 |
<学 部>
経済政策
経済学特殊講義(デフレの経済学)
演習(2年生)
演習(3年生) |
 |
 |
 |
 |
1979年 中央大学卒業
1986年 上智大学大学院経済学研究科博士後期課程退学
1987年〜1997年 大和総研およびに大和證券に勤務
1998年〜2003年 クレディスイスファーストボストン証券東京支店に勤務 |
 |
 |
 |
 |
|
 |
 |
 |
 |
東2-1001 |
 |
 |
 |
<研究分野>
財政金融政策論、日本経済論、マクロ経済学
<主要業績>
2002年「デフレ克服には金融政策のレジーム転換が必要」(共著)、岩田・柳川・八田編、「エコノミックス」
2002年「大恐慌と昭和恐慌に見るレジーム転換と現代日本の金融政策」(共著)、岩田・原田編「デフレ不況の実証分析」
2003年「デフレはどれぐらい日本経済を蝕んでいるか」、岩田規久男編、「まずデフレをとめよ」
2003年「金融政策の機能停止はなぜ生じたのか」、(共著)、岩田・宮川編「失われた10年の真因はなにか」
2004年予定「昭和恐慌と予想インフレ率の推計」、(共著)、岩田規久男編、「昭和恐慌の研究」
<メッセージ>
現実経済と学問としての経済学は関係ないという意見を耳にすることがあります。たしかに、経済学は現実の一部分を切り取り、しかも抽象化したものですから、生々しい現実とかけ離れたものに思えるのかもしれません。経済学は完成した後の古典的な数学や物理学をお手本に作られたため良くも悪くも極めて体系的です。このため、現実的な話題は最後の最後になって、ようやく出てくることになることが多く、そこまでたどり着く前に息切れしてしまうことも少なくないようです。しかし、非常に基本的な知識を組み合わせて使うことでも、常識の間違いに気づいたり、常識だけではわからないことを理解することは不可能ではありません。講義と演習を通じて、基礎的な経済学の道具でどこまで生々しい現実にアプローチできるかをお話したいと思っています。
<講義・演習の運営方針>
経済学は非常に体系的な学問です。むしろ、時に過剰に体系的ではないかと思うことさえあります。これは、19世紀に経済学が本格的に発展し始めたときに、お手本にしたのが古典物理学や数学であったことが直接の原因であるといわれています。ですが、経済学という学問が取り扱う対象それ自体が、非常に体系的なアプローチを要求することが最も重要な原因なのです。経済現象は表面的には大変複雑なものです。このため、学問の基礎的な部分を、誰が見ても考えても文句が付けにくい確実なものに置かなければ、その先の推論はとても使い物にはならなくなってしまうのです。複雑な現象に関する議論を、一つ一つは明快に理解できる個々の部品に分解し、それを改めて組み立て直すことができれば、議論は全体として頑丈な基礎の上に成り立つことになるわけです。
しかし、議論の基礎として綿密に分析される経済活動とは、例えばスーパーでミカンやリンゴを買うことだったり、月給からいくらを貯金に回すかを考えたりすることです。こんなことは誰でも毎日していることであって、大げさな数式やグラフを持ち出すようなことではないように見えます。ところが、そんな毎日の買い物も、よく考えてみれば決して「当たり前で単純な話」ではありません。皆さんが毎日のように食べている味噌や醤油あるいは豆腐の原料である大豆の多くが中国やアメリカから輸入されています。そして、大豆の栽培に使われる肥料である鰯の一種は、太平洋の彼方、南米の沖合で取られています。30年ほど前に、ペルー沖でエルニーニョ現象が起こって鰯が取れなくなると、巡り巡って味噌汁の具から豆腐が消えると言う現象が起こったことがありました。今では日本の食卓には驚くほど多くの輸入食材が供されていますし、豆腐のような間接的な輸入品まで入れれば、その範囲はさらに広がります。食卓一つをとってもこの有様です。私達の暮らしは、経済のグローバル化が是か非かなどと議論している間に、網の目のように広がった世界経済の中に組み込まれているのが現実なのです。つまり、表面的には単純な事柄も、その背後には複雑な仕組みが横たわっているということです。
結局、経済学を学ぶということは、複雑に見える現象を可能な限り単純に分解することであると同時に、単純に見える現象の背後にある複雑な仕組みを考えることでもあるのです。ところが、私が過去20年近く、いわゆるビジネス・エコノミストとして仕事をしてきた経験によれば、たとえ金融の専門家といわれているような人であっても、複雑な現実をあまりに単純に考えてしまうことが多い一方で、単純で基本的な経済学の原理を無視して、複雑怪奇な「理論」を振り回していることも多いのです。「経済学は直接に資格の取得や職業に役に立たない学問であり、経済合理性を重視する経済学を学ぶものは、経済学を学んではいけないのだ」などという逆説をもてあそぶ人もいます。しかし、基礎的な経済学の知識と考え方を身に着けることができれば、私達は自分がどんな世界に暮らしているのかを多少なりとも理解できるようになります。講義・演習ではこうした点に留意して「実用になる経済学」について共に学んで行きたいと考えています。 |