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激突:参院選2010 マニフェストの現場から/2 医療再生 /栃木

 ◆医療再生---下都賀総合病院

 ◇交付金凍結、経営綱渡り 医師不足、新築移転問題で苦悩

 「切れない鎖で常に病院につながれてる、犬のような気分」。栃木市にあるJA栃木厚生連下都賀総合病院の男性内科医(47)は勤務の過酷さをこう表現する。当直勤務は多い時で月5回。次々救急搬送される患者の処置中、別の患者に「早く診てくれ」と救急外来のドアをたたかれることも珍しくない。非番でも電話で治療方針を指示する「オンコール」待機当番も月7日間ほど担当し、風呂の中にも携帯電話を持ち込み、気が抜けない。

 休日・夜間も入院が必要な患者を受け入れる「2次救急」病院だが、00年度時点で56人いた医師は現在34人まで減少。精神科の入院、分娩(ぶんべん)、人工透析などができなくなり、患者数も年間約43万人(00年度)から約20万人(09年度)に。経営状況、勤務環境が共に悪化する悪循環に陥った。

 今年度の診療報酬改定の効果で、同病院は今年度入院患者分で約2%の増収と試算する。だが、昨年度の決算最終損益は3億3000万円赤字の見通しだ。小林亙事務長は「勤務環境を改善したいのは山々だが、それ以上に経営が苦しい」と打ち明ける。

   ◆  ◆

 老朽化問題も深刻だ。建物は築40年以上たち、耐震基準を満たしているかどうかも不明。病院が当初計画で見込んだ移転新築費は約113億円。債務超過に陥り、新規借り入れができないJA厚生連に代わり、県は自民党政権時代に09年度補正予算で打ち出した地域医療再生交付金100億円を獲得し、約7割を移転費用に充てようと準備を進めた。しかし、政権交代後に交付金が一部凍結され獲得できたのは25億円。移転費用に使えるのは数億円の見込みだ。

 鳩山由紀夫前首相は施設整備より医師確保などに「財源集中させる」などと凍結理由を説明した。だが、施設整備と医師確保は不可分に結びついているのが実態だ。同病院に医師の多くを派遣する千葉大も医師不足問題に直面しており、施設拡充を医師派遣の条件に挙げているからだ。小林事務長は「医師が設備の整った病院への派遣を希望する気持ちは当然と思う」と話す。

 同病院は、県内5カ所の、高度な医療技術を提供する「3次救急」の救命救急センターを備えた自治医大(下野市)、独協医大(壬生町)の近隣にあり、2病院への患者殺到を防ぎ、重症患者を受け入れられる状態にする「防波堤」の役目も担う。栃木市などが移転方法の検討を始めたが、地域医療の根幹を揺るがしかねない綱渡りの状況が続いている。【泉谷由梨子】=つづく

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 ■ことば

 ◇地域医療再生

 民主党はこれまでの社会保障費削減方針を撤廃すると掲げている。昨夏の同党の衆院選マニフェストでは、医師数増員など「医療崩壊阻止」に9000億円程度を充てるとした。診療報酬は今年度から10年ぶりに引き上げられ、特に医師不足が深刻な救急、産科、小児科、外科へ重点配分した。その一方で、病院施設整備に充てることができる自民党政権時代の国の「地域医療再生基金」の一部を執行停止にした。

毎日新聞 2010年6月29日 地方版

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