琴光喜と大嶽親方は解雇か除名へ　名古屋場所は開催

臨時理事会後、記者会見する日本相撲協会の武蔵川理事長（左）。右は賭博問題特別調査委員会の伊藤滋座長

　　大相撲の賭博問題で、日本相撲協会は２８日、東京・両国国技館で臨時理事会を開き、特別調査委員会が名古屋場所の開催条件とした処分勧告を受け入れ、野球賭博に関与した大関・琴光喜関と大嶽親方（元関脇・貴闘力）に対し「解雇以上」（解雇か除名）の懲戒処分の手続きに入ることを決めた。７月４日の臨時理事会、評議員会で２人の解雇以上の処分が決まれば角界追放となる。名古屋場所は予定通り７月１１日から愛知県体育館で開催される。

　野球賭博に関与した時津風親方（元幕内・時津海）については、勧告に基づき解雇の次に重い「降格以上」で懲戒処分の手続きを始める。延期された番付発表は７月５日に行われる。

　名古屋場所を休場させる謹慎力士名も公表し、幕内は琴光喜や豊ノ島、雅山、豊響、豪栄道、隠岐の海、若荒雄の７人で、嘉風は常習性がない可能性があるため処分保留。このほか十両５人、幕下２人の各力士と阿武松部屋の床山が謹慎となる。

　謹慎力士の師匠も謹慎となり、武蔵川理事長（元横綱・三重ノ海）ら理事４人に執行部１人、このほか６人の親方が対象となった。謹慎者が名古屋入りできるかなど詳細は、７月２日の特別調査委で協議する。

　理事長代行案として、臨時理事会では村山弘義外部理事（元東京高検検事長）の名前が挙がり、特別調査委は７月２日に正式に推薦することを決定する。武蔵川理事長もこの推薦を受け入れるとしている。同理事長は賭博問題の責任で、親方らの減俸を申し出た。

　野球賭博関与者が多数出た阿武松部屋の全員を謹慎とする処分も、関与していない力士の処遇を考慮し、２日の特別調査委で再検討される。

　評議員会では特別調査委による全協会員を対象とした賭博の実態調査の書類が配布され、７月２日を期限に回収する。

　武蔵川理事長は「これだけ世間を騒がせ、ご迷惑をかけた。しっかり（勧告を）受け止めて、解決に向けて全力を尽くしたい」と話した。

　大嶽親方は２８日の理事会の前に相撲協会に退職届を提出したが、受理されなかった。特別調査委は同親方が野球賭博などで膨らんだ借金の返済に困り、大関・琴光喜関から２０００万～３０００万円を借りていた事実を把握。関係者によると、同親方は琴光喜関が仲介役に求めた勝ち金５００万円について「自分の野球賭博によるものだった」と説明していたことも分かった。

　野球賭博関与により謹慎処分を勧告された力士１４人（幕内７、十両５、幕下２）と床山は次の通り。前日に名前の挙がった幕内・嘉風関は常習性がない可能性があるため保留され、７月２日の特別調査委で再検討する。

　幕内は大関琴光喜、豊ノ島、雅山、豊響、豪栄道、隠岐の海、若荒雄。十両は千代白鵬、大道、春日錦、清瀬海、普天王。幕下は古市と光法の両力士。床山は床池。

　弟子の力士が野球賭博に関与したため、謹慎処分を求められた親方は次の通り。前日に名前の挙がった尾車親方は、弟子の嘉風が保留となったため外れた。

　武蔵川理事長（６２）＝元横綱・三重ノ海、出羽海事業部長（６１）＝元関脇・鷲羽山、陸奥生活指導部長（５１）＝元大関・霧島、九重審判部長（５５）＝元横綱・千代の富士、八角生活指導部副部長（４７）＝元横綱・北勝海、阿武松親方（４９）＝元関脇・益荒雄、佐渡ケ嶽親方（４２）＝元関脇・琴ノ若、境川親方（４７）＝元小結・両国、春日野親方（４８）＝元関脇・栃乃和歌、宮城野親方（４０）＝元十両・金親、木瀬親方（４０）＝元幕内・肥後ノ海。

　武蔵川理事長（元横綱・三重ノ海）「これだけ世間を騒がせ、ご迷惑をかけた。しっかり（勧告を）受け止めて、解決に向けて全力を尽くしたい。理事長代行は調査委員会からの推薦があれば、それを受けて決めたい。琴光喜は理事会の席でうそをついていたので、厳しい処分になる。（減俸は）協会員全員としての責任で反省もある。わたしから申し出た」

　村山弘義・外部理事「反社会的勢力との関係を遮断、絶縁し、土俵環境の浄化に向けてうみをすべて出し切る。決意をもって、相撲協会の伝統をファンの方々に理解していただきたい」

　◆日本相撲協会の処分　日本相撲協会は寄付行為施行細則で年寄、力士ら協会員に対する賞罰を規定している。処分は軽い順にけん責、給与減額、出場停止、番付降下、解雇の５種類。別の条項で解雇よりも重く退職金が支払われない除名処分があり、役員・評議員・横綱・大関の現在数の４分の３の特別議決が必要となる。