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【社会】

寮解体費「隠し」5000万円計上 建て替え問題の愛知芸大

2010年6月16日 朝刊

本年度中に取り壊される予定の愛知県立芸術大の学生寮=愛知県長久手町で

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 愛知県立芸術大(愛知県長久手町)の建て替えをめぐり、同県が音楽学部棟建て替えの実施設計費として本年度予算に計上した約1億1100万円に、同大の学長公舎と学生寮の解体費用約5000万円が含まれていたことが分かった。予算書に明記せず、県議会でも説明していない。キャンパスは、著名な建築家・吉村順三氏(1908〜97年)の設計。解体の是非が議論となる中での不透明な手法に、識者らから疑問の声が上がっている。

 本年度予算で、県は「芸術大学音楽学部校舎整備費 実施設計」として、1億1113万8000円を計上。予算の説明書では「芸術大学音楽学部校舎の整備を推進します」と題して、同額を示した上で「大学間競争に打ち勝ち、魅力あふれる大学づくりを進めるため、音楽学部校舎の実施設計を行い、整備に向けた取り組みを推進します」と記していた。

 説明書の「整備の概要」でも、対象施設を「音楽学部校舎」と明記。場所や規模を図面付きで示している。

 ところが、本紙が入手した予算の内訳によると、実際に実施設計(地質調査や法令に基づく許可申請を含む)の予算に計上されているのは約6200万円で、残る約4900万円は「既設建物取り壊し」として、学長公舎と学生寮の解体費用に充てられていた。

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 このうち学長公舎は音楽学部棟の建設予定地にあるが、学生寮は離れた場所にあり、新棟建設とは全く関係ない施設。県は解体費が含まれることを議会側に説明していない。

 実施設計費に別の建物の解体費を入れたことについて、県学事振興課の丹羽信昭課長補佐は「学生寮は解体後に新音楽学部棟工事の際に資材置き場にする予定なので、音楽学部棟整備費(実施設計)に入れた。議会に説明していないが、隠そうとしたわけではない。より分かりやすく書けば良かったと反省している」と話している。

 ■鳥取県知事時代に予算の透明化に取り組んだ片山善博慶応大教授の話 意図的なごまかしだと言える。透明度が低い自治体の生活習慣病のようなものだ。予算は明朗であることが原則。県側が説明していないのは議会を欺く行為で、議会がなめられているということだ。知事が知っていたなら非常に姑息(こそく)だし、知らないうちにそうなっていたとしたら、私が知事なら担当者はクビにする。

 【愛知県立芸術大のキャンパス】 1966年開学。東京芸術大美術学部建築科教室を挙げて構想を練り、吉村順三、奥村昭雄両氏中心に設計した。中央に南北に講義棟を配置。建物とその配置が評価され、日本建築家協会のJIA賞や、国際団体DOCOMOMO日本支部の近代建築「125選」に選ばれた。愛知芸大は2007年に法人化したが、県大学改革基本計画で、建物は「改修完了後」に法人に引き渡されることになっている。

 

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