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[19851] 【習作】青魔道士 次元を渡る (FF5×リリなの)
Name: ろーらん◆75403110 E-MAIL ID:3f5fe0d3
Date: 2010/06/26 15:21
ろーらん、と申します。

リリカルなのはとのクロス作品を読み漁っていたのですが大好きなFF5とのクロスが見当たらない!ということで自分で挑戦しようと思った次第です。


注意

・FF5とリリなののクロスです。
・キャラ崩壊があります。原作を把握しきれていないので・・・
・表現のおかしいところも多々あります、ご了承ください。
・原作とは違った展開の可能性もあります。
・オリ設定があります。オリキャラは極力出さない方向です。

それでは素人作品ですがお付き合いください。



[19851] 第1話
Name: ろーらん◆75403110 E-MAIL ID:3f5fe0d3
Date: 2010/06/27 15:37
「ファリス!前に出すぎだ!マイティガードをかけるまで待てって!」

「だが、奴も動きが鈍い、あと少し・・・あと少しでっ・・・!」

角の生えた魔獣、血を滴らせる骸骨、悪魔のような青白い顔、様々な"モノ"が混じりあった異形は、その動きを少しずつ確実に鈍らせていた。

「姉さん、待って!今ケアルガを・・・ッ!・・・」

対象の傷を癒す白魔法ケアルガ、それがレナの手から放たれようとした刹那、異形の魔物-ネオエクスデス-より閃光が放たれる。

「うっ・・・クソッ!・・・」

「まだ・・・だ・・・」

「・・・回復・・・が・・・」

放たれた閃光-アルマゲスト-は両の手にしたアサシンダガーとエンハンスソードを交差して閃光の威力を和らげようとしたファリス、詠唱中であった青年とレナを無慈悲に焼き尽くした。

「皆ッ!大丈夫!?」

上空から・・・この空間に「上空」があるかはわからないが、上方から金色の塊、金色の髪をした少女が、飛竜の槍でネオエクスデスの骸骨部に一撃与えながら三人に声をかける。

「レナお姉ちゃん、今エリクサーを渡すから!」

この四人の中でケアルガやエスナ等の治癒魔法を使えるのはレナのみ。

あわてて駆け寄った金髪の少女、クルルはレナにエリクサーを飲ませようと・・・

「馬鹿!クルル後ろだっ!」

ファリスが叫ぶがもう遅い。

ネオエクスデスの放った『しんくうは』はエリクサーを飲ませようとしていたクルルに直撃、クルルは吹き飛ばされた先で倒れたまま起き上がらない。

さらにそこに残された三人の頭上からは隕石群、時空魔法『メテオ』が飛来。

青年は手にしていたイージスの盾の魔法防御の加護で耐えしのいだが、二刀流のファリス、そして一番被害の深いレナは成す術もなかった。

轟音が収まり煙が晴れる。

そこにはイージスの盾をもってしても防げない衝撃でボロボロになった青年、そして先ほどのクルル同様、まったく起き上がる気配のないレナとファリスだった。

「ここまで来て・・・終われるか・・・っ!」

青年は火傷、そして隕石の衝撃や砕け散った破片による無数の裂傷や、そのほかのいくつもの傷を堪えて、ネオエクスデスを見据え詠唱を開始する。

一人でありながら詠唱をしている、守る仲間も居ない隙だらけの青年をネオエクスデスは見逃すわけがない。

『しんくうは』、さらにはアルマゲストとは違った眩い十字の閃光『グランドクロス』が青年に襲い掛かる。

しかしいくら傷を受けても光に意識を侵食されそうになっても青年は詠唱をやめなかった。

思えばあの旅の途中で散っていった歳の離れた友人-ガラフ-もこのような気持ちだったのであろうか・・・

もはや自分はあの戦友のように気力だけで立っているのを感じた。

ガラフはあの時何を受けても倒れず、その手にしていた刀でエクスデスに立ち向かっていった。

・・・それならば自分にだって。

青年は詠唱を続ける。

身にまとったミラージュベストは分身を出さず、もはや装備というよりは体に引っかかっているというほうが正しい。

イージスの盾は変わらず形を保ってるが、手にしたばかりの時のあの輝きは感じられない。

青年を守護するものはほとんど何もない。

その状況で青年は詠唱を完成させた。

これを放てば、故郷を奪い、友人をも奪ったアイツ・・・もはや原型は留めては居ないが・・・を倒せるだろう。

そんな不思議な感覚が故郷の人々の顔、そして友人、ガラフの顔とともに青年の頭に浮かんだ。

(思えば長い旅だった・・・皆と出会って、世界を旅し、多くの力を借りて来た・・・)

(これが終わったらまた世界を巡ろう・・・ボコ、奥さんできたんだっけ・・・どうしようかな・・・)

そんな考えが青年の頭をよぎる。この召喚でケリがつくと彼は確信していた。

(まぁ一人旅も良いかもしれないな・・・その為にも今は━)

青年は閉じていた目を開けるとネオエクスデスから目を離すことなく力を解放した。

「召喚!『フェニックス』!」

『アルマゲスト』

召喚されたフェニックスは眩い閃光の中一直線にネオエクスデスへ飛翔していく。

その身に纏うは『てんせいのほのお』、すべてを焼き尽くし生命を育むオレンジ色の炎。

ネオエクスデスの異形の体は炎を受け静かに崩れ去っていく。

アルマゲストをイージスの盾の加護で防いだ少年はそれを見ると、糸の切れた人形のように倒れた。持っていたイージスの盾は限界が来たのか、割れて破片になってしまっている。

召喚されたフェニックスはレナ達3人を癒している。これで戦いは終わった━

青年が安堵した瞬間、ネオエクスデスが崩れ去った後の空間に『無』が収束し始め、周りのものを最後のあがきとでもいうのかのように吸い込み始めた。

近距離に居たレナとファリスはフェニックスが移動させていたが、気力を使い果たした青年は動けない。

そして吸い込まれるまで後1m・・・フェニックスが青年を救い出そうとしたが間に合わず。

青年とオレンジに燃える不死鳥は無に飲み込まれてしまった・・・






























「・・・っう・・・ここは」

青年がベッドの上で目を覚ます。その体には傷ひとつなく、いつも着ている冒険者姿の服で見知らぬ部屋に寝かされていた。

(どこだ・・・ここ・・・?)

警戒を解かずに回りを伺う。どうやら人は居ないようだ。

(確か俺はフェニックスと一緒に歪に飲み込まれて・・・うーん・・・)

必死に思案するが何も思い浮かばない、意識を失っているのだから当たり前ではあるが。

(ベッドに寝ていたのだから誰かが助けてくれたのか・・・?とりあえず人を探してみるか・・・)

そういって少し高めのサイズのベッドから足を出し降りようとする。

足が床に届かなかった。

「・・・え?」

(まてまてまて!おねしょは卒業したし、親父や母さんが居なくたって独りで寝れるし・・・高いところや屋根だって平気・・・じゃないけど!あの少年時代はもう終わったっていうかセピア色の思い出がこんなフルカラーなんてうわああああああ!!」

青年は自分の体の変化に気づきパニックに陥っていた。誰かが見ていたら十中八九は「・・・大丈夫?」とドン引きされながら心配されるであろう有様。心の声も途中から悲痛の叫びに変わっていた。

縮んでいた。背が。

ミニマムで縮んだサイズではなく、リアルな身長。

かくれんぼで夕方まで一人で屋根の裏に隠れていたあの懐かしい時代に。

「これじゃクルルかそれ以下くらいじゃないか・・・」

青年の頭の中には『かえるのうた』をラーニングするためにカエル状態になった自分を見て爆笑する、クルルの姿が想像できた。

これから先どうすれば良いのか、青年、バッツ・クラウザーは途方にくれていた。



青年(バッツ) Lv51
ジョブ:すっぴん
アビリティ:あおまほう、しょうかん
そうび:ブレイブブレイド
イージスのたて
ミラージュベスト
エルメスのくつ


どうしてこんな装備とアビリティになったのかは不明。
あおまほうは全て覚えてます。



[19851] 第2話
Name: ろーらん◆75403110 E-MAIL ID:3f5fe0d3
Date: 2010/06/27 15:34
"彼"は目を覚ました。

長い間眠っていたが、意識を再び得た"彼"は目の前の長い黒髪の女性に見つめられていた。

女性は"彼"に長いコードが付いている機械や時折紫色をした魔力を流しつつ"彼"を解析しているようだ。

自分の知らない未知の物質、魔力を帯びているとなればなおさらである。

しかし解析の結果は芳しくはないようだ。多量の魔力が帯びていても、ただそれだけだ。

魔力ならば今、自分の娘のクローンが探させているロストロギアの方がはるかに上だ。この物質に特別なところなど見受けられない。

「とんだ無駄だったわ・・・いきなり転移してきたから何事かと思えば・・・まぁ本人が何か情報を持っていることに期待するしかないようね・・・」

女性は解析を諦め、"彼"を放置し、部屋から出て行ってしまった。

"彼"は思考を始める。

どうして目覚めたのか?ここはどこなのか?そして・・・意識はなくとも記憶にはしっかり残っているあの青年、自分の力を一番多く貸し与えたあの明るく正義感の強い少年は━

思考を始めた"彼"のまわりには淡い青い光、そしてかすかに風が渦巻いていた。



















バッツは平静を取り戻した後、現状把握の為この施設での人の捜索を行っていた。その動きには背後からの奇襲や落とし穴を警戒した動きが見て取れた。

「これだけ広い施設なんて・・・モンスターはいないっぽいけど・・・」

長い廊下をそろそろと歩く。長い冒険者生活が周囲への警戒を当たり前のものにしていたが、モンスターも落とし穴もないこの施設は事情も知ったものから見たら少し滑稽であった。

しばらく歩くと通路が2つに分かれている。しかし眼前にある壁に隠し通路発見のアビリティが隠し通路があると告げている。

どうしようか悩んだ末、壁に手をついてバッツは隠し通路に入ろうと・・・

「そんなところで何をしているのかしら?」

(っ!?気配を感じなかった!?)

いきなり横からかけられた声。最大限警戒していたのにもかかわらず反応できなかった。

まるで一瞬でそこに移動してきたかのような。

隠し通路に入ろうとしたタイミングでいきなり声をかけてきたのだ、ここは入らないほうが懸命だろうと、バッツは壁から手を離す。

そして横を見るとそこには長い黒髪の女性が居た。

「そんなに警戒しなくても良いわ。私が貴方を保護したのだから。」

ようやく人と出会えたバッツだが、いきなりのことに警戒を解けない。なにより普通の住宅には隠し通路などない。住宅といえるのかは疑問ではあるが。

「とりあえず事情を聞かせてもらいたいわ、場所を変えましょう。ついてきて。」

とりあえず発見されたからにはここはついていくのが自然であろう。バッツは警戒を怠らず目の前の薄く笑みを浮かべた女性についていった。

誰もいなくなった隠し通路の入り口には魔力によって擬態処理が施された、監視カメラのみが残った。











5分くらい歩いた部屋の先にバッツは通された。

小さなキッチンがあり中央に簡素な椅子、そしてテーブルがある。室内は空調設備により涼しい風が吹いてきていた。奥にはまだ部屋があるのか扉がある。

そこに座ったバッツと黒髪の女性、女性は後ろの機械、バッツにとっては何なのかわからないがコーヒーメーカーから2人分のコーヒーを用意するとバッツの目の前に置いた。

「はじめに自己紹介といきましょう、私の名前はプレシア、プレシア・テスタロッサよ。この研究施設で研究をしている研究員よ。」

黒髪の女性はプレシアというらしい。そしてここは研究所、ロンカのカタパルト研究所みたいなものかとバッツは納得した。

「俺の名前はバッツ。バッツ・クラウザーといいます。・・・冒険者です。」

「そう・・・ならバッツ、なぜ私の研究所に倒れていたのかしら。ここは簡単に入れるような場所ではないのだけれど。」

プレシアが薄い笑みを浮かべ続けながら問いかけてくる。

「それはちょっとわかりません、気が付いたらここに居たもので・・・ここはいったいどのあたりですか?」

「ここは時の庭園、次元航行が可能な移動庭園よ。」

その言葉に目を丸くするバッツ。プレシアの言っていることが全然理解できなかったのだ。

バッツの世界にはこのような技術はまったくないのだから当然といえば当然だが。

「ジゲンコーコー?イドーテイエン?」

「・・・世界を旅する大きな船のようなものかしら。私はここで研究を行っているのよ。」

火力船や飛空挺のようなものだろうとバッツはイメージをつけた。

「と、なると今どのあたりなんですか?友人たちのところに戻りたいので地上に降りたいのですが。」

船ならば地上に降りてすぐ帰れるだろう。ネオエクスデスを倒したことでおそらくだがクリスタルの力も戻っているはず。船に乗っていけばすぐ、仲間達とも会えるはず・・・そうバッツは考えていたが。

「おそらくだけどすぐには帰れそうにもないわ。」

「・・・?なぜです?」

「この船は"世界"と"世界"を移動する船、貴方の世界からはおそらく離れてしまっているわ。」

バッツは目の前が真っ暗になるのを感じた。

















その後もプレシアとバッツの情報交換は続いた。プレシアはバッツの世界のことを聞きたがっていたのでバッツはエクスデスのことを秘したまま話した。

クリスタルによって支えられた世界。古代のものとなった機械文明、魔法技術。

バッツもプレシアの世界について尋ねた。高度に発達した魔法技術を持つミッドチルダそしてその世界にある管理局。このような状況でなかったら持ち前の好奇心を発揮できたのだが・・・今は元の世界に帰ることがバッツにとっては重要だ。

バッツは元の世界へ帰りたい旨を伝えたが、どうやらバッツの説明と一致するような世界はわからないらしい。

互いのコーヒーは冷め切っており、気が付けば3時間は経過していた。

「・・・先ほどの話の白魔法・・・だったかしら?治癒や強化がメインと聞いたのだけれど・・・」

「死者を蘇生する魔法とかはあるのかしら?」

目の前のプレシアの雰囲気が変化した。薄く浮かべていた笑みはなりを潜め、真剣な表情をしている。

(なんだ?雰囲気が急に・・・)

変化した雰囲気にバッツは疑問を覚える。先ほどまでの余裕のある表情とはまったく違う、むしろ余裕のないような表情。

疑問に思えど、思考しても結果は出ない、秘すべきことでもないと判断したのでバッツは答える。

「死後すぐの魂の残っている死体ならば蘇生できる魔法はあります。レイズ、アレイズというんですけど・・・」

「死後すぐではないと蘇生はできないということは死体の状態が良くても駄目なのかしら。」

やけに蘇生魔法について食いついてくるプレシアにバッツは少し不安を覚える。

(この人は一体━)

「そうですね、そこまでなると高位の幻獣でないと無理じゃないのでしょうか?」

確信は持てないがフェニックスの力ならどうだろうとバッツは思った。

「貴方の世界にはその幻獣がいるのね?」

砂漠の中にそびえ立つフェニックスの塔・・・一緒に吸い込まれたはずのあの召喚獣はどうなったのであろうか?バッツは疑問に感じたが今は返答に集中することにした。

「いまし・・・たね。今も同じところに居るのかはわかりませんが。」

「そう・・・それじゃあ最後に。"アルハザード"という言葉に聞き覚えはないかしら?」

まったく聞いたことのない言葉、しかし目の前のプレシアは先ほどからひどく真剣な表情だ。これが目の前のプレシア・テスタロッサの求めるものなのか、とバッツは推測しつつ答える。

「いえ、聞いたことがないです。」

そう答えるとプレシアは一瞬残念そうな顔をしたがすぐに最初の顔に戻った。余裕を浮かべているあの表情に。

だがどこか前とは違う、まるで探し物の在り処がわかって嬉しく思うような笑みが混じっていた。

「そう・・・ならいいわ。」

ガタン、椅子が音を立てた。プレシアが立ち上がった。

「そういえば貴方が倒れていた近くに水晶の欠片が落ちていたのだけれどもあれは貴方のかしら?今持ってくるわ。」

そういってプレシアは部屋の奥の扉から出て行ってしまった。

(水晶っていうとクリスタルの欠片か?そういえばあの決戦の時からすっぴんだったけど、ジョブは変えられるのか?アビリティはあおまほうとしょうかんになっているみたいだけど・・・)

この研究所の探索に集中していて自分自身の把握をまったくしていなかったバッツはジョブを変化しよう試みるが変化できない。

(クリスタルの加護が消えている・・・でもマスターしたジョブの特性はすっぴんに残っているのか・・・)

クリスタルの加護が消えたということは元の世界でまたクリスタルは元の戻ったのだろうか・・・そう推測しても今は知る手段がない。

(とりあえずはプレシアさんが言っていたその欠片を待つしかないな)

バッツはプレシアを待つことに決めコーヒーカップを手に取った。

話で夢中になっていてコーヒーは冷め切っていることにも気が付かずに。









プレシアは扉が閉まったあと水晶の欠片に向けて歩き出した。その表情はひどく上機嫌だ。

あのバッツとかいう少年の世界には自分の求めるアリシアの蘇生手段があるという。

(死後すぐという条件では魔法では無理であろうが幻獣なら・・・彼の世界に乗り込んでその力を借りることができれば全てがうまく良く。)

(その為には彼を使ってまずはその管理外世界を探さなくては・・・あのクローンには引き続きジュエルシードを集めさせておけばいい、未知の世界では何が起こるかわからないのだから・・・)

進展の見えなかったアリシアの蘇生にもようやく光明が見えてきた。このためだけにプレシアは生きてきたのだから。

短絡的な思考になっているにも気づかないまま、プレシアは水晶の欠片を手に取り自分を待っているであろうバッツの元へ歩を進めた。








「待たせたわね。」

プレシアが扉を開けて戻って来た。その手にはバッツにとっては見覚えのある水晶、クリスタルの欠片。

(ひとつだけか・・・何のジョブの欠片なんだ・・・?)

プレシアから欠片を受け取る。

「それじゃあ私は研究に戻るから、あまり変な所には入らないで頂戴ね。わかるようになっているからさっき教えた"念話"で警告するわ。それ以外は自由にしていいわ、部屋は最初のベッドの部屋を使って頂戴。」

「わかりました。」

先ほどの世界の情報交換の時に念話を教えてもらっていたバッツ。

比較的簡単に習得できた自分はミッドチルダの世界の魔法とも相性が良いのだろうか?と思いつつも返事をしプレシアを見送る。

(はぁ・・・なんかどっと疲れたな)

プレシアが出て行ったのを確認してからバッツは息を吐き出す。そもそも敬語など冒険している上ではほとんど使わないのだ。

仲間は王族ばかり、というか王族であったが皆そのような気遣いはむしろ嫌いみたいであった。

よってバッツはどこか怪しい雰囲気のプレシアに慣れない敬語を使用しながら会話することはとてつもなく疲れることであった。

バッツは疲労した体を引きづりベッドの部屋に戻る。

プレシアと話した部屋と同じように涼しい風が吹き出していた。これも魔法で動いているのだろうか、いつか帰るときには何か持って帰ろう、バッツはそう思った。

バッツはベッドの上に乗ると、受け取ったクリスタルを確認するため意識を集中する。

-かけらに眠る勇者の心......青魔道士-

集中が終わるとバッツの服装は冒険者の服に加え青色のマント、肩には赤い肩当の青魔道士の姿になっていた。・・・マスクはついていないが。

「青魔道士だったか・・・使い慣れているジョブでよかった・・・」

これがバーサーカーだったらと思うとびくびくしていたのだが。

「さてこれからどうしようかな・・・」

バッツはベッドに寝転び考える。自分の世界に戻るにはやはりプレシアさんの協力が必要不可欠であろう・・・なにか隠しているような気配もするんだが・・・

「皆無事なのか・・・レナとクルルは城に戻ってるとして・・・ファリスは・・・っぷ、アサシンダガー片手に持ったお姫様なんて想像できねぇや!」

仲間のことを想像すると元気が出てくる。

「ガラフを助けに行くときだって結局戻ってこれたんだ、今回だってきっとなんとかなるさ!」

そう考えバッツは気持ちを改める。前向きなところが仲間も認めるバッツの利点なのだ。

「しかしファリスのその後を想像したら腹が痛いぜ!ドレス着ながら海賊船で指揮執ってたりして」

『そんなことばかり言っているとまた怒られるよ。』

「今は大丈夫だって!世界が違うし・・・って、え?」

どこからか声が響く。この部屋には自分以外は居ないはずだ、バッツは慌てて周囲を見渡す。

しかし誰の姿も見当たらない。

「さ・・・さては・・・お前ファリスだな!おっ、俺が少し軽口言っただけで化けて出てきやがって・・・すっ!すんませんでしたーっ!」

ここまでパニックになるバッツは本当に冒険者かどうか怪しいところだ。それか何かトラウマでもあるのか、バッツは完全に取り乱していた。

『ファリスさんを勝手に殺さないでくださいよ、バッツが殺されるよ・・・というか焦りすぎ・・・』

謎の声は心底呆れたような声で言った。

「じゃ・・・じゃあお前はなんなんだよ!俺を・・・ファリス達を知っているのか!?」

『僕はその欠片に眠る意思・・・なのかな?本来、目覚めるはずはなかったんだけど・・・』

「つまり"かけらに眠る勇者の心"って・・・お前?」

『前に意識があったのははるか昔だから覚えてないけどおそらくそうだね。青魔道士だったし。』

「本当にお前クリスタルの欠片なのか?・・・なんか証明できることとかないのかよ?」

『そうだね・・・君たちに力を貸していた時意識はなかったけど記憶にはあるんだ。だから証明はできるよ。』

「たとえば?」

『バッツのブレイブブレイドの切れ味が少しだけ悪い理由、封印城クーザーで最初の石版で封印を解くときに、石版を仲間達に託して自分は武器を見に行って・・・』

「あーあーあーあーあーあーあーあーー!!!わかった!わかったから!!それ以上トラウマを掘り起こさないでくれ・・・」

ブレイブブレイドの切れ味が少し悪かった理由。それは封印城クーザーでの出来事である。

レナを魔物、メリュジーヌから助け出し石版で封印を解くとき、バッツは封じられた伝説の武器の前に立ち武器を眺めていた。

伝説の武器の中には剣や刀のほかにベルやハープがあることに珍しく思い、ほかの武器よりも長く見物していた。

石版の力が開放されたのにも気が付かずに。

事態に気が付いたクルルがバッツを止めに行こうとしたときにはもう手遅れ。

封印が解かれたのはアポロンのハープ、大地のベル、ルーンアクスであった。

これに一番伝説の武器を楽しみにしていたファリスはブチ切れ。自身のジョブをバーサーカーにチェンジ、唯一封印が解かれた武器らしい武器ルーンアクスを装備し、封印の間でのファリスとバッツの命をかけた鬼ごっこが始まったのだった。

『おわかりいただけたであろうか・・・』

「十分にな・・・」

いい感じにトラウマが刺激されたところでバッツは尋ねる。

「しかし、なんで急に目覚めたんだ?旅の途中では一度もそんなことなかったのに。」

『おそらくさっきのプレシア・・・?だっけ。その人に魔力を流されたり色々されたりしたからだと思う。確信は持てないけど。』

「色々って・・・あの人そんなことしてたのか・・・まぁ俺を不信に思ったのかもしれないけど。」

『注意はしていたほうが良いと思う、なにか目的があるみたいだ。』

「りょーかいっと・・・」

『まったく人の話はちゃんと聞いてよ・・・』

「なんか今すげぇ眠いんだ・・・また起きたら話しようぜ・・・」

最終決戦から転移、そしてプレシアとの会話、バッツの疲労は頂点であった。呼びかけても、もう反応はうつろだ。

『まぁ仕方ないか・・・おやすみバッツ。』

クリスタルの中の意思はバッツが眠りに入るのを見守っていた。



少年バッツ Lv1 HPとMPは継続
ジョブ:青魔道士
アビリティ:あおまほう、しょうかん
そうび:全て初期装備、ただし武器はなし。


この場を借りてお詫びします。
注意事項のオリキャラを極力出さないとありましたが、ごらんの有様です。申し訳ないです・・・
とりあえず自宅から東西南北に向かって土下座をしておきました。届いたでしょうか?

補足:【オリ設定】ブレイブブレイドは初めてムーアの町に行ったときに手に入れた設定です。



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