はそう一言呟くと、背後を振り向いた。
そしてその隣には士達を導いた学生服を着た少女が現れ、横目で彼を見ながら口を開いた。

「行くの?」
「ああ、ここからは俺の仕事だ。」
「じゃあ、私も一緒に行ってあげる。」
「…条件がある。」
「心配しないで。だって…」

少女は青いリボンを取り出し、髪をポニーテールに結ぶと、その手にナイフを出現させ、口元に近づけてその刀身を一舐めすると、剣崎に向けてウィンクした。

「今の私、多分貴方より強いもの♪」
「…分かった。頼りにしてるよ。」

剣崎は苦笑すると、少女と共に歩き始めた…



すごく短いですがまずはここまでです。
次回からは最終決戦編ですので、張り切っていこうと思います。
皆さんをがっかりさせないよう尽力します…



[15564] 十五話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2010/04/17 01:33
十五話
あむがマシーン大元帥に攫われてから数分後の出来事であった。
寝巻きを身に付け、借りた部屋で布団に包まっていたカズマは、今外で何が起きているかも知らず、ぬくぬくと温まりながら眠っていた。
昼間のイクト探しで疲れていたカズマは溜まった疲労を発散させるかのように何度も寝返りを打ち、気持ち良さそうにむにゃむにゃと呟いた。
だが…

『カズマ…カズマ…』

そんなカズマの耳に、何度も何度も自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
最初は無視して枕に顔を埋めたが、耳を塞ごうとするたびに大きく聞こえてくる。
ついに耐えられなくなったカズマは布団から起き上がった。

「ふぁ~あ…誰だよ一体…!」

カズマは目をこすりながら自分の隣に目を移す。
そこには、以前と同じ黒づくめの服装を纏った剣崎一真の姿があった。

「カズマ…ようやく起きたか。」
「何だ、あんたか…何の用なんだ、こんな時間に…」

カズマは目をこすりながら剣崎に抗議した。
剣崎はその様子を見て微笑すると、話を続けた。

「安眠の邪魔をしてすまないが、だが話さなければならないことがある。日奈森あむがスーパーショッカーに攫われた。」
「え!?」

カズマの眠気は一気に吹き飛び、その目は大きく開かれた。

「あむちゃんが…」
「不味いのはそれだけじゃない。スーパーショッカー各支部からの援軍がこの世界に迫っている。」
「そんな…」

カズマはうつむいてキョロキョロと頭を振った。

「カズマ、奴らの援軍は俺が抑える。お前達はあむを助け、士達と共に奴らの野望を砕くんだ。」
「え?あんた一人でか?」

カズマは再び剣崎を見ると、口を開けて呆けた。

「そんな…いくらあんたが強くたって…」
「大丈夫だ、生命力には自信がある。それに俺には、「約束」があるからな。」

剣崎はカズマに微笑むと、彼に向けて右手を差し出した。

「お前達の後ろは俺が守る。お前達は、安心して戦うんだ。」
「…分かった、頼んだぜ!先輩!」

カズマも剣崎の手を強く握り、二人は固い握手を交わした。


翌日の早朝、士とイクト、そしてあらかじめ起きていたカズマはユウスケ、夏海を起こし、歌唄、唯世に連絡を入れ、写真館へと呼んだ。
そして士とイクトの一同への話が終わると、唯世は身を乗り出して声を荒げた。

「本当なんですか!?あむちゃんが攫われたって!」
「ああ、スーパーショッカーの奴らに、ラン達と一緒にな。」

士が唯世に答えると、唯世は次にイクトに詰め寄り、彼の胸倉を掴んだ。

「イクトさん!貴方が、貴方が付いていながら!」

唯世は怒りを露にし、布地を掴む手に力を込める。
イクトはそんな唯世に何の反論もせず、ただ唇を噛んだ。
それを見たカズマは二人の間に入り、仲裁した。

「落ち着け!今はあむちゃんを助けることだけ考えるんだ!」

カズマの言葉で我に返った唯世は少し憎々しげにイクトを見つめた後、彼の服から手を離した。
そして士は全員の顔を順に見ていくと、その口を開く。

「とりあえずカズマの話じゃ、剣崎一真がショッカーの援軍を抑えてくれているようだ。」
「あの人、大丈夫かな?」

ユウスケは剣崎の身を心配していた。
剣崎は以前、ダメージを負っていたとはいえディケイドを全く寄せ付けずに撃退した兵である。
だが敵の援軍というならば100に匹敵するかそれ以上の怪人軍団が相手となるだろう。
一人で戦っては無事で済むとは思えない。

「大丈夫!あいつは…先輩はきっと勝つさ!」

カズマはユウスケに微笑み、剣崎を信じきった口調でそういった。
士はそんなカズマを見て微笑むと、再び口を開く。

「よし、そうと決まれば早速出撃だ。スーパーショッカーの奴らを…叩き潰す。」


その頃、あむはマシーン大元帥により、アジトの司令室へと運び込まれていた。
司令室には不気味に光る魔方陣がタイルに描かれており、上下左右には卵一つ乗せることができるくらいの大きさの器が付いていた。
マシーン大元帥は、魔方陣の中心に両手足を縛ったあむを乱暴に寝かせる。

「痛っ!ちょっと!アンタ一体何なのよ!?これ解きなさいよ!」

あむはマシーン大元帥に抗議し、拘束具の解放を要求したが、マシーン大元帥は彼女の要求を無視し、言葉を発した。

「フン!おとなしくしておれば可愛いものを。」
「生憎、アンタなんかに褒められたって一ミクロンも嬉しくなんかないのよ!」
「だがその強がりもいつまで持つかな?」

マシーン大元帥は小さな鎖で縛られたあむの四つのしゅごたまを取り出すと、彼女に見せた。

「ラン!ミキ!スゥ!ダイヤ!」
「お前のしゅごキャラ達だ。多くのしゅごキャラを持つキャラ持ちが秘める「希望の力」、そしてそのしゅごキャラ達が持つ「可能性の力」、それら全てが複合し、究極のしゅごたま「エンブリオ」を生み出す…こいつらにも生贄になってもらう。」

大元帥はそう言うと、魔法陣の四方に置かれた器に、一つずつ卵を置いていく、そしてハンプティ・ロックを取り出すと、短剣を取り出し、鍵穴を貫いた。

「これで、鍵穴は開いた。」

それからそれをあむの胸の中心に置き、ダンプティ・キーを新たに取り出した。

「さぁ、これで準備は万端だ…」
「…嫌。」

あむは恐れから小さく声を漏らした。

「我らの希望が…もうすぐこの手に…」
「嫌ぁ!やめて!」

恐怖心が強くなり、声が大きく、そして振るえ始める。
やがてダンプティ・キーはハンプティ・ロックの鍵穴にはまった。

「やめて!やめてよぉ!!」
「さぁ、お前の心…」
「やだ…やだぁ!!」
「アン…ロック!」
「助けて!イクトォーーーーーーーーーーーー!!」

キーは180度回り、あむの悲鳴と同時に眩い金色の光を発した。


「どうして!?どうしてですか!?」

その頃、歌唄は写真館のカズマの部屋でカズマに異を唱えていた。
カズマが歌唄を戦場に連れて行かないと言ったのである。

「どうして私は行っちゃ駄目なんですか!?妹が捕まっているのに!」

歌唄は眉を吊り上げ、カズマに抗議する。
対するカズマは濁った表情をしながら口を開いた。

「君は女の子だ。こんな戦いに出ちゃいけない。」
「でも夏海さんは…」
「夏海ちゃんは仮面ライダーなんだ。でも君は歌手じゃないか。顔に傷が付いたり、喉を怪我したりなんかしたら大変だ。」
「…でも…でも!」

歌唄は目を潤ませながら俯き、拳を握り締めた。
カズマはそんな彼女の肩に手を置き、優しく話しかける。

「歌唄…君はここで待っていて欲しい。俺は先輩に…剣崎一真に誓ったんだ。どんなことがあっても、君を守ってみせるって。でも、今度の戦いは厳しくなる。俺でも、君を守れないかもしれない。
だから君には俺達の帰る場所として、ここで待っていて欲しいんだ。」
「カズマさん…」

歌唄は少し唇を噛むと、涙をぬぐい、目が赤いままの笑顔でカズマを見た。

「分かりました…でも、帰って来なかったら許しませんよ。私…堪忍袋の緒が切れちゃいます。」
「大丈夫、約束は守るよ。」

カズマは歌唄に笑顔で返すと、彼女と指きりを交わした。


数十分後、士のマシンディケイダーの後ろにイクトが、ユウスケのトライチェイサー2000の後ろに夏海が、カズマのブルースペイダーの後ろに唯世が乗り、出撃準備が整った。

「士、俺は男に頼るなんて趣味じゃないが、アンタに期待してるぜ。」

イクトはヘルメットごしに士にそういうと、士は笑顔でサムズアップした。

「ああ、任せろ。」

イクトもそれを聞いて微笑み、それから程なくして三台のマシンが発進した。
地獄の軍団の野望を打ち砕き、この世界に平和をもたらすために…


「大樹君、そろそろガーゼを…」

士達が出撃してから数分後、栄次郎は怪我で寝込んでいる大樹の下へ救急箱を持って訪れていた。
だが貸した部屋に入った瞬間、栄次郎は目を大きく開いた。
そこには大樹の姿は無く、たたまれた布団だけが残っていたのである。

「まさか…」

栄次郎は顔を上げ、驚愕したままそう呟いた。


「はぁ…はぁ…」

栄次郎の危惧したとおり、大樹は負傷した体を引き釣り、士達の後を追っていた。
全ては兄である純一との決着をつけるためである。

「兄さん…!」

大樹は拳を握り締め。
敵となった兄の姿を思い浮かべた。
唯一の肉親であり、最大の敵となった兄・純一…
「次に会った時が決着だ」
大樹は普段の飄々とした様子からは考えられないほど兄に対する熱い感情を瞳に宿し、痛む体に鞭を打って歩き続けた…


そして、全ての景色が灰色一色に彩られた異空間に敷かれた道を、大勢の怪人と戦闘員達が歩いていた。
すべて異世界のスーパーショッカーが「しゅごキャラの世界」へと派遣した怪人部隊である。
数は120に有に達しており、その行進の様子は凄まじい迫力を持っていた。
だが、怪人達の周囲の空間が突如歪み始めた。
怪人達は突然の出来事に驚き、おどおどしながら辺りを見回し始める。
やがて歪んだ空間は廃れた廃墟へと変わり、怪人軍団の前に剣崎一真と彼の協力者である世界の狭間を彷徨う少女・対有機生命体ヒューマノイド・インターフェース「朝倉涼子」が姿を現した。

「どう?私の空間再構成能力は?」
「すごいな…ここまですごいと、本当に俺より頼りになりそうだ。」

剣崎は朝倉の能力に感服しながらブレイバックルを取り出し、「チェンジビートル」のカードをセットして腰に装着する。

「…行くぞ。」
「ええ♪」

朝倉は両手にナイフを握り、剣崎は右手を前に突き出す。
そして右手を引くと同時に左手でバックルのレバーを操作した。

「変身!」
『Turn up!』

ブレイバックルの中心部が裏返り、スペードのマークが現れると、スペードK「エボリューションコーカサス」の絵柄であるコーカサスオオカブトが描かれた金色のオリハルコンエレメントが放射される。
剣崎はそのスクリーンを潜り抜けると、仮面ライダーブレイド・キングフォームへと変身し、キングラウザーを構えた。

「うおおおおおおおおおおお!!」
『Royalstraightflush!』

ブレイドの雄叫びと電子音声と共に金色の光がキングラウザーの刀身に生成され、刃を象る。
そしてブレイドは生成された巨大な光の刃を振り下ろし、そこから放たれた強烈な剣圧は怪人軍団に向けて一直線に襲い掛かっていった。
それぞれの場所でのそれぞれの最終決戦が幕を開けた…


久しぶりにしゅごキャラの方を書きました。
歌唄の台詞についてはまぁ、アニメ版見てる方になら分かるかと…
今回も短くしましたが次回からは残った改造魔人対ディケイドライダーズをやっていきますのでお楽しみに。



[15564] 十六話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:2af9d800
Date: 2010/04/24 00:47
十六話
ハンプティ・ロックとダンプティ・キーが一つとなり、あむと彼女の四人のしゅごキャラ達が融合を開始して数十分後…
あむの父・紡がゾルによって司令室に連行されてきた。
紡は司令室に訪れてすぐに目を大きく開き、驚愕と衝撃で両膝を地面に着いた。
紡の目の前には光で出来た人型の大きさの「繭」が白く輝きながら脈動していたのである。

「ま…まさか…」
「そう、貴様の娘だ。」

そう言ったのは繭の傍で仁王立ちしていたマシーン大元帥である。
紡はマシーン大元帥の方を力なく振り向くと、大元帥は薄ら笑いながら紡に歩み寄ってきた。

「やはり、貴様の娘が媒体だった。お前の息子はまんまと我々を騙し続けてくれたが、この際もうそんなことはどうでもいい。もうすぐ願いをかなえる奇跡の卵が我々の手中に納まるのだからな。」

紡は立ち上がり、大元帥の胸倉に必死ですがりつくように掴みかかった。

「頼む!止めてくれ!僕はどうなってもいい!だから僕からあむまで…あむまで奪わないでくれ!」
「うるさい!黙れ!」

大元帥は怒鳴り声と同時に拳を突き出し、紡を殴り倒した。

「がは…!」
「フン!もう貴様に用など無い。だが最後まで拷問に耐えた褒美だ。後で電気椅子にでもかけて娘と妻のところに送ってやるよ。連れて行け!」
『イィー!』

大元帥は傍にいた二人の戦闘員に命令すると、紡は戦闘員によって立たされ、司令室の出入り口へと引っ張られていく。

「あむ!あむ!!止めろ…止めてくれぇーーーーーー!!」

紡は最後まで娘の命乞いを繰り返したが、戦闘員達は無情にも彼を司令室の外へと連れて行った。
するとそれからすぐに司令室のアラートがなり響き、見張りの戦闘員からの連絡が室内に響いた。

『ディケイド達が現れました!モニターに映します!』

戦闘員の連絡が終わると同時に、司令室の大型モニターにスーパーショッカー基地に向けてマシンを走らせる士達の姿が映し出された。
それを見たゾルは持っていた鞭を握り締め、奥歯を噛みながら憎しみをたぎらせて叫ぶ。

「おのれディケイド!!どこまでも邪魔をするか!!」

だが激昂するゾルとは対照的に、大元帥は冷静なまま指令を下した。

「ここにいるだけの怪人、戦闘員達を全て動員しろ!侵入してきた奴らは、生き残った改造魔人が迎撃するのだ!」


「やれやれ、熱烈歓迎だな。」

スーパーショッカーのアジトである巨大なタワー型の基地の前にたどり着いた士達は、マシンから降り、自分達にじりじりと迫る怪人と戦闘員達を睨んでいた。
数は4、50程と、残党部隊のためそれほど多くは無いが、おそらくもうあむはエンブリオにされかけているため、時間はかけていられない。
士はディケイドライバーを取り出し、腰に装着すると、ライダーカードを取り出し、大声で叫んだ。

「皆…行くぜ!」

士の号令と共に、まずユウスケがアークルを腰に出現させ、右手を突き出し、それを水平に動かしながら叫ぶ。

「変身!」

そして両手を大きく広げ、その身を烈火の如く赤い輝きを放つ炎の戦士・仮面ライダークウガ・マイティフォームへと変身させた。

「変身!」

次にカズマがブレイバックルにカテゴリーエースのカードをセットし、腰に装着すると、右手を突き出し、瞬時に左手と入れ替えて手を交差させながらバックルのレバーを引く。
それから電子音声と共に青いヘラクレスオオカブトが描かれたオリハルコンエレメントが放出され、自動的にカズマを通り抜けると、カズマは「蒼き稲妻」という表現が良く似合う紫紺の戦士仮面ライダーブレイドへと変身を遂げた。
今、自分達を助けるために異次元で戦っているもう一人の自分との、そして帰るべき場所へと残してきた心を通わせた少女との約束を守るために、ブレイドはその勇気の剣・醒剣ブレイラウザーをホルスターから引き抜いた。

「キバーラ!」
「オッケ~!キバって、いっくわよぉ~♪」

そして夏美もその手にキバーラを握り、彼女を前に突き出す。

「変身!」

その言葉と共にキバーラから幻想的な輝きが放たれ、夏美の体はキバーラと同じ白色の輝きを放つ鎧へと包まれた。
仮面ライダーキバーラ、数少ない女性の仮面ライダーの一人である。
キバーラはその手に鋭く刀身が輝く長剣・キバーラサーベルを構えると、それを優美に構えた。

「ヨル…行くぞ!」
「おう!任せるニャ!」
「キセキ!行くよ!」
「化物共!王の鉄槌の前にひれ伏すがいい!」

イクトと唯世、共に同じ少女を愛する二人の少年は自分達の分身と一つとなり、金と黒の輝きをその身に纏った。

「俺の心…」
「僕の心…」
『アンロック!』

イクトは頭部に猫耳を出現させ、服装を露出度の高いワイルドな軽装へと換えると、その手に鋭くとがった鉤爪を握る。
そして唯世は金色の王衣をその身に纏い、悠々しい王冠をかぶると、杓杖をその手に出現させた。

「キャラなり!ブラックリンクス!」
「キャラなり!プラチナロワイアル!」

最後に士が「ディケイド」が描かれたカードをバックルにセットし、展開したバックルを閉じる。
そして電子音声と共に無数の透明な影が士の体と一体化し、士の姿を世界の破壊者・仮面ライダーディケイドへと変身させた。
さらにディケイドは腰のライドブッカーを抜き、ソードモードに変形させると刃を指でなぞって叫んだ。

「皆…行くぞ!」

その号令と共にディケイド達、そして敵の怪人、戦闘員達は雄叫びを上げながらそれぞれの敵に突撃し、決戦が始まった。


その頃、異次元に生成された空間の中でも、凄まじい激戦が行われていた。
スーパーショッカーの増援部隊と剣崎一真・仮面ライダーブレイドキングフォーム、朝倉涼子の戦いである。

「ハッ!ウェイ!うおおおおおおお!!」

「絶対無敵」
キングフォームとなったブレイドを表現するのにこれ以上相応しい言葉は無いだろう。
ブレイドは重醒剣キングラウザー、醒剣ブレイラウザーの二刀の剣を重厚に振るい、戦闘員や怪人達を全く寄せ付けずに蹴散らしていく。
どれだけの敵が取り囲み襲い掛かろうと、敵は全て二本の剣に斬り捨てられた。
その圧倒的強さと金色の鎧は見るものに威圧感を与え、戦闘員達はその迫力に恐怖した。

「怯むな!戦え!」

しかし恐怖する戦闘員達を、怪人「マンティスオルフェノク」が強く叱責し、戦闘員達は仕方なく、半狂乱になりながらブレイドに襲い掛かった。

「愚かだ…」

ブレイドはマンティスオルフェノクの姿勢を見てそう思った。
自分は逃げる者まで無残に倒す気は無い。
もちろん悪の組織を許すことは出来ないが、流石に行き過ぎた戦いは良心が自分を咎めるのだ。
だが向かってくる敵に容赦する気は微塵もなく、ブレイドはブレイラウザーを一度地面に突き刺し、ギルドラウズカード・カテゴリー2~6までの五枚を体中に張り巡らせれたアンデッドクレストから出現させ、その空いた手に握ると、キングラウザーにラウズした。

『Spade2、3、4、5、6…Straightflush!」』

電子音声の終了と共にブレイドは再びブレイラウザーを引き抜き、二刀の剣を上段に振りかぶる。
そして一気に剣を振り下ろすと、ブレイラウザーから蒼い雷が、キングラウザーから巨大な金色の光が放たれ、マンティスオルフェノクを含む戦闘員達を一瞬で消滅させた。
だが休む暇はなく、敵はまだ多く存在している。
気づくと数も増えているようだ。
恐らく他の世界からの敵の増援部隊も到着したのだろう。
ブレイドは二刀の剣を構えると、再び敵陣に一人立ち向かって行った。

そして朝倉涼子もまた、二本のナイフを手に戦闘員や怪人たちと戦闘を展開していた。
敵は皆朝倉を甘く見た。
「生身の癖に我々に挑む馬鹿な女。殺さず捕らえて後で自分達の玩具にでもしてやろう。」
そんな卑しさを含んだ目で彼女を見ていた。
だがそれが怪人たちの仇となった。
朝倉は生身とは思えないほど素早い俊敏さを駆使し、素早く敵の急所をナイフで貫き、切り裂いて確実に一撃で敵を葬ったのだ。
美しい白い彼女の肌の色が目の前に見えたら最後、敵は物言わぬ肉塊へと姿をかえ、力なく地面に倒れた。

「馬鹿な…人間の女に…」

その部隊の指揮をしていたコブライマジンは朝倉の戦闘能力にたじろぎ、身震いした。
ひして彼の背筋にも氷のような戦慄が走り、朝倉に後ろから抱きつかれ、首筋にナイフが突きつけられた。

「な!?」
「最後に私のスリーサイズくらいは聞きたいかもしれないけど、私に質問はしないで。」

朝倉は眩しく、冷たく微笑むと、短く言葉を紡いだ。

「だって、これから死ぬ貴方には意味の無いことだもの♪」

朝倉は笑顔のまま、コブライマジンの喉を「自分特製」のナイフで切り裂いた。
ナイフの刃にはイマジンの血である砂がこびり付き、朝倉は艶やかな指使いでそれを払う。
そして再びナイフを構え、戦場へと戻っていった。


その頃、士達もアジトを守る怪人達との戦いを展開していた。
ディケイドのライドブッカー、クウガの拳、ブレイドのブレイラウザー、キバーラのキバーラサーベル、ブラックリンクスの爪とプラチナロワイアルの杖が群がる敵をなぎ払い、邪魔する者を蹴散らしていく。
だがこれ以上は時間はかけられない。
基地の中であむが待っているのだ。
プラチナロワイアルは唇を軽く噛むと、大声で叫んだ。

「皆さん!基地の中へ行ってください!ここは僕が引き受けます!」
「私も残って唯世君を助けます!」

唯世に答えるようにキバーラも残ると名乗り出る。
二人を残していくのは心配だが、この状況ではそれがベストだ。

「イクトさん…あむちゃんをお願いします。」
「…分かった。」

プラチナロワイアルとブラックリンクスは短く言葉を交わすと、ブラックリンクスは俊足でアジトへと向かっていった。

「夏みかん、王子様の足引っ張るんじゃねぇぞ。」
「余計なお世話です!笑いのツボ押しますよ!」

ディケイドとキバーラもそんなジョーク交じりの会話をすると、ディケイドはクウガ、ブレイドと共にブラックリンクスの後に続いた。
残ったキバーラとプラチナロワイアルは仲間を見送った後、武器を構え直して戦闘を続行した。


ディケイド達はアジトに侵入すると、まず上に続く移動手段をその目で探した。
すると広いフロアの左隅に大きな階段を見つけ、それに向かって走ろうとした。
しかしその直前、自分達の前方の床が砕け、地面から全身が鋼の鎧で作られた鉄の改造魔人・鋼鉄参謀が現れ、武器の鉄球を構えた。

「フン!貴様らをここから先には通さん!」

ディケイド達は身構え、戦闘を開始しようとしたが、クウガがディケイドの前に立ち、彼らを止めた。

「士、ここは俺に任せてくれ。」
「ユウスケ…?」

ディケイドはクウガの行為に驚き、頭に疑問符を浮かべたが、クウガは明るい口調でディケイドにサムズアップした。

「大丈夫、必ず追いつくよ。」
「…ったく、勝手にしろ。」

ディケイドはクウガの胸を軽く小突くと、ブレイドとブラックリンクスを連れて階段の方へと向かった。

「おのれ!俺を無視するのか!」

鋼鉄参謀はディケイド達の抜け駆けに腹を立て、鉄球のチェーンを強く握った。
そして残ったクウガは両手を構え、ファイティングポーズを取ると、力強く、大きな声で叫んだ。

「お前の相手は…俺だ!!」


次回は鋼鉄参謀対クウガをやります。
もしかしたら…ほんっっとうにもしかしたら皆さんのよく知っているあの男がほんのちょっぴり登場するかも…かも?
それからこれはおまけですが唯世と歌唄がこのままでは報われないので救済策を考えています。
まぁ、歌唄の場合は原作で既にもう…なので彼女の救済策は原作を読んでいる方にはすぐに分かるかもしれませんが…
そういえば極魂で剣王発売するそうで…
やべ、ワイカリ予約忘れてた…
俺当時のワイカリ事件(多分知ってる方もいますかと)の被害者なのに…



[15564] 十七話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:f81ad1a6
Date: 2010/05/10 13:48
十七話
「お前の相手は…俺だ!」

ディケイド達と別れ、ここで一人鋼鉄参謀と戦うことを選んだクウガは、両手の拳を強く握り、鋭い音を鳴らしながら強く構えた。
対する鋼鉄参謀はこれをディケイドが「余り物を残した」と取り、「余り物を宛がわれた」と勘違いし、怒りを露にした。

「おのれ!ディケイドめ、余り物の雑魚を俺に残すとは!」
「その言葉、撤回させてやるぜ!」

クウガは強い口調でそう言うと、ジャンプして鋼鉄参謀に殴りかかった。

「はあぁぁぁあ!!」

クウガの拳は上空からの降下を威力に加え、鋼鉄参謀の体にぶち当たった。
だが、鋼鉄参謀の体からは鋼を叩くような鈍い音が強く響いたものの、敵にダメージは全くなく、クウガは強い痛みで拳を引っ込めた。

「クッ…!」
「どうした?そんなものか?」
「まだだ!」

クウガは続けて、拳を、蹴りを突き出し、鋼鉄参謀の鋼の体を攻撃した。
しかし、鈍い音が鳴るばかりで、敵へのダメージは全く無い。
やがて鋼鉄参謀は呆れると、その太い腕でクウガを強く殴った。

「うわぁ!!」

クウガはその凄まじいパワーに殴り飛ばされ、10メートル近く吹っ飛ばされると、鉄で造られた壁に激突し、タイルに落ちる。
そしてクウガがぶつかった箇所は大きく歪み、つぶれ、鋼鉄参謀の腕力の強さを表していた。

「ハッハッハ!今度はこちらから行くぞ!」

今まで受けに回っていた鋼鉄参謀は持っていた鉄球を振回し、クウガに近づいてきた。
クウガは痛みをこらえて立ち上がると、舌打ちをして敵を睨んだ。
それからまた鋼鉄参謀に向けて立ち向かったが、鋼鉄参謀は鉄球を振り下ろし、巨大な鉄塊はクウガの赤い体に直撃した。

「がは!」

クウガは再び凄まじい勢いで壁に激突してめりこんだ。
そして鉄球が引き戻されると、砕け散った瓦礫と共に床に崩れ落ちた。

「クソ…」

だがクウガは根を上げず、再び痛みをこらえて立ち上がる。
しかし鋼鉄参謀は再び鉄球を振回し、次の一撃の準備をしていた。

「止めだ…消えろ雑魚が!」

鋼鉄参謀の鉄球は再びクウガに向けて襲い掛かる。
クウガは足腰を踏ん張らせると、横転して鉄球を回避し、体勢を立て直して手を前に突き出し、弱々しく叫んだ。

「超…変…身!」

クウガの言葉と共にクウガの体が紫色に変わり、タイタンフォームへ変身を遂げる。
タイタンフォームは防御力に優れた形態のため、強烈な一撃にも耐えられると思ったのである。
だがその考えは大きく外れる事となった。
再び襲い掛かってきた鉄球はタイタンフォームの装甲を押し潰し、そのまま吹き飛ばしたのである。

「そ…んな…」

クウガの体から鮮血が飛び散り、装甲がひしゃげ、マイティフォームからさらに退化した形態である白のグローイングフォームへと戻ってぼとりと床に落ちる。
もはや痛みを感じる時間もなく、クウガ・ユウスケの意識は闇の中に落ちていった。


ユウスケの意識は灰色一色に彩られた空間の中にあった。
何の感覚も感じることが出来ず、体に力も入らない。

「俺は…死んだのか…?」

自分は死んでしまったのだろうか?
目を閉じていたユウスケはそう思い、同時に自分の非力を呪った。
結局自分は囮になることも出来ず、士との約束、今は亡き八代藍への誓いさえ守れなかった。
どうしてこんなに自分は無力なのだ。
ユウスケは自分を責め、唇を噛んだ。
しかしそんなユウスケの耳に、何処からとも無く男の声が聞こえてきた。

「立ち上がれ。」
「え?」

ユウスケは閉ざしていた瞼を開くと、自分の目の前には黒いジャケットの下に白のシャツを身に付け、青いジーンズをはいた男の姿があった。
男は無精ひげを生やし、髪の毛は少しぼさりとしていて、三十代後半くらいの印象をユウスケは受けた。

「!?、あなたは…」
「ユウスケ、君は無力なんかじゃない、もっと自分を信じるんだ。」

男はユウスケに微笑み、右手でサムズアップを送る。

「大丈夫!君ならできる!」

その言葉と共に男の姿は光の中に消えていった。
一瞬、消え行く男の姿が「凄まじき戦士」の戦士へと変わり、瞳が「赤く」輝いた…


「な、なんだ!?」

鋼鉄参謀は驚愕していた。
体が潰れ、もはや死ぬのを待つばかりだと思っていたクウガの体が突如金色に輝き、凄まじい雷を放ち始めたのである。
そしてクウガは立ち上がり、無言で前に右手を突き出して変身ポーズをとると、強く両手を広げた。

『ありがとう…先輩。』

以前自分が彼の役割を肩代わりし、先程は自分を導いてくれた「もう一人の自分」への礼を心の中で呟きながら、クウガは究極を越えた究極の戦士の姿・ライジングアルティメットへと姿を変えた。
その目は赤く燦然と輝き、鋼鉄参謀を強く威圧する。

「俺は負けない…皆の笑顔を守るために!」
「くっ…ほざけ!」

鋼鉄参謀は再びクウガの眉間に向け、鉄球を放る。
鉄球は「ガン!」という鈍い音を立ててクウガの眼前で止まり、鋼鉄参謀は「今度こそ」と勝利を確信する。
しかし、鋼鉄参謀の予想ははずれ、逆に鉄球からみしみしと何かがきしむ音が響き、やがて粉々に砕け散る。
そして鉄球が砕けた後、クウガは眉間を左手の甲で覆い隠していた。
鉄球はクウガの皮膚の硬度に耐え切れず、砕け散ったのである。

「馬鹿な!俺の武器が…」
「今度はこっちの番だ!」

クウガは巨体に見合わぬ俊敏な瞬発力で跳ぶと、鋼鉄参謀の前に着地し、右手の拳を突き出した。
すると先程はびくともしなかった鋼鉄参謀の体に音を立てて拳がめりこみ、凄まじい一撃を敵の体に加える。
次に左手の拳が、次は蹴りが、また拳が…ライジングアルティメットの100tのパンチ力と120tのキック力が鋼鉄の体をいともたやすく叩き潰していく。
やがてクウガが平手を鋼鉄参謀の眼前にかざすと、紅蓮の炎が鋼鉄参謀の体から燃え上がった。

「ギャアアアアア!!」

鋼鉄参謀は炎に焼かれながら床をのた打ち回り、苦しんだ。
「凄まじき戦士」となったクウガが持つ敵の体を内側から炎上させる超能力「自然発火能力」である。
そしてこの隙にクウガは後方にジャンプし、鋼鉄参謀との間合いを取ると、腰を低く構え、右足に炎と雷のエネルギーを集中させると、一気に走り出し、宙にジャンプして一回転するとキックポーズをとって鋼鉄参謀に蹴りこんだ。
「ライジングアルティメットキック」…「オリジナル」とはまた違った形で伝説を塗り替えたクウガが放つ究極の一撃だ。

「おりゃあああああああああ!!」

クウガのキックは爆炎に焼かれる鋼鉄参謀の体に突き刺さり、鋼鉄参謀は断末魔の雄叫びを遺して雷と炎に身を焼かれて消滅した。
勝利を掴み取ったクウガは敵が遺した炎の中からゆっくりと歩み出ると、自分を信じ、上へと上って行った仲間の元へと向かった…


その頃、海東大樹は基地の地下へと浸入し、最上階へと続く非常階段を探していた。
士達のように真っ向から向かって行ったのでは敵との交戦は避けられず、ダメージを追っている自分は激しい戦闘は耐えられない。
だから主力が敵の主力が士達の方に向いている今、仲間である士達を囮にするような真似をして地下に侵入したのである。
全ては上で待っているであろう兄・純一を今度こそ倒すためであった。

「兄さん…!?」

だが、わざわざ上に向かう必要は無かった。
突如自分の前方の空間が揺らめき始め、ドクターケイトとマシーン大元帥の側近である磁石の改造魔人・磁石団長。
そして兄である純一がその中から現れたのである。

「兄さん…」
「大樹、決着をつけるぞ。」

純一は腰に装着したグレイブバックルに手を伸ばし、大樹はディエンドライバーをゆっくりと天にかざす。
それから二人は同時に叫んだ。

『変身!』

グレイブとディエンド、剣と銃、兄と弟…
対となる二人の仮面ライダーの最後の戦いが始まった。


どうしよう…ディケイドのヒロサガがよりによってストロンガーの世界でデルザー軍団なんて…
まじでどうしよう…ヒロサガは本来あくまでパラレルだから目をつぶろうか…しかしどうしよう…



[15564] 十八話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:f81ad1a6
Date: 2010/05/28 17:15
十八話
グレイブとディエンド…兄弟ライダーは仮面の下に隠れた瞳でお互いの顔を見つめると、自分達の武器をその手に握る。

「兄さん…僕はもう容赦はしない。兄さんを…倒す!」
「良いだろう。来い!」

ディエンドはディエンドライバーの銃口をグレイブに向けると、連続で引き金を引き、銃弾を連続で放つ。
グレイブは素早い動きでグレイブラウザーを振るい自分に放たれた銃弾を切り落とすと、ディエンドに向け駆けた。
ディエンドは引き金を引くことを止めず銃弾を放ち続けるも、グレイブは刃で一発一発を防ぎ、ディエンドに迫った。
やがてグレイブはディエンドの傍まで来るとその剣を振るい、ディエンドはそれを先の戦闘で受けた痛みに耐えながら回避していく。
しかしなんとか全て回避すると、予期しない攻撃がディエンドを待ち構えていた。
突如グレイブがジャンプでディエンドの前から跳び、グレイブの後ろに待機していたドクターケイトがディエンドに向けて杖を突き出してきたのだ。

「な!?」
「イッヒッヒ!一対一なんて考えるんじゃないよ!」

ケイトの杖はディエンドの腹部を強く突き、体制を崩させる。
そしてその隙を突き、ケイトは何度もディエンドを杖で叩いた。
さらに再び腹部が杖の先端で突かれ、そのまま持ち上げられて床に叩きつけられると、次に磁石団長が上下に磁石のN、Sの文字を象った大型磁石が取り付けられた杖のNの部分を倒れているディエンドに向けた。

「次はこれだ!この磁石団長の力を思い知るがいい!」

N極の大型磁石からは一発の光弾が放たれ、ディエンドの胸部に着弾する。
ディエンドの黒い胸部には「N」という赤い文字が刻まれ、磁石団長は次に杖のS極の磁石が付いた方を天井に向け、光球を発した。
天井には「S」という青い文字が現れと、突如ディエンドの体はその文字に吸い寄せられるように持ち上げられ、天井に叩き付けられた。

「うあああああ!!」

そしてただ叩き付けられただけではなく、さらに天井に刻まれたSの文字がディエンドの体を引き付け続ける。
ディエンドは皮膚をもぎ取られそうなほどの強い痛みに苦しめられ、呻き続けた。

「ぐ…ああああああああ…!!」
「ハッハッハ!どうだ!貴様の体にN極の磁石を貼り付け、さらに天井にS極の磁力を帯びさせることにより、貴様の体を痛めつけてやったのだ!ほれ、次は天井の磁力をN極に変えてやる!」

磁石団長はN極の磁石を天井に向けると、Sの文字はNの文字へと変わり、ディエンドは急に重力に強く引っ張られたかのように床に叩き付けられた。
天井の磁力がN極へと変わったため、同じ極の磁力を帯びていたディエンドは反発力によって弾き飛ばされたのだ。
今度は叩きつけられた後に上から押し潰されるような強い圧力がかかり、ディエンドを苦しめる。
ディエンドは痛みの余り持っていたディエンドライバーを落とし、喉が枯れそうなほど大きな声を出して苦しんだ。

「ぐあああああああ!!あああああああああ!!」
「ハッハッハ!ほれほれ!次はS極だ!」

磁石団長の拷問のような攻撃は止まらず、天井の磁力がS極、N極、またS極と変わっていき、ディエンドは床と天井に交互に叩きつけられ、上下から掛かる更なる圧力に呻く。
やがて床にぼとりと力なく落ちると、ガクリと頭を下げて荒い呼吸を繰り返した。

「イッヒッヒ…手も足も出ないようだねぇ…お次はこれだよ!」

ケイトは杖の先端をディエンドに向け、毒ガスを浴びせた。
体中の神経を麻痺させるほどの強烈なガスは満身創痍のディエンドの体を蝕み、動きを奪われたディエンドは沈黙した。

「はぁ…はぁ…」
「ヒヒ…さて、止めを刺してあげようねぇ…!」

ケイトは杖を構えゆっくりとディエンドに近づいていく。
そして彼の前に来るとゆっくりと杖を振りかぶり、その先端でディエンドを押し潰そうとした。
だが彼女が杖を振り下ろす直前、グレイブが彼女の肩に手を置き、それを止めた。

「なんだい?」
「止めは俺が刺す。」
「…フン、まぁいいだろう。兄が弟を殺すのもまた面白そうだしねぇ。」

ケイトは一歩後ろに下がると、グレイブはディエンドの前に移動し、グレイブラウザーを逆手に構えた。
そしてカードホルダーを展開し、「マイティ・グラビティ」のカードを引き抜くと、ホルダーを閉じ、カードリーダーにラウズした。
電子音声と共に現れたケルベロスの紋章は刀身へと吸い込まれ、刃は金色に輝き、グレイブは剣をゆっくりと振り上げた。

「兄さん…」

意識が朦朧としたディエンドはグレイブにゆっくりと手を伸ばした。
兄がその手を取らないことは分かっていた。殺される事は分かっていた。
だが言わずにはいれなかった。

「助けて…助けてくれ兄さん…」

ディエンドは…大樹は信じたかった。兄を信じたかった。
それがどれだけ無駄なことであったとしても、血を分けた兄を信じたかったのである。
だがグレイブの剣の輝きは光を増していき、ディエンドは仮面の下に隠れた唇を噛んだ。
そしてグレイブの剣は強く一閃され…グレイブの背後に居たドクターケイトを切り裂いた。

「グギャアアアアアアアアアアア!!」

ドクターケイトは断末魔の叫びを上げ、爆発した。
ディエンドは突然のグレイブの行動に驚くと、磁石団長は後ずさりし、杖でグレイブを指した。

「き、貴様!裏切るのか!?」
「裏切る…?ハッハッハッハ!俺は貴様らの下についたつもりは無い!」

グレイブはグレイブラウザーの切っ先を磁石団長に向け、そう叫んだ。

「貴様等スーパーショッカーの噂は聞いていた。うす汚いお前達が俺との約束を守るなんてハナから思っちゃいなかったさ。どうせ俺のことなど、使い終わったらゴミのように捨てるつもりだったのだろう?
それに、お前達はいずれ俺の野望の邪魔になる存在かもしれない。だから内部から貴様らを潰す為…犬を演じていたのさ!」
「クッ…覚えていろ!」

磁石団長はグレイブに背を見せ、一目散に走り去っていった。
それと同時にディエンドに張られていたNの文字も消え、グレイブはディエンドの方に向き直ると、武器をしまってしゃがみ、ディエンドに手を差し伸べた。

「立て大樹、病み上がりで悪いが、まだ利用させてもらう。」
「…うす汚いって、兄さんが言えた台詞じゃないね。」

ディエンドはグレイブの手を取ると、二人はゆっくりと立ち上がり、それから手を離した。
ディエンドは仮面の下で微笑んでいたが、グレイブはあくまでディエンドから顔を背け、話を続けた。

「行くぞ。」
「どこへだい?」
「この先の牢獄だ。そこに日奈森あむの父親が閉じ込められている。」
「なんだって?彼女の父親は確か…」
「話は歩きながらだ。付いて来い。」

グレイブとディエンドは肩をならべ、あむの父・紡の待つ牢へと進んだ…



最近更新速度が落ちてすみません…
電ハルも止まってるからそろそろ気合入れなきゃならないのに…



[15564] 十九話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:f81ad1a6
Date: 2010/06/04 12:35
十九話
クウガと鋼鉄参謀、ディエンドとグレイブが戦いを終えた頃、剣崎一真・仮面ライダーブレイドと朝倉涼子もまた山のような怪人達との戦いを続けていた。
数は減ってきたものの、まだ敵の数は多く、死の概念から解放されているブレイドと朝倉も疲労がたまり、動きが少し鈍ってきていた。
このままでは敵を何体か取り逃がしてしまう。

「涼子…生きてるか?」
「死ねないでしょ…お互いにね。」
「ハハ…そうだった…」

二人は軽口を叩き合うも、口調ほど余裕は無かった。
不死の身であったとしてもやはり疲れはあり、限界は存在する。
だがどんなに体が悲鳴を上げてもここで根を上げるわけには行かない。
ここで敵を食い止めることが士への罪滅ぼしであり、カズマとの約束なのだ。
それを剣崎自身が破るわけには行かない。朝倉もそれを分かっているからこそ、そして愛する友であるからこそ剣崎に力を貸しているのである。
そんな中、怪人達が一斉に二人に向けて襲い掛かってきた。
二人は武器を再び構え、敵の襲撃に備える。
しかし怪人達が牙を向く直前、突如襲い掛かった数体の怪人の体が燃え上がり、灰となった。
ブレイドと朝倉は驚き、そしてブレイドは自分と似た「ライダー」の気配を感じ取ると、気配を感じた方向を振り向く。
そこには瞳が赤く輝く仮面ライダークウガ・アルティメットフォームの姿があった。

「剣崎君!」
「五代さん!」

クウガ・五代雄介である。
それから他にも多くの懐かしい感覚がブレイドを刺激する。
ブレイドはまたクウガが居る方向とは別の方角を見ると、そこには龍騎サバイブ、装甲響鬼、キバ・エンペラーフォームの姿があった。

「城戸さん!ヒビキさん!渡!」
「剣崎!助けに来たぜ!」
「青年!後は任せろ!」
「剣崎さんは「しゅごキャラの世界」に向かってください!「もう一人の自分」を助けたいんでしょう!?」
「すまない!後でまた会おう!」

ブレイドは仲間達に礼を言うと、次に朝倉の方を見た。

「涼子、少し待っていてくれ。」
「あまり待たせないでよね。時間にルーズな男は嫌いだから。」

朝倉はそういってブレイドに微笑むと、ブレイドはキングラウザーを持ったまま走り去っていき、出現したオーロラをくぐっていった。
朝倉はそれを見送ったあと再びナイフを握ると、残った怪人達を睨んだ。

「さて…私、大人しく男を待つのは嫌いなのよね。」


一方、一時休戦と言う形でこの場は手を組んだグレイブとディエンドは地下牢を警護する戦闘員達を倒しながら地下を進んでいた。

「ダミー?」
「そう、事故で死んだ日奈森紡の遺体はスーパーショッカーが用意したダミーだ。」

グレイブは二人の戦闘員を切り伏せながら言った。

「本物は奴らが捕らえ、エンブリオ生成に必要な情報を得るために、拷問を繰り返していた。」
「成る程、実にスーパーショッカーらしいやり方だ。」

ディエンドは四人の戦闘員を銃撃で倒しながら微笑した。
それから時間はたたずに戦闘員は全滅し、紡が閉じ込められた牢の前へとたどり着いた。

「き、君達は!?」

鉄格子の隙間からディエンドとグレイブの姿を見た紡は驚いて顔を上げ、グレイブは牢の扉の前へと移動すると、グレイブラウザーで扉を切り裂いた。
扉は真っ二つに切り裂かれると、ディエンドとグレイブは拷問でボロボロになった紡に肩を貸し、立たせた。

「た、助けてくれるのか?」
「娘に会いたいんだろう?」
「僕と兄さんが力を貸してあげるよ。誰だって、家族というお宝に会いたい気持ちは同じだろうしね。」


ディケイド、ブラックリンクス、ブレイドの三人はアジトの中段まで上っていた。
途中なんどか戦闘員達の襲撃もあったが、難なく切り抜け、ここまでくることが出来た。
これも残り、鋼鉄参謀の相手を引き受けたユウスケのおかげである。
もうすぐ最上階に着き、あむを助け出すことが出来る。
三人はそう考えながら前に進んでいた。
やがて階段を上りきってまた大きな広間に出ると、三人はまた次の階に続く階段を探す。
そして見つけ出すと、一直線に階段に向けて走った。
しかし、再び改造魔人の脅威が三人を襲った。
突如天井から何者かが剣を振るい、襲い掛かってきたのである。

『!?』

三人はそれぞれ別方向に横転し、攻撃を回避すると、起き上がって敵を見た。
さこには一振りの西洋風の剣を持った鎧に似た体を持った金色の改造魔人の姿があったのである。

「よくここまで来たなネズミ共!だが、ここで一人残らず切り捨ててくれる!」

改造魔人・ヨロイ騎士である。
ヨロイ騎士は武器の剣の切っ先をディケイドに向けると、ゆっくりと迫ってきた。
それを見たブレイドはブレイラウザーを構え、ヨロイ騎士に切りかかると、鍔迫り合いに入ってディケイドを横目で見た。

「士!こいつは俺が引き受ける!」
「カズマ!」
「早くしないとあむちゃんが危ない!行け!チーズ!」

ディケイドとブラックリンクスはブレイドの言葉に唇を噛むと、階段へ向かって走った。

「ったく、俺はチーフだ!この馬鹿社長!」
「すまねぇ…恩にきるぜ!」

ディケイドとブラックリンクスはそう言うと、素早く階段を上っていった。

「ふん!一人でこのヨロイ騎士が倒せるかな?」
「負けるか…俺には、歌唄との約束があるんだ!」

ブレイドはヨロイ騎士との間合いを取ると、ブレイラウザーを振り上げ、ヨロイ騎士に立ち向かっていった。

「おおおおおおおおおおお!!」

ブレイドはブレイラウザーを何度も振るいながらヨロイ騎士を攻撃した。
しかしヨロイ騎士は落ち着いた様子で剣を構え、一閃一閃を刀身で防いでいく。
そしてブレイドの剣を押しのけ、強烈な突きをブレイドの胴部に打ち込んだ。

「グッ…!」
「フン、甘い剣だ。鍛え方が足りん!」

ヨロイ騎士はそのまま間髪いれずに剣を横薙ぎに振るい、ブレイドはなんとかその刃を刀身で受け止めたが、ヨロイ騎士の攻撃はとまらず、ブレイドを攻め立てていく。

「クソ…隙がない…!」
「ヌン!」

ヨロイ騎士が放った強烈な剣戟はついにブレイドを捕らえた。
アーマーを切り裂かれたブレイドは後ずさりし、足元をふらつかせたが、再びブレイラウザーを構え、戦意を保つ。
だがその時、突如背後から杖による一撃がブレイドを襲った。

「うあ!?」

ブレイドは前のめりに倒れるも、受身を取って立ち上がり、背後を振り向く。
そこには先ほどグレイブによって出し抜かれた磁石団長の姿があった。

「ヨロイ騎士!手を貸すぞ!」
「磁石団長、ケイトとグレイブと共にディエンドの排除に向かったのではなかったのか?」
「グレイブが裏切った!ケイトは奴の裏切りによって死んだ!ヨロイ騎士、ブレイドを倒し、グレイブを一緒に倒そう!」
「裏切りだと!?おのれグレイブめ…良いだろう、まずはブレイドを倒してからだ!」

二人の改造魔人はお互いの武器を構え、前後からジリジリとブレイドに迫ってきた。

「二対一か…!」

ブレイドは自分の圧倒的不利な状況に奥歯を噛み、敵を交互に見る。
そして磁石団長のほうに向かって走り、ブレイラウザーを振るうと、二人は互いの武器を叩き合わせた。
そのまま鍔迫り合いの状態に入ったが、すぐにヨロイ騎士の剣がブレイドに襲い掛かる。
ブレイドはすぐに磁石団長を押し返し、背後のヨロイ騎士に向けてブレイラウザーを振ったが、攻撃は回避され、背後に磁石団長の杖による一撃が加えられる。
それからブレイドは二体の改造魔人による挟み撃ち攻撃が開始され、ブレイドは杖と剣による同時攻撃を前後から受け、最後に二体が横薙ぎに振るった一撃によって吹っ飛ばされた。
跳ね飛ばされたブレイドは床を転がり、剣を杖代わりにして立ち上がるも、二体はまた武器を構えてブレイドにゆっくりと迫って来た。
ブレイドは少し後ずさりし、柄を握る手の握力を強めた。
だがその時、ブレイドの背後に不透明なオーロラが現れた。

『な、なんだ!?』

磁石団長とヨロイ騎士は突然の出来事に驚くと、オーロラの中からゆっくりと重厚な姿が現れた。
剣崎一真が変身した仮面ライダーブレイド・キングフォームである。

「先輩…!」
「カズマ…大丈夫か?」

カズマブレイドは突然の一真ブレイドの出現に驚いた。
一真ブレイドはカズマブレイドを見つめ、「フン」と言葉を漏らした。

「奴等の援軍は、俺の仲間達が抑えている。本当は俺一人で片付けるつもりだったが、どうも俺は仲間運に恵まれてるようだ。」
「ありがとう…先輩。」

カズマブレイドは駆けつけてくれた一真ブレイドに礼を言うと、自分もアブゾーバーを起動し、カテゴリーQをセットし、カテゴリーKをカードリーダーにラウズした。

『Evolution King』

カズマブレイドも13体のアンデッドと融合し、キングフォームへと変身すると、二人のブレイドはキングラウザーを構えた。

「行くぞ、カズマ。」
「ああ、先輩!」

二人のブレイドが放つ王の気迫は磁石団長とヨロイ騎士を圧倒する。

「クッ…恐れるな磁石団長!見掛け倒しだ!」
「あ、ああ!行くぞ!」

二体は二人のキングフォームに向け、武器を振り上げて襲い掛かった。
そして何度も攻撃したが、一真ブレイドとカズマブレイドは一歩も微動だにせず、敵の攻撃をその金色の鎧で受け続けた。
その後もキングの鎧は傷一つ付かず、二体の攻撃をものともしない。
やがて二人は右手の「ビートライオン」の紋章を輝かせると、一気に拳を突き出した。

『うおおおお!?』

突き飛ばされた二体の改造魔人はそのまま壁に叩きつけられ、めり込んだ。
ダブルブレイドはそれを好機と見ると、体のアンデッドクレストから五枚のギルドラウズカードを出現させ、それをキャッチしてキングラウザーにラウズした。

『Spade10、J、Q、K、A…Royalstraightflush!』

ダブルブレイドの体が輝き、アンデッドクレストからキングラウザーにエネルギーが流れ込む。
そして五枚の10、J、Q、K、Aの紋章が二人のブレイドの前にそれぞれ現れると、二人はその紋章に向けて剣を突き出した。

「うおおおおおおお!!」
「ウェェェェェェイ!!」

剣先からは膨大な金色の光が放たれ、一真ブレイドが放ったロイヤルストレートフラッシュは磁石団長を、カズマブレイドが放ったロイヤルストレートフラッシュはヨロイ騎士を飲み込んだ。

『ギャアアアアアア!!』

光に飲み込まれた二人は絶叫を上げ、やがて光は晴れていく。
しかし、二体はまだ生きており、満身創痍になりながらも武器を構え、ダブルブレイドにゆっくりと迫ってきた。

「おのれ…ブレイド…」
「死ね…ブレイド…」

二人のブレイドは二体の耐久力の高さに感心したが、容赦はしなかった。

「カズマ、来い!」
「ああ!先輩!」

カズマブレイドは相槌を打つと、精神を統一し、一気に宙に跳んだ。
そして体を変形させ、金色のブレイドブレードへと変形すると、一真ブレイドは自分の前に降りてきたその剣を右手で握った。
以前アルティメットフォームとなったユウスケクウガが「アルティメットゴウラム」へと変形したように、カズマもキングフォームの力を応用し、「キングブレード」へと変形したのである。
一真ブレイドはキングブレードを構え、振り上げた。

「うおおおおおお…!」

キングブレードの刀身はロイヤルストレートフラッシュと同じ金色に輝き、エネルギーを集めていく。
そしてその光の輝きが最高潮に達すると、一真ブレイドはキングブレードを一気に振り下ろした。

「…ウェイ!!」

剣圧は巨大な金色の刃となって磁石団長とヨロイ騎士に襲い掛かる。
二人のブレイドが繰り出す合体技「キングエッジ」である。
二体の改造魔人は光の刃に飲み込まれ、叫んだ。

『スーパーショッカー…バンザアァァァァイ!!』

今度こそ二体は光に飲み込まれ、消滅した。
一真ブレイドはキングブレードを放り投げると、キングブレードはカズマブレイド・キングフォームへと戻って床の上に…落下した。

「うわああああああ!?…イテテ。」

尻餅をついたカズマブレイドは痛そうに声を漏らし、一真ブレイドはそれを見て鼻で笑う。
そしてカズマブレイドに歩み寄り、その手を差し出した。

「悪いな。大丈夫か?」
「ったく、酷いぜ先輩!」

カズマブレイドは一真ブレイドの手を取った立ち上がり、文句を言った。
すると一真ブレイドの背後に再びオーロラが現れる。

「俺は仲間の所に戻る。いつまでも待たせるわけには行かないからな。」
「ああ、これだけ助けてくれれば十分だぜ。ありがとう、先輩。」
「さらばだ。いつか、機会があったら、また会おう。」

一真ブレイドはそう言い残し、オーロラを潜り消えていった。
カズマブレイドは再び心の中で一真ブレイドに感謝すると、キングラウザーを握りしめ、ディケイドとブラックリンクスの後を追った。
残るは、ゾル大佐とマシーン大元帥の二人だけである。



ブレイドブレードを握るキングフォームが見たいとのリクエストがありましたので無理矢理ですがやりました。
勿論僕はフィギュアーツブレイドブレードも予約していますw

『』の中の分を追加しました
Evolution Kingを書き入れるのを忘れるなんて…穴があったら入りたい。

さらに訂正箇所を直しました…



[15564] 二十話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:f81ad1a6
Date: 2010/06/22 13:38
二十話
ディケイドとブラックリンクスはついに最上階数階手前まで階段を登り詰めた。
もうすぐあむが待つアジト最上階までたどり着く…改造魔人も仲間達が倒しているのなら残りはマシーン大元帥ただ一人…
だがディケイドにはもう一人、倒さねばならない敵がいるのがわかっていた。
その敵は今まで自分の邪魔をし続けてきた謎の男であり、幾度となく牙を向いてきた因縁の相手だ。
おそらくそいつはもう自分を待ち構えているだろうとディケイドは考えていた。
そしてその考えは当たり、また広い空間に出ると、その室内の中心にその男の姿があった。

「鳴滝…」

鳴滝・ゾル大佐である。
ゾルの後ろには今まで上ってきたものとは違う大仰な階段があり、司令室へと続いていた。

「イクト…行け。」
「え?」

ディケイドの隣にいたブラックリンクスはディケイドの言葉に驚くと、疑問符を頭に浮かべた。

「あいつの相手は俺がする。お前はさっさと、お前のお姫様を抱っこして連れて来い。」
「…分かったよ。あんたも死ぬなよ、士。」
「当たり前だ。」

ディケイドはイクトにユウスケ譲りのサムズアップをすると、ブラックリンクスはその俊敏な速さを生かし、ゾルの横を通り過ぎて階段を上っていった。

「おいおい鳴滝、ボスのところに敵を行かせちまって良いのか?」
「フン!あんな子供、大元帥の相手ではないわ。それよりもディケイド!とうとう決着をつける時がきたな!!」

ゾルは憎しみを込めた目を大きく開き、ディケイドを睨むと、持っていた鞭の切っ先をディケイドに向けた。

「積もりに積もった貴様への恨み、私自身の手で晴らしてくれる!」
「ハッ!んなこと言ったって、控えてる改造魔人は全部ユウスケとカズマ…多分今頃海東も何処かに忍び込んで引き受けてる筈だ。その大元帥とやら以外にもなんか怪人がいるのか?」
「フッフッフ…お前の目の前にいる。」
「何?」

ディケイドは仮面の下の眉間をゆがめた。

「門矢士!お前がディケイドに変身出来るように、私もまた変身出来る!」
「すると…お前も怪人に変身できるのか?」
「お見せしよう…狼男を!」

ゾルが鞭を振るうと、突如彼の周囲に霧が舞い、その中から金色の二つの眼光が光る。
そして狼の雄たけびと共に霧が吹き飛ぶと、金色の体毛と鋭い爪、牙を持った狼男の姿があった。

「なるほど…狼男ねぇ…お前にゃワイルドなのは似合わねぇな。」
「ディケイド!貴様の首!この狼男が貰い受ける!」

狼男は雄たけびと共に跳び立つと、俊足でディケイドに飛び掛り、その爪を振るった。

「な!?はや…」

爪は驚くディケイドの胸部を切り裂き、ディケイドは床の上を転がり、体勢を立て直して立ち上がる。

「まだだ!」

すると狼男は次に縦横無尽に室内を跳ね回りながらディケイドに襲い掛かった。
その速度は肉眼で捕らえることは難しく、上下左右、斜めからディケイドを襲い、爪がディケイドの鎧を切り裂いていく。

「クソ…これならどうだ!」

ディケイドは仮面ライダークウガ・ペガサスフォームが描かれたライダーカードを取り出すと、ディケイドライバーにセットする。
そして電子音声と共にクウガ・ペガサスフォームにカメンライドすると、ライドブッカーをガンモードに変形させ、さらにペガサスボウガンに変化させる。
ペガサスフォームの超感覚で狼男を捕らえ、撃ちぬこうと考えたのだ。
ディケイドクウガは五感を研ぎ澄まし、狼男の姿を探す。
しかし、敵はその時間を与えず、ディケイドクウガの背後に現れると、組みかかり、鋭い牙で左肩に噛み付いた。

「グッ…」
「ディケイド!貴様の腕を噛み千切ってやる!」
「舐めるな!」

ディケイドは次にカブトのライダーカードを取り出し、ドライバーへとセットして仮面ライダーカブトへとカメンライドする。
そして狼男を引き剥がし、「クロックアップ」のカードを使用してクロックアップした。
クロックアップは自身を時間の流れから切り離し、肉眼では確認できない超高速のスピードで移動する「カブト」の特有能力である。
流石に肉眼で確認できなければ狼男も自分の姿を捉えることは出来ないだろうと考えたディケイドはライドブッカーをソードモードへと変形させ、狼男に切りかかった。
しかし…

「それで私を翻弄したつもりか!?ディケイドオォォォォオ!!」

狼男は自らの五感を研ぎ澄まし、ディケイドカブトが今いる位置を正確に読み取って両手の指を向けた。
そして十本の指からは機関銃のように何発もロケット弾が発射され、ディケイドカブトを襲った。

「何!?」

ディケイドカブトはとっさに両腕でガードしたが、防ぎきれるはずもなく、クロックアップを解かれて弾き飛ばされた。

「ぐあ!」

ディケイドカブトは床を激しく転がってディケイドに戻ると、狼男は俊足でディケイドに近づき、彼の首を掴んで持ち上げた。

「クッ…」
「ディケイド…私はこの時をずっと待っていた…このまま絞め殺してやる!」
「ぐ…ぐああああああ!!」

狼男は両手に力を込めてディケイドの首を締め上げ、ディケイドは苦しそうに呻き声を上げた。


一方その頃、剣崎一真・仮面ライダーブレイドキングフォームは歪んだオーロラを潜り抜け、仲間達のところに戻ってきた。

「五代さん!城戸さん!ヒビキさん!渡!涼子!」

そして最強フォームに変身して戦うクウガ、龍騎、響鬼、キバ、両腕を鋭い光の刃へと変換させて敵を切り裂いている朝倉涼子の元に駆け寄ると、自身もキングラウザーを振るい、戦いに戻った。

「早かったな剣崎!」

龍騎サバイブはブレイドの隣に並ぶと、ブレイドの肩をぽんと叩いた。

「これは俺の戦いです。城戸さん達にばかり、任せられませんよ。」
「それにしてもさ…」

龍騎は手に持ったドラグバイザーツヴァイの刃部分であるドラグブレードで戦いながら、両手の刃で怪人をバサバサと切り倒す朝倉を見ると、仮面の下の口元をゆがめた。

「すげぇな、お前の彼女。」
「彼女じゃありませんよ。」

ブレイドはキングラウザーで怪人を切り倒しながら言った。

「あの娘は…俺の大切な「友達」です!」


「ディケイド…死ね!」
「クソ…!」

ディケイドは狼男の手を振りほどこうとしたが、敵の腕力が強く、中々振りほどけなかった。
このままでは首の骨を折られてしまう。
どこからそんな力がわくのかは知らないが、狼男・鳴滝の自分への憎しみの力は凄まじかった。
このまま倒されてしまうのか?
そんな時、手に持っていたライドブッカーが突然輝きだした。

『何!?』

二人は突然の出来事に驚くと、ライドブッカーから一枚のカードが飛び出し、狼男にぶつかって跳ね飛ばした。

「ぐあ!?」

カードはそのままディケイドの手元に戻ると、ディケイドは咳き込みながらそのカードの絵柄を見た。

「ゲホ!…ゲホ!…これは…!?」

ディケイドは仮面の下に隠れた瞳を丸くして驚いた。
カードには以前自分と共にスーパーショッカーと戦ったライダー、仮面ライダーWの絵柄が描かれていたのである。

「W…成る程、大体分かったぜ…」

ディケイドはディケイドライバーのバックル部を展開し、カードをセットすると、バックル部を再び操作し、叫ぶ。

「変身!」
『kamennride…W!』

ディケイドライバーから電子音声とメロディが鳴り響くと、ディケイドの姿は右半身が緑、左半身が黒の二つの色に分かれた奇抜なライダーの姿に変身すると、凄まじい突風が室内に吹き荒れた。
突風は室内の窓ガラスを一瞬で粉々に砕き、狼男は足を踏ん張って吹き飛ばされないように身構える。
その風の中でディケイドが変身したライダーの背に付けられたマフラーは雄々しくはためき、宙を踊った。
やがて風が晴れると、そのライダーは怯んでいた狼男を指差し、不適に言葉を発した。

「さぁ…お前の罪を数えろ!」

このライダーの姿こそ、仮面ライダーW…ディケイドが以前共に戦った11人目の仮面ライダーである。
ディケイドはWの力を使い、ディケイドW・サイクロンジョーカーへと変身したのだ。

「馬鹿な!Wだと!?」

狼男は突然のディケイドの新たなる変身の驚くと、ディケイドWは指を下げ、再び言葉を発した。

「いくぜ…鳴滝!」

ディケイドWは風のような速さで狼男に接近すると、切れ味の鋭い回し蹴りを狼男の頭部に見舞った。
そして間髪入れずに速さをあげながら頭部、胴部に強烈で素早いキックを駆使し、狼男を攻め立てていく。

「グウゥゥ…おのれぇ…!」

狼男はバックジャンプでディケイドWから間合いを取ると、再び俊敏なスピードを駆使し、ディケイドWを攻めようとした。

「同じ手を食うかよ。」

ディケイドWは一枚のカードをライドブッカーから取り出し、ディケイドライバーにセットした。

『formride…Luna!Trigger!』

ディケイドWの右半身が黄、左半身が青に変わり、ルナトリガーへとフォームチェンジすると、武器であるトリガーマグナムを構え、引き金を引いた。
発射された弾丸は追尾機能を持ち、目にも留まらぬ速さで動く狼男の姿を確実に捉えて打ち落とした。

「グハッ!」

狼男は床の上に叩き落されると、また新たなカードを取り出し、ディケイドライバーに装填した。

『formride…Heart!Metal!』

次は右半身が赤、左半身が銀に変わり、ヒートメタルにチェンジすると、鋼の鉄棍・メタルシャフトを振り回し、狼男に立ち向かった。
炎を纏った棍棒は強力な一撃を立ち上がった狼男のボディに叩き込んでいく。
既に先程の銃撃で体力を削がれていた狼男に逃げる術はなく、高速移動する前に突き飛ばされ、再び床の上を転がった。

「そろそろお仕舞いだぜ、鳴滝。」

最後に基本フォームであるサイクロンジョーカーに戻ると、Wのマークが描かれたカードを取り出し、ドライバーに装填した。

『Finalattackride…DaDaDaW!』

ディケイドWは疾風と共に宙に浮かび上がり、両足で一気に狼男へと蹴りこんだ。
そして敵に突進する途中、左右別の色の体が二つに割れ、ミサイルのように狼男へと飛び掛る。

「うおりゃあぁぁぁぁあ!!」

先に緑の半身が狼男の胴部にぶち当たり、次に黒の半身が緑の半身と合わさるように敵にぶち当たる。
Wの必殺技である「ジョーカーエクストリーム」だ。

「馬鹿なあぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

狼男は爆炎に包まれると、ゾルへと戻り、室内の壁に激突した。
それだけではなく、ゾルの身に付けた軍服と軍帽も古びたコートと帽子へと変わり、ゾルは鳴滝へと戻り、立ち上がってディケイドをにらんだ。

「おのれディケイド!!」

鳴滝はメガネの下の眼を大きく開き、悔しそうに叫んだ。

「次こそは必ずや貴様を倒してくれる!覚悟しておけ!」

そう言うと、鳴滝の背後にオーロラが現れ、彼はそのオーロラに包まれて姿を消した。
ディケイドWはディケイドへと戻り、Wのカードを見つめた。
Wのカードは光の粒となって消えると、ディケイドは仮面の下の唇を微笑させた。

「サンキュー、W。」

そしてイクトの後を追い、司令室へと向かった。
残るはマシーン大元帥唯一人である。


多分あと二話くらいで終わりです。
結構長かった…
さて、今度は電ハルのプロットもまとめないと…



[15564] 二十一話
Name: ホットコーギー◆fe8f08b5 ID:f81ad1a6
Date: 2010/06/30 16:36
二十一話
「あむ!」

ブラックリンクスは司令室のドアを蹴破り、中に突入した。
そしてすぐにその視界に、光り輝く大きな繭が映った。

「まさか…」
「そう…お前の大事な大事な妹だよ。」

そして繭の背後からマシーン大元帥が現れ、ブラックリンクスを睨んだ。

「!?」
「それとも、恋人と言ってやったほうが嬉しかったかな?」
「マシーン大元帥…!」

ブラックリンクスは一足飛びでマシーン大元帥に飛び掛り、鉤爪を振るった。
マシーン大元帥はブラックリンクスの手首をつかみ、彼を投げ飛ばすと、ブラックリンクスは床に激突したもののすぐに立ち上がり、爪を再び構えた。

「クッ…」
「その程度か?」
「あむを…返してもらう!」

ブラックリンクスは再びマシーン大元帥に向けて飛び掛った。
そして持ち前の素早さを利用して何度も爪を振るったが、マシーン大元帥はブラックリンクスの攻撃をものともせずに紙一重で回避していき、最後に放った一撃を避けると、ブラックリンクスの手首を強く掴んだ。

「クッ…」
「悪あがきはよせ、お前ごときが私に敵う訳が無かろう!」

大元帥はブラックリンクスを片手で持ち上げると、彼を振り回し、壁に向けて投げ飛ばした。

「まだだ!」

ブラックリンクスは反転して壁を蹴り、再び大元帥に飛び掛りながら黒い光をその体に纏うと、デスレーベルにキャラなりした。
そして武器である鎌を振りかぶると、それを敵に向けて振り下ろした。

「む…!」

大元帥は右手の機械の腕で鎌を防御すると、馬鹿にした口調で喋りだした。

「貴様も哀れだな。自分の体を痛めつけてまでなぜあの娘にこだわる?」
「お前になんか分からないさ…あむをエンブリオの媒体としか見ていないお前なんかに、俺とあいつの気持ちなんて分かるものか!」

デスレーベルは大元帥を押し返し、再び鎌を振り下ろす。
しかしその攻撃も大元帥は機械の手で刀身を受け止め、握り潰して粉々に砕いた。

「何!?」
「解せぬな。あの娘にエンブリオの媒体以外何の価値がある?人生?愛?なりたい自分?大層な事を語ったところで、人間の子供一匹に何の価値があるというのだ?」
「人間だから…子供だから、愛する人が居るから、価値があるんだろ!」

デスレーベルは残った刃を振るい、また大元帥を攻撃する。
しかしその攻撃も大元帥によって回避され、デスレーベルは腹部に大元帥の強烈な拳を受けて吹き飛ばされた。

「うわあああああ!!」

デスレーベルは床の上に叩きつけられ、イクトへと戻った。

「クッ…」
「所詮、子供の力では何も出来ん。」

大元帥はそう吐き捨てると、背後の光の繭に向けて歩き出した。

「まもなく、エンブリオが完成する…我らスーパーショッカーが、ついに全ての世界を統べる日が訪れるのだ!」

マシーン大元帥は繭の前に来るとゆっくりと腕を伸ばした。

「あむ!」
「さぁ!エンブリオを我が手に!」

大元帥が繭の中に腕を突っ込むと、繭は一瞬で光の粒となって消滅した。
そして繭が消えた後、大元帥の手には真っ白な美しいタマゴが握られていた…

「あむーーーーーーーー!!」

これこそが伝説のタマゴ、エンブリオ…願い事をなんでも一つ叶える力を持った奇跡のタマゴである。
同時に、子供の命を媒介として誕生する、忌まわしきタマゴであった。

「ハッハッハッハ!これで世界は我々スーパーショッカーの物だ!」

大元帥は高笑いし、スーパーショッカーの勝利を宣言した。
しかしイクトは立ち上がり、ヨルのタマゴを取り出す。

「ヨル!まだだ!あむを取り戻す!」
『分かってるニャ!』

イクトはヨルとキャラなりし、再びブラックリンクスに変身すると、鉤爪を構え、再びマシーン大元帥へと飛び掛った。

「無駄だと言うことが分からんのか!?」

大元帥は再び機械の腕でブラックリンクスの攻撃を防ぎ、怒号を放った。

「ああ!分からないね!あむは絶対俺が取り戻す!絶対助ける…それが俺の役目だ!あいつを守るためなら無謀だって何だってかまうものか!!」

しかし、マシーン大元帥はブラックリンクスの攻撃をやはりものともせず、彼をまた跳ね飛ばした。
ブラックリンクスは受身を取って立ち上がり、マシーン大元帥を再び睨む。
しかし、やはり対×たま用の力しか持っていないブラックリンクスの攻撃力では幹部格である大元帥に敵わないことは明白であった。
このまますべて大元帥の思うとおりに事が進んでしまうのか?
そんな時、司令室の扉の向こうから乾いた足音が聞こえてきた。

「そこのネコガキの言うとおり、お前なんかにゃ死んだって理解できないさ。」

ブラックリンクスと大元帥は扉の方に視線を移した。
そこには、一振りの剣・ライドブッカーを手に持った破壊者・仮面ライダーディケイドの姿があったのである。

「ディケイド!?」
「士!」

ディケイドはブラックリンクスの隣まで歩くと、大元帥をその緑の瞳で睨む。
そして刀身を空いている左手で支えながら仮面の下の唇を再び開いた。

「マシーン大元帥、お前なんかには、イクトにとってあむがどれだけ大事なものなのかなんて絶対に分からないさ。イクト…いや、この二人にとってお互いの存在は、エンブリオなんて下らない物よりずっと大切で愛おしいんだ。
自分達の事しか考えないお前らスーパーショッカーなんかに、この二人の間に割り込む権利は無ぇ!」

ディケイドは強い口調で言うと、次に大元帥の手に握られたエンブリオを見つめ、叫んだ。

「さぁ、あむ!いつまでそんなタマゴの中に閉じこもってるんだ!折角お前の王子様が迎えに着たんだから、さっさと起きてこっちに来やがれ!」


あむの意識はエンブリオの中にあった。
周囲は真っ白な光だけの空間で、眩しすぎて目が開けない。
自分はもうラン達と共にエンブリオになってしまったのか?
このままスーパーショッカーの野望を叶えるための道具として使われてしまうのか?
考える度にあむは恐怖した。

「イクト…嫌だよこんなの…会いたいよぉ…」

あむは声を震わせて愛する人の名を呟いた。
その時微かだが、誰かの声が耳に響いてきた。

『…む…ま…だ…』
「え…?」

あむは集中し、その声を聞き取ろうとした。

『さぁ、あむ!いつまでそんなタマゴの中に閉じこもってるんだ!折角お前の王子様が迎えに着たんだから、さっさと起きてこっちに来やがれ!』
「士さん…?」

あむはディケイド・士の声だと判別すると、眩しさを我慢し、ゆっくりと目を開いた。
すると自分の目の前には、ディケイドとイクトの姿が映し出されていた。

「!?、イクト!」

あむは眩しさも忘れ、愛しい人の名を叫んだ。
来てくれた…こんな場所まで自分を迎えに来てくれた…
戻りたい…イクトの元に戻りたい…あむは心のそこで願った。

「イクト!私はここだよ!ここにいるよ!」

あむは必死に叫んだが、声は彼には届かない。
自分の力で殻を破るしかイクトの元に帰る方法は無いのだ。

「どうすれば…」

あむはこの殻を破り、イクトの元に帰る方法を考えた。
そんな時、しゅごキャラ達の声があむの耳に聞こえてきた。

『あむちゃん!』
「!?、ラン!何処に居るの!?」
『僕達はあむちゃんの傍にいる。姿が見えなくたって、いつも一緒だよ。』
「ミキ!」
『皆一緒にお家に帰りましょう!歌唄ちゃんもイクト君も待ってますよ!』
「スゥ!」
『あむちゃん、私達の力を一つにするのよ。そうすればきっと、ここから出られるわ。』
「ダイヤ!」

あむはしゅごキャラ達の声を耳にし、再び自分の前に映し出されたイクトとディケイドに視線を移した。

「イクト…今帰るよ…ラン!ミキ!スゥ!ダイヤ!」
『うん!!』
「行くよ!あたしの心!アンロック!」

あむは両腕で胸の前で扉を形作り、それを翼のように大きく広げた。
すると彼女の体はエンブリオの光よりより美しい輝きを放つ光に包まれ、その光はやがてエンブリオの光を飲み込むようにかき消していった。


「うお!?」

マシーン大元帥は突如エンブリオから放たれた新しい光の眩しさに目を背けた。
その瞬間、エンブリオは粉々に砕け散り、中から一筋の光が放たれた。
光はやがて人を形作り、美しく霧散すると、光の中から首にハンプティロックとダンプティキーを下げ、美しい純白のドレスを身に着けたあむが現れた。

「キャラなり!アミュレットフォーチュン!」

アミュレットフォーチュン。
あむが持つ四人のしゅごキャラが一度にあむとキャラなりした姿である。
その美しいドレス姿はウェディングドレスを着た花嫁にも見え、イクトはその姿に目を奪われた。

「あむ…?」
「イクト!!」

アミュレットフォーチュンはそのままイクトの胸に飛び込み、イクトは彼女を抱きとめた。

「あむ!」
「イクト!」

イクトはアミュレットフォーチュンあむを強く、強く抱きしめた。
もう二度と、離さないと誓いながら。

「イクト…やっぱり来てくれた…!」
「あむ…俺はもうお前から絶対に離れない…離さない…!」

隣で見ていたディケイドはらしくもなくすこし気恥ずかしくなって二人から目を逸らした。

「馬鹿な…エンブリオが…」

マシーン大元帥は未だにエンブリオが消えた事実が信じられず、呆然と立ち尽くしていた。
ディケイドはそんなマシーン大元帥に視線を移すと、再び強く言葉を発する。

「言っただろ、お前には、この二人の間に割り込む権利は無ぇってな!お前にはあむの未来も、心も、なりたい自分も、何一つ奪うことは出来無いんだ!」
「くっ…おのれディケイド!」
『士!』
「士君!」
「あむちゃん!イクトさん!」

そしてディケイドの元に改造魔人達を倒したライジングアルティメットクウガとブレイドキングフォーム、怪人軍団を倒し終えたキバーラ、プラチナロワイヤルが司令室の階段を上り、合流した。
それから司令室の非常階段に続くドアも爆発し、中からあむの父・紡を連れたディエンド、グレイブも現れた。

「どうやら、猫君はお宝を取り戻したようだね。」
「後はマシーン大元帥を始末するだけか。」

マシーン大元帥は絶望的な状況に蒼白となった。
そしてディケイドに向け、大きく声を上げた。

「我々の…我々の計画が…何者だ…貴様は一体何者なのだ!?」

ディケイドはマシーン大元帥を再び鋭い眼光で睨み、その問いに答えた。

「通りすがりの仮面ライダーだ…覚えておけ!」



次回が最終回の予定です。
とりあえずマシーン大元帥を手っ取り早くリンチしてエピローグやって終わりだと思います。
しゅごキャラ原作を凄まじくブレイクし、はちゃめちゃやりすぎた作品ですが次回でようやく一息つけそうです。
次は電ハルありますけどねw一応電ハルにも名護さんだけじゃなく、剣からあと一人ゲストライダーを出そうと思っています。もしかしてカブトからもゲストライダーが一人出るかもしれませんけど…カブトからのゲストのほうは少し悩み物です。


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