2010年06月28日

BL図書は有害図書指定よりワイセツ罪を恐れるべき

 東京都青少年健全育成審議会が6月14日に、不健全図書指定が適当との結論を出したBL図書『ラブプレイ1 ミミ☆モエ』(2010、オークラ出版)を入手した。
 前回、東京都でBL図書が不健全指定を受けたのは2008年の『恋JUNE vol.6』(2008、マガジン・マガジン)まで遡る。この指定が、4月の大阪府による大量指定に連動したものか否かは不明だが、少なくとも取り締まる側がBLにも目をつけ始めていることは間違いないだろう。
 
 さて、今回指定された『ラブプレイ1 ミミ☆モエ』は、不健全図書指定を批判するのは、かなり難しい内容だ。
 なぜなら、性器の「消し」が行われていないからだ。

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(※筆者がワイセツ罪でパクられるとイヤなんで念のため、画像を拡大できないようにしておきました。買って読んで下さい)


 刑法175条で定められたワイセツ罪をめぐっては、様々議論のあるところだが、現状、日本国内では性器を修正なしに見せることは、ワイセツとされる可能性が高い。
 マンガがワイセツとされた例として名高いのは「松文館裁判」だが、その一審判決に次のような記載がある。

 本件漫画本の性的刺激の強さを示すものといえるのである。同また、本件漫画本には、一応、性器部分に網掛けしたり、白抜きにしたりすることでその部分の描写を隠すいわゆる「消し」と呼ばれる修正が施されている。すなわち、巻頭のカラー部分には、自抜きによる修正が、白黒の部分にも、出版業界でいう40パーセントの網掛けによる修正がそれぞれ施されている。しかし、白抜きによる修正は、その程度が弱いため、当該部分に描かれた性器の形状をおおむね把握することができ私また、網掛けによる修正も性器の中心部のごく限られた範囲に施されているのみで、しかも、網掛けが非常に薄く、ほとんど透けて見えるため、.当該部分に描かれた性器の形状がほぼ完全に把握できるようになっている。そのため、本件漫画本では、これらの修正を施したことによる性的刺激の緩和はほとんど認められないのである。


http://picnic.to/~ami/news/etc/040122hanketsu.txt

 つまり裁判所は、出版社が修正を薄くしたことにより性的刺激を強めたと指摘したのだ。これが、無修正ならば言わずもがなである。画像で示したものは、いずれも性的刺激を緩和するどころか、意図的に刺激を強くしようと試みたと受け取られかねない。
 
 有害図書指定なら、販路が狭められるだけなのだがワイセツ罪は警察の扱う案件。もし、ワイセツ容疑をかけられたら、どのような事態になるかは、長岡義幸さんの著書『「わいせつコミック」裁判』(2004、道出版)に記されている通りである。

 性器の「修正」が施されてないBL図書は、これが例外ではない。4月に大阪府が指定したものにも、極めて「修正」が薄いものがあった。すべてに目を通しているわけではないが、「修正」が極端に薄いものや、そもそも「修正」していないものは、ちらほらと見受けられる。
 
 こうしたものを「表現の自由」の錦の御旗を掲げて守ることは不可能である。むしろ、自爆しながら周囲に爆弾をバラまいているに等しい行為である。なにより、出版社の側はワイセツ罪でアゲられる危険性を考えたことはないのだろうか?

 これまで、BL図書ではなぜか18禁マークをつける自主規制が行われてこなかった。だが、今後はBL図書であっても18禁、区分陳列を検討する必要があるかも知れない。「女性向けだから…」を自主規制の範疇から外れる理由とすることはできないのだ。

 もっとも、マークがついたからといって無修正は許されないが。

 結論。今回の不健全図書指定を批判するのは、結構危ない橋を渡ることになりそうなので、熟慮の上でどうぞ。