ふん尿処分進まず 清浄化遅れ懸念

(2010年6月27日付)

 口蹄疫の感染・感染疑いが集中した川南町や周辺自治体の農場で、今も家畜のふん尿や堆肥(たいひ)が大量に残されている。ワクチン接種区域の制限解除には、ふん尿など汚染物品の処分が必要だが、国と県の指示で家畜の埋却を優先させてきたためだ。関係者は「清浄化に影響を与えなければいいが」と不安を募らせている。

 家畜伝染病予防法は、感染疑いが見つかった農場のふん尿や堆肥について、殺処分された家畜とともに埋却や焼却するか、消毒することを義務付けている。感染疑いが散発だったえびの市などは家畜と一緒に埋却処理した。

 農水省によると、川南町を中心とするワクチン接種地域での移動制限解除には、ワクチン接種家畜の殺処分・埋却や区域内農場の一斉消毒のほか、すべての畜舎の堆肥など汚染物品の処分が条件となっており、クリアされれば7月16日にも解除する方針だ。

 197例の感染疑いを確認した川南町では、20日までに牛や豚約14万5千頭の殺処分と埋却を終えたが、ふん尿の埋却まで完了したのは4月21日の同町第一例から数十件。8割以上の農場は、ふん尿に消石灰をまいた後にシートで覆った状態。町農林水産課は「(農家には)絶対に移動しないよう伝えている」という。

 西都市や高鍋町でも、ほとんどの農場は堆肥に消石灰をまき、シートで飛散を防いでいる状態という。

 川南町では感染疑いの家畜14万5千頭の埋却に約30万平方メートルの土地を要した。ワクチン接種分の家畜約1万3千頭分のふん尿も未処理で、同課は「(ふん尿は)調査しているが、相当な量。埋める土地はない」と頭を抱える。

 同省によると、農場に残るふん尿については、埋却だけでなく発酵による高温での消毒などの方法を検討しており、ワクチン接種分も同様の処理が必要という。「消毒に必要な期間も含め、近々方針を示したい」としている。

【写真】消石灰をまきシートで覆ったまま取り残されている家畜のふん尿。川南町の大半の農家が未処理(農家提供)