きょうの社説 2010年6月30日

◎梅雨本番へ 「ゲリラ豪雨」に備えよう
 梅雨本番を迎え、集中豪雨が九州地方を中心に大きな被害をもたらした。北陸では今の ところ目立った被害は出ていないが、2008年7月、金沢市湯涌地区で1時間に138ミリの雨量を記録し、55年ぶりに浅野川がはんらんした記憶が生々しい。同年8月の旧盆時期には、富山市中心部が冠水し、富山県内で住宅約200棟が浸水する被害もあった。

 地球温暖化の影響とされる「ゲリラ豪雨」は被害予測が極めて難しく、これまでの常識 が通用しない。自治体は避難勧告のタイミングが遅れぬよう訓練を重ね、住民の側もいつも以上に気象情報に目を配り、ゲリラ豪雨への備えを万全にしておきたい。

 地滑りやがけ崩れなど土砂災害に巻き込まれる危険性がある幼児、高齢者、障害者の要 援護者関連施設が石川県内には84施設、富山県内には67施設ある。いずれも災害時の避難などには支援が必要なだけに、各自治体は、綿密な対策を講じてほしい。

 災害対策は住民の自己責任に負う部分も大きい。県のホームページで、各地の雨量、主 要河川の水位が確認でき、河川ごとのハザードマップ(浸水想定区域図)も閲覧可能である。これを見れば、居住地がどの程度危険なのかがよく分かる。特に梅雨時期は自宅近くの河川の水位や雨量の変化を常に把握しておくことが求められる。

 このほか、排水ポンプ場の点検・整備、雨水ますや排水溝の掃除、土嚢(どのう)袋の 準備、避難路や避難場所の確認などを今のうちに済ませておく必要もある。

 コンクリート部分が多い都市部では、排水能力を超える雨が降ると、あっという間に水 没地域が広がる。地下道や地下室は突然水が流れ込む危険があり、道路や鉄道の下をくぐるように通る地点(アンダー部)なども注意が必要だ。昨年は小松市や加賀市、一昨年は小矢部市で車が水没した事例があり、栃木県では女性ドライバーが水死する事故も起きている。

 石川県は県内101カ所を「道路冠水想定個所マップ」にまとめ、ホームページで公開 している。こちらも自宅近くの危険な場所を事前に知っておくことが望ましい。

◎次世代ファンド 着実に成果積み上げたい
 1日に創設される「いしかわ次世代産業創造ファンド」は、県と県内7金融機関が総額 130億円を出資し、年間1億円余の運用益を活用して産業育成を目指すプロジェクトとなる。地域独自の産業創出ファンドとしては全国最大規模という触れ込みだが、大事なのは、成果を着実に積み上げていくことである。

 県は3月に「産業革新戦略2010」を策定し、基本戦略5本柱の一つに「次世代産業 の創造」を掲げた。それに沿って環境・健康分野などの支援策を想定しているが、基金を生かすには、産業化へ向け、より具体的な道筋を描く必要がある。政府が発表した新成長戦略を見据え、国と方向性が重なる分野については相乗効果を引き出す視点も重要である。

 次世代産業創造ファンドは、県が30億円、金融機関が総額100億円を出資し、基金 の運用期間は5年間となる。県はすでに「いしかわ産業化資源活用推進ファンド」で企業の活動を後押ししているが、新設ファンドは産業創出という、より大きな視点で支援する。ファンドに合わせ、県は産学官の代表による次世代産業創造会議や、全国の有識者を交えた専門委員会も設置する予定である。

 産業革新戦略では「健康創造」「環境価値創造」の2分野で、医療機器・診断技術や機 能性食品、炭素繊維製品の開発などが盛り込まれた。それらを太い幹にし、石川の代表的な産業に成長させる基盤は産学官のネットワークである。石川の強みは高等教育機関の集積であり、産学官の推進体制を再構築するからには、これまでの連携が十分だったのか検証し、他の地域以上に強固な関係をつくり上げてほしい。

 既存産業の育成、支援にとどまらず、地域経済を牽引する新たな産業を育てることは、 自治体に課せられた大きな役割である。雇用の拡大、さらには自前の財源を確保するという自治体経営の面からも、その重要度は増している。産業のすそ野は県を超えた広がりを持っており、石川の産業づくりに生かせるなら、隣県との連携もさらに強化したい。