ハローワークの玄関前で許可を得て求職者20人の声を集めた。ある男性にどんな仕事を探しにきたのか尋ねると「私は仕事探しではなく人探しに来た」と苦笑いされた。製造業の人事担当役員だった。「求職者は多いが、採用したいと思う人がいない」と男性は嘆いた▲「県内の8~9割は中小企業。不況下で人を育てる余裕はなく即戦力がほしい。『私は○○ができる』という人ならぜひ採用だが『何でもやります。採ってください』という人はいらない」。冷淡だが説得力があった▲終身雇用が崩れ、常に自己を磨く努力をし「自分」を「商品」として売り込む時代になった。でも人間は商品じゃない。過度に努力、競争が求められる社会に私は暮らしたくない。どうしたものか。【鈴木健太】
毎日新聞 2010年6月29日 地方版