2010年5月2日 21時9分 更新:5月3日 0時48分
【ロンドン会川晴之、ブリュッセル福島良典】ギリシャ政府は2日、欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)との間で、追加財政再建策の見返りに、巨額の緊急融資を受けることで合意したと発表した。ユーロ圏諸国(16カ国)は同日夕、ブリュッセルで緊急財務相会合を開き、支援策に同意する。支援額は3年間で1100億ユーロ(約14兆円)とする方向で最終調整している。
ユーロ加盟国が金融支援を受けるのは99年のユーロ発足以来初。支援は、史上最大規模となる。12年までの3カ年計画で実施され、初年度の10年は450億ユーロ(約5兆6000億円)の3分の2をユーロ圏諸国、3分の1をIMFが分担する。
ユーロ圏諸国の支援策発動にはギリシャ以外の15カ国すべての承認が必要で、最大支援国となるドイツは7日までに議会承認を得る方向。早ければ同日中にブリュッセルで開かれるユーロ圏諸国首脳会議で発動が最終確認される見通しだ。
ギリシャのパパンドレウ首相は2日、付加価値税(消費税に相当)引き上げなどを柱にした300億ユーロ規模の追加再建策について「大きな犠牲を払うことになるが、これをしなければギリシャは破綻(はたん)する」と、国民に理解を求めた。ギリシャではメーデーの1日、公務員給与の凍結や付加価値税の引き上げなどに反発するデモ隊が警察隊と衝突、5日にはゼネストが予定されており、社会不安が拡大する恐れもある。
市場の評価もカギを握る。ギリシャは09年に国内総生産(GDP)比で約14%に達した財政赤字を、14年までに3%以下に抑える目標を掲げた。だが、市場は「急激な緊縮策は経済の失速を招く。再建は計画通りには進まない」との見方を強めている。クシュネル仏外相は「市場が常に攻撃をかけてくる現状では、何も保証できない」と仏メディアに語り、支援策が万能薬ではないとの認識を示した。
米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は先週、ギリシャ国債を投機級に格下げした。米ムーディーズ・インベスターズ・サービスも財政再建策を見極めた上で週明けにも格下げすると表明している。同社が投機級に格下げした場合、ポルトガルなど財政赤字を抱える南欧諸国の国債や、ユーロが売られ、混乱が拡大する可能性もある。経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長は、ギリシャ危機を感染力の強いエボラ出血熱に例え「欧州諸国はすでに感染している」と、各国で次々と「発症」することへの危機感を表明した。
ギリシャの債務不履行(デフォルト)に備えた保険の一種「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」の保証料率は一時9%以上に上昇(信用は低下)、リーマン・ブラザーズが破綻直前につけた6%を上回っている。「ギリシャ危機から、ユーロの危機に局面が変わった」(エコノミスト)との認識が広がっており、最悪の場合「5000億~7000億ユーロ(62兆~87兆円)規模の支援が必要」とのリポートが市場を飛び交う。
米著名投資家のウォーレン・バフェット氏は1日、悲劇の結末を迎える映画に例えながら、ギリシャ危機が「大きなドラマになりうる」と話し、欧州だけでなく世界経済に深刻な打撃を与える可能性があると指摘した。