エミッタフォロア回路の交流増幅度

信号の増幅はしませんが,入力インピーダンスを高く,出力インピーダンスを低く見せることができるエミッタフォロア(コレクタ接地)回路の交流増幅度について考えてみましょう.

   
            図1 エミッタフォロア回路



 図1のように,ベースに入力信号を加えエミッタから出力をとると,信号の増幅はせずほぼそのまま出力しますが,入力インピーダンスを出力につながれた負荷の hfe 倍に大きく,出力インピーダンスを入力側につながれた抵抗の hfe 分の一に小さく見せることができる能力を持つエミッタフォロア回路になります. このような回路のことをバッファー回路と呼んだりもします.

 ふつうエミッタフォロア回路ではコレクタに抵抗は接続せず,そのまま電源に直結されます.別にコレクタに抵抗が入っているからといってエミッタフォロアとして働かないこともありませんが,コレクタでの電圧降下によって出力信号の振幅が制限されたりとあまりメリットが無いので,コレクタには抵抗は入れません.




 今回はこのエミッタフォロアの交流増幅度について,本当に増幅せず入力信号をそのまま出力するのかみてみましょう.

 早速,図1の回路に図2の簡易T型等価回路を適用してみましょう.

        
               図2 トランジスタの簡易T型等価回路

 等価回路を適用すると,



 また,交流的に見るとC1とC2は一般的にショートと同じような大きさのコンデンサで,直流電源は無いことと同じですから,




 最後に見やすいようにひっくり返してできあがり↓



               図3 エミッタフォロアの交流等価回路





 図3の等価回路から,電圧増幅度G= vo / vi を計算してみましょう.

 抵抗 re と RE を流れる電流は,ib と hfe・ib の和 = (1 + hfe )・ib となりますから,キルヒホッフの法則より入力 vi は,

 

 また,出力 vo は,

 

 この2式から,ベース電流を消去すると,

 

 したがって,エミッタフォロアの電圧増幅度 G= vo / vi は,

 

となりました.




 さて,この電圧増幅度Gの式を,hfeが大きいという条件の下に近似してみましょう.

 電圧増幅度Gの式の分母の



について,rb はだいたい,



程度の大きさです.一方,直流バイアス用のエミッタ抵抗 RE は,多くの場合1〜数kΩ程度です.それに更に(1+hfe)倍されるので,結局,



となり,ベース広がり抵抗 rb は無視できるようになるので,電圧増幅度G は,



と近似できました.

 さらに,エミッタ等価抵抗 re は室温で,



として与えられます.ここで多くの場合エミッタ電流は1〜数mA 程度でありますから,だいたいエミッタ等価抵抗 re は数Ω〜26Ω程度になります.したがって,



となりますからre が無視できるようになり,最終的に電圧増幅度G は,




にまで近似できます

 このように,エミッタフォロアは,信号を増幅せずにそのまま出すことが確認できました.