視神経:再生成功、マウスで日米チーム 緑内障治療に期待

2010年5月2日 2時30分 更新:5月2日 10時31分

 視神経を再生させる仕組みを突き止めるとともに、傷付いた視神経を再生させることに、東京都神経科学総合研究所など日米の共同研究チームがマウスの実験で成功した。日本で最大の失明原因である緑内障など視神経の傷みが原因で視覚障害を起こす病気は多く、チームは「新たな治療・予防法の開発につながる」と期待する。米科学アカデミー紀要に発表した。

 視神経は、網膜で受け取った視覚情報を、眼球から脳に伝える働きをしている。ヒトの場合、網膜表面に並んだ細胞体から長さ約7センチの視神経が約100万本、脳に向かってコード状に伸びている。

 同研究所分子神経生物学研究部門の行方和彦研究員(分子生物学)と原田高幸部門長(眼科学)らは、神経細胞でしか働かないDock3(ドックスリー)というたんぱく質に着目。培養中のマウスの神経細胞に、このたんぱく質を作る遺伝子を導入すると、手のひら状の視神経の先端が活発に動き、伸びることを確認した。次に、このたんぱく質を作る遺伝子が、野生型マウスの約5倍強く働く遺伝子改変マウスを作成。眼球近くで視神経を傷付けたところ、野生型の視神経はほとんど再生しなかったのに対し、改変マウスでは大幅に再生した。

 Dock3は、視神経の先端で細胞の骨格を作る仕組みに刺激を与え、再生を促すとみられる。同様のたんぱく質を作る遺伝子はヒトにもあり、原田さんは「視神経は一度傷付くと治療できないのが現状だが、傷んでも(根元部分の)眼球内の細胞体は一定期間、正常のまま保たれる。この間にDock3による遺伝子治療などで傷付いた部分を再生できれば、視覚機能を回復させることが可能だ」と話す。【須田桃子】

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