アウトレイジ
テーマ:映画北野武監督の最新作である。
今回は、原点回帰のバイオレンス・アクション映画ということになる。
まあ、いってみれば和製フィルム・ノワールなのである。
R-15指定。暴力や残虐なシーンも数多く出てくる。私個人的には、苦手な映画ということになる。
しかし、一本の映画としては、やはり巧い映画といえよう。プレスシートなどを読むと、監督は、現場でどんどんアイデアがひらめき演出の変更があったというが、出来上がった作品は、初めから終着点が分かって撮影されたようにも見える――。
映画が始まると黒いスーツを着た男が立っている。夏なのであろう。蝉の声が聞こえる。キャメラは、左へ移動してゆく――。また、男が立っている。そして何人も、何人も、横に並ぶように黒い服の男たちが立っている。彼らの後ろには、黒い高級車の屋根が見えている。さらにキャメラは移動している。なかに、杉本哲太、ビートたけしも立っていた。ここは駐車場なのだ。そして彼らは極道だということが分かる。これが出だしです。映画的期待感が高まる滑り出しである。
座敷で食事をしている人々。かいがいしく酒をついで回るジャージ姿の若者たち。書生なのだろう。画面の中央で、箸を使っているのが、國村準。彼の表情はどことなくふざけた感じがする。つまりどこか緊張感のない男のように見える。その國村がニヤリと笑う。國村準は山王会池元組組長の池元である。
場面は、関東一円を取り仕切る巨大暴力団組織「山王会」の総会であった。
再び駐車場。ビートたけしの山王会大友組組長・大友と杉本哲太の山王会池元組若頭・小沢が立ったままである。彼らの背広の胸元には、バッジがついてる。
左右に幹部が並ぶ中央(いわゆるお誕生日席)で、山王会本家会長・関内(北村総一朗)がお茶を飲んでいる。
「そいじゃ」と席を立つ北村。「おつかれさまです!」
北村は廊下で三浦友和の若頭・加藤の頭をペタリと殴る。
三浦友和は國村準にいう。「おい、池元。お前、最近、村瀬の親父とつるんでるらしいじゃないか」
「兄弟の杯を交わしてます」。
門から出てゆく何台もの高級車。
黒い背広の男たちが建物からたくさん出てくる。
門から出てゆく車の群れに並んで頭を下げてる男たち。
國村準が映る。「分かりました。会長によろしく」。
三浦友和はいう。「誤解されるようなことするなよ。兄弟は大事だけど、親子ってのはもっと大事だからよ」。
「ヘッ」といって、笑う國村。
國村が駐車場へ出るとたけし、杉本がいる。
「ちょっと面倒くせえことになっちゃって。会長が怒ってた」。たけしに「おめえにやってもらいたいことがある。車の中で話そう」。
大きな屋敷である。広大な庭が見えている。北村に続いて、三浦が続いて歩く――。
北村である。「池元は帰ったのか。まさかシャブなんかを流してるんじゃねえかと。お前たち分かってるのか、加藤!」。
左右が林になっている一本道。そこを6台の黒い車が続いて通ってゆく――スタッフの名前が出だす。
その道をあとから2台の車が通り、その車内である。國村がたけしに話している。
「会長に悪いことをしている。(兄弟分の!)村瀬のところに銃でも撃ち込むか。ちょっとだけ揉めてるところを見せりゃ」。
車がキャメラの下を通り、その車の上を映し、一瞬止まり、タイトルが出る――。
――という出だしである。
これ以上は、あまり書かない方がいいだろう。出だしのわくわく感である。
映画は、暴力団内の裏切り、裏切られの内部抗争――下剋上映画である。
親分・國村準の命に従って、ビートたけしは、暴力的な解決を続けてゆく――。
例によって、ビートたけしの極道演技は、かなり怖い。
喜劇人の目は怖いという説がある。
伊東四朗、渥美清、由利徹、上岡龍太郎、笑福亭仁鶴、笑福亭鶴瓶、桂枝雀・・・一流のコメディアンというのは、かなり怖い目である。たけしも例外ではない。
たけし演じる大友は、いわば救いようのない身勝手な極道なのだが、あまりにも國村の親分が優柔不断の為に右往左往させられる。そのいかにも中間管理職としての、苦労がポーカーフェースな演技だけに“困り”のおかしさがこみ上げてもくる――。
國村と兄弟分の杯を交わしている村瀬組長の村瀬(石橋蓮司)は、たけしから成敗されるのだが、理解のできぬ無理難題から痛い目にあわされるシーンがコミカルである。
また、コメディ・リリーフ的に出てきて、たけし組にカモにされるグバナン大使館・館員がおかしい。
この作品はバイオレンス映画なのだが、シュール・コメディでもあるのだ。
たけしは、バスター・キートンばりに笑わずに映画で笑わせる。
指が飛んで、それがラーメンの中に入り、そのまま客に出される、といったエピソードは、たけし的なブラック・ジョークである。
また、出演者がお互いに怒号を発するが、その語尾に必ず、「バカヤロウ!」とつくのは、たけしのお笑いに馴染んでる人々には、ご存知の彼の口癖である。
それを日本映画界で活躍する役者たちがいうオカシサ。
映画の場面、あるいはエピソードが一段落つくと、画面が暗転となる。この映画的な映像展開は、真面目な場面のときには、ちょっとサイレント映画的な語り口となっているのだが、逆にコミカルな場面では、コントのオチ的な効用を見せる。これは、映画の世界とお笑いの世界の両方で活躍する北野監督ならではの演出なのだろう。
この映画の大ラスのオチも上々である。
天の目から見れば、大悪は崩壊するということなんだと思う。しかし、小悪は生き続ける。あるいは本当に悪い奴は、従順なふりして待ちの姿勢を続けて、最後にはがっぽりということなのか・・・・。
全体として、ヤクザ否定にもつながっていく映画である。
「アウトレイジ」は、やはり巧い映画ですねえ。
しかし、この世代の監督って、やっぱりサム・ペキンパーの影響っていうのは大きいのだろうか。
6月12日(土)公開。
4月30日、GAGA試写室にて初見。