これまで、これほど重い役はやったことがなかったので精神的にしんどかったですね。あとは、撮影が過酷でした(笑)。
過酷だったシーンは本当にたくさんあって、ぼくの今までの役者生活の中で、「今日の撮影が一番過酷だった」という記録を、『龍馬伝』では更新し続けました。
以蔵が初めて人を斬(き)るシーンは、『龍馬伝』は長まわしで一気に撮影するので、死ぬんじゃないかと思うほど体力的につらかった。
撮影であれほど息切れしたことはなかったですね。
新選組に追われるシーンでは、雨上がりのぬかるんだ道を逃げ回りました。泥だらけで、殺陣(たて)をはだしでやって、冷たさで足の感覚がなくなりました。
あと、拷問のシーンは「本当に痛い!」みたいな(笑)。竹刀でたたかれるシーンは本当に竹刀が当たっているし、今はもう消えましたが、しばらく青あざが残っていましたから。
でも、以蔵に拷問する後藤象二郎役の青木(崇高)さんのほうが精神的にはつらそうでした。役者としては、拷問するほうが大変なのかもしれません。
本当の岡田以蔵さんがどのような人だったとか、多くの人が抱いている以蔵像がどうだとかは考えませんでした。ぼくなりの以蔵を作り上げて演じようと思いました。
ただ、天国で見てくださっているだろう以蔵さんに失礼のないように、妥協しないで、精いっぱい自分なりの以蔵を演じ切ろうとは強く思いました。
また、「人斬り以蔵」と呼ばれていますが、嫌なキャラクターにはしたくなかった。どこか憎めない、愛されるキャラクターにしたいと思っていました。
第2部からは、「人斬り以蔵」が誕生します。なので最初は、人斬りを繰り返すほどに何となく染みついていく雰囲気みたいなものを出せたらいいなと思っていました。
ですが、演じながら気づいたのは、逆に以蔵の変わらない部分を大切にしていったほうがいいんじゃないかと。
京都で「人斬り以蔵」になっても、土佐の純粋でピュアな青年だった以蔵を忘れてはいけない。そのほうがリアルだし、切ないはずだと演じていて気づきました。
方言でのお芝居は初めてだったので、最初はすごく不安でした。お芝居に集中しようとすると方言がおろそかになったり、方言のことばかり考えていると、お芝居に気持ちが入りにくかったりと、方言のお芝居は難しいですね。
中ぞりは、最初はちょっと違和感がありましたが、自分では「大丈夫かな」と思っていたんですけど、初めて写真(中ぞりの以蔵)がテレビ誌に掲載されたとき、友だちが大爆笑して電話してきました(笑)。「あれ、いいの?」って言うから、「おれは、いいと思ったんだけど」と。
今は総髪で、かっこいい感じにしてもらってうれしいですね。
ろう屋に入れられてボロボロですが、気に入っています。
福山さんは、よく話しかけてくれます。「休日は何をしているの?」とか、「何か趣味はあるの?」とか。この前は、良いお酒とはどんなお酒か?とか、次の日に残らないお酒とは?について話してくれました(笑)。
宮迫さんは、お笑いの世界のことをいろいろ話してくれます。ぼくはもっぱら聞いているだけですが、話がおもしろいのでついつい引き込まれますね。
とりあえず“はげちゃびん”じゃなくなった第14回(第2部)以降から選んでもらいたいですね(笑)。
ぼく的には、以蔵が追っ手に追われてボロボロになってからが好きなんです。
いくら拷問されても口を割らなくて、後藤象二郎のことをにらんでいる顔とか。それこそ、死ぬ間際の、キョトーンとしている顔がいいかな。