地球温暖化は進んでいないという事実を隠蔽するため、英イーストアングリア大学が1960年代からのデータをねつ造していたのだ。この「クライメートゲート事件」は海外で大きな話題になった。隠蔽されたデータによれば、今後、地球が温暖化に向かうリスクは小さく、むしろ寒冷化している可能性すらあるという。
残念ながら、この「大事件」について日本では大きく報道されていない。日本のメディアの怠慢なのではないか。温暖化を防ぐためにCO2削減を目指すという経済政策の大前提を揺るがす可能性があるため、報道を控えたというのはうがった見方だろうか。
「CO2削減は地球の気温に影響しない」科学者の主張
実際、科学界にはCO2の排出量と地球の気温にほとんど関係がないという科学者の意見が多い。
東京工業大学大学院の丸山茂重教授は、気温などの気候変動に最も影響を及ぼすのは「太陽の活動度」であると主張している。太陽活動が活発化すると黒点が増えて気温が上昇する。黒点は2000年頃から減っているため、地球はむしろ寒冷化に向かうというのが丸山教授の主張だ。
丸山教授は「CO2削減が地球の気温に与える影響は極めて限定的」とも言っている。大気中に占めるCO2の割合は0.04%。仮にそれが毎年1ppm(0.0001%)増えても、気温は0.004度ほどしか上がらない。気温とCO2濃度を分析すると、両者は連動しているわけではなく、むしろ逆の動きをするのだという。気温の上昇が先に起き、そのため海水中に溶けているCO2が大気中に放出されるというわけだ。
つまり、「地球が温暖化している」ことも「CO2削減がそれを防ぐための処方箋である」ことも科学的に正しいかどうか決着がついていない。何のために日本だけが、経済活動に大きな制約をもたらす大幅なCO2削減を国際公約してしまったのか不思議で仕方がない。
「ゲーム理論」からも効果は期待できず
とはいえ、「もったいない」の言葉に象徴されるような日本的道徳観からすれば、「エネルギーの大量消費は無駄である」という考え方も誤りではない。そこで、理由はともあれ、CO2削減に取り組む必要があると仮定してみよう。
日本が他国に先駆け、突出したCO2削減策を打ち出すことは妥当な政策なのだろうか。「日本が率先してCO2削減に取り組み、他国をリードする姿勢に意味がある」といった精神論は、経済的にも正しいのだろうか。
日本は米国に次ぎ、中国と肩を並べる経済大国であるが、熱心に省エネに取り組んできた実績があり、CO2の排出量のシェアは4%程度である。地球レベルのCO2削減が実現するには、CO2を大量に排出している米国や中国などの大国が削減努力をすることが効果的であることは、論を待たないだろう。
経済学における「ゲーム理論」を応用すると、CO2削減のためには「国際間の交渉」による合意形成が必要になる。地球レベルの大きな課題は、自国が何も行わず、つまり、費用をかけなくても、他国の費用(=犠牲)によって解決されるという面があるからである。
では、日本が「極めて大きな費用を払うこと」を宣言したことが、国際間交渉というゲームにおいて、何らかの合意形成につながったのだろうか。