葬儀場の近くに住んでいる人が、出棺の様子などがはっきり見えて穏やかな気持ちで生活できないと訴えてフェンスを高くするよう求めていた裁判で、最高裁判所は「我慢の限度を超えているとはいえない」として、フェンスを高くするよう命じた1審と2審とは逆に住民の訴えを退けました。
この裁判は、京都府宇治市に住む男性が、5年前に自宅の向かいに葬儀場ができて2階の部屋から棺が運び込まれる様子や遺族や、参列者の表情がはっきり見えるようになり、穏やかな気持ちで生活する権利が侵害されたと主張して、葬儀会社にフェンスを高くするよう求めていたものです。1審と2審は「我慢の限度を超えている」としてフェンスを1.2メートル高くするとともに慰謝料として20万円を支払うよう葬儀会社に命じていました。判決で最高裁判所第3小法廷の堀籠幸男裁判長は「葬儀場と住宅の間は15メートル離れているうえ、葬儀の様子が見えるのは2階に限られており、住民が強いストレスを感じているとしても一般的に我慢の限度を超えているとはいえない」と判断して、2審の判決を取り消し、住民側の逆転敗訴が確定しました。葬儀場は法律上、事務所に準ずるものと位置づけられ、都道府県知事の許可が必要な火葬場や墓地より規制が緩やかで、建設をめぐって周辺の住民とトラブルになるケースが各地で起きています。