中国はアメリカに対してはふだんは友好的な姿勢をみせています。
アメリカ側も表面では中国との協力関係の重要性を強調します。
とくにブッシュ政権自体は中国を正面から糾弾することを避ける傾向があります。
そのへんの表面の政治景観から日本の一部などでは「アメリカは日本を捨てて、中国に接近している」という「観測」が語られたりします。
しかし現実には米中両国間には政治的な価値観の対立、軍事面での競合などからの基本的なミゾが存在します。その面では米中両国の間には衝突や摩擦はごく普通という領域があるのです。この現実を認識しておくことは欠かせません。
そうした米中両国間の厳しい現実をときおり映し出すのが中国のアメリカに対するスパイ行為の表面化です。この2月11日にも米国の司法当局は中国のスパイ事件2件を明らかにしました。
その2件を伝えた産経新聞2月13日朝刊の記事は以下のとおりです。
FBI、中国スパイ2件摘発 米で軍事情報盗む
米国の軍事機密を狙った中国のスパイ活動は、米側の監視強化のなかでも新たな事件が後を絶たない「モグラたたき」の状態となっている。
司法省当局者は、「外国スパイの深刻な脅威は冷戦後も去っていない」として、懸念を強めている。
宇宙航空技術を盗んでいたのは、カリフォルニア州ロサンゼルス在住のチュン・トンファン容疑者(72)。同容疑者は、勤務していた米国の技術会社がボーイング社に合併され、嘱託期間を含めて2006年まで同社の宇宙航空部門に勤めた。
司法省によると、チュン容疑者は、B1爆撃機、C17輸送機など軍用機に関するマニュアルや技術情報のほか、デルタ4ロケットなど宇宙航空技術の情報を中国の宇宙航空部門などに渡していた疑い。中国側からの接触は、米中国交樹立直後の1979年ごろから始まっていた。
デルタ4は米国が保有するロケットでは搭載能力が最大。スペースシャトルについては、香港の中国系紙「文匯報」が04年9月、中国が2020年をメドに中国版スペースシャトルを開発すると伝えていた。
もう一つの事件は、国防総省の兵装システム分析官、グレッグ・バーガーセン容疑者(51)が、ルイジアナ州ニューオーリンズ在住の中国系ビジネスマン、クオ・タイシェン容疑者(58)に買収され、台湾に供与される米国製兵器の情報を渡していた疑い。
この事件は、非中国系の米国人現職官僚が買収されて中国に情報を流しためずらしいケース。クオ容疑者と中国当局の連絡役を務めた中国国籍のカン・ユイシン容疑者(33)も逮捕された。FBIは、中国側で広東省方面を拠点とした情報機関員の存在を把握している。
さてこうした具体的な事件の背景としては、中国の対米諜報活動一般に対して、アメリカ議会で1月末に開かれた公聴会でも、警告が発せられていました。産経新聞2月4日朝刊の記事からです。
「中国のスパイ活動、最も攻撃的」米下院司法委公聴会
【ワシントン=古森義久】米国下院司法委員会の小委員会が開いた米国に対するスパイ活動に関する公聴会で、米中関係研究の議会諮問委員会代表が、中国による米国軍事関連技術を盗むスパイ活動が米国の安全保障技術への主要な脅威であり、その活動は各国中でも最も攻勢的だと証言した。
同司法委員会の「犯罪・テロ・国土安全保障に関する小委員会」は1月29日、「連邦スパイ法の施行」という題の公聴会を開き、ブッシュ政権の高官や民間専門家の証言を聞いた。米国に対するスパイ活動一般とそれに対する防止策についての各証言の中で議会政策諮問機関の「米中経済安保調査委員会」のラリー・ウォーツェル委員長は、中国の対米スパイ活動を米国に対する各国の同活動でも「最も攻勢的で米国軍事関連技術への主要な脅威」として位置づけ、その実態に関して証言した。
同委員長は自らが米陸軍の中国専門家として長年、中国の諜報(ちょうほう)・スパイ活動を専門に研究してきた経歴を基に、(1)中国は1986年3月に「863計画」と呼ぶ高度技術の総合的開発計画を決め、バイオ、宇宙、レーザー、情報、オートメーションなどの技術の外部からの取得を国家政策として決めた(2)その一環として制限された外国の技術は産業スパイなど秘密や違法の手段でも取得する方針が決められ、実行されている(3)米側は中国のその種のスパイ活動にかかわる国家機関として国家安全部、人民解放軍諜報部など少なくとも7組織を認定している-などと証言した。
ウォーツェル委員長は中国がこうして取得した高度技術が中国軍の「近代化」を推進していると強調し、最近の具体例として2006年にカリフォルニア州で有罪判決を受けた中国系一家5人のケースをあげ、高度技術の訓練を受けた同5人が米側の官民の軍事関連技術を違法に取得して中国の広州の中山大学研究所を経由して中国当局に送っていた実態を明らかにした。
同委員長はこの一家が中国当局からとくに優先して取得することを指令されていた項目として(1)海上電磁傍受システム(2)宇宙発射磁気浮揚台(3)電磁砲システム(4)潜水艦魚雷(5)空母電子システム(6)水上ジェット推進(7)潜水艦推進(8)核攻撃防衛技術(9)米海軍次世代駆逐艦-などを指摘した。
同委員長は中国のこうしたスパイ活動への対策として司法、立法の両面で取り締まりを強化することを訴えた。
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上記は中国海軍の新鋭のフリゲート艦の写真です。
中国の軍拡のほんの一端ですが、この種の兵器の性能向上のためにも、中国当局はアメリカから軍事関連の情報を違法、合法を問わず、必死に収集している、というわけです。
さて中国のこうしたスパイ活動はわが日本に対してはどうなのでしょうか。
by ibm9001
山本五十六機はこう撃墜された…