2010年06月29日
PTSDで、認知症のリスク上昇。
米国の退役軍人で外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された53,155人とPTSDのない比較群127,938人を2001−2007年まで追跡したところ、認知症の発生率はPTSD群が10.6%と比較群の6.6%より2倍近く高かった。論文はArchives of General Psychiatry 2010年6月号に掲載された。
研究は米国退役軍人局の全国患者診療データベースを使って行なわれた。PTSD群と比較群を合わせた平均年齢は68.8歳、男性が96.5%を占めた。
PTSD群が比較群より認知症のリスクが高いという結果は、両者に関係する可能性のある大うつ病・たばこやアルコールなどの物質乱用・頭部外傷のある対象者48,241人を除外しても変わらなかった。また、認知症の病型別(アルツハイマー病や脳血管型など)によるリスク上昇程度に大きな違いはなかった。
著者らによると、PTSDによる認知症リスクの上昇を示した研究は、今回が初めてという。PTSDが認知症リスクを上昇させるメカニズムとして著者らは、PTSDが認知症の直接の原因になる、慢性的ストレスを通して海馬(記憶と学習を司る脳の一部)がダメージを受ける、内分泌系の変化や炎症の亢進が生ずるなどの可能性を挙げて論じている。
著者らによると、戦闘経験に起因する退役軍人のPTSDの比率は高く、イラクとアフガニスタンからの帰還兵の17%に上ると推計されている。またPTSDが長期に及ぶ場合も多く、太平洋戦争と朝鮮戦争に参加した退役軍人では、戦闘から45年後でもPTSDの比率は12%に上るという。
⇒多数のPTSD症例と比較群を追跡した大規模な研究。ただし女性はほとんど含まれておらず、また戦闘経験以外の原因でPTSDになった人も含まれていない。これらの集団も含めて、今後さらに追試が必要だろう。
PTSDで苦しむ人が、さらに認知症でも苦しむ可能性があるというのは、本人にとっても家族にとってもつらい話だ。また、PTSDに苦しむ米国退役軍人の背後には、負傷や死亡した敵国の軍人や民間人が存在する。戦争の傷跡の大きさをあらためて感じるデータだ。
論文要旨
研究は米国退役軍人局の全国患者診療データベースを使って行なわれた。PTSD群と比較群を合わせた平均年齢は68.8歳、男性が96.5%を占めた。
PTSD群が比較群より認知症のリスクが高いという結果は、両者に関係する可能性のある大うつ病・たばこやアルコールなどの物質乱用・頭部外傷のある対象者48,241人を除外しても変わらなかった。また、認知症の病型別(アルツハイマー病や脳血管型など)によるリスク上昇程度に大きな違いはなかった。
著者らによると、PTSDによる認知症リスクの上昇を示した研究は、今回が初めてという。PTSDが認知症リスクを上昇させるメカニズムとして著者らは、PTSDが認知症の直接の原因になる、慢性的ストレスを通して海馬(記憶と学習を司る脳の一部)がダメージを受ける、内分泌系の変化や炎症の亢進が生ずるなどの可能性を挙げて論じている。
著者らによると、戦闘経験に起因する退役軍人のPTSDの比率は高く、イラクとアフガニスタンからの帰還兵の17%に上ると推計されている。またPTSDが長期に及ぶ場合も多く、太平洋戦争と朝鮮戦争に参加した退役軍人では、戦闘から45年後でもPTSDの比率は12%に上るという。
⇒多数のPTSD症例と比較群を追跡した大規模な研究。ただし女性はほとんど含まれておらず、また戦闘経験以外の原因でPTSDになった人も含まれていない。これらの集団も含めて、今後さらに追試が必要だろう。
PTSDで苦しむ人が、さらに認知症でも苦しむ可能性があるというのは、本人にとっても家族にとってもつらい話だ。また、PTSDに苦しむ米国退役軍人の背後には、負傷や死亡した敵国の軍人や民間人が存在する。戦争の傷跡の大きさをあらためて感じるデータだ。
論文要旨